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Last-modified: 2011-05-30 (月) 22:33:50

LOST MAN
 第二章 “邂逅”
 
~翌日・午前8時・兄弟家玄関~
エリンシア 「では、お気をつけて」
アイク   「む・・・では、行ってくる」
ヘクトル  「午後6時までには帰ってくるぜ。昼飯は勝手に食ってくるからよ」
エイリーク 「では、行ってきます。・・・姉上、今日こそは記憶を取り戻して見せます」
エリンシア 「ええ・・・頑張ってください」
アイク   「・・・えっと・・・婦人・・いや違う・・・姉上?」
エリンシア 「! ・・・いいえ、あなたはいつも私の事を『姉さん』と呼んでいますわ」
アイク   「そうか。・・・姉さん、俺も頑張る。だから、泣かないでくれ」
エリンシア 「・・・! はい・・・っ!」
 
エリンシアは涙を抑えた。何とか表面には出ずにいたが、目は潤んだ。
3人が玄関を出たとき、とうとうエリンシアは膝をついてしまった。
 
エリンシア 「・・・アイク・・・!」
~紋章公園~
アイク   「・・・ここは、公園だな」
ヘクトル  「俺等はよくここで遊んだんだぜ?」
アイク   「そうか・・・道理で懐かしさを感じると。・・・不思議だな・・・記憶が無いのに懐かしく思うなんて・・・」
エイリーク 「やはり、思い出せませんか?」
アイク   「・・・無理なようだ・・・すまない・・・」
ヘクトル  「気にすんなって。まだ散歩は始まったばかりじゃねぇか」
エイリーク 「そうですよ。まだまだこれからです」
アイク   「・・・そうだな。えっと・・・?」
エイリーク 「私はエイリークです」
ヘクトル  「俺はヘクトルだ」
アイク   「ヘクトノレだな?」
ヘクトル  「・・・? ちがぁぁぁぁぁぁう!!たしかに文字は似てるけども!!今考えちまったじゃねーか!!」
エイリーク (考えるほどの事でしょうか・・・?)
アイク   「・・・すまん。ベイリーフ、ベクトル」
エイリーク 「エイリークです!」
ヘクトル  「ヘクトルだ!!・・・とにかく、1回遊ばせてみるか?」
エイリーク 「・・・大人の人が公園で遊ぶ画って、あまり想像したくないのですが・・・」
ヘクトル  「しょうがねぇだろ?じゃあお前、アイク兄貴をベンチに座らせて考え事させてみろ。それこそリストラされて途方に暮れたサラリーマンみたいじゃねぇか」
エイリーク 「そこまで細かく説明しなくても・・・しかし、想像したくありませんが、一利ありますね・・・」
ヘクトル  「だろ?さて、早速・・・って、あれ?アイク兄貴?」
エイリーク 「あれ・・・今まで隣に居ましたよね?」
ビラク   「ウホッ!良いオトコ!さぁ、や ら な い か ?」
アイク   「? 何をやるんだ?」
ヘクトル  「テメェコラガチホモがァァァ!!アイク兄貴をソッチの世界に引き込むんじゃねェェェ!!」
ビラク   「おお、同志ヘクトル!」
ヘクトル  「誰 が 同 志 だ ! !」

~10分後~
ヘクトル  「ふうぅ・・・あんにゃろ、しつこく追ってきやがって・・・」
エイリーク 「大丈夫ですか?」
アイク   「随分速く走ったな・・・」
ヘクトル  「もう慣れちまったよ・・・チクショウ・・・」
????  「ちょっと退いてくれぇぇぇ!!」
アイク   「む?」
ドォン!
ヘクトル  「べぶぉ!?」
ドタン!
 
ヘクトルはいきなり弾き飛ばされた。
弾き飛ばしたのは馬に乗った男性。
その後を天馬騎士が追いかける。
 
エイリーク 「ヘクトル兄上!?」
????  「わりぃ!ゆるせー!」
????  「待ちなさーい!」
アイク   「・・・」
ブォンッ
エイリーク 「アイク兄上?ラグネルを持ってどうし・・・」
ビュンッ

