22-603

Last-modified: 2011-06-05 (日) 13:47:44

603 :とある主人公の封印乃剣(ソードオブシール):2010/01/01(金) 20:41:43 ID:4C5ao6RV

573-579
大乱闘の続き、楽しみにしていました!
漫画版を含め、三人の主人公たちが争う次の対戦に期待です!!

581-583
まさかの後日談。
リーフはどうやってこの状況を乗り切るのかッ!?

587-597
自分も、四人娘がカッコ良かったり、懐かしいネタが出てきたりで、
楽しく読ませていただきました。GJです!!

皆様、感想ありがとうございます!
ご期待に答えられるよう、頑張らせていただきます!

行間
ロイ  「あれ?なにこれ、行間?なんか書き方のスタイルも今までと違うし・・・。
     っていうか、僕のセリフ、メタ自重」
イドゥン「自らのセリフにまで突っ込みを入れるとは・・・。
     これが『ノリツッコミ』というものでしょうか?
     さすがは若き獅子(ツッコミマイスター)ですね、ロイさん」
ロイ  「イドゥンさん!いつからそこにいたんですか!?
     あと、みんなして人の称号に変な振り仮名をつけて遊ばないでくださいッ!」
ファ  「『マスター』でなく『マイスター』なのは、日々、腕を磨き続ける職人さん、
     っていうイメージなんだって!でも、作者は外来語なんて理解してないから、
     そこにはつっこんじゃダメなんだよ!」
ロイ  「違うからねッ!?突っ込みをいれたのはそこじゃないからッ!」
イドゥン「ツッコミマイスター ロイ。俺たちの戦いはこれからだぜ・・・です」
ロイ  「そこ、打ち切りフラグ立てないでッ!
     ・・・ていうか、本当にどうしたの、二人とも。
     いったい、このネタは何がしたいの?」
???「それはだな」
ロイ  「
???「待て!ワシの名を呼んではいかん。ネタばれになってしまうからな」
ロイ  「・・・あまり、意味はないと思いますけど」
???「ちなみに、作者からの伝言だ」
ロイ  「唐突!自由すぎるよこの人たち!」

604 :とある主人公の封印乃剣(ソードオブシール):2010/01/01(金) 20:42:25 ID:4C5ao6RV
???「本編を読んでくれている者には察しがついているとは思うが、
     ワシはこの話では敵役として登場している。作者には『カッコいい敵役』
     など書けぬので、そんなシーンを期待している者や、
     ここでくらい敵役でないワシを見たいという者は、許してほしいとのことだ」
ファ  「あのね、ファはこの話では一応『めいんきゃら』なのに、出番が少ないの。
     ごめんね、だって。くすん」
ロイ  「・・・はぁ。なんか、一気に疲れてきた。
     それで、それを言いたいがためにこんな茶番を用意したんですか?」
イドゥン「違います」
???「今日(一月一日)という日のことを考えるがいい。
     我らには、しなければならぬことがあるだろう?」
ロイ  「・・・!
     あぁ、そういうことですか」
ファ  「ロイのお兄ちゃん、はやくはやく!」
ロイ  「うん、分かったよ」
???「それでは、皆、並ぶがよい」

正面を向いて並ぶ四人。
ロイは右腕でファを抱き上げ、空いた左手にイドゥンが自らの右手を絡める。
男は、ロイとイドゥンの後ろに立ち、二人の肩に両手を置く。
見ようによっては、家族写真のような配置だ。
ロイ  「///」

???「それでは、皆で同時にいくぞ」
ロイ  「せーの!」

四人  「「「「みなさま、新年明けましておめでとうございます!
     本年も、作品ともども、よろしくお願いいたします!!」」」」

ファ  「あのね、ここから下が、『本ぺん』なの」

605 :とある主人公の封印乃剣(ソードオブシール):2010/01/01(金) 20:48:02 ID:4C5ao6RV
第一章 日常から日常(いじょう)へ(後編)

