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Last-modified: 2011-06-05 (日) 13:08:35

354 :槍とブレード:2009/12/18(金) 17:34:43 ID:1rNpJTSO
「誰かぁ! 助けてくれぇぇぇ!!」

このくそ寒い冬の空に、俺の野太い悲鳴が響き渡る。が、助けてくれるものは誰も現れない。
もう30分は走りっぱなしだ。
「ぜぇっ はぁっ くそっ! 俺の体は長時間走れるようにはできてねぇんだっつーの!!」
なぜこの俺、ヘクトル様がこんなに走らなければならないのか……答えは簡単、追われているからだ。
誰に? そんなの決まっている、俺をここまで必死に逃亡へと駆り立てる奴はこの世界に一人しかいない!

「へっきゅ~ん! あっはっはっ、待て待てぇ~っ☆」

―――来た! ビラクだ!!

ちょっと町をぶらぶらうろついてたらバッタリ会ってこの様だ
暇だからって理由で安易に外出を決め込んだ数刻前の自分を殴り飛ばしたい!
「てめぇ毎度毎度ホントいい加減にしろよこっち来んな!!」
「HAHAHA! そんなこと言って本当は俺が恋しくて仕方ないんだろ!? このツンデレちゃんめ☆」
「マジぶった切んぞテメェ!!」
今武器もってねぇから無理だけど!
って、ぐは、叫んだりしたから息が……!
つーか30分走りっぱなしなのはビラクも同じなのに、アイツなんでペースが落ちないんだよ!
あああああヤバいヤバいどんどん距離が縮まってきてる! スピードを上げようにも、もう無理これが俺の限界!
ビラクのゴッツい腕が俺の背に伸びるのが気配で分かる。

もう…………駄目だ…………ッ! そう思った時、

「さあへっくん! 俺とコンバイn(ry

ザッ、と俺とビラクの間に一本の槍が突き刺さり、俺とビラクは驚いて脚を止めた。
槍の飛んできた方角を見ると、そこにはエフラムが槍を投げたままの姿勢で立っている。

「……………………………」

「エフラム!?」
助かった……! お前偶にはやるじゃねぇか!?
これ幸いとBダッシュ!!
「良い所に来た、そいつを頼む!」
よっしゃぁ! エフラムならアイツを長い間足止めでき、その間に俺は無事に帰れる!
感謝してやるよエフラム! 晩飯のおかず一品だけくれてやる!

「……へっ君……毒虫…………!」
「……ラク、……と……」

エフラムがビラクと何やら話しているが……関係ない!
俺は一目散に逃げ出した。

―――この時に、あいつ等の話を聞いておけば良かった、と後悔する事になるとは夢にも思わなかった。

355 :槍とブレード2:2009/12/18(金) 17:35:30 ID:1rNpJTSO
「エフラム!? 良い所に来た、そいつを頼む!」

俺にそう吐き捨て、ピザトルはその巨体を揺らしながら走り去っていった。
……むぅ、結果的に奴を助ける事になってしまったようだ。
まあいい、あとで飯でもたかるとするか。 一人納得し、俺はビラクへと向き直る。
「ふふふ、俺とへっ君との愛は何人たりとも妨げる事は出来ない! 逆に我が毒虫の餌食にしてくれるわ!」
そんな事を叫びつつ、荒ぶるビラクのポーズをとる。……どこら辺が荒ぶっているのかは、各自想像するように。
とりあえず本題だ。
「――――――ビラク、俺と……」
……しまった、とっさの行動だった所為か説得のセリフが全く思い浮かばない……
とうする、何か言わねば……!