アイクはラグネルを振った。
それは衝撃波となり、馬に乗った男性を弾き飛ばした。

????  「びぶぉ!?」
エイリーク (・・・昨日放った衝撃波より安定してる・・・?)
マーシャ  「あ、アイクさん!?」
アイク   「・・・む?誰だ、あんた」
マーシャ  「え!?あ、アイクさん!?私ですよ!マーシャです!」
エイリーク 「あ、マーシャさん!これにはワケが・・・」
【赫赫然然】
マーシャ  「そう言うわけだったんですか・・・ビックリしました・・・」
エイリーク 「マーシャさんも大変ですね、兄上の面倒を見てるようですが・・・?」
マーシャ  「もうホントですよ!『働け』って言っても働かないし!」
ヘクトル  「うっ・・・うう~ん・・・」
マカロフ  「いだだだ・・・ん?」
エイリーク 「あ、二人とも目覚めました」
マーシャ  「バカ兄!さっさと仕事しに行くよ!工務店の人達が待ってるんだから!」
ヘク・マカ 「「・・・君は、誰だい?」デスカ?」
エイ・マー ( ゚□゚)

エイリーク 「と言うわけで、戻ってきました」
マーシャ  「ホントにウチのバカ兄が・・・!」
ミカヤ   「あらま・・・ヘクトルまで・・・」
エリウッド 「・・・OTZ」
マルス   「散歩開始十数分後に記憶喪失者が増えるってどう言う事ですか」
アイク   「・・・すまない・・・護れなかった・・・」
マーシャ  「そんな・・・悪いのは私達です!ほらバカ兄!頭を下げて!」
マカロフ  「スミマセンデシタ・・・」
エフラム  「やけに素直になったな・・・」
マルス   「それに引き換え・・・」
ヘクトル  「あはは、ちょうちょだ~」
リーフ   「気持ち悪っ!」
エリウッド 「ダメだ・・・もうダメだ・・・ああダメだ・・・」
エリンシア 「どうしましょう・・・アイクはいいとして、こんなヘクトルを外に出したくはありませんわ・・・」
リン    「同感ね・・・」
エリウッド 「じゃあ、ヘクトルは僕達に任せて、エイリークはアイク兄さんと散歩を続けてて」
アイク   「そうか。では、もう一度行って来る」
ミカヤ   「気をつけてね。ヘクトルの二の舞にならないようにね!」
アイク   「分かった」
マーシャ  「すみません、バカ兄を連れて帰った後に記憶を戻すお手伝いするので・・・」
マカロフ  「マタアオウ」
ヘクトル  「また来てね☆」
リーフ   「おぅえっ!吐きそう!ていうか吐いて良い!?」
ロイ    「変わってるにも程があるでしょ!」
エイリーク 「では、今度はガリアの方に行ってみようと思います」
ミカヤ   「ああ、確かにアイクはガリアの方によく行くから何か思い出すかも」
アイク   「ガリア?」
エイリーク 「ガリアと言うのは、ラグズの方達が多く住む地域の事です」
アイク   「ラグズ?」
マルス   「ラグズって言うのは、その種族の名前だよ。ガリアは“獣牙族”って言うラグズの人達が集まってる所なんだ。他にもゴルドアとかフェニキスとか・・・」
アイク   「・・・よく分からんな・・・まぁ行けば分かるか?」
ロイ    「今度は僕も行くよ」
リーフ   「じゃ、気をつけてね~」
アイク   「よし、行くぞ!」
 
~数分後・ガリア・カイネギス邸~
 
アイク   「すごいな・・・広大な平原・・・ここもまた、懐かしく感じる」
ロイ    「そりゃアイク兄さんは仕事でよくここに来るからね」
エイリーク 「修行でもここに来ます」
アイク   「そうなのか?」
??    「アイク!?」
ザザァ

橙色の猫が塀の上からやってきた。
アイクの前に歩み寄ると、そこで立ち止まった。
 
アイク   「? 猫・・・?」
ヴンッ
アイク   「!?」
 
橙色の猫―――レテは、化身を解いた。
瞬間、それを目の当たりにしたアイクは目が点になった。
 
レテ    「なんだ、来ていたのなら連絡を・・・アイク?」
ジーッ
レテ    「な、なんだ?私の顔に何か着いているのか?」
アイク   「・・・」

アイクは静かにレテに歩み寄った。
と、同時に、レテの頬を触った。

レテ    「は、あ、アイク!?」
アイク   「不思議だ・・・猫が人間になった・・・一体どう言う・・・?」
レテ    「ま、待てアイク!一体どうしたのだ!?」
アイク   「ジッとしていろ」
レテ    「だ、だが・・・!」
アイク   「本当に・・・いや、俺の目の錯覚だったのか・・・いや、そんなはずは・・・」

