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Last-modified: 2011-05-30 (月) 22:00:00

「エイリーク姉さん、ちょっと教えてほしいところがあるんだけど・・・」
と、口を漏らすリンの手には兄弟の一部の頭痛の種になるだろう、マーク式のテストがあった。
どうやらマーク式の模擬試験でどうしてもわからないところがあったらしい。
一家の中で知識の優れている部類に入るエイリークに相談を、そう思ったのだろう。
発言と携行品でそれらを把握したエイリークは微笑を浮かべ、
「ええ、私に解る範囲内でしたら」
と言い、鞄から愛用の筆記用具と辞書を取り出す。

彼女の教え方は公式を解り易く説明する、といったようなシンプルなものなのだが、
逆にそれが彼女の聡明さを際立たせる。ぶっちゃけ公式の説明が一番複雑だ。

「・・・何をやっているんだ?」
と、二人が勉強をしている後ろから声が聞こえた。
すぐにアイクであると分かったため、勉強しているの、とリンが返した。
その言葉に顔をしかめるアイク。勉強は苦手だという空気を発しているように感じた。
しかし、エイリークが解いている問題を見た瞬間、アイクはおもむろに
「・・・そこの答えは3番か?」
と呟いた。

「あ・・・はい、そうですけど・・・なぜ?」
と、エイリークは狼狽しながら答えた。
お世辞にも頭が良いとは思えない。
子供がどこから来るかと聞かれたら橋の下かキャベツ畑、もしくはコウノトリさんが運んでくれると
未だに思っているアイクが解けるような問題ではないと思った。
「・・・兄さん、ちょっとこれ、やってみて?」
リンはその光景を見て焦りながらも、ちょっとした好奇心でアイクに問題を渡して解いてみるように頼んだ。
こういうのは苦手分野なんだがな、と呟きながらもアイクはそれを受け取り、エイリークから借りたペンで
適当にさらさらとマークを付けていく。
「こんなものでいいか?」
5分も経たずして全ての問題にマークし終え、問題を返し、修行でもしてくるのだろう、出かけて行った。

そのさらに5分後、採点結果。
「・・・全問正解、と」
顔をひくつかせてリンは呟いた。隣にいるエイリークも同じような表情をしている。
「何もここで勝負強さを発揮しなくてもよかったのでは・・・」
確率論だとか、知識とか、そういうのは一切無視して切り進んでいく兄を再確認した姉妹だった。

おまけ。
リン「・・・てことが昼にあったんだけど、だとしたらどうしてアイク兄さんは大学とか行かなかったんだろ?」
ミカヤ「それは当然よ。あの子は早く家を支える柱になりたいと思ってたし。
    ・・・それに大抵の大学には大→天↑空↓とかの話が伝わってて断られたから」
リン「・・・さいですか」