21-197

Last-modified: 2011-06-01 (水) 22:40:32

197 :助けて!名無しさん!:2009/10/04(日) 00:47:13 ID:sxtd4hJL
 88~93書かせてもらいました。それの続き。
 初めてのネタ書きだからボコボコにされてやんよ位の気持ちでかいたけれど、怖くて今日までスレみれなかったんよ。
 ミランダもティニーもサラも好きだけれど、ナンナが好き過ぎて書いた。ゴメンなさい。

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 「失敗しちゃったなぁ…。」
 なけなしの勇気を振り絞ったのに、相手の想いはあやふや。
 夕ご飯をご馳走になって、ミカヤさんをはじめ他の兄弟の皆様と触れ合えたのは嬉しかったけれど…。
 「…明日からどんな顔でお会いすればいいのかなぁ…。」
 リワープの光が引き、目の前には我が家の玄関。ノディオン家。
 兄弟家様ほどではないけれど、私にも兄弟は多い。
 「…ナンナです。ただいま戻りました。」
 帰宅の挨拶にも元気がないと自覚できてしまう。
 兄弟家で夕ご飯をご馳走になる旨はエルト兄様にもデルムット兄様にもお伝えしてあるので心配はかけていないと思うけれど。
 「おかえりなさい、ナンナ。…早くお入りなさい。」
 出迎えてくれたのはラケシス姉様。
 凛としていて、とっても綺麗で。あの人みたいに何でも器用にこなせて…。私の自慢の姉様。
 そんなマスターナイトな姉の手にはマスターシリーズの装備品。繊細な姉様に似つかわしくないそれらを見て、思わず
 「姉様?そんなに武装されてどうかされたの?」
 口を出さずにはいられなかった。
 「ええ、貴女の帰りが遅いから心配だったの。」
 心配はしっかりかけていました。ごめんね、姉様。
 「大丈夫よ、姉様。リワープで帰って来たから。」
 精一杯の笑顔で感謝と謝罪を伝える。
 「…ナンナ、エルト兄様達にも帰宅の挨拶をなさい。」
 提案するラケシス姉様。私は頷いて姉の後を付いていった。

 居間から聞こえてくる話し声、なにやらもめているみたいで。
 「リーフめ…ナンナに手を出していたらミストルティンの☆になって貰うぞ…」
 片方は、魔剣を鞘から出したり鞘に収めたり、落ち着きの無い様子。
 「いや、流石に級友にその発言はまずいと思うよアレス。」
 もう片方は、落ち着いた態度を装いながらも、何度も時計に目をやっている。
 「デルムット!お前は心配じゃないのか?…ナンナがアイツに襲われてでもしたら、オレは、俺は!!」
 その様子に声を荒げるアレス。
 「…落ち着きなよアレス。リーフはそんな事しない。それにセリス様もいるし気にしすぎじゃないのかな。」
 しれっと答えるデルムット。
 「二人とも、落ち着け。ナンナが帰って来たみたいだぞ。」
 今にでも飛び出していきそうなアレスから魔剣を取り上げつつ、入り口に注意を向けさせるエルトシャン。

198 :助けて!名無しさん!:2009/10/04(日) 00:49:17 ID:sxtd4hJL

197の続き
…ああ、お兄様達にも心配をかけてしまったようです。この気持ちは
 「ごめんなさい、お兄様達。ただいま戻りました。」
 謝罪の言葉にこめて。
 「戻ったか、ナンナ。また兄弟家にお邪魔するような時は言ってくれ。何か用意せねばシグルドに申し訳がたたん。」
 エルト兄様が。…うん、…またこんな機会できるかなぁ。
 「アイツに何もされてないか!何かあったら俺に言うといい。」
 アレス兄様が。…エエ、ナニモナカッタデスヨ。
 「おかえり、今度どんな事があったか聞かせてよ。」
 デルムット兄様が。…だめだよ、恥ずかしくて、いえないよ。

 三者三様の答えのあと、ラケシス姉様が
 「ナンナ、一緒にお風呂にしましょう。」
 まさかの発言。まさかの提案。
 「ね、姉様…。私はもう子供じゃないのだから…。」
 あの時のように真っ赤になる私。
 「なにぃ!ラケシス姉様!俺もナンナとふr」
 刹那に姉様の手から放たれたマスターアクスとマスターランス。
 必殺の快音が響き、吹き飛ぶアレス兄様。吹き飛んだ先にはベオの剣を抜き、アレス兄様の失言に情けなさと怒りの表情のデルムット兄様。
 待ち伏せしていた如くに真上に切り上げ、何処からともなく現れたリーンの踊りで最行動した姉様のマスターボウから放たれた矢が命中した。
 その見事な連携に、アレス兄様は息をつく暇もなく息を引き取った。
 エルト兄様はその様子を確認し、溜息をついた後、クロード様にアレス復活とリーン引取りの連絡を取っていた。
 何時もの見慣れた光景。我が家の日常。…アレス兄様と暫く口を聞かないと心に誓って。
 「さ、いくわよ。」
 引きずられて浴室に連れて行かれる私。

