25-454

Last-modified: 2012-08-27 (月) 21:47:21

454 :妹の攻勢:2010/04/29(木) 04:28:05 ID:1FQCUpM7

「リン…」
「兄さん…いいの?私…妹なのに…」
「もう我慢できないんだ…リン…」
「駄目…兄さん…にいさぁん!」

「…っっ!?」
視界に入ったのは見慣れた自室の天井。次に周りに目をやると、同じく見慣れた自室であった。
兄の姿はどこにもない。それを確認したリンは、ようやく現状を把握した。
「…な、なんだ…夢か…びっくりした…」

(何であんな夢見るかなあ…最近何か調子悪い…変にエフラム兄さんのことばっかり考えてるし…)
あの手紙の事件から、リンは気がつくとエフラムの姿を目で追ったり、エフラムに声をかけるときに妙に緊張するようになっていた。
(体調も変なのよね…何かあんまりご飯食べる気しないし…)
食も明らかに細くなっている、現に目の前に並んでいる朝食にもほとんど手をつけていない。
「リン、どうかしたか?全然食べてないじゃないか」
「に、兄さん…別に…何でもないから」
隣に座るその問題の兄が、食事に手をつけないリンを心配して声を掛けてきた。
リンは何故か反射的に平静を装い、目をそらしてしまう。
(あーもう!何で私が兄さんのやることにいちいち反応しなくちゃいけないの!?全部兄さんのせい…)
「体調が悪いのか?顔が赤いぞ」
「え!?いや、全然平気だから!気にしないで!」
「風邪か?ほら…ちょっとこっちに…」
「いや大丈夫……っ!?」
こつん、と音がして二人の額が触れた。互いの吐息がかかる位の距離に二人の顔が近付く。
「やっぱり熱があるぞ…今日は休んだほうが…」
(兄さんの顔がこんな近く…いや何考えてんの私!?でも……こ、これはなんかマズイ!?)
「そいやぁ!!」
「うおああぁあ!?」
「このh(ry」
リンが気合の叫びと共に渾身のヘッドバットをエフラムにお見舞いした。まともに食らったエフラムは隣に座っていた
リーフを巻き込んで窓をぶち破り、庭まで吹き飛んで行った。ひどい有様です。
「ちょ!?リン姉さんいきなりどうしたの?」
「いや…急に頭突きの練習をしたくなって…」
「何!?いきなり格闘家になりたくなったの!?」
「いやその…あはは…」
家族の突っ込みに対して何も言えず、リンは乾いた笑いを浮かべるのだった。

「もう下校か…はあ…学校にいる間は考えなくて済んだんだけど…」
家に帰ればエフラムと顔を合わさなければならない。それは別に嫌ではない、むしろ歓迎…いや別に普通だしと自問自答を繰り返す。
(私はどうなんだろう…エフラム兄さんのこと嫌いなのかな…それとも好…っ…じゃなくて…だいたい何で私がこんな…
 これも全部兄さんのせい…あれ?)
視界の端に見覚えのある姿が入った、エフラムだ。どうやらエフラムも下校途中のようであった。
(兄さん…どうしよ…一緒に帰ろうって言おうかな…でも何か恥ずかしいし…ってなんで兄妹で一緒に帰るのを恥ずかしがらなきゃ
 いけないの!?でも……ん?)
エフラムの姿をよく見ると、彼の周りにたくさんの小さな人影が見えた。
(なんだろ…ちょっと気になる…)

