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Last-modified: 2012-08-27 (月) 00:38:29

36 :運命の歯車 序章 1/8:2010/03/11(木) 09:45:27 ID:kNowhY2J

……護りたいと… ……そう願うのか…
…ならば…の銀髪…巫女……いいだろう?
…何?…望んでなく……カ…だけを……
…一人だけ…限定…いい… ……強い…するべき事だ…
…ふっ、だから…集めろ… …そして……
…我が手を…… …安心する… ………いや、…よ…!

その日は夕方の5時にも関わらず、もう既に漆黒の闇が訪れていた。
本来は綺麗な夕日が紋章町を照らし、不死鳥の降臨ともいえる赤橙色の美しい景色を魅せているものだ。
ただ銀髪の少女、ユリアはそんな綺麗な景色を見れない事にではなく、違う事に腹を立てていた。
彼女の想い人である少女、セリスは今自分の恋敵であるラナと一緒に帰っているからだ。
(…悔しいです…いつもなら楽しくセリス様と話しているのに…何かちょっと寂し…(ゾクッ!!))
…その時、ユリアは背筋が凍りつくような嫌な気配を感じた。
(な、何…今の感じ……?は、早く帰った方がいいですね)
その思いに押されるかのように彼女の足取りは早くなり、10mを過ぎた頃には走り出していた。
正体不明の何かに追われる恐怖は彼女の柔らかい体をいとも容易く貫き、心を深く覆っていく。
心拍数は増し、血は逆流しているかのような感じに襲われ、体は潰されんばかりの
圧迫感に包まれつつも、着実に家へと向かう。
(と、とにかく竜王家までたどり着けば…)
彼女の動きに反応して、気配も移動し始める。着々と彼女との距離を詰めながら…
(ハァ…ハァ…まさか私がストーカーに…ライトニングじゃなくてナーガを持ってくるべきでした。
 そ、それでも…ハァ…ハァ…あの角を曲がればもう安心d)
「きゃあ!?………ぁ…」
…それがユリアが発した、最後の言葉であった。

セリス  「ただいまー♪」
エリンシア「セリスちゃんお帰りなさい。夕飯はもう出来てますわよ」
セリス  「はーい。じゃあ又ねラナ!」
ラナ   「は、はい(あまり仲が進展しなかった…orz」

37 :運命の歯車 序章 2/8:2010/03/11(木) 09:46:16 ID:kNowhY2J

ヘクトル 「それでな。ファリナの奴不良相手にキラーランスで突っ込んでいってな。
      …俺がヴォルフバイル持って増援に行かなかったらどうなってた事か…ったく」
エフラム 「だがファリナは優秀なペガサスナイトだ。お前が居なくても大丈夫だったと思うぞ」
ヘクトル 「あぁん!?(#^ω^)」
エフラム 「俺の言う事が気に入らないなら、表へ出ろ」
エリンシア「こんな所で喧嘩する様なら二人とも明日から食事抜きですわ!!」
二人   「「ごめんなさいエリンシアおねえさまもうしませんかんべんしてください」」
シグルド 「……むっ、このホウレン草のゴマ和えは最高だな!
      エリンシア、レシピを教えてくれないか…ディアドラが喜ぶと思うんだ!」
エリンシア「はいはい、分かりましたわお兄様」
アイク  「流石はエリンシアだ。この肉美味しいです(^o^)」
ロイ   「それはリーフです( )」
リン   「マァァルゥゥスゥゥ!アンタまた私の百合疑惑を助長するふざけたチラシをバラ撒いて…!!」
マルス  「ぎゃああああああ!!!?」
ジャファル「…酷い有様だな」
セリス  「しじみの味噌汁美味しいなぁ」
ロイ   「そうだね兄さん」
アイク  「おかわりをもう一杯だ!」

…主人公兄弟家においては至って普通の食事風景である。
犬猿の仲のヘクトルとエフラムは些細な事で喧嘩をし、それをエリンシアが武力で咎める。
シグルドとアイクはエリンシアの料理の腕を褒め、リンはマルスをしばき、
他の面子も楽しく料理を満喫していく。
…これこそが、幸せな家族の縮図だと言えるのではないだろうか?

