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Last-modified: 2011-08-15 (月) 18:15:40

232 名前: ラトナ様が見てる ~ 天馬革命 ~ [sage] 投稿日: 2010/01/21(木) 01:32:30 ID:km+ndLeZ

放課後の生徒会室。
ターナは窓から差し込む夕日を眺めながら思わずため息をついた。

「はぁあああああ~~~~……………」
「まぁなんですの、辛気臭い」

そんな口を叩くのは親友のラーチェルだ。
アテナ、シレーネ、リノアンの3人の生徒会長はそれぞれの仕事で生徒会室を空けており、
エイリークは演劇部の方に顔を出しているので2人きりだ。

「エフラムの事よ……最近はサラって娘に構いっきりで、全然私にかまってくれないんだから…」
「ぶっちゃけターナが好みじゃないんじゃありませんこと?」
「……も、もうちょっとオブラートに包んでよね…orz」
正直凹む。
あの海の一件でエフラムに想いを伝えられていればこんな宙ぶらりんな気持ちにはならなかっただろう。
上手くいけば万々歳、あるいはいっそ振られていればしばらくは落ち込んだだろうがどこかで踏ん切りも付けられたと思うのだ。
今更だがヒーニアスが憎い。

「ラーチェルはいいわよね~、あれからエイリークとも随分親密になったんじゃない?」
「あら、わかりまして?」
頬を染め、うふふと微笑む。
傍で見ていればわかる。
ラーチェルとエイリークの距離は以前より近く感じられる。
233 名前: ラトナ様が見てる ~ 天馬革命 ~ [sage] 投稿日: 2010/01/21(木) 01:33:13 ID:km+ndLeZ

思えば海の一件はまさしくエフラムとの関係を変えるいいチャンスだったのだ。
「あの海の時は私にとっても一大決心だったんだけど…ああ…お兄様が憎いわ…」
「ならもういちど機会を作って告白すればいいじゃありませんの」
まったくもってその通りだ。
だがその機会すら作れないのが現状といっていい。
エフラムの周囲はロリっ娘パラダイスと化しつつあり、容易には入りがたい空気が漂っている。

「それが出来ればね……はぅぅ…」
机に突っ伏してしまった親友の姿を見ているとラーチェルも気の毒になってきた。
自分がエイリークの事でいっぱいいっぱいだった頃はそこまでの余裕はなかった。
だが今はターナを応援してやりたい気持ちが強くなっている。
ラーチェル的にはエイリークと友達以上、恋人未満くらいのつもりでおり、
少し周囲を思う余裕も出てきたのかもしれない。

「ならば行動あるのみですわ、エフラムの予定をエイリークに聞いてみましょう」
「で、でも最近はあのサラって娘がべったりで…」
「何も二十四時間一緒にいるわけじゃありませんわ!」
「そ、それもそうだけど……」
結局ターナはラーチェルに強引に押し切られた。
まるでお見合いをセッティングしたがる奥さんのようだ。
人間自分の恋路に余裕ができると人の事が気になってしかたないのかもしれない。
234 名前: ラトナ様が見てる ~ 天馬革命 ~ [sage] 投稿日: 2010/01/21(木) 01:34:00 ID:km+ndLeZ

「兄上ですか?……近く泊りがけで修行に行くとおっしゃってました」
「修行?」
「それはどちらへですの?」

生徒会室に戻ってきたエイリークを早速捕まえて聞いてみる。
エイリークは小さく小首を傾げる仕草をしたが、すぐに答えてくれた。
「確か……利不薬寺とか……」
「なんだってお寺なんかに……」
自分の好きな人の事でアレだが、エフラムのやることはいまいちわからないことが多い。
「まぁエイリーク、シャンプーを変えまして?」
愛する人の仕草の麗しさに心を捕らわれていたラーチェルの鼻腔を柔らかな香りがくすぐる。
「あ、わかりますかラーチェル」
「ええ、エイリークの事ですもの♪
 ちょっとおぐしを拝借…」
青く長い髪を一房手にとって鼻を寄せる。
エイリークはラーチェルの仕草を柔らかく微笑みながら見つめていた。
「……春の日差しのよう…暖かい心持になりますわ…」
「私に合っているかちょっと心配だったんですけどラーチェルが言うなら間違いありませんね」
2人して微笑み合う。

その2人のやり取りを見ながら、ターナはどこか羨望の眼差しを持たざるを得なかった。
そこには確かに絆のようなものを感じたのだ。
友情とは違った…しかし愛情という物とも言い切れない。
春の陽だまりのような心地よい空間にターナは確かにラーチェルとエイリークの繋がりが強くなったことを、
敏感に感じ取っていた。
235 名前: ラトナ様が見てる ~ 天馬革命 ~ [sage] 投稿日: 2010/01/21(木) 01:36:21 ID:km+ndLeZ

