25-398

Last-modified: 2012-08-27 (月) 21:35:38

398 :幼女の旗の下に:2010/04/23(金) 16:03:14 ID:hEtLF82n

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4 エリウッドの真似をする ううっ胃が胃がぁぁ

エフラム (よし、病人のフリをしよう! 医務室に連れてってもらえば、ここよりは監視が厳しくあるまい!
      しかし俺は健康体…生半可な演技では信用されまい…)
その時エフラムの脳裏に閃いたのはエリウッドの姿だ。
胃を抑えて苦しむエリウッド…あの姿を再現できれば刑務官たちも信用するに違いない。

見張り役の一人ブラッドは岩に腰掛けて囚人たちを眺めていた。
札付きの悪党どもがツルハシを振るっている。
ツルハシやスコップは武器にもなる…暴動を防ぐためブラッド達が見張っているのであるが、
そんなトラブルなどそうそう起こるはずもない。
ブラッド 「ふぁ……ん? またカシムのヤツ手を抜いてるな…」
採掘量が減るとダノミル所長がうるさい。適当に凄んでカシムを働かせなくては…立ち上がった瞬間絶叫が轟いた。

エフラム 「うぎゃああああああああああああああああっ!?」

昨日入ったばかりの囚人が絶叫を上げてのた打ち回っている。
周囲の囚人たちも驚いて手を止めた。
エフラム 「胃が…胃が…うごおぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
ブラッド 「なんだ、どうした!?」
エフラム 「胃…胃が…急に痛み出して……ぶはあっ!?」
ブラッド 「うわっ!?」

エフラムの口から血が零れ落ちる。よく見ると少量ながら鼻血まで流している。
ブラッド (こ…コイツ病気持ちか? 入所前の健康診断じゃ心臓に毛が生えてたはずだぞ!?)
エフラム 「は…早く医者を……あばばばばばばばばばばばばばばばばば…………」
猛烈に体が震えだす。ありえないほどの痙攣だ。
刑務官A 「な…なんだこりゃ…よくわからねぇがやばそうだぞ…」
エフラム (よし、もう一押しだ! エリウッド、俺に力をくれ!)
     「ひゃ…」
ブラッド 「あ?」
エフラム 「ヒャハーーーーーー! 蝶々蝶々蝶サイコォォォオォォオーーーーーーーーー!!!」

奇声を上げながら転げ周り、バク転する。
病人を装うため故意によろけてみたらバク転に失敗し、ハデに転倒してしまった。
エフラム 「グファ! サイコーーーー蝶サイコーーーーーーーー!!!!!!
      あひゃひゃひゃひゃひゃ!!!!」
刑務官B 「く…狂ったあぁーーーーー!?」
ブラッド 「お…おとなしくしろ! 今から医務室に連れてってやるから!」
エフラム 「ぜはーーーーぜはーーーーー幼女…さ…いこぉ……」

荒い息をつくエフラムに肩を貸すとブラッドは採掘所からエフラムを連れ出した
エフラム (ど…どうにか上手くいった…痛い目を見た甲斐があったな。これも普段からエリウッドを見てたからできたのだろう。
      エリウッド…礼を言う)
ブラッド (コイツ…精神鑑定したほうがいいんじゃ…)

ちなみに鼻血は演技を始める前…監視員達が自分を見てない隙に、故意に岩壁に頭突きをかまして出したものだ。
その時、口の中を切ったので口内に溜まった血も利用した。
胃痛で鼻血が出るかどうかはよくわからないが、派手な方がいいと判断した。

399 :幼女の旗の下に:2010/04/23(金) 16:03:55 ID:hEtLF82n

38

連れてこられた医務室は指揮所の建物の1階にあった。
狭い部屋に医療器具や薬品が並んでいる。
椅子の上で書類を眺めていたのは小柄な医務官だった。
ローラ  「あらブラッド、患者さんですか?」
ブラッド 「ああ、急に吐血して苦しみだしたんだ。それと頭がおかしい。診てやってくれ」
ベッドに横たえられながらエフラムは油断なく周囲を観察する。
2人……ここから上手いことごまかして抜けなくてはならない…が、刑務官が去るそぶりはない。
それはそうだろう。万一囚人が医務官を人質にして脱走を図らないとも限らないのだ。

ローラ  「どこが痛みますか?」
エフラム 「う…胃が…胃がぁ…」
     (いかん…診察されたら仮病がバレる…俺の胃よ!今この時だけ病気になれ!なるんだ!)
ローラ  「それじゃあ胃の様子を見てみましょう」
傍らのウォッチの杖を手に取る。
このまま胃を見られたらまずい!
エフラム 「蝶サイコーーーーーーー!!!!!!」
ブラッド 「うわっ暴れるな、おとなしくしろ!」
ローラ  「まあ大変、先に麻酔が必要みたいですね。えい、スリープ」
エフラム 「Zzzzzzz…………」