 浴室は湯煙で、暖かくて。すでにお湯が張ってあったようだった。
 私はラケシス姉様になすがままにされ、…姉様と自分の体の一部分を見比べて悲しくなった。
 同じヘズルの血統なのに、成長にこんなにも差があるなんてあんまりです。

 「さ、お姉ちゃんに話してごらんなさい。」
 背後から姉様の声。髪を洗って貰っている最中に唐突にかけられた言葉。
 「…え?」
 言葉の意味が解らなくて、困ってしまう私。
 「ナンナ、恋しているでしょ。お見通しです。」
 「…ふぇ!?」
 わたわたと暴れる私。だけれど背後の姉様の力は物凄く強くて。
 「貴女もノディオン家の女だから仕方ないのかもしれないわね。」
 姉様の腕に押さえつけられる私。後頭部から伝わる確かなやわらかさが残酷すぎて。
 「アレスはアレだから、デルムットかしら。それともエルトお兄様!?嗚呼…エルトお兄様はなんて罪作りなのかしら…。可愛い妹を二人も虜にしてしまうなんて。」
 クネクネと私の頭を抱えたまま身をよじらせる姉様。その度に私は残酷な格差を感じて。
 「うぅ…また始まっちゃったよ…。…えーと、それはよろしいのですが姉様、目にシャンプーが入って痛いよ…。」
 姉様は世間から誤解されていると思う。確かに過剰なまでのエルトお兄様の愛情は私も、その、…引く時もあるけれど。
 ノディオン家の仕事で多忙な兄を陰から日向からよく支えていると思う。
 お兄様の部下の三つ子さん達を引き連れ、持ち前の器用さとカリスマを生かして仕事に奔走する姉様は私も誇りに思う。
 「あらあら、ごめんなさいね、ナンナ。」
 我に返って髪を流してくれる姉様。

 一緒に湯船に浸かり、リーフ様の事を、今日の出来事を姉様に話す。…お兄様達には内緒にしてと付け加えて。
 「…ふむ、幼い頃から慕っていたリーフ君に芽生えた恋慕ね。いいと思うわ、あの子もああ見えて頼りになる所あるし。」
 …意外。姉様だったら絶対に反対すると思ってたのにな。
 「それにね、ある意味、貴女がリーフ君に恋する事は必然なのよ。」
 必然?…私の顔、今、絶対に真っ赤だ。…お風呂が熱いからに決まっているよね。

199 :助けて!名無しさん!:2009/10/04(日) 00:51:05 ID:sxtd4hJL
 >198の続き

「私も姉として、妹の恋愛事情には興味があって、私が組織しているグループにも調べてもらったりもしたの。」
 今日の姉様は問題発言が多い。…問題発言が多いのはいつもね。でも、いつもとベクトルが違うから反応に困ってしまう。
 「大丈夫よナンナ。最初は兄以外を慕う子はノディオン家らしくないと思って妨害もしようとしたけれど。」
 ラケシス姉様節が全開で脱力が止まらない。お風呂でおぼれない様に気をしっかり持たなきゃ。
 「貴女の親友のマリータさんの証言で一気に支持する気持ちが高まったわ。」
 何を言っちゃったのマリータ!変にかたくなな姉様を説得する台詞って何だろう。
 「『今言えなかったらずっと後悔するわよ。何時までも可愛い妹のままでいいのナンナ!』かぁ。いいお友達じゃない、マリータさんって。」
 あわわ!!それ、修学旅行でマリータに発破かけられた時の台詞!
 …結局、引率のセルフィナ先生を困らせていたリーフ様にトライアングルアタック(ティニーはいなかった)して終わっちゃったけれど。
 「兄を思う気持ちが恋慕に昇華してしまうのは必然なの。私の組織をあげて全力で支援させて貰うわ。
  セリカさんやエイリークさんをはじめ、兄弟家の人はいい人ばかりよ。(ただし、長男だけは別だけど。)
  …実の兄じゃなくてもいい。兄への恋慕。その感情が、心の動きが清らかで崇高だと思わないかしら?」
 お風呂に入っているのに疲れが抜けないし気も抜けない。だけれど
 「それはよろしいけれど、ありがとう姉様。姉様にお話聞いてもらえて良かった。姉様、大好き!」
 姉様の優しさはいっぱい感じれた。素直に嬉しくて満面の笑顔で抱き着いてしまった。
 「…ナンナ、今の『大好き』→『抱きつく』のコンボは、…かなり、やる。…妹もいいかも…。」
 よく聞き取れなかったけれど、姉様が鼻から血を出して倒れちゃった!リカバーかしら!レストかしら!どうしよう!
 