「順調のようだな」
「・・・はい」
 大きな建物を背にした広場―学校の校舎に面するグラウンドをイメージする
と分かりやすだろう―で、男がイドゥンに声をかける。
彼とイドゥンとの間にはやや距離があるが、男の低いがよく通る声は、
問題なくイドゥンの耳に届いた。
 彼の足もとの地面には淡い薄紫の光を放つ線が引かれ、その線は、この広場
を覆うように輪を描いている。その輪の内側にもさまざまな模様が描かれ、
その中心にイドゥンと、ファの姿がある。
光に照らし出されるように立つイドゥン。
その腕に抱かれながら眠るファの小さな背では、白い翼がわずかに羽ばたいており、
その羽ばたき一つの度に、まるで羽が舞い散るように翼から光の粒子が溢れ、
それが足もとの光の模様に吸い込まれていく。
見る者が見れば、これが魔法陣だということがすぐに知れるだろう。
大規模な魔術儀式を行うための補助装置。何のために描かれたものなのか、
その魔法陣から放たれる光は、まるで空間そのものをその光の色で染め上げる
かのように不気味に輝き、空気はまるで呼吸をしているかの如く静かに、
そして確かに脈動している。
イドゥンは腕の中のファが安らかに寝息を立てているのを確認し、
わずかに口元に笑みを浮かべ、そしてそれをすぐにかき消して、男に声をかける。
「すでに配置を始めています。
この町の全域を覆うには、もう少し時間がかかりますが」
「そうか」
 イドゥンのか細い声は、男の声と違い、あまりよく通る性質のものではない。
しかしそれでもしっかりと男のもとにその声が届いたのは、まるで、この空間
そのものが彼女の発声器官であるかのように、四方から声が響いてくるからである。
「『竜』達への指示は、この場からでも出せます。・・・いかが致しますか?」
「予定通りの指示で構わん。標的は、この紋章町全域の力ある者。
直接的な戦闘力と周りへの影響力を兼ね備えた者に、お前たちの力を見せつけ
てやればよい」
「・・・例え、傷つけることになっても、ですか?」
 イドゥンの顔が悲痛に歪む。
「威嚇に応じぬなら、な。不満か?」
「・・・・・・はい」
 イドゥンがまっすぐに、離れた場所にいる男を見つめる。
その眼は男に逆らうことに強い抵抗を感じているものの、自らの意思を伝えることに迷いは無い。

606 :とある主人公の封印乃剣(ソードオブシール):2010/01/01(金) 20:50:17 ID:4C5ao6RV

(・・・変わったな)
 男は思う。自分の知っている彼女は、誰かの意見に従うだけの、人形のよう
な女であったはずだ。それが、今や男の目をまっすぐに捉え、その意思を伝えてきた。
 いったい何が彼女を変えたのかに思考を巡らせ、ある一家の姿が思い浮かぶ。
男はその一家のことを深く知るわけではないが、彼らはこの町一の有名一家だ。
彼らとのふれあいが、イドゥンを変えたと言われても不思議には思わない。
(・・・だが、だからこそ危険なのだ)
 あの心を失くした人形をこうまで変えたあの家族が。その影響力が。
イドゥンがただの哀れな少女ならば良い。しかし、彼女はこの広大な町でも
指折りの力の持ち主だ。その彼女へここまでの影響力を持つことが、
危険であると断じてられてもそれは間違いではないだろう。と、男は考える。
 たとえ強大な力の持ち主であっても、それ単体ならば脅威ではない。
たとえ周囲に大きな影響力を持つ者がいても、その者自体に力がなければ大事をなすには至らないだろう。
しかし、それらを併せ持つ者は、ただそれだけで危険だ。
その者の意思一つで、この町に大災害をもたらすこともできるだろう。
(その様な者達の支配から、この町を解放せねばならぬ)
 男はイドゥンの姿を見て、自らの意思を再確認する。
 ――男は気付いていないのだろうか?男こそが、自力と影響力を兼ね備えた、
力あるものであると。
今、自らが為さんとしていることこそが、男が危惧していた脅威なのだと・・・。

607 :とある主人公の封印乃剣(ソードオブシール):2010/01/01(金) 20:54:04 ID:4C5ao6RV

 校内放送が流れてから三十分ほど経った頃に、セシリアがロイ達のいる教室
に戻ってきた。席を離れ、友人たちと憶測をたてたり、関係ない話をしていた
生徒たちが、教室の扉が開く音を聞き、慌てて自らの席へと戻る。
 セシリアは教壇の真ん中に立ち、生徒たちが席に着いて静かになるのを
見計らってから口を開く。
「それでは、今なにが起きているのかと、これから、皆さんがどう対応すべき
かについて説明します。
――現在、紋章町の全域に野生のものと思われる竜の大群が現れています」
 竜の大群。その言葉に、教室の中が一気に騒がしくなる。
竜と言えば、通常は人が太刀打ちできる存在ではないのだから、その大群が
現れたと聞かされれば当然だろう。
「静かになさい!
その竜たちが暴れているとの情報は入ってきていないわ。ベルン署の対応も、
とても迅速で、皆さんの家族もすでに安全な避難場所に退避しているとのことです。
今のところ心配することは何もありません」
 セシリアの静かな、それでいて力強い声が、生徒たちの混乱をわずかながら収める。
「外にいる竜たちも、じきにベルン署の対応の下で追い払われるなり、
退治されるなりするでしょう。しかし、今、外に出ることがたいへん危険で
あることには何ら変わりがないわ。
よって、生徒の皆さんは、引き続きここで待機していること。
私たちは、これからの対応のために職員室に戻るけど、なにかあればすぐに
戻ってきますから、心配する必要はなくてよ。よろしいですね?」
 そこまで言い、生徒たちから質問がないことを確認して、セシリアは再び
教室の外に出て行った。