「――――――俺と、共に生きてはくれないか」

……しまった……ッ! これではまるでプロポーズではないか!
くっ、いつもの行動を見る限り、奴は間違いなくガチホモだ、これではターゲットが俺にシフトしてしまう!
「…………なん、だと?」
ビラクが驚いた表情で俺を見る。……聞き間違えてくれる事を期待したが、無駄だったようだ。

……だが、もうこれで良いのかもしれない。
ロリコンと呼ばれるよりは、ガチホモと呼ばれるほうがまだ危険視される事は少ないだろう……。
俺としても、ロリコンと見られるよりはダメージが低いように思える。
それに俺も男だ、言ってしまった事に対して責任を取らねばなるまい。……腹を括れ。
「俺と共に生きてはくれないか、と言ったんだ」

……さらばだ、俺の人せ「断る!」……何?
「確かにお前は魅力的な男だ! だが俺が愛しているのはへっくんでありお前ではない!!」
いや、え?
「え、いや、お前は男が好きなのだろう?」
「その通りだ!」
「ならば俺でも」
「お前ら自称健全なる一般男性は女なら誰でも良いというのか? 違うだろう!? それと同じこと!」
ぐぅの音も出ない

「いいか? よく聞け!
俺はへっ君の鋭い目つきが好きだ、あの眼で射抜かれれば、たとえスリープ5であろうとも1ターンで復活できる!!
俺はへっ君の鈍色の声が好きだ、あの声で囁かれれば、例え魔がカンスト状態でも一発でバサークになれる!
俺はへっ君のぷよぷよなお腹が好きだ、あの質感にかかれば女体など何の価値もない!

<略>

つまり! 俺はへっ君を世界で一番愛しているという事だッ!!」

356 :槍とブレード3:2009/12/18(金) 17:36:44 ID:1rNpJTSO
……1時間、ピザトルの魅力を語られた。
正直ピザトルの魅力など聞かずに、次の相手を探しに行っても良かったのだが、気になることが一つあった。
「お前は、その、なんだ……オープンなんだな、色々と」
そうだ、俺はロリコンと呼ばれる事に反発し、度々身の潔白を訴えてきた。
なのにこの男はまるで男色家である事を誇るかのように、こんな天下の往来で大声を上げている。
「俺がアブノーマルであることは理解している、だが俺にはこの想いを隠すつもりは無い!!」
「何故だ? 周りの目や風評が……」
「なんで周りの目を気にする必要がある? どうせ人の批評で盛り上がる馬鹿どもだ、そんな奴らの目を気にして何になる?」

俺の体に、電流が走った

「確かエフラム、といったな」
「あ……ああ」
「俺も聞いたことがある、へっ君のご兄弟には、エフラムというロリコンが居ると」
「な! それは誤解だ! 俺はただ純粋に!」
「分かっている、目の前のお前に邪念は無い」
「そ、そうか……だが、その通りだ……俺は周りからそう呼ばれ常に白い目で」

「だから俺は分かっていると言っただろ、お前はただ純粋に子供たちの事を想っているだけだ」

「――――――ッ!!」
「本当に分かる奴にならお前の気持ちは伝わっている、馬鹿どもの目を気にして、自分の信念を曲げる……そんな事をすれば、それは馬鹿以下だ」
「……っあ、で……」
「……俺たちの周りに吹く風は強い。だが、だからこそ俺たちは自分を貫かなくちゃならないんだ」
「……………………っぐ」
「何を思って俺に告白したのかは分からないが、つまりそういう事だ……悪いが、お前の気持ちには応えられない」
いやそこはどうでもいい
「さあ話は済んだか? ならばそこを退いてくれ! 待っててね愛しのへっきゅん! イマアイニイキマス―――!」ダダダダダ…

357 :槍とブレード4:2009/12/18(金) 17:37:31 ID:1rNpJTSO
・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「……兄上?」


振り返るとエイリークが心配そうに見上げていた。
どうやら今まで意識が飛んでいたらしい。
「こんな所で何…………を……っ (///」
目を合わせた途端、何故か目を逸らされた。……?
「どうした? 俺の顔に何か異物でも」
「い、いえそうではなく、その……あまりに色っぽい顔をしていらっしゃったので……」