アイクはブツブツ言いながらレテを観察し始めた。
もちろん、レテの顔は超真赤だ。

レテ    「な、なんだというのだ!?/////」
アイク   「む~・・・形が残ってるのは尻尾と耳だけか」

アイクはレテの尻尾をガシッと掴んだ。
途端―――。

レテ    「っひゃあ!?」
アイク   「む?」
レテ    「しっ、しししし尻尾は触るな!!////////////」
ロイ    (うっわ、トマトみたい)
レテ    「い、いいいい一体どうしたのだ!?////////////」
エイリーク 「レテさん、これにはワケがあるんです・・・(知り合いに会う度に説明しなければいけないのですか・・・)」
【赫赫然然】
レテ    「なんだと・・・それでコレか・・・」
アイク   「コレは本当に耳か?普通目の横に耳はあるモノだが・・・それに形も・・・」
レテ    「ええい!み、耳に触るな!/////////」
アイク   「・・・むぅ・・・」

ロイ    「アイク兄さんの記憶を取り戻す為に協力してくれませんか?」
レテ    「もちろん。い、いつまでも耳や尻尾を触られては敵わんからな////////」
アイク   「む・・・もっと触っていたいが・・・」
レテ    「・・・///////」
ロイ    「(ボソッ)以外とこのままの方が恋愛成就しそうじゃない?」
エイリーク 「(ボソッ)そうは言いましても、やはり本心からの付き合いでなければ・・・」
ロイ    「(ボソッ)やっぱりダメか・・・」
レテ    「と、とにかく、ガリアを案内しよう着いて来てくれ」
アイク   「すまんな」
レテ    「き、気にするな、仲間だろう。とりあえず、今は目の前のカイネギス邸を紹介しておこう」
アイク   「? 勝手に入って良いのか?」
レテ    「安心しろ、ここは私の家でもある」
アイク   「ほぉ、凄いな」
レテ    「そ、そうか?///」
ロイ    (二人一緒だとレテさんも普通の女の子だよなぁ・・・)
レテ    「では行くぞ」
 
レテはアイクの腕を掴み、引っ張った。
それにつられてアイクも足を進める。
と、そこに水色の髪をした男性が走ってきた。
 
ライ    「おーい、レテ、何をやって・・・お邪魔しました」
 
ライはアイクの腕を握るレテを見て笑みを零した。
と、同時に踵を返した為、その笑みは一瞬しか見れなかった。
が、レテはそれを見逃さなかった。
 
レテ    「待てライ!なんだその意味ありげな笑みはァ!?」
ライ    「!? ちょ!話せば分かる・・・ギャァァァァァ!?」
 
~数分後~
 
ライ    「なるほどね・・・記憶喪失だから手始めにカイネギス邸を案内しようとしていたって?」
レテ    「そうだ」
ライ    「なぁんだ、つまんね~の。てっきり進展したのかと思ったぜ」
レテ    「う、うるさい!」
アイク   「何が進展したんだ?」
ライ    「ああ、お前とコイツの」「ライィィィィィィィ!!」
ぐわしっ
ズルズルズルズルズル
ライ    「えだだだだだだ!?み、耳を引っ張るな!お前知らねぇのか!?耳は体の中でも一番取れやすいんだぞ!?」
レテ    「好都合だ!」
ライ    「ええ!?ま、やめ・・・ノォオオオオオオオオオオオ!!?」

~数分後~
レテ    「さぁ、行こう」
アイク   「・・・大丈夫か?」
ライ    「息はあるぜ・・・虫の息だけどな・・・」
ロイ    「自分で言いますか」
エイリーク 「いろんな所から血が出てますよ?口からとか耳の穴からとか・・・」
ライ    「気にすんな、どうって事ねぇよ」
レテ    「ほう、『どうって事ねぇよ』か・・・ならば今度は」「心身共に堪えましたァァァ!!」
アイク   (必死だな・・・)
~1時間後~
レテ    「・・・どうだ?一通りガリアを紹介したが・・・」
アイク   「・・・すまん、やはり思い出せん」
レテ    「そうか・・・それは残念だ・・・」
ライ    「ん~・・・アイクが思い出しそうな所はもうねぇな・・・」
アイク   「二人とも、すまない・・・」
レテ    「気にするな」
エイリーク 「ふうっ・・・疲れましたね」
ロイ    「さすがはラグズの人達とアイク兄さん・・・全然平気そうだよ・・・」
レテ    「しかし・・・もう案内するような場所も無い・・・」
ライ    「そうだな。しっかし、アイクとレテが始めて会った場所に来てみても思い出せなかった時のレテの顔は写メで取りたかったな」
レテ    つ【破砕】
ライ    「アーッ!」
レテ    「・・・すまん、アイク・・・私達では役不足のようだ」
アイク   「そんな事は無い。あんた達は、俺なんかの為に一緒に歩いて周って説明してくれた。特に、レテには感謝している」
レテ    「(ボソッ)・・・私も、嬉しかったぞ・・・」
アイク   「ん?」
レテ    「な、なんでもない!」
ライ    「素直じゃねぇな・・・だから進歩しないんだよ」
エイリーク 「でも、二人の会話を聞いてると和みます」
ライ    「そうかぁ?」
ロイ    「でもなんかじれったい感はあるかも」
エイリーク (あなたが言いますか)
ライ    「だろ?後一歩だと思うんだけどな・・・ん?」
漆黒の騎士 「む?貴殿等は・・・」
ロイ    「あ、漆黒さん」
エイリーク 「何故ここに?」
漆黒の騎士 「貴殿等こそ・・・」
アイク   「・・・なんだ、この黒い騎士は・・・」
漆黒の騎士 「む、黒い騎士ではない、漆黒の騎士だ」
エイリーク 「大して変わらない気もしますが」
漆黒の騎士 「アイクよ、今日は随分と雰囲気が違うが・・・どうしたのだ?」
アイク   「なんだ、俺の知人か?」
ライ    「・・・まぁ、好敵手だな」
漆黒の騎士 「? どう言う事だ? 猫族の者よ、経緯を教えて欲しい」
ライ    「ああ、【赫赫然然】なんだ」

