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Last-modified: 2007-06-15 (金) 22:41:28

ティーパーティ

 

~とある休日、午後三時~

リーフ  「ただいまー……な、なんだ、この居間から漂ってくるかぐわしき芳香は……!?
      クッ、僕の体が拒絶反応を起こす……! この香りは、僕とは縁遠い上流階級の香り!」
エリンシア「あら、お帰りなさいリーフちゃん」
エリウッド「今日は珍しく走り回ってたんだな、リーフ」
リーフ  「うわ、何故か我が家の台所でティーパーティの真っ最中……!」
エイリーク「ラーチェルが旅行の土産ということで紅茶の葉をくださったので、淹れてみました」
リーフ  「こ、紅茶ですか……」
セリカ  「リーフ兄さんもいかが?」
セリス  「お菓子もあるんだよ、ほら」
リーフ  「……お菓子といえば真っ先にうまい棒とベビースターラーメンが浮かぶ庶民派なこの僕に、
      そんなスコーンやらマドレーヌやらを見せられても」
ミカヤ  「……いい香り……日々の疲れが癒されるわ……」
リーフ  「ああ、ミカヤ姉さんが深窓の令嬢のような気配を発している……!
      そうか、普段はネタキャラだけど外見は神秘的な美少女だから、
      こういう雰囲気が物凄く似合うんだな……!」
エリウッド「……うん、さすがに名門貴族のご息女が選んだだけあって、いい葉だな。
      とても穏やかな気持ちになってくる、深く素晴らしい味わいだ」
リーフ  「普段は病弱なエリウッド兄さんまで、ここぞとばかりに王子様オーラを発している……!
      恐ろしい、恐ろしすぎるよ、お茶会の魔力!」
エリンシア「そう言えば、お聞きになりました、皆さん?
      リキア地区のハーケンさんとイサドラさん、とうとうご結婚なさるそうよ」
ミカヤ  「あ、そうなんだ。良かった、一度イサドラさんが不安がって占いに来てたのよ。
      そのときの結果が、主婦を選ぶか尼を選ぶかの二択っていうよく分からない結果だったから」
エイリーク「では、勇気を持って伴侶と共に歩む道を選ばれたということですね」
セリス  「愛の力だね……きっと、いい結婚式になるだろうなあ」
セリカ  「結婚式、か……わたしはやっぱりミラの教会で……」
エリンシア「あらセリカちゃん。それ、相手はどなたになるのかしら?」
セリカ  「それはもちろん……」
ミカヤ  「ふふ、そんな風に頬を染めてると、またシグルドが怒り狂うわよ」

 うふふふ、あははは、おほほほ……

リーフ  (だ……駄目だ! この溢れ出さんばかりの王侯貴族オーラ、とても耐えられない!
      どうしてウチの女衆はこうも高貴なお嬢様オーラを発する人たちばかりなんだ……!
      そして、王子様なエリウッド兄さんはともかく、このヲトメチックな空気に違和感なく
      溶け込んでいるセリスが恐ろしすぎる……!)
エイリーク「さあ、リーフもどうぞこちらへ掛けて下さい」
エリンシア「皆でお茶会を楽しみましょう」
リーフ  「い、いや……僕は、遠慮しておきますっ!」