だがそれも、ある一人の訪問客によって終わりを告げようとしていた。

38 :運命の歯車 序章 3/8:2010/03/11(木) 09:48:08 ID:kNowhY2J

ピンポーンッ!

ミカヤ  「あら、誰かしら?」
デギンハンザー(以下:デギン)「…うむっ、こんな夜分にすまない。夕食の途中だったか?」
エリンシア「いえいえお気になさらず!」
デギン  「そうか。…所でユリアはここに来てないか?」
ミカヤ  「えっ、何故そんな事を…?」
デギン  「その様子では来てないようだな…ふむっ。
      実はユリアが夜の七時になっても帰ってこないのだ」
エリンシア「まぁ!」
マルス  「友達の家に居るのではないですか?」
デギン  「そう思ってセリス殿が居るこの家に来たのだが…」
セリス  「デギンハンザーさん、僕今日はラナと一緒に下校していて、
      とにかくここ数時間はユリアと会ってないんだ」
デギン  「……そうか。分かった。では他をあたるとしよう(ガラッ」

ミカヤ  「何か気になるわね」
セリス  「ユリアはまだ家に帰ってきてないのか。
      誰か友達の家に居るだけならいいんだけど…ラナの家かな?」

…この時はまだ誰も知らなかった。
まさかこの訪問が後に起こる、紋章町全土を巻き込んだ大事件の前ぶれになろうとは……

…しかし運命の歯車は少しずつ、だが確実に音をたてて回り始めていく…

当事者とその一部の関係者のみが記憶する、様々な想い、感情、心が交差したある事件…
…今回はその事件を詳細に渡って明記した、一つの物語である…・・・・・・

39 :運命の歯車 序章 4/8:2010/03/11(木) 09:49:04 ID:kNowhY2J

エフラム 「(紋章町中学校の前に来て)ここでお別れだな」
ロイ   「うん、そうだね」
エフラム 「感謝するぞロイ。話の中で言ってた落石将軍式涙目回避鍛錬法、学校が終わり次第試してみる」

年上の兄弟は年下の兄弟を学校まで送り、そして自分自身の学校へと向かう。
これは大家族であるFE兄弟家では日常的に見れる光景の一つである。
…共に歩きながらつまらない噂話や恋愛話、メタ話に華を咲かせる。
家の中はあまりにもバタバタとしすぎている為、こんな時でも無いとじっくり話し合えないのだ。
…何にせよ、平和だという事に他ならないといえるだろう…。

エフラム 「それでは俺は行くぞ」
ロイ   「うん」
エフラム 「(独り言)……ふっ、ロイも大きくなったモノだな…
      …!!……おっと!すまない、怪我は無いか?」
ソフィーヤ「ぁ…ぃぇ…き、気にしないで下さい…」
エフラム 「むっ、そうか…って顔色が悪いぞ。本当に大丈夫なのか!?」
ソフィーヤ「ぇ、ぇぇ…ただ少し気分が悪いだけですから」
エフラム 「そう…か。それならいいんだが」
ソフィーヤ「(ペコリッ)…それでは、失礼…します……」

エフラム (本当に気分が悪いだけなのか?あの顔色に表情…
      …何かに怯えてる様な感じだったな…気のせいだといいんだが)

ソフィーヤ「あの人に迷惑は掛けられません…
      …は、早くロイ様に『予知夢』の事を………ぁ、貴方は…」

リリーナ 「それでね、バースさんったら一日中頭の上にハンバーグ乗せてたのに、
      結局誰にも突っ込まれなかったのよ」
チャド  「あるあ…ねーよwwwww」
ロイ   (ソフィーヤ遅いなぁ…後10秒程で授業が始まるのに)
チャド  「どうしたんだロイ?」
ロイ   「ん、いや、何でもない」