455 :妹の攻勢:2010/04/29(木) 04:30:23 ID:1FQCUpM7

エフラムの周りの人影が何故か気になり、リンはエフラムの声が聞こえるギリギリまで隠れて接近してみることにした。
電柱や建物の陰に隠れ忍び寄る、足にはちょっとした自信があるのだ。
(ここまで近付けば声は聞こえるでしょ…さて……って…!?)
「お兄ちゃん、あそんで~」
「こら、暴れるなって…」
(な、なにあれ…エフラム兄さんが幼女の集まりの中心に…)
幼稚園児位の歳の幼女がエフラムを囲み、彼にまとわりついている。エフラムはくっついてくる幼女を引っぺがすのに忙しそうだ。
「ほら、大人しくしろって…」
「お兄ちゃん、けっこんして~」
「ああ、大人になったらな。だから大人しく…」
(な、なにあれ…なんで学校帰りに幼女に囲まれてんの?幼女を吸い寄せる波動でも出してんの?て言うか幼女と結婚とか
 普通に犯罪でしょうが!?いやいくらなんでもあれは本気じゃないだろうけど…でもこのままじゃいつ兄さんが犯罪に走るか…
 兄さんを幼女に取られるなんて嫌…いやいや身内から犯罪者を出すわけにはいかないわ!こ、ここは私が何とかしないと!)

「兄さん、ちょっといい?」
「ん…リンか?」
帰宅し、自室でくつろいでいたエフラムをリンが訪ねてきた。エフラムはリンが自分の部屋に来るとは珍しいなと思いつつもドアを開けた。
「それで、どうした?」
「実は…分からない問題があるんだけど…」
リンはそう言いつつ、自分の教科書とノートをエフラムに見せる。
「俺にか?エリウッドに頼んでくれ、その方がいいだろ?」
「今忙しいから駄目だって…だからお願い!」
「仕方ないな…期待するなよ?」
(よし…まずは一歩前進ね…作戦通りにやるのよ私…)
リンは心の中でガッツポーズを取り、エフラムの部屋に入る。勝負は始まったばかりだ。

「で?どの問題だ?」
部屋の中心に置いてある小さな机に教科書とノートを置き、二人は並んで座る。
「これなんだけど…」
「……っ?」
リンは問題を指すためにエフラムの側に体を近付けた。その際にリンの胸がエフラムの腕に押しつけられ、有り余る胸が歪に形を変えている。
「…リン、少し離れろ。その、胸がだな」
「私はここからが見やすいの、いいから早く教えて」
リンが急かすように体を揺らすと、むにゅむにゅとでも音を立てそうな勢いでリンの胸が踊る。
(どう?兄さん?幼女なんかよりよっぽどいいでしょ?…胸があってよかったなんて思ったのは初めてだわ…変に視線集めたり
 肩こりの原因にしかなってないんだから、こんなときくらい役に立ってもらうわよ私の胸!)

「リン…次は保健の勉強をやろうか」
「…え?」
「お前の体を使ってな…」
「に、兄さん…」
「まずお前の体をよく見せてくれ…」
「兄さん…駄目…」

(なんてことになったりして…って違う!これは兄さんのロリコン治療なんだから…でも少しくらい期待しても…)
「リン、できたぞ。これでいいか?」
「え!?あ…うん…ありがと」
「頭を使ったら変に汗かいたな…風呂に入ってくる」
気が付くと問題は既に解かれていた。どうやら妄想に浸っている間にそれなりに時間が経過していたらしい。
(し、しまったぁ!まさかこんなベタなミスを…仕方ない…次の作戦に賭けるしかないか…)

456 :妹の攻勢:2010/04/29(木) 04:32:30 ID:1FQCUpM7

「やっぱり水着にすればよかったかな…ううん、こういうのは徹底的にやらないと…」
リンは裸にバスタオルを巻いただけの姿で風呂場の前に立っていた。当然、ただ風呂に入る為ではない。
今、風呂には先客がいる。エフラムだ。どうやら一緒に入るつもりのようだ。
(ここで私が一緒に入って…『兄さん…背中流してあげる』なんて言って体を密着させたら…いくらロリコンでも何らかの反応は
 あるでしょ…そのまま野獣と化した兄さんに…なんてことになったりとか…)
都合のいい未来を想像して一人で顔を赤くして悶えるリン。ひとしきり妄想に浸った後、呼吸を整えて風呂場の戸に手をかける。
(よし、行こう…あ…でもよく考えるとこの歳で兄さんと一緒に風呂に入ろうとか言うのありえないかな…頭でも打ったのかとか
 思われたらどうしよ…でもここまで来たらもう引けないでしょ…でも…も、もう少し考えとくんだった…)
「入らないならどいてくれる?」
「…っ!?だ、誰?って…」
風呂場の前で考えを巡らせていたリンに、突然声が掛けられた。声のした方に目をやると、見覚えのある少女の姿があった。
「サラ…な、なんでここに?…て言うか、それなに?」
「何って、お風呂に入りに来たんだからこれでいいでしょ?あなただって同じ格好してるじゃない」
サラもリンと同じく、裸にバスタオルを巻いた格好をしていた。同じといっても、その姿の凹凸には随分と差があるが。
「ふうん…風呂に…って!?今エフラム兄さんが入ってるんだけど!?」
「だから来たんじゃない、じゃ、お先」
「あっ…ちょ!?」
慌てるリンを尻目に、サラは風呂場に入って行ってしまった。程なくして、中から二人の声が聞こえてくる。

