23-205

Last-modified: 2011-08-15 (月) 18:13:02

205 名前: とある主人公の封印乃剣(ソードオブシール) [sage] 投稿日: 2010/01/17(日) 20:56:34 ID:/hkG2dM4

201
GJ!
部屋を開けたら一面幼女の写真。中には経を唱える男。
たとえロリコンじゃなくても、こんな修行してる時点で変態確定のような・・・。
エフラムよ、お前は一体どこを目指しているんだ。

続きです。

第三章 とある主人公の烈火乃剣(デュランダル)(後編)
14
 太陽が西に傾き始める。ロイが戦いに敗れ、エリウッド達がリリーナを
見送ってからどれだけの時間が過ぎたのだろうか。
町の中にはいつしか、戦いの音が響いていた。
(みんなは無事だろうか・・・)
 エリウッドは、眼前の相手を見据えながら町のどこかで戦っているであろう
兄弟たちに思いを馳せる・・・。

――町の大通りで、男が数多の竜と対峙している。
「普段ならば、いい修行になると喜んでいるところなのだがな。そうも言ってられんようだ。
・・・俺たちの町に手を出すつもりならば容赦はせん。食卓に並びたいやつから前へ出ろ」
 金色の大剣を構えながら、蒼炎の勇者が竜の大群に向けて足を踏み出す。
その歩みは恐れを知らず、踏み出す一歩に迷いはない。
 兄弟家一の破壊者(クラッシャー)。壁も、家も、フラグさえも粉砕する
その男は、この町を覆わんとする驚異をも破壊する。

――どこか畑のような広い場所で、一組の男女のやり取りが聞こえる。
「下がっててくれ、セリカ。こんな奴ら、僕がひねりつぶしてやるッ!」
「いいえ、私だって戦えるわ。守られるばかりじゃない、私がアルムを守ってみせる!」
「セリカ・・・」
「アルム・・・」
 聖剣の一投を持ってしても断てぬ絆の強さを誇る二人。
互いの背を守りあうようにして並び立つ二人の絆は強さとなり、
必殺の力を湧き起こす。

――商店街のアーケードの下で、二人の少年が剣を振るう。
「セリス、大丈夫かいッ!?」
「ありがとう、リーフ。君が一緒で心強いよ」
 聖剣に選ばれし少年と、特別なものを持たないがゆえに全てを持ちうる少年。
聖剣の大いなる威力を持って戦う少年と、大司祭の加護を受けた剣や光を纏った剣、
魔法や弓を巧みに使い分けながら戦う少年。
受け継いだ力も才能も違う二人は、互いが互いを補い合うようにして竜に挑む。

――竜の息吹が赤く染め上げる空間で、一対の碧が異彩を放つ。
「無事かッ?エイリーク」
「大丈夫です、兄上。兄上達に手ほどきして頂いた剣の技。飾りではありません」
「そうか。なら、背中は任せたぞ」
「・・・はい!」
 炎槍と雷剣。双聖の神器を持ちて戦うは、双生の碧。
 己の分身たる神器を手に、己の分身たる互いを背に。
碧空の勇者と碧風の優者が戦場に舞う。
206 名前: とある主人公の封印乃剣(ソードオブシール) [sage] 投稿日: 2010/01/17(日) 20:58:00 ID:/hkG2dM4
15
――町の中心地近くの公園で、炎の紋章が光を放つ。
「やれやれ。こんな風に直接戦うのは、本当は好きじゃないんだけどね。
でも、まぁ、仕方ないか。僕の町に、僕の家族に手を出したんだ。
だったら・・・僕が出ないと、嘘だろう?」
 神竜の牙より生み出された神剣を右手に、覇者の証たる紋章と神秘の宝玉を
持つ盾を左手に、軍神が立つ。知略を持って戦うを旨とする彼だがしかし、
策も、仲間も持たず一人立つ少年に竜の力は届かない。
 神の力を持つ剣と盾で竜と戦うその姿は、まさに英雄の起源。
ドラゴンスレイヤーが、町を往く。