その意識は深い闇の中に落ちていった………

400 :幼女の旗の下に:2010/04/23(金) 16:05:20 ID:hEtLF82n

39

AKJの会長室……
エルトシャンの肖像画が掲げられたその部屋でラケシスはデスクについて電話の真っ最中だった。
トラバント『なんじゃ!? ブルジョワ貴族がワシら貧乏人に何の用だ!』
ラケシス 「ご挨拶ね? 貴方も没落したとはいえ一応貴族でしょうに」
トラバント『フン、代々の貧乏暮らしで庶民の苦しみはよーくわかっておる!貴様ら金持ちと話すことなど一つもない!』
ラケシス 「あら、それは残念。私は貴方の功績を評価しているのよ?
      貴方が原作でアルテナさんを娘にしたからこそ新たな兄妹カップルが誕生したんですもの」
トラバント『メタな話はよせ!』
ラケシス 「それじゃあ用件に入るわ。近く政府に不信任案を上げるから協力してほしいのよ」
トラバント『なに? ……どういった理由付けをするのだ?』
ラケシス 「失政…貧困対策の遅れ、治安の悪化…理由はいくらでも付けられるわ。
      貴方たちトラキア地区では特に当てはまるんじゃないかしら?」
トラバント『まぁ確かに不信任案の論拠としては充分だがな。元老院政権がおとなしく受け入れるはずもあるまい。
      再度の選挙戦が望みか?』
ラケシス 「貴方たちにとっても悪くない話だと思うわよ。血盟党を突き放す機会じゃない。前回の選挙では勝利したんでしょ。
      支持基盤はそちらに傾いているわ」
トラバント『たった1議席の差だがな…まぁいい、そういうことであれば協力はする。
      だが覚えておれ! ワシらが政権を取ったら貴族制は全廃! お前ら金持ちにこれ以上甘い汁は吸わせんぞ!
      労働者の苦労をお前らも思い知れ!』
ラケシス 「ご協力いただけるならこちらはかまわないわ。政権うんぬんはそれから先の話よ。ではご機嫌よう」

電話を終えたラケシスはエルトシャンの肖像画を仰ぎ見る。
それは縦5M、横4Mにも及ぶ巨大なもので荘厳な圧力を放っている。
ラケシス 「これで40席…兄様…待っていてくださいね。いま少しで私たちが愛し合っても世間のそしりをうけることはなくなるのです」
工作員  「会長、ご命令の件、中間報告にまいりました」
ラケシス 「あら、早かったわね。それで?」
工作員  「エフラム氏の犯罪についてですが…ベルン署内で証拠品の捏造が行われた模様です。
      それを命じたのはナーシェン警視、理由については目下調査中です」
ラケシス 「よし、早期に洗い出しなさい。そのラインで裁判所に再審を申し立てします」
工作員  「了解」

401 :幼女の旗の下に:2010/04/23(金) 16:06:21 ID:hEtLF82n

40

医務室ではローラがのほほんとお茶を飲みながらブラッドの言葉をあしらっている。
ブラッド 「ようするに仮病だったんじゃないか」
ローラ  「いいじゃありませんか、患者さんが病気なよりも健康だったんですから。
      厳しいお仕事ですもの。少し疲れていたんですよ。さ、ブラッドもどうぞ」
ブラッド 「作業が遅れると所長がうるさいんだけどなぁ…ま、一杯くらいいいか」
ローラ  「所長も一生懸命なんですよ。世の中に悪い人はいません」
ブラッド 「いや…それなら刑務所はいらないんだが…」

ベッドの上では未だにエフラムが寝こけている。診察の結論は異常なし、当然の結果だ。
ローラ  「はふぅ…美味しかったぁ…それじゃあ私は所長に診察記録を出してきますね。
      ちょっとその人を診ててあげてください」
ブラッド 「いや…まぁいいけど…起きたら採掘所に戻してかまわないよな?」
ローラ  「ええ、大丈夫だと思いますよ」
エフラム 「ふぁ…?」
     (い…いかん、眠っていたのか…どうなった?)

寝たふりをしながら様子を伺う…ローラが医務室を出て行った…ブラッドは椅子でコーヒーを飲んでいる…
エフラム (…おそらく俺の仮病はバレたはずだ…なにか罰則とかあるのか?
      たしかターナの作業所は指揮所の側…ほんの少しでも逃れられればいいのだが…そうだ!)
ベッドの中でもぞもぞと毛布を丸める。こうすれば布団の膨らみで誰か寝てるように見えるだろう。
ほんの少しの間でいいのだ。これで誤魔化そう。
ブラッドが向こうを向いてるうちにこそこそとベッドの下に入る。
エフラム (このまま…このままターナとコンタクトを取って情報を交換するのだ…)

402 :幼女の旗の下に:2010/04/23(金) 16:07:48 ID:hEtLF82n

41

作業所内は仰々しい機械音で満たされていた。
なにやら鉱石の加工に使う機械らしいがよくは教えられていない。
流れ作業に従って決まった手順で操作すればいいのだ。
作業着姿でレバーを弄っていると、自分も歯車になったような気持ちになる。
ターナ  「はふ~飽きた……」

昼のサイレンが鳴り響く。昼食の時間だ。
囚人たちに弁当がくばられ、めいめいそのあたりで座って食事にしている。
食事中は作業所の建物から出なければ行動は自由だ。
ターナ  (エフラムは今頃採掘所よねぇ…正直連絡のとりようもないわ…)
窓には鉄格子が嵌められ、入り口や搬入口には監視員がいる。

その時同室のキャスが立ち上がって歩いていくのが視界に止まった。トイレだろうか。
ターナ  (あれ、でもあっちは機材置き場よね…特に用事のあるような場所でもないはずだけど…)
なんとなく気になるが…だがエフラムと連絡を取る方法も考えなくてはならない。

ターナ  (うーん…どうしようか…)

1 キャスを追跡する なんだか気になる…す、ストーカーじゃないからねっ!私はロリコンじゃないもん!
2 座って考え込む  何かいい手、考えないと……
3 とりあえずトイレ トイレの事考えたら…今のうちに行っとこうかな

続く