紋章町郊外から離れた山道。 ターナはレナックの運転する車に乗って利不薬寺を目指していた。 ペガサスで行こうかとも思ったが、場所がわからないでは仕方がない。
ターナ「随分山奥なのね」 レナック「まったくエフラムってのも物好きっすね」 ターナ「まったくだわ」
好きな人のことながら同意せざるをえない。 本日早朝にエフラムは出発したらしい。 ラーチェルとエイリークも同行したがったが全力でお断りした。 親友には悪いが場をかき回されてはかなわない。
雪に覆われた山の景色は一面の全世界。 真っ白な木々が立ち並び山の厳しさを見せ付けている。 昔の人は山を異界と考えたらしいが、確かにこれは人の住むような場所ではない。 その時かすかにターナの視界の端に、編み笠を被った虚無僧の姿が映った。 おそらく利不薬寺の人間だろう。どうやら寺が近いようだ。
虚無僧は走りさる車を眺めつつ山道を進んでいた。 編み笠を外せば深い蒼緑の髪が目に入っただろう。 エフラム「檀家だろうか?」 修行するにはまず形から入ろう…そう思い僧の姿で家を出てここまで歩いてきたのだ。 馬すら使わず槍も持ってこなかった。 これから行うのは精神修行、妨げになるものは全て俗界に置いてきた。 エフラム「冷えるな……だからこそ修行になるというもの…」 厳しい冷気を浴びていると身が引き締まる思いだ。 煩悩を俗界に置き捨てるため、エフラムは経を唱えながら山道を登っていく。
古くうらぶれた寺の中でターナは住職と会っていた。 リフ「ふむ…当山で修行したいと連絡をくれたエフラムという者に会いたいと… ですがまだ到着しておりませなんでな」 ターナ「そ…そうでしたか……急に押しかけてしまってすみません」 リフ「せっかく来て下さったのですし、この雪の中を追い返すわけにも参りません。ゆっくりしていってください」 お茶を飲みながらストーブに当たる。 そうでなければやってられない寒さだ。
エフラム「お頼み申す」 リフ「おや、待ち人来る…ですな…」 ターナ「エフラム!?どうしたのその格好」 僧衣のエフラムに驚かざるをえない。 エフラム「ターナ、どうしてここに?」 一方のエフラムも驚いている。 ターナ「あなたに話したいことがあって…」 エフラム「…あ…ああ、だがまずは住職に挨拶をさせてくれ」 少し戸惑いの色を浮かべている。 まずは一撃を与えたというところだろう。 とにかく自分を印象づけることだ。
エフラムはリフの前に正座し、禅問答のようなやり取りをしている。 流れでターナも後ろに座って聞いていたのだが思わずずっこけそうになった。 リフ「それでは幼女への邪欲を取り払いたいと…」 エフラム「はい」 ターナ「ちょ……何よそれ!?自らロリコンと認めちゃうわけ!?」 思わず大きな声を出してしまう。
エフラム「騒々しいぞ…それに俺の深層心理には自分でも気づかぬそういった要素があるかもしれん…そういう話だ。 人は誰しも煩悩を持っている。まして無意識下ならなおさらだ。 ……俺はロリコンではないが、心の奥底までそういった願望がまったくないのか…と問われると0%ではないかもしれん… よってそれを断ち切る修行をしてみたが、家では邪魔が入るのでな……」 ターナ「そ…それでサラ達に内緒でここまできたのね……」 エフラム「そうだ…だから悪いんだがお前の話は帰ってからでもいいか?」 それは困る。 帰ったら間違いなく幼女たちが邪魔になって自分の入る隙間は無くなる。 ここは強引に話を切り出し!…が、今更気づいた… リフがいる前で出来るような内容ではない…… ターナ(ちょ…そこまで考えてなかった…どうしよどうしよ!?) エフラム「どうした?…ここは修行場だ。用がないなら長いする場所ではない」 かといってこのまま居座るには…テンパッたターナは思ったままを口走る。 ターナ「わ、私も修行に来たのよ!それならいたっていいでしょう!?」 エフラム「なに!?お前も幼女への邪欲を断ち切りにきたのかっ!?」 思わずエフラムの頭を引っぱたいてしまった、スパーン! ターナ「幼女に限定しないでよ!?」 エフラム「ああそうかすまん、少年への邪欲か…ならば供に煩悩を断ち切り、 真の幼き者達の守護者となろうぞ!」 一気に脱力した……歯を光らせていい感じの笑顔を向けるエフラムを見ていると、訂正するのがばかばかしくなってくる… このままではエフラムの中のターナ像がショタコンになってしまうのだが… 何より、そんな笑顔でも自分に向けられていると思うと嬉しくなる自分が嫌だ……
ターナ「ま…まぁ私の煩悩の話はさて置いて…いいですよね住職!」 リフ「し…しかし当山は尼寺ではありませんでな…修行場は女人禁制…」 ターナ「い・い・で・す・よ・ね・!」 キラーランスを取り出す。 リフ「私は僧侶リフ戦いは出来ませんがあなたを修行させることができます。 よろしければ修行していってください」 ターナ「やった♪」 少々強引ではあるが恋路は戦い…これくらいのことができないようではエフラムや幼女たちには勝てないだろう。
さっそく修行着になったエフラムとターナ。 話を切り出すには2人になった時がよかろう。今はチャンスを待つべきだ。 修行をはじめるにあたり、エフラムは寺の慣わしにしたがい、持参したバリカンで髪を剃ろうとしたのだが それだけはターナが泣いて阻止した。 つるっぱげになったエフラムなど見たくない。
リフ「それでは第一の行に入ります。これはエフラム君のたっての願いで取り入れ申しました」 エフラム「よろしくお願いいたします」 ターナ「……?」 リフ「ターナさんも急遽参加ということで、あなたの分は用意できませなんでな…エフラム君と一緒の修行コースで よろしいですかな?」 ターナ「え……ええ…ねぇエフラム、どんな修行をお願いしたの?」 エフラム「口で言うより見たほうが早いだろう」
そして通された広い部屋……そこは蝋燭の明かりに照らされた仏堂だった。 無数の仏像が部屋中に並べられ… ターナ「…って…これはっ!?」 そう…それらは仏像などではなかった…… サラやミルラやアメリアやらファ、チキ、ユミナ、ニノetretr…… 無数の可愛らしい幼女たちの1/1フィギュア……… エフラム「俺の部屋ではせまくてこの修行は出来なかった…写真を代用するよりなかったのでな…」 ターナ「……………こ、これどうしたの………」 頭痛がしてくる、頭がおかしくなりそうだ…… エフラム「バイトして稼いだ金で特注した、これも修行のため…よく出来ているだろう?」 ターナ「………ええ、怖いくらいにね……」
リフ「さ、はじめましょうかな」 エフラム「では…仏説摩訶般若波羅蜜多心経………」 禅を組んだエフラムが経を唱え始める… 促されたターナも隣に座って見よう見まねで経典を唱える… ターナは早速決心がくじけそうになっていた…… 自分の好きになった人は、思っていたよりはるかに難敵のようだ……
続く