40 :運命の歯車 序章 5/8:2010/03/11(木) 09:50:06 ID:kNowhY2J

セシリア 「(ガラッ)はい皆、それぞれの席に座りなさい!」
生徒一同 「は~い!」
セシリア 「それでは道徳の授業を始めます。…今日のお題は『先祖』と『霊』についてです」

…エトルリアが誇る三軍将の一人であり、ロイのクラスの担任であるセシリアは他の教師とは違う教育方針を持っている。
彼女は普通のカリキュラムに沿った授業も行うが、それと同時に生徒一人一人の心を成長させる授業も取り入れている。
何故なら人として本当に必要なのは勉学や武術の才ではなく、強くて慈しむ心だと彼女は信じているからだ。
…ただし授業の途中、時々自分自身の卑しい思想が入って(ロイ的な意味で)、
最後には酷い有様ですとなる事もあるのだが…

セシリア 「先祖様はとても大切なモノなの。
      彼らは肉体が朽ちた後も、場合によっては守護霊となって子孫を見守るのよ」
ルゥ   「守護霊?」
セシリア 「守護霊は、言ってみれば影から大切な人を見守る存在…
      例えば、ヒ○ルの碁に出てくる主人公に取り付いた碁の達人の霊だとか」
レイ   (何か例えが合ってる様で間違ってるぞ!)
チャド  (元ネタが分かる奴居るのか!?)

セシリア 「守護霊や、神将器を護っている霊達は、言ってみればあまり害が無い霊なの。
      まぁ守護霊は神将器を得ようとする人には容赦しないけれど…(笑)
      でもね、それと同時に生きた人間に悪影響を及ぼす悪霊もこの世界には存在するのよ」
ウォルト 「つまり善の霊が居る様に、悪の霊が居るのですねセシリアさん」
セシリア 「その通りよウォルト君。
      悪霊はこの世に未練があったり、不慮の事故で亡くなった方が、
      生きる者を妬んだり道連れにしようとする霊の事を指すの。
      …メタ的発言だけど、紋章2部でハーディンを狂わせた精神体のガーネフも、言ってみれば悪霊d」

キーンコーン、カーンコーン!
キーンシーン、ソーウカーン!

セシリア 「あら、チャイムが鳴ったわね。これで今日の授業は全て終了です。気をつけて帰りなさいね」

41 :運命の歯車 序章 6/8:2010/03/11(木) 09:51:16 ID:kNowhY2J

ロイ   (結局ソフィーヤは学校に来なかったな…学校を休む事なんて無い子なのに…)
レイ   「ソフィーヤの事か」
ロイ   「う、うん」
レイ   「はっ、別に一日無断欠席したって気にならないだろ!」
ルゥ   「…でもレイ、今日はやけに校庭の方を気にしてたような…」
レイ   「う、うるせぇ!」

やはり彼女の不在は同級生達を心配させている様だ。
ソフィーヤが学校に来ない日は無い。
その理由は身も蓋もないが、ロイを他の嫁候補に出し抜かれない為である。
そして好きな異性と少しでも多く一緒に居たい…その想いが病弱な彼女を突き動かすのだ。
…そういう理由を知ってか知らずか、ロイは思う、彼女は一体どこに消えたのだろうか…?