「兄様…背中流してあげる…」
「サラ!?お前また…」
「前は水着だったけど、今日はタオルだけ…嬉しい?」
「嬉しくない、ほら、さっさと出ろ!」
「あ、そんなに乱暴にしないで…タオル落ちちゃう」
「…く…仕方ない、気が済んだら早く出るんだぞ」
「最初からそう言えばいいの、…前も洗ってあげようか?」
「いらん」
「…遠慮しなくていいのに」

(こ、これは完全に予想外だわ…まさかあの悪魔少女に先を越されているなんて…!しかも…また、って言ってたから
 しょっちゅう来てたりするの!?…こうなったら、あれで行くしか…)

現在の時刻は午前一時を回ったところである。家族のほとんどが寝静まった中、リンはエフラムの部屋の前に立っていた。
格好は、下着に大きめのシャツ一枚のみというほぼ半裸といっていいものである。
(やっぱこれはやりすぎかな…でもこれくらいじゃないと反応してくれないかも…よし、行くわよ…)
そっとドアノブに手をかけ、なるべく音を立てずに慎重に開ける。音を立てないように部屋に入り、同じく慎重にドアを閉める。
次にエフラムの様子を確認する、耳を澄ますと、規則的な寝息が聞こえる。どうやら熟睡しているようだ。
忍び足でベッドに近寄る。エフラムの寝顔が確認できる程度まで接近すると、深呼吸をして息を整える。
(…この格好で一緒に寝て、朝に目が覚めればいくら鈍感でロリコンな兄さんでも反応してくれるはず…と言うかこれで駄目なら
 もう何やっても駄目よね…兄さん…ロリコンを克服して…)
リンはごくり、と生唾を飲み込み、布団を捲る。緊張のためか、手が少し震えている。
「兄さん…一緒に…って…な、な、なにコレ!?」
「…あら、今日はよく会うじゃない?」
震える手で布団を捲ったリンの目に、信じがたい光景が映った。先ほどエフラムの入浴中に押し掛けてきた少女、サラが
エフラムの隣で丸まっていたのだ。あまりの事態に、リンは現在の状況も忘れて大声で捲し立てた。
「ちょっ!?なんでいるの!?今何時…じゃない!なんでここで寝てるの!?」
「何って…添い寝してあげてただけ、あなたも同じつもりじゃないの?」
「わ、私は…!そんなつもりじゃなくて…!」
「…静かにして、兄様が起き…」
「何だ…うるさ…!?お前ら!?な、何なんだ!?」

