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Last-modified: 2012-08-24 (金) 19:58:35

357 :ラトナ様が見てる ~ 天馬革命 ~:2010/01/27(水) 22:59:29 ID:qk4p1mRq

11

無数の幼女の等身大フィギュアが立ち並ぶ部屋に読経が響いている。
2人並んで禅を組むターナは自分の青春というものに疑問を感じざるをえなかった。
(…好きな人と並んでお経を読んでる女子高生なんて私くらいよね…orz)
「喝!」
「あいたー!?」
雑念を抱いたターナの頭をリフの杖ポコが打ち据える。
「エフラム君を見習うことですな。これほどのフィギュアに囲まれても無心に経を読んでいる…
 心を空に近づけているのです…」

隣のエフラムを仰ぎ見る。
「無受想行識 無眼耳鼻舌身意…」
静かに瞳を閉ざし、合唱して経を読む佇まいはどこか静かな深さを感じさせるものであった。
(…これで周りが幼女フィギュアじゃなきゃ普通の修行者なんだけど…
 それよりエフラムと話をする機会来るのかしら…だ、駄目よ弱気は!
 こうして居座れば必ず好機は来る!)
こちらはこちらで乙女の決意を固めると再び経を読み始める。
一緒に修行してるのはほとんどなりゆきというか方便だが、それでも2人で同じことをしているのが嬉しい。
(…だから住職邪魔…)
「渇!」
「あいたー!?」
再び雑念を見抜かれてしまうのだった…

やがて数時間が過ぎ……
「ターナさんとエフラム君ではやはりエフラム君の方が悟りに近いようですな」
あれから20回くらい杖ポコされる羽目になった…ちなみにエフラムは0回だ。
「住職、これは本来俺のために用意された修行ですし…
 すまんなターナ、お前も邪欲を絶ちに来ると知っていれば少年のフィギュアも買っておいたのだがな。
 その方がよい修行ができたろうに」
「…いやそれ誤解だから…」
痛む頭を抑えながらも否定する。
ショタ疑惑だけはごめんだ。
(しかしこれはアレよね…幼女フィギュアにエフラムが心を乱されてないってことよね…
 つ、つまりエフラムはロリじゃない!?…住職の評価だからアテになるかわからないけど…)
なんとなく希望も見えた気がする。
…もっとも人間、自分に都合のよい方に考えがちなものだが…

「さてそろそろ夕食にしましょうかな、2人とも手伝ってください」
「あ、はい」
こうして3人はこの日の修行を終え、精進料理で夕餉をとることになった。

358 :ラトナ様が見てる ~ 天馬革命 ~:2010/01/27(水) 23:00:13 ID:qk4p1mRq

12

山奥の寺が夕闇に沈む頃、ルネス女学院でも薄暗くなった教室で若草色の髪の少女が青髪の少女の
長い髪に櫛を入れていた。
「まぁ…この手触り…艶やかさ…これほどの髪をわたくし他に存じませんわ…」
「もう、ラーチェルったら…それは褒めすぎですよ?」
少しだけ照れくさいような、困ったような顔をして嗜めてみる。
だがこの少女は決まってこう返すのだ。
「あら、本当のことですもの。エイリークはもっと自分を評価すべきですわ。
 謙遜も度が過ぎると嫌味でしてよ?」
そこまで言われると苦笑するしかない。
だが控えめなエイリークと言えども女の子。自分の髪を褒められて悪い気はしない。
最近ラーチェルはエイリークの髪の手入れにご執心だ。
放課後の少しの時間を使って、こうして櫛を入れたがる。
壊れやすい宝物を扱うような優しい手付き…それが心地よくて、つい自分もラーチェルの好きにさせている。
こうして2人で春のまどろみに抱かれたような優しい時間を過ごしているととても暖かい気持ちになる。

「はい、終わりましたわ!」
「ふふ、ありがとうございます。とても気持ちよかったですよラーチェル」
肩越しに振り向いて背後に立つラーチェルに微笑みかける。
かすかに頬をそめる少女の顔を見ていると、
ふと自分も今、同じような表情をしてるのだろうか…と気にかかった。
どうしてそう思ったのかはわからなかったが、そう考えると急に気恥ずかしくなって話題を変える。
「そういえばターナは上手くいっているでしょうか?」
どもったりせずスマートに声を出せたはずだ。現にラーチェルも普通に返事をしてくる。
「どうでしょう…相手がエフラムでは…だからわたくし達が同行してサポートすると言いましたのに、
 ターナったら自分でなんとかするなどと言って…」
「兄上も…その………とてもお優しいのですけど、もう少し人の内心を察することができればいいのですが…」
もちろんターナを応援する気持ちは強いし、うまくいってほしい。
だがエフラムが乙女心などさっぱりわからぬ人間であることは妹の自分がよくわかっている。

