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Last-modified: 2011-06-01 (水) 22:32:43

162 :兄弟家の小さな馬小屋:2009/09/30(水) 17:47:07 ID:F31nDHAp

裕福とは言い難い兄弟家の敷地は決して広くはない。
だが、庭の隅には小さな馬小屋のスペースが確保されている。
家畜と違い馬たちは騎乗用、従って日曜は割合ヒマである。
今日も彼らはおしゃべりに興じている。

エリウッドの馬「ひひーん!」(平和だねぇ)
以下、日本語に訳す。
エフラムの馬「今日は日曜日だからなぁ」
エイリークの馬「あら、シグルドさんのお馬さんがおりませんことよ?」
リーフの馬「ああ、アイツなら休日出勤、シグルドさんを会社まで乗っけてったよ」
セリスの馬「気の毒に…毎日帰りも遅いのに…」
エリンシアの天馬「なに言ってるんだぃ!会社まで行ったら後は休んでていいんじゃないか!
     あたしなんかこの年だってのにご主人は遠慮なく買い物の大荷物を積むんだよ!
  いつになったら引退させてくれるのかねぇ…」
エフラムの馬「婆さんも大変だな…俺の主人はマメに世話してくれるからありがてぇな」

やがて馬たちの話題はそれぞれの主人の話になる
セリスの馬「ふひっ…せ…せりすタンハァハァ…」
エフラムの馬「ちょ…おまっ…人間相手なんて不健康な…」
エイリークの馬「まったくですわ!…近くにこんな美しい牝馬がおりますのに、信じられませんわ!」
エリウッドの馬「まぁまぁ…彼の主人はなにか、フェロモンが出てる気がするね。
        それよりも心配なのは僕の主人だよ。最近、病院や薬局に行く回数が増えてるんだ…」
エフラムの馬「でもエリウッドさんは細く長く生きそうな気がするけどなぁ…」

163 :兄弟家の小さな馬小屋:2009/09/30(水) 17:48:27 ID:F31nDHAp

やがてリーフの馬が語り出す。
リーフの馬「君らはまだいいよ、俺の主人の悲惨さを見ろよ。流れ矢やメティオにあたるなんざ日常茶飯事だぜ?
     一緒にいたら命がいくつあっても足りないよ」
エイリークの馬「そういえばよく生きてますわね?…いつ馬刺しになるやらと心配してましたのに」
リーフの馬「巻き添えはゴメンだし、ピンチになったら振り落として逃げるんだ。
  例の四人娘の怒りトロンやら、大地の剣を一緒に食らうのはゴメンだし」
エフラムの馬「なんて奴だ、主人への忠誠がたりんぞ!」
リーフの馬「だってあいつ、腹減ったからって俺のエサ食いやがったんだもん」
エリウッドの馬「……」
エリンシアの天馬「意地汚い人間だねぇ…あたしも100年は生きてるけど、そんな話は初めてだよ」
エイリークの馬「やはりわたくしの主人が一番ですわね!優美で高貴、乗せ心地も素晴らしいですわ!
 馬に似て美しい主人ですこと、オーホホホ!」
エフラムの馬「いやいや俺の主人だろう、男らしくて勇敢な騎士道溢れる方だぞ、
   主人と一緒に防具を身につける時は本当に気合が入る」
セリスの馬「せ…せりすたん……鞍をはずして乗せたい…」
リーフの馬「いいなぁ…みんな自慢の主人で…」
エリウッドの馬「でも君の主人は誰よりもタフで健康じゃないか…まぁなんだな、主人の躾も大事だし、
     今度エサを食われたら、後ろ足で蹴飛ばしてやればいいよ」
エリンシアの天馬「エサをわけてやるとは言わないんだね」
エリウッドの馬「勘弁してください」

そこにエリンシアが入ってくる。
エリンシア「お買い物に出かけますよー」
エリンシアの天馬「やれやれお仕事だよ…15人分も食料積むのは年寄りにゃこたえるねぇ…」
エリンシア「あら、お出かけできるのが嬉しいのかしら?」
当然だが人間には馬の言葉はわからない。
エリンシアの天馬は主人を乗せて飛び立った。

164 :兄弟家の小さな馬小屋:2009/09/30(水) 17:49:44 ID:F31nDHAp

エフラムの馬「…婆さんにも礼言っとかないとな…俺たちのエサも運んでくれてるんだし」
リーフの馬「俺の主人もたまには買い物くらい手伝えばいいのに…平和な荷運びならどんとこいなんだけどな」
エイリークの馬「まぁわたくしはいやですわよ、わたくしのような名馬がその辺の農耕馬みたいに
        お荷物運びなんてありえませんわ!」
エリウッドの馬「まぁまぁ…年寄りは労ろうよ、それと病人もね」
セリスの馬「せ…せりすたん…ボクモウシンボウタマラナイヨ…」
エリウッドの馬「…君は自重しなさい」

やがて夜になり、リーフがエサやりにやってくる。
リーフ「はぁ…どうしてこうエサ袋って重いのかな…めんどくさい…」
ぶつぶついいながらエサ箱にエサを入れて回る。
リーフ「ああお腹すいた…晩御飯まで我慢できないや」
自分の馬のエサ箱からエサを摘むリーフ。
リーフの馬「なにをするきさまー!」
リーフの馬は柵を跳び越しリーフに襲い掛かる。
リーフ「うわぁ!?」
スパコーン!
蹴飛ばされて飛んでくリーフ。自業自得である。
コノヒトデナシー!

シグルド「おや我が家のほうからいつもの悲鳴が聞こえたような」
シグルドの馬「まぁご主人気にせず、ゆっくり休んでください」
シグルド「…ん、どうした?…ははは、私を気遣ってくれるのか?お前も日曜なのにすまないな」
こうして休日は過ぎ去り、忙しい日々が帰ってくる。

終わり