ニニアン 「それでは散歩に行って参りますデギンハンザーお爺様」
デギン  「う、うむっ、気をつけてな」
ニルス  「ね、姉さん…」
ニニアン 「!…ど、どうしたの二ルス!…か、顔が汗びっしょり…」
二ルス  「ニニアンに黒い影を感じる。散歩に行かない方がいいよ…!」
ニニアン 「…ニルス……」

ニルスとニニアンには竜王家の一族の中でも特異な力が備わっている。危険予知と呼ばれる力だ。
少し先に起きる不吉を感知する能力…防ぐ力そのものでは無いものの、
場合によっては未然に人の命を救う事も可能とする。
…最も、アイクやゼフィール等と言った人間災害がたびたび広範囲に被害を起こす事がある以上、
防災は不可能に近いのだが…。勿論ニニアンもこの能力の重要性は理解している。しかしそれでも…

ニニアン 「大丈夫ですニルス。(氷竜石を握り締めながら)私もいざとなったら
      戦う事は出来る……だから、安心して」
ニルス  「姉さん…」

こうしてニニアンは散歩へと出かけていた。しかしいつまで経っても、彼女が帰って来る事は無かった……

42 :運命の歯車 序章 7/8:2010/03/11(木) 09:53:15 ID:kNowhY2J

ミカヤ  「…ハァ…ハァ…相変わらずこの階段は辛いわね…ハァ…」
アイク  「…?別に問題は無いが」
ミカヤ  「アイクは別格よ、もう!」

アイクとミカヤの二人は石段が連なる長き階段の頂上にある神社を目指していた。
そこは過去にミカヤが巫女修行をした場所であり、地主とは昔からの仲である。
一月に一度、ここで家族の健康と幸せをお祈りするのが、日課である。

地主の巫女「……むっ…おや、お主は確か…?」
ミカヤ  「お久しぶりです地主様」
地主の巫女「おおっ、ミカヤなのかえ!」
ミカヤ  「ええ、そうです」
地主の巫女「まったく、しばらく見ない間に…………全然変わらないわね(汗」
ミカヤ  「その事はスルーして下さい。
      …所で最近とったというお弟子さん達が見当たらないのですが?」
地主の巫女「その事なんだけどね、突然数日前から来なくなったのじゃよ」
ミカヤ  「ええッ!!?…あの三人見事な銀髪をしてて、訪問者にも人気だったのでしょう?」
地主の巫女「そうじゃよ。…連絡しても出ない。何で来なくなったかはさっぱりなのじゃ…orz」
ミカヤ  (一体、どういう事なのかしら?)
アイク  (……か?)

43 :運命の歯車 序章 8/8:2010/03/11(木) 09:54:15 ID:kNowhY2J

ニニアン 「……ん…ぅぅ…こ、ここは…?」
一般巫女A「あっ、起きましたか!」
一般巫女B「…薬で少し眠らされた様ですね」
ニニアン 「この部屋は一体…?綺麗ですし、TVやラジオも置いてあります…」
ユリア  「御姉様!」
ニニアン 「ユリア…!こんな所に居て…竜王家の皆がどれ程心配した事か…」
ソフィーヤ「ニニアン様…起きて良かった…」
ニニアン 「確か貴方は…?」
ソフィーヤ「ナバタの里の…ソフィーヤと…申します」
ニニアン (ナバタの里…確か…竜と人が平和に暮らす理想郷)

一般巫女C「こんな事をしたのは一体誰かしらね?」
一般巫女B「変態の仕業なのは間違いないですけど…あまりにも情報が少なすぎます」
一般巫女C「…食事はあの扉の下から出される…つまり顔は見せたくないという事ね」
一般巫女A「足音はガシャンガシャン…鎧…犯人はアーマーナイト系の騎士なのかな?」
一般巫女B「必ずしもそうとは限りません。むしろそう私達に思わせるのが狙いかもしれません」
一般巫女A「そもそもの目的は何なのでしょう?」
一般巫女C「身代金かしらね……私達はともかく、そこの二人は竜王家という大金持ちの家の娘達ですし」
ニニアン 「あ、あの…一体何の話をしているのですか?」

一般巫女C「まだ分からないの!?…貴方を含めた私達全員、誘拐されたのよ!!!」

第一章に続く

犯人は(前まで保管庫のネタ墓場にあったから)予想出来るかと思いますけど、明記しないで下さい。
…今までに無かったタイプのSSだけど、問題は無い……よね?