エイリークはターナの幸福をラトナ様に祈るのだった。

359 :ラトナ様が見てる ~ 天馬革命 ~:2010/01/27(水) 23:01:15 ID:qk4p1mRq

13

さて…そのターナであるが…
宛がわれた修行者用の部屋で布団を敷いていた。
部屋は1つだけということでエフラムは倉庫で寝ることとなっている。
「いよいよね…いよいよチャンスが来たわ……住職が寝静まる時間になったらエフラムの部屋を訪ねて…」
そして今までの関係をリセットし、2人の関係を一から作り直す…
そう、これはターナにとっての革命なのだ。
そのための第一歩をこうして踏み出そうとしている。
「…って、こんな夜中に男の人の部屋を尋ねるなんて夜這いみたいよね…で、でもでもっ!
 この機を逃したら次にいつチャンスが来るかっ!!!」
意を決したターナは静かに静かに廊下を歩いていく。
恋焦がれる青年を求めて……

暗闇の中、倉庫の扉は部屋の主を守って立ちはだかるように見えた。
かるく扉を叩く。
「エフラム…エフラム?」
返事はない。
2~3度扉を叩いてみるが、なんの反応もなかった。
トイレにでも行ってるのだろうか?

360 :ラトナ様が見てる ~ 天馬革命 ~:2010/01/27(水) 23:01:58 ID:qk4p1mRq

14

結論から言うと、エフラムは修行場にいた。
少しでも早く修行を完成させたいエフラムは、眠る気になれず、
再び禅を組んでいた。
「道はなお遠く、頂は霞んで見える…歩いてみても崖があるか蛇がでるか…」
周囲の幼女フィギュアを見渡してみる…よく出来ている。
それを見ていると、守るべき幼女たちの顔が心に浮かぶ。
サラ…ミルラ…チキ、ファ、アメリア、他にも大勢の…
「俺はお前たちの真の守り手となる。待っていろ…この心の隅々まで邪心を滅ぼし、
 幼女を慈しむ慈愛の心を持ち、幼女を害する者に懲罰を下す明王となろう…」
そのためにも自身にわずかでもロリコンの気があることは許されぬ。
それらすべての煩悩を退散さすべくエフラムは経を唱え始める。

…だが…いつの世も修行者の心は悪魔に惑わされるものなのだ…
目を閉ざし、己と向き合っていたエフラムの中に幼女たちの声が響いてくる…
「兄様…愛してるわ…」
「お兄ちゃん……私、どきどきします…」
「チキねーぶるまー履いてるのー」
「ファはよーちえんのすもっグー」
「ししょー、私のスク水にあいますかー?」
……な、何故だ!?
日中修行していたときには、こんな声は聞こえなかった!?
まだ修行が足りんということかっ!?
自分をより空に近づけようと一心不乱に経を唱える。
「去れ、俺の中の邪な心よ!」
自分の中にこんな願望があったのか!?
ショックを受けつつも、これを調伏しなくてはならない。