 翌日の登校時、親友達と合流し、何気ない会話の中気になる言葉が飛び出した。
 「最近、誰かに狙われている気がするの。こそこそと狙うなんて気に入らないからトローンで威嚇したら逃げたわ。」
 「…私も。スリープで捕らえて尋問しようとしたけれど逃げられたわ。…組織的な犯行ね。鮮やか過ぎるわ。」
 ミランダとサラが誰かに狙われているらしくて…。私もマリータも誘拐されかけた経験もあるし、嫌だなぁ。
 「…ナンナ。」
 ティニーがこっそりと私に耳打ちしてきた。
 「…ラケシス会長の放った刺客でもあの二人を倒すのは無理そう。」

 お 姉 様 の 仕 業 ね !!

 「…ティニー。ちょっと来なさい。ラケシスお姉様と貴女に話さなきゃいけない事があるみたいだから。」
 確か、バックの中にあったわよね。あの御本。
 「…な、ナンナ、その本なにかしら…?」
 少しずつあとずさるティニー。表紙だけでもその本が何であるか理解したのだろう。少し涙目で。
 「ミランダ、サラ、ちょっとティニーと行くところあるから先に行ってて。」
 満面の笑顔で二人に伝える私。
 「?…めずらしいわね。じゃあ先に行ってるわよ。」
 よく解らないといった風のミランダに
 「…程々にしてあげてね。私、ティニーの事好きだから。」
 見透かしたかのようなサラ。

200 :助けて!名無しさん!:2009/10/04(日) 00:52:15 ID:sxtd4hJL
 >199の続き
 「あら、ナンナ、学校は?何かしらその御本?お姉ちゃんに勉強の相談かしら?え?自分で理解できる?…ところで貴女の横で泣いているのはティニーじゃなくて?
  友達に刺客をよこすな?…なんの事かしら?まってナンナ、お姉ちゃんは貴女のためを思ってね。ほら、私の組織は仇敵暗殺からバックアpp。落ち着いてナンナ、
  まずはその大地の剣をしまって。ね。ティニー?ナンナはどうしてしまったの?どうしてこんなに怒っているのかしら。」
 手に持った本を床に叩き付け、姉に剣先を向けるナンナ。
 「お姉様!私は正々堂々とした恋をしたいの!!そんな事ばかりするラケシス姉様なんて、お姉様なんて…… 大 嫌 い ! !」
 『スキル、怒りは確実なクリティカルを約束します。』叩きつけられた“怒りマニュアル”の帯がティニーの目の前に落ちる。
 怒ったナンナはそのままラケシスの部屋を後にした。残されたのはラケシスとティニー。
 「ラケシス会長…?」
 固まったまま動かないラケシスに恐る恐る声をかけるティニー。それがトリガーになったかのように吹っ飛ぶラケシス。
 「どうしよう、ナンナに嫌われたぁ!…撤収!AKJ暗殺部隊みんな撤収!!ごめんなさいナンナ、お姉ちゃんの事嫌いにならないで!!」
 「会長…。」
 ティニーの言葉。それは畏怖。ナンナではなくてラケシスに対しての。
 重度のブラコンにシスコンまで混じって…。この人は、この御方は何処まで行くのだろう、何処を目指しているというのだろう。
 …ついて行こう、この人に。まじりっけなしの本物のこの人に。

 それからというもの、ナンナはリーフに対して少しだけ積極的になれるようになったが、スキルの効能でリーフの制裁ダメージがマッハになったのは言うまでもない。

 もう、リーフ様!お仕置きです!! アー!この人でなしー!!

                                            おしまい。

 「かつてない強大なKINSINが誕生したようだ。」
 シグルドは強張った表情でつぶやいた。
 「はは、うちのよりもか?」
 エルトシャンは答えた。
 「ああ、エルト。お前は本当に気の毒な奴だ。」
 「なんだ?シグルド。私はそこまで不幸ではないぞ?」
 シグルドは何も言わなかった。いや、言えなかった。
 このKINSIN力(近親ぢから)はラケシスと同一の気であるという事を。
 「飲みに行こう、私がおごるさ。」
 これから起こる友の受難を更に激しくなるであろうKINSIN勢力との戦いを想像し、目頭が熱くなった。