 再び騒がしくなる教室。
その中でロイの頭の中はイドゥン達のことで一杯になっていた。
(野生の竜が大量発生?それも、紋章町全域に?いくらこの町だからって、
そんなことがあり得るんだろうか?
竜・・・。大量の、竜。
もしかして外にいる竜たちは野生の竜なんかじゃなくて・・・ッ!)
 そもそも、竜は希少種だ。強大な力を持ちながら、いまやその絶対数の少なさ
から人類に支配者の座を明け渡したとも言われている竜族が大量に発生するなど、
常識では考えられない。しかし。
 ロイは知っている。希少であるはずの竜族を、大量に創り出すことのできる存在を。
 ロイは知っている。その存在が、今朝、神竜の少女と共にどこかへ出かけて行ったことを。
 ロイは、知っている。その神竜の少女が、今にも泣きだしそうな顔をしていたことを。
揺れるオッドアイが、自分に助けを求めるかのように見つめてきたことを――ッ!

 ――ガターーーンッ!

608 :とある主人公の封印乃剣(ソードオブシール):2010/01/01(金) 20:57:20 ID:4C5ao6RV

ロイが、椅子を後ろに倒しながら、勢いよく立ちあがる。
 ざわついていた教室は一気に静まり返り、視線がロイに集まる。
ロイは教室中を見渡し、
「――ごめん、みんな。セシリア先生が戻ってきたら、謝っておいて欲しい」
 そう言うと、すぐ様に窓の方へ駆け寄り、そのまま窓を開けて眼下へと飛び降りる!
「ロイッ!?」
「ロイ様ッ!」
 ロイのいた教室は校舎の二階にある。落ちて簡単に死ぬような高さではないが、
飛び降りて怪我をしない安全圏でもない。
 慌てて窓際に駆け寄って、外の様子をうかがったリリーナとウォルトは、
上を見上げて両手を顔の前で合わせて謝っているロイの姿を見た。
彼の横では、一本の木の枝が大きくしなって揺れている。
どうやら、一度木の枝につかまって勢いを殺したらしい。
「やるなぁ、ロイの奴。あれなら、今すぐにでも盗賊になれるぜ」
 口笛を吹きながら横から顔を出すチャドは、すぐさまリリーナの視線を
受けて目をそらす。
「もう!昇降口を通れば先生たちに見つかるとはいえ、
なにも窓から飛び出すことはないじゃないッ!!」
 リリーナが文句を言う視界の端に、背を向けて駆け出すロイの姿が映る。
「でも、いきなりどうしたのよ、アイツ?」
 キャスがやはり窓の外を見やりながら口を開く。
「――さぁ。おそらく、いま起きている竜の大量発生と関係あるとは思うけど」
 答えるウォルトの頭の中にも、今朝がた見たローブを着た女性の姿が浮かんでいる。

「それより、セシリア先生への言い訳どうしよう?」
「外がこんな状況でロイ君が外に飛び出したなんて知ったら、セシリア先生
どうなっちゃうかわからないよ!!」
 シャニーとララムの声に、教室がさっきとは違う意味で静かになった。

 外に飛び出したロイは、教師たちに見つからないうちにと、走って学校の
敷地の外へと向かう。教師はほとんどが職員室にいるはずだ。
学校の外へ出るのは難しくないだろう。走りながら、ロイは考える。
(一体、なにが起こっているんだろう?)
 胸にある不安感に煽られるように教室を飛び出したはいいものの、今のロイ
には状況が全く掴めていない。
(とにかく、一旦家に戻ろう。
封印の剣さえあれば、このあと何が起きても対応できるはず!)
 【封印の剣】。ロイの持つ竜封じの剣で、彼の切り札とも分身とも言える神器。
いまの状況がどんなものかは分からないが、事に竜が関わっているのなら、
必ず役に立つはずだ。
 そう考え、目的地を兄弟家へと定め、校門を飛び越えて疾走するロイ。
その頭上には、いつの間に増えたのか、数え切れないほどの飛竜がこちらを
見下ろすように旋回している。

 こうして、日常は異常へと成り替わる。
 ここは紋章町。日常的に異常が支配するこの町の一日は、まだ始まったばかり――。