「頬を染められて、そんな、切なげに潤んだ瞳で見つめられては…… (///」
……そういえば、顔が熱いな。
それに何だか動悸も激しい……風邪だろうか?
「あの、大丈夫ですか? 何か様子が変ですけれど」
「恋?」
「そうでなく」

恋? これが? 俺が? 誰に? まさかビラクに?
…………いや、違うな。これは『憧れ』だ。
周りに心乱されることなく、大切な事を見失うことなく、常に自分を貫くその生き様……。
それに俺は、憧れを感じている……!

「なあ、エイリーク」
「何ですか? 兄上」
「どうやら俺は、馬鹿どもの一人だったらしい」
「はい?」
周りに影響を受けすぎではないか……恥ずかしい事だ。

「俺はあの男、ビラクの……いや、ビラク殿のような漢になれるだろうか……?」
「…………………………………………、はひ?」
エイリークの顔のパースが崩れた…なぜだ?
まあいい。

―――――――――とても、清々しい気分だ……。

ビラク殿の走って行った方角を眺め、静かに拳を握りしめる。
俺の中で、何かが目覚めた気がした。

358 :槍とブレード5:2009/12/18(金) 17:38:23 ID:1rNpJTSO
【兄弟家】
アメリア「こんにちはー、あの師匠は……」

ミカヤ「…………………」
エリンシア「……………」
マルス「…………………」
ミルラ「…………………」
エイリーク「……………」

アメリア「うわぁ、どうしたんですかこの空気」
ロイ「あ、いらっしゃいアメリア」
リーフ「何でもエフラム兄さんの事でどーしたとか」

ミルラ「この前…チキとファと、エフラムに遊んでもらっていた時に……ビラクさんに追いかけられてるヘクトルさんを見ました」
ミカヤ「……それで?」
ミルラ「そうしたら、エフラムが突然『ビラク殿! 助太刀する!』って、ヘクトルさんをビラクさんと一緒に追い詰めに行きました……」
ミカヤ「……そう」

エリンシア「エフラムの部屋を掃除していたら、こんな物が……」
つ『月刊 マッスルバアトラー12月号』
ミカヤ「…………」フルフル

エイリーク「最近、兄上の目線が……お、男の人ばかりを……!」
ミカヤ「もうやめて! 私のHPはもうとっくの昔に0よ!!」
マルス「あ~あ、姉さん達が追い詰めすぎるから」
エリンシア「マ、マルスだって散々からかっていたではありませんか!」
ミルラ「ああ、一体どうすれば……!」
ミカヤ「こうなったら……エイリークちゃん、ミルラちゃん、アメリアちゃん! エフラムちゃんを誘惑なさい!」
ミルラ「……え(///」
アメリア「うぇ!? そ、そんないきなり(///」
エイリーク「あの、私は兄上の妹……(///」
ミカヤ「私が許可します! 後の事はエフラムちゃんをノンケに戻してから考え(ry

シグルド「KINSINは許さんぞぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!」ドガシャーン
マルス「リーフバリアー!!」
リーフ「ちょwwww」

ギャーギャードタバタガッシャンガッシャンコノヒトデナシーアッータスケテエイリーク!

エフラム「なんだ、この騒ぎは……」
ロイ「あ、おかえりエフラム兄さん」
エフラム「ああ、ただいま…で、なんだこれは」
ロイ「気にしなくて良いよ、いつもの思い込みからの暴走だから」
エフラム「? そうか」
ロイ「…………ちなみに、ビラクさんてどんな人?」
エフラム「うむ、一本筋の通った、俺の憧れだ」
ロイ「そっか、やっぱり兄さんはいつも通りだね。 あ、そうだ」
エフラム「む?」
ロイ「今度ピザトル兄さんを追い込む時は、僕も混ぜてよ♪」

おしまい