漆黒の騎士 「なるほど・・・それで私を黒い騎士と」
ライ    「あ、そうだ。アイクの記憶を戻す為に手合わせしちゃくれねぇかな?」
レテ    「記憶を取り戻す為に、頼む」
漆黒の騎士 「任せるがいい」
アイク   「よろしく頼む」
ライ    「さて、と、俺等は巻きこまれない内に後退だ」
ロイ    「後退?」
レテ    「当たり前だろう?アイクと漆黒の騎士程の両雄がぶつかればドバッチリを食らうのは当然だ」
エイリーク 「あ、そうですね」
漆黒の騎士 「行くぞ、アイク」
アイク   「む?あ、ああ・・・」
ロイ    「・・・あ!」
ライ    「どうした?」
レテ    「何かあったのか?」
ロイ    「アイク兄さん、剣術を使えなくなってたの忘れてた」
ライ・レテ 「「は?」」
バガァン!
アイク   「ぐああああああ!?」
エイリーク 「兄上!」
漆黒の騎士 「その程度か?」
アイク   「くっ・・・うおおおおおおおおお!!」
漆黒の騎士 「甘い!」
ギィン!
アイク   「ぐくっ・・・おおおお!!」
ギィン!ガガッ!ギャリン!
ライ    「なんだ、剣術使えるんじゃん」
ロイ    「おかしいなぁ・・・エリウッド兄さんの話しだとワユさんに負けたって・・・」
レテ    「!? ワユにか!?」
エイリーク 「やはり、漆黒の騎士さんとは兄弟子であり好敵手であり師匠であるんですね」
ロイ    「・・・どんどんアイク兄さんの動きのキレが良くなってくるよ」
エイリーク 「どうやら、頭が体の動きに合ってきたのですね」
ロイ    (普通は逆だよなぁ・・・)
ライ    「・・・まぁ、結果オーライ?」
アイク   「せい!」
ブンッ
漆黒の騎士 「!」
 
アイクはラグネルを上空へ放り投げた。

レテ    「! 出るぞ!」
ライ    「“天空”だ!」
エイリーク 「・・・いえ、ダメです」
スカッ
アイク   「!?」
漆黒の騎士 (アイクが天空を失敗した・・・チャンス!)
ガッ
アイク   「!?」
 
漆黒の騎士はアイクの胸倉と腕を掴んだ。
 
漆黒の騎士 「むん!」
アイク   「うお!?」
ギュンッ
ライ    「へ?」
エイリーク 「え?」
ドバン!!
ライ    「ぎゃふ!?」
エイリーク 「ぅあ!?」
 
離れて見ていたはずの二人だが、投げ飛ばされたアイクの踵がエイリークに、肘がライに激突した。
しかも頭に。
 
漆黒の騎士 「む!?しまった!」
ロイ    「大丈夫二人とも!?」
レテ    「ライ!エイリーク殿!」
ライ    「うっ・・・」
エイリーク 「・・・ううっ・・・」
ロイ    「ねぇ大丈夫!?」
ライ・エイ 「「・・・ここはどこ?」じゃい?」
レテ・ロイ ( ゚Д゚)
 
 
TO BE CONTINUED