361 :ラトナ様が見てる ~ 天馬革命 ~:2010/01/27(水) 23:02:41 ID:qk4p1mRq

15

「あら、冷たいのね兄様」
膝の上に幼女の体温と軽い体重を感じる。
これはサラだ…ついに俺の邪心も、触感を伴うところまで来たか…
自分の邪心が俺を誘惑しているに違いない。
裏を返すとそれだけ修行が上手くいってるということ、ここが正念場だとエフラムは考えた。
「乃至無老死 亦無老死尽…」
耳に息がかかる。これはサラだろう。背中に重みを感じた。この重みはミルラだ。
左の腕にしがみ付いているのはアメリアか。右手にはチキとファがじゃれついている。
だが違うのだ。これは彼女たち本人ではない。
エフラムの心に残ったほんの僅かな邪心が修行の邪魔をしているのだ。
リフ住職にも伺ったことがある。仏陀の修行を悪魔たちがあらゆる方法で邪魔しようとしたと…
これに打ち勝たねば修行の完成はあるまい…
「消えろ!幼女の振りをした邪心めが!俺は負けんぞ!」
「ひ、ひどい…ふぇぇーん!」
「ぶぇーーーーん!!!」
チキやファの泣き声がする。
思わず心を乱しそうになった。
「えくえく…だって…エフラムがろりこんじゃなくなるってことは、私たち子供が好きじゃなくなるってことですよね?
 好きじゃないってことは嫌いってことに…」
「いや…好きにも色々あってだな…と、いうか邪心と問答するつもりはない!」
「あら、ひどいこというのね兄様」
「なんとでも言え、俺は負けん」
「あ、あのーサラちゃん…サラちゃんが師匠の修行のためだっていうからこんな格好してきたけど…
 本当に修行の役に立つのかな?」
「あら、もちろんよ?兄様は平常心を養うために頑張ってるんだから、もっと大胆に抱きついてね」
「ん…ちょっとまて…なんで邪心同士で会話してるんだ?」
「あら、まだ気づかないの?…随分深く精神を見つめていたのね…えい!」

スパカーン!

勢いよく杖で殴られて思わず目を開いた。
瞳に写るものは、フィギュアではない本物の幼女たち。
「…サラ…何をしている…」
「だから修行のお手伝い、前にもやったけど今度はグレードアップしてみたわ」
チキのブルマ。
ファの幼稚園スモッグ。
アメリアのスク水。
ミルラのランドセル。
サラのランジェリー。
「…いや…色々言いたいことはあるが…最後のはまずいだろう…」
「あらどうして?…兄様がロリコンじゃないなら子供の下着姿なんて、なんとも思わないはずよ?」
「お前な…というか、秘密で出かけたのにどうして俺が修行に出たことを知ってるんだ…」
「兄様のことならなんだってわかるのよ?
 水晶とかそーゆーのを想像してくれればいいわ」
「………」

思わず言葉を失ってしまう。
その時修行場の扉が開いた。

362 :ラトナ様が見てる ~ 天馬革命 ~:2010/01/27(水) 23:03:23 ID:qk4p1mRq

16

ターナは目の前に広がる光景が理解できなかった。
倉庫の前でしばらく待ってみたがエフラムが戻る気配はない。
それで寺の中を探してみたら修行場から声がする…扉を開けてみたら……
「な……な……」
コスプレ(というか年齢相応)の格好をした幼女たちをエフラムがはべらしている。
サラにいたっては下着姿だ。
「ああ、いいところに来たターナ。とりあえずこの子たちをお前の部屋で預かって…ん、どうした?」
「なにやってんのよーロリコン、変態、性犯罪者!!!!!!!!!」
激情のままに言葉を張り上げる。
「お…おい、なにか誤解してないか?」
戸惑うエフラムには構わずつかつかと歩み寄ると、その頬に平手打ちをかました。
あまりの勢いに、打った掌が痛んだほどだ…
「た…ターナ?」
さしもの冷静なエフラムも何が起こったのか判らない顔をしている。
「エフラムはいっつも幼女のことばかり、周りの誰も見ていないのよ、
 ロリコン、大嫌い!」
振り向き様に走り去るターナをエフラムは呆然と見送ることしかできなかった。

部屋に飛び込んで布団につっぷす。
ターナの心は散々に乱れていた。
概ね元々の予定通りのはずだ。
引けば押す、押せば引くの要領に基づき、エフラムに思いっきり厳しいことを言った上で当分冷たくするつもりでいた。
そうすればエフラムはどうしてもターナを意識せざるを得ないだろう…そこから関係を作り直す…
だが、さっきの光景を見て、ターナの中で何かがキレた。
自分で予定していたよりもずっと厳しい態度をとってしまった。
もはや何を言葉にすることもできず飛び出してきた。
大体想像はつくのだ。あのサラという娘の悪ふざけだろう…
だが、どうしてもエフラムを責めずにはいられなかった。
それにエフラムに口走ったことにはターナの本心も含まれていた。
こうなったら意地だ…元々はエフラムがこちらに気をかけてきたら、
適当な所で折れて、仲をステップアップするつもりだったが予定変更だ。ターナにもプライドがある。

すっかり意固地になったターナは絶対に口もきいてやるもんか、と決意を固めるのだった

続く