夜の帳が下りる……
自室でターナは今後の事を思っていた。
ラーチェルはレナックに命じて当日、利不薬寺への車を出させることにしたという。
エイリークによれば修行はサラやミルラにも内緒でこっそり出かけるらしい。
彼女たちには伝わらないようにしてほしいと念を押された。

親友が言うには「幼女たちを出し抜くチャンスですわ!修行先に押しかければ邪魔は入りません!」との事。
たしかにそうかもしれないが…
「でも私がエフラムの邪魔になるよね……」

だがそうやって遠慮していてもどうにもならないのかもしれない。
現に23スレもの間、なんの進展もないことを思えば…
さらに言えばラーチェルはエイリークとの仲を進展させている。
なにかしらのアクションを起こさねばどうにもならない。
そこでターナは脳内で告白をシュミレートしてみた。

「エフラム!…私、あなたのことが…」
「すまんが今は修行中だ、帰ったら話を聞く」

……帰ったら幼女たちが邪魔になるのは必死。
妄想で食い下がってみる。

「お願い、今すぐ聞いてほしいの!」
「…む…なんだ、話してみろ」

ほら、ここまで押せば話くらいは聞いてくれる。

「…すまんが俺は小学生より上の女には興味がないんだ」

……い…いくらなんでもこれはないよね…多分…も、もう一度!

「私…私…あなたが好きなの!!!」
「……俺はまだまだ修行中の身だ…すまんがそういうことは考えられないんだ…」

……妄想ですら振られた……2回も…
現実に帰ってきたターナはベッドに不貞寝する…
「だってだって…この返事しか想像つかなかったのよーーーーーっ!!!!!」
236 名前: ラトナ様が見てる ~ 天馬革命 ~ [sage] 投稿日: 2010/01/21(木) 01:37:13 ID:km+ndLeZ

だがどうする?
エフラムが自分自身が一人前と思うようになるまで待っていたらどれだけかかるかわからない。
学生時代をずっと片思いで過ごすなどターナには耐え難いことであった。

「ああ……こういうのって惚れた方が不利っていうけど…
 どうしたらいいんだろ…」

一瞬、ルーテの発明で幼女になる…というのが浮かんだが慌てて頭から振り払った。
それはなんか負けた気がする。

ふとターナはエフラムの兄弟たちのことを思った。
思えば兄弟家の面々はモテる人間が多い(例外はいるが)割りに恋人が決まってる人間は少ない…
その恋人のいる面々…
(名前知らない)とセリカは別だがシグルドとマルスが脳裏に浮かぶ。
そういえばリンもスレの最初のほうではラスと付き合っていたらしい。今は振られたらしいが…
その3人に共通すること…

「そうよ!…3人とも惚れられるより惚れたのよ!」
特にシグルドはその傾向が顕著だ。
エフラムに自分を含め数名の嫁候補がいるが、シグルドは嫁候補どうこういうよりも
自分がディアドラの婿候補といったほうがいいだろう。
ディアドラがシグルドかアルヴィスを選ぶ立場にいる。
まさに恋愛は惚れさせたほうが絶対有利ということだ。

「これよ!これなんだわ!…私は今までエフラムに思いを伝えることばかり考えてたけど…それじゃ多分振られる…
 そうじゃなくてエフラムを振り向かせ…向こうが私を好きになるにはどうしたらいいかを考えるべきだったのよ!」
237 名前: ラトナ様が見てる ~ 天馬革命 ~ [sage] 投稿日: 2010/01/21(木) 01:37:56 ID:km+ndLeZ

一度気づくとターナの頭の回転は速い。
「今までのエフラムとの関係じゃ駄目、まずエフラムには私の事を強く意識してもらわなきゃ…
 そのためにも、今までの関係を一度リセット!
 全部ぶっ壊して作り変える!!!!!」
拳を握り締めて立ち上がる。
今や活力が全身を漲っている。
どうして気づかなかったんだろう…
単なる恋する乙女じゃ駄目だったんだ……
恋愛はある意味で闘い…しかも自分は相当手ごわい相手とぶつかっている。
「そう……今までの状況もなにもかも……私は全てを変えてみせる…これは革命なのよ!!!」
カーテンを開け放って夜空を見上げ、ターナは星に勝利を誓った。

満天の星空が乙女を優しく見守っていた…

続く