 リーフは華やかなキッチンからダッシュで逃げ出した。

リーフ  「全く……あんなところにいたら何か自分が悲しくなっちゃうよ、僕は……
      ん、なんだろう、縁側の方から賑やかな声が……」

ヘクトル 「ようリーフ、お前もこっちに来たのか」
リーフ  「あ、ヘクトル兄さん。お前も、ってことは……」
エフラム 「当然俺もこちら側だ。とりあえず適当に座れ」
ヘクトル 「でよ、荷物運びにしちゃずいぶん割がいいんだぜ、そのバイト」
エフラム 「いや、それよりも魔物退治だろう。少々危険だが、金も稼げて腕も磨けて、一石二鳥だぞ」
リーフ  「ああ、いいなあ、この雑多な雰囲気……! やっと家に帰ってきた気分になれた」
ロイ   「(パリパリ)やっぱりポテチは薄塩だよねマルス兄さん」
マルス  「(パリパリ)そうだね、まさに駄菓子の王道、ポテチのスターロードだよこれは」
シグルド 「(ズズーッ)うむ、やはり会社員たるもの質素倹約を尊ぶべきだな」
アイク  「(ズズーッ)そうだな、甘ったるいものなど飲んでられん」
アルム  「(ズズーッ)まあ、このお茶はちょっと薄すぎる気がするけどね」
リーフ  「あ、なんだか和む香り……僕にも一杯ちょうだい」
アイク  「うむ(こぽこぽ)ほれ」
リーフ  「ああ、いいなあ、このいかにも量産品って感じのする、安っぽい湯のみ!
      そしてこの(ズズーッ)安い茶っ葉が極限まで薄まりきった、出涸らしと呼ぶのも恥ずかしい、
      ほとんどお湯同然のお茶! いやあ、これでこそ貧しいながらも楽しい我が家だよ。
      この貧乏臭さ、もうたまんないね!」
ヘクトル 「ははは、聞いてて悲しくなること言ってんじゃねえよこいつ」
エフラム 「だが、事実ではあるな。エイリークには悪いが、ああいう趣向はどうも馴染めん」
ロイ   「そうだよねえ。どうも、僕はああいう雰囲気って苦手だよ、緊張するから」
マルス  「ま、溶け込もうと思えば出来なくもないけど、疲れるからね」
シグルド 「まだ年若いとは言え、レディが中心の集まりだ。
      わたしたちのような武骨な男が混じって、雰囲気を壊す訳にはいかん」
アイク  「同感だな。どうも、ああいう場所は場違いだ。
      こうして寂しい庭の風景でも眺めながら、薄い茶を飲む方がよほどいい」
アルム  「……できればセリカと一緒にいたかったけど、なんか馴染めないんだよねあそこ……」
シグルド 「はははは、アルムは村人のように素朴で実直な気質だからな!
      高い紅茶など飲むよりは、こうして茶をすすっているのが似合うぞ、うん。
      セリカとはまさに正反対だな、うん」
リーフ  「セリカとアルムが離れてるからってテンション高すぎだよシグルド兄さん……
      あー、でもやっぱ落ち着くなあ、この空気。
      自分が貧乏臭いと自覚せざるを得ないよ、あのヲトメ空間を見たあとだと。
      それにしても、我が家のお姉様方はどうしてああ揃いも揃って上品なオーラを身につけて……ん?」
リン   「……(ボリボリ)」
リーフ  「……」
リン   「……(ズズーッ)」
リーフ  「……煎餅とお茶がすごくよく似合うね、リン姉さんは……」
マルス  「はははは、自分がお上品なお茶会に溶け込めなかったからって、いじけないでくださいよリン姉さん」
リン   「うるさいわね! (ボリボリ)なにが紅茶よ全く、日本人ならお茶に煎餅、これ基本でしょうが。
      ふんだ、いいもん、どうせあたしなんか姉さんたちの爪ほどの気品もない粗忽者だもんね……」
リーフ  「うわぁ、本格的にいじけ始めたよリン姉さん」
マルス  「ははは、リン姉さんはこの家族の女性方の中で一番貧乏臭いからね!
      全く、そろそろセリスと性別を交換するべきもがぁっ!?」
リン   「やかましいのよあんたは! 喋ってる暇があったら煎餅でも喰らえ、この、このっ!」
マルス  「もがっもがっ、もががっ(ちょ、姉さん、そんなに入りませんって!)」
リーフ  「(ズズーッ)……はーっ、落ち着く……エリンシア姉さんたちには悪いけど、
      やっぱりこのノリが我が家のスタンダードだよねえ……」
リン   「おら、入らないんなら薄まりきったお茶で流し込むのよこの野朗!」
マルス  「もがーっ!(和んでないで助けてよリーフ!)」

<おしまい>