――そして。
「なかなかやるな。本当に、ただの会社員なのか?」
「もちろん。私は所詮、しがないサラリーマンだよ」
 兄弟家の長兄は事件の中心近くにいる男、ベルン署長の腹心にしてベルン警察署
副所長、マードックと対峙していた。
「どうやら、この一件はベルン署長の仕業のようだな。一体、ゼフィール署長は
何を考えているんだ?」
 詰め寄るシグルドに、マードックは感心したような、それでいてどこか
楽しんでいるかのような笑みを浮かべた。
「そこまで辿り着いていたか。やはり、只者ではないな」
「・・・」
「まぁ、いい。今さら知ったところで、計画は止められないだろう。
・・・所長は、あのお方は、この町を『開放』されようとしているのだ」
「『開放』だと?」
「そうだ。この町を、力ある者達の支配から解放するのだ」
 訝しげな顔を浮かべるシグルドをそのままに、マードックは続ける。
「お前たちのような、自らの力と周囲への影響力を持って町を混乱に陥れる
ような者から、その力を奪い、封印するのだ。
そうすれば、この町は穏やかな時を刻むことができるだろう」
「力を・・・封印?」
 マードックの言葉は、今一つ要領を得ない。
「そう、封印だ。『神竜の力』と『封印の剣』・・・すでに駒は揃った。
あとは時さえ満ちればよい。
そうすれば、所長の悲願であった平和で平穏な町が生まれるであろう」
 シグルドには相変わらず何を話しているかは分からなかったが、その中でも一つ、
気になる言葉があった。
「封印の剣だと?貴様ら・・・ロイをどうしたッ!!」
「ロイ少年は所長に討たれ、封印の剣を手放したのだ。
安心しろ、命に関わるようなことはない」
「なんだとッ!?それで・・・ロイは!?」
 弟に手を出したと聞き、憤怒の表情を浮かべて間合いを詰めるシグルド。
続けざまに弟の様子を聞き出そうとする。
「私もその場にいたわけではないが・・・ロイ少年はその後、竜の少女を連れ戻すべく、再びベルン署を目指しているとの報告があったな」
「竜の少女を連れ戻す?ロイは、その子を助けようとしているということか?」
「そうらしい。・・・心配か?」
 マードックの言葉を聞き、何かを考えるように瞑目するシグルド。
そして、その眼を見開き告げる。
「心配など・・・必要ない」
「なんだと?」
 こんどはシグルドの言葉にマードックが怪訝な表情をする。
「ロイの心配など無用だと言ったんだ。なぜなら・・・」

207 名前: とある主人公の封印乃剣(ソードオブシール) [sage] 投稿日: 2010/01/17(日) 20:58:54 ID:/hkG2dM4
16

「弟が心配かい?」
 エリウッドの眼前に立つ人物が、エリウッドに問いかける。
 竜の背に乗った騎士。癖のついた金髪を持ち、豪奢な服をまとった男だ。
竜の背から声をかけてきたので当然エリウッドを見下ろす形になるのだが、
そんなこと関係無しに常日頃から他人を見下して見ているような、傲慢さや
卑屈さが表に出ているような顔をした男だった。
「・・・なぜだ?」
 突然の問いに対して、エリウッドが問いで返す。
「何か、考えているようだったからね。弟の・・・あの、ロイとかいう小僧の
心配をしているのかと思ったんだが。
それとも、この私の強さを感じ取り、我を失くしていただけかな?」
 クックッと、男がいやらしい笑みを浮かべる。
「あの天馬に乗った小娘達から、少しは状況を聞いたんだろう?」
「貴様・・・。まさか、リリーナ達をッ!」
 男、ベルン署の幹部、ナーシェンの言葉に焦りを感じるエリウッド。敵が
リリーナ達のことを知っているということは、エリウッド達かリリーナ達かが
見張られていたか。
それならば、あの後でリリーナ達が襲われた可能性は高い。
「安心したまえよ。あるお方からの命令でね。あの小娘たちの邪魔はしていない。
もちろん、所長の計画を遂行することが最優先だが、まぁ、あの程度の小物が
加勢に行ったところで、どうにもならないだろうからね?」
 それを聞いて、息を吐くエリウッド。しかし、その様子を見て再びナーシェンが
いやらしい笑みを浮かべて問いかける。
「それだけで安心していいのかい?残念ながら、お前の弟に関しては別だ。
君の兄弟は全員、計画の対象になっているからね。
合流する前に、竜に潰されているんじゃないかい?
クックックック・・・。どうだい、心配かい?泣き叫んで、弟の命乞いでもしてみるかッ?
まぁ、そんなもの聞かないけどねッ!」
 心底愉快そうに笑う男に、しかしエリウッドははっきりと告げる。
「心配など必要ないだろう」
「・・・なんだって?」
 ピタリと笑みを止めたナーシェンに、エリウッドが答える。
「ロイがどういった状況にいるのかはやはり分からないが・・・。
でも、シグルド兄さんならばきっと同じことを言ったはずだ」
 エリウッドが兄弟の中で最も尊敬する兄。騎士の在り方の鏡のようなシグルドも、
きっと今の自分と同じ状況なら、同じ答えをするはずだ。
そう思いながら、エリウッドは続ける。
「なぜなら・・・」

 エリウッドとシグルド。二人違う場所で、違う相手に向かい、けれども同じ言葉を紡ぐ。
それは信頼の言葉であり、誇りの言葉。彼ら兄弟の在り方を表すような言葉だ。

「「誰かを救うと決めたのなら、必ず成し遂げる。
一度倒れても、何度倒れても、立ち上がり、戦う。それが、私たち兄弟だ」」

 そうして、二人の騎士は剣を掲げ、目の前の相手に立ち向かう。
 その瞳は真っ直ぐに。その思いは遥か兄弟たちを信じ。その剣閃は暗雲を払うかのごとく。

 この町は、常に混沌で溢れている。大きな脅威に対して、それを都合よく
解決してくれる主人公(ヒーロー)などいはしない。
 それでも、何かを為さんと立ち上がる人々がいる。いつも上手くいくわけではない。
涙を流すことも、何かを失うこともある。
しかし、それでも立ち上がることを恐れない、とある一家。
 まるでそれが己たちの務めであるかのように、町の、人々のために戦い、
傷付き、そして最後には勝利する者達。
 いつしか、誰からか、彼ら兄弟を人はこう呼んだ。主人公兄弟家と――。