457 :妹の攻勢:2010/04/29(木) 04:33:46 ID:1FQCUpM7

「あ~あ…起きちゃった」
「兄さんちょっと待ってて!今この子を帰すから!」
「…よくわからないけど、簡単には捕まらないから」
「あ!待ちなさい!」
「お前ら…ベッドの上で騒ぐなって…」
リンはサラを捕まえようと手を伸ばすが、サラは広いとは言えないベッドの上を器用に逃げ回る。それを追ってリンも
ベッドの上で暴れ回る。既に当初の目的は忘れてしまっているようだ。
「この…もう少し…!」
「だから騒ぐな…誰か起き…」
エフラムがそう言いかけた瞬間、部屋のドアが突然開け放たれた。
「ちょっと!静かにしなさい!みんな起きちゃうでしょ!お姉ちゃんも寝るんだか…ら…?」
戸を開けたミカヤの目に映ったのは、乱れたベッドの上で折り重なって横になっているリンとエフラム。
しかも、リンの方は何故か半裸な上に息が上がっている。
「あ、あなたたち…」
「いや…これは…誤解で…」
「そ、そうなの!ほら、サラも説明して…って、あれ…?」
部屋のどこを見ても、今まで追いまわしていたサラの姿が無い。
「え、あれ?なんで?」
「…逃げたな、あいつは捕まるような奴じゃないからな」
「…二人とも、そこに正座」
「「…はい」」
「…説明してもらいましょうか?場合によってはシグルドを起こすことも辞さないからね」
「う…わ、わかりました…」
ほぼ死刑宣告と言っていい言葉をさらりと言うミカヤに、リンは観念して全てを話すことに決めた。

「…なるほど、エフラムのロリコンを治したいと…」
「う、うん…最近兄さん変な活動始めちゃってるし…今日も学校帰りに幼女に囲まれてたし…本当になんとかしなきゃって思って…」
(俺はロリコンではないが…流石にここは黙っていた方がいいんだろうか…)
「…偉い!」
「「…は?」」
黙って話を聞いていたミカヤだったが、突如、そう叫んで顔を上げた。
「今までのリンなら『うわあ…また兄さんがロリコンっぷりを遺憾なく発揮してるわ…犯罪だけは起こさないでほしいけど…』とか考えて冷ややかに
 スルーしてたのに、まさか自分の体を犠牲にしてエフラムのロリコンを治そうだなんて…お姉ちゃん涙で前が見えないわ…」
(私ってそんな風に思われてたんだ…)
(やはり俺はロリコンだと思われていたのか…)
「わかったわ!リンの体を張ったロリコン治療を認めます!」
「「…え!?」」
姉からの辛辣な評価を受けて俯いていた二人だったが、姉の言葉を聞いて目を見開いた。

458 :妹の攻勢:2010/04/29(木) 04:35:15 ID:1FQCUpM7

「じゃあ…兄さんと一緒に寝てもいいの?」
「良し!多少過激なスキンシップも認めます!」
「た、多少ってどのくらい!?」
「それはリンの判断に任せるわ、エフラムが普通に同年代の子に興味を持てるようになるならなんでもいいから」
「う、うん…」
「じゃあエフラム!頑張ってロリコンを治すのよ!」
「いや、ちょっ…」
よくわからない内に自分に関する話を進められたエフラムは、ミカヤに説明を求めようとしたが、ミカヤは話がまとまったと
見るやそそくさと部屋を出て行った。後には妙に気まずい二人が残されてしまっていた。
「……………」
「…参ったな…どうしろって言うんだ…」
「…とりあえず…今日はもう寝よ?」
「寝るって…二人でか?」
「…うん」
「…分かった、姉上の言うことを無視するわけにもいかんしな。今日は仕方ないか…だが、俺はロリコンじゃないぞ」
そう言うとエフラムは、やれやれといった様子でベッドに入った。
「…ほら、入れ」
「ん…」
やや奥に詰めて寝ると、布団を捲り、リンを招き入れる。リンはやや気恥ずかしそうに布団に入ると、エフラムの側に体を寄せた。
「おい…あんまりくっつくな…」
「…だって、寄らないと狭いじゃない」
「…これはいつまでやるんだ?」
「…兄さんがロリコンじゃなくなるまで」
「じゃあ今日で終わりだな、俺はロリコンじゃないからな」
「嘘。私とこうしてて何も感じないならロリコンでしょ?しばらくはこのままね…」
(これは…どうすればいいんだ…退くも地獄、進むも地獄というやつか?だがこの場合何が退却で何が前進なんだ…わ、わからん…)
エフラムは、体に触れる妹の柔らかさに内心動揺しつつ、眠れない夜を過ごすのであった。

終わり