26-125

Last-modified: 2012-08-28 (火) 19:48:26

125 :兄が信用できなくて困る:2010/05/11(火) 04:10:15 ID:F43C9+bd

(はあ……)
その日、リンは不機嫌だった。と言っても、いつものように百合疑惑を掛けられたり、愚弟の軽口に腹を立てた訳ではなく、
別の理由があった。
(エフラム兄さん…全然手を出してくれな…じゃなくて!…興味を示してくれない…私がこんなに体張ってるのに…)
リンはここ最近、エフラムのロリコン治療(本人はロリコンではないと主張しているが)のために、一緒に寝たり
バスタオル一枚で一緒に風呂に入ったりとかなり過激なスキンシップを行っていた。だが、その努力も虚しく、
エフラムの様子には何の変化も見られなかった。
(これだけ露骨に迫られたら、いくら兄とはいえ何らかの反応があったっていいはずなのに…今日の朝だって…)

「兄さん…おはよ」
「あ、ああ…おはよう」
「兄さん、胸、触ってる…」
「す、すまん…起きたら偶然そこに手が…」
「そう…触りたくて触ったんなら兄さんのロリコンが治ったと思ったのに…」
「…ああ、もう治ったさ」
「え…?…っ!?兄さん…」
「もうお前にしか興味がない、リン…」
「ああっ…にい…さん…!」

(こうなっても良かったのに…!実際は私よりとっとと先に起きて『遅刻するぞ、早く起きろ』って言って私の顔を
 ぺちぺち叩いてたし…!おかしくない!?もっと別の反応あるでしょうが!?)
兄の鈍感さを思い出すと自然に腕に力が入る、今にもぎりぎりと音を鳴らしそうだ。
「あの…姉さん…さっきの暴言は謝りますからそろそろこのチョークを解いてくれませんか…」
「今日リン姉さんやけに力入ってるなあ…他人は僕みたく簡単に復活できないんだから、そろそろ止めてあげたほうが…」
もう内容は忘れたが、いつものように軽口を吐いたマルスを捕獲していたが耳を貸さない。今のリンはエフラムのロリコンを治す
ことで頭が一杯だ。解放を促すリーフの声も当然耳に入らない。
(今日も幼女に囲まれてたし…私より幼女ハーレムの方がいいのかな…ん?そ、そうか!これだったのよ!)
「…これは…死…」
「な、なんかどんどんやばい顔色に…」
(何でこんな簡単なことに気付かなかったのかな…効果がないんじゃなくて、足りなかったのよ!よーし…待ってて兄さん!
 私が必ずロリコンを治してあげる!)
「…ぐふっ……」
「ああっ!?それはこの町では絶対に言ってはいけない台詞!ちょ!?姉さん!早く解放して!」

「兄さん、ちょっといい?」
「…リンか、どうした?」
日曜日の午後、自室で横になっていたエフラムは、妹の声を聞くとやれやれといった様子で体を起こす。
(それにしても…よく来るな、あいつ…)
エフラムは内心、またか、と思った。ここ最近、休みになるとリンが買い物に行こうだの手合わせの相手をしろだのやけに絡んでくる。
リンが言うには、『兄さんは普段幼女とばっかり接してるから変な性癖を覚えちゃったの、だから妹でも年齢の近い娘と接しなきゃダメ!』
ということらしい。
(全く…どうすればわかってくれるんだ…俺はロリコンではないと何回説明したか…)
今回も適当に付き合って終わらせるか、と思いつつドアを開ける。
「リン、今日は何…ん…ターナじゃないか、どうした?」
「あ…エフラム…その…」
「私が呼んだの。入るね兄さん」
「あ、ああ…」
何がどうなっているのかよくわからないままエフラムは二人を部屋に招き入れた。
部屋に入り、三人が腰を下ろしたところでリンが話を切り出す。

126 :兄が信用できなくて困る:2010/05/11(火) 04:11:52 ID:F43C9+bd

「兄さん、兄さんはロリコンよね?」
「またその話か…何回でも言うが俺は違…」
「私はどうして兄さんがロリコンになってしまったのか考えたの。そして一つの結論に到達したわ。…ターナさん?」
「ねえ…本当にやるの?」
「やります!ターナさんも兄さんがロリコンなのは嫌なんでしょ?」
「それは…わ、わかったわ…!」
「おい…何をする気だ?」
「問答無用!ターナさん!」
「う、うん!」
リンの声を合図に、二人はエフラムの左右に回ると、エフラムの腕を取って抱え込んだ。
二人の豊満な胸が、ぎゅうぎゅうと音を立てるかのような勢いでエフラムの腕に押しつけられる。
「な、何だ!?」
「兄さんは複数の幼女に逃げ場無しの状況で迫られ続けたからロリコンになったのよ。だから私たちも一人づつじゃなくて
 二人で兄さんを更生させるの!」
「ちょっと恥ずかしいけど…私、頑張るから…!」
「お、お前らな…」

「あら、面白いことになってるじゃない」
「ん…サラ!?いつの間に…」
気がつくといつの間にかサラの姿が部屋にあった。どうやらまたリワープで部屋に侵入してきたようだ。
「遊びに来たんだけど、何なのこれ?」
サラはそう言うとデジカメを取り出し、三人に向かってシャッターを切り出す。
「ちょっ!?何撮ってるの!?」
「別に…面白かったから(妹と幼馴染に迫られて困惑する兄様…面白いわ…後で兄様専用フォルダに入れとこ…)」
「と、とにかく!今私たちは忙しいの、兄さんに用事があるならまた今度にして」
「ふうん……!…そう」
サラは一瞬考える素振りを見せた後、何やら思いついたのか一瞬だけ俯いて顔を赤くした。だがすぐに元の様子に戻り、
エフラムに近づいてきた。
「遊ぼうと思ったけど…忙しいみたいだし、用が済んだらすぐ帰るわ」
「そ、そうか…用って何…」

「んっ…」
「…!?」
「ちょ……!?」
「な…!?」
「…ん……」
「…っ…!?」
「…ん…む…っ……はあ…ごちそうさま…」
「サラ…お前…」
「いっつも逃げられちゃうけど、今日は姉様たちが押さえててくれたから…じゃあね」
サラはそう言うと、リワープを使って帰ってしまった。後には気まずい様子の三人が残る。
「あいつは…」
「あ、あの子…」
(な、なんなのあれ!?びっくりして何もできなかった…!兄さんがあの子とあそこまで…まさかでしょ…
 あれじゃあ兄さんのロリコンが治らない訳だわ……!?)
先ほどのサラの行動に衝撃を受けて混乱していたリンだったが。ある考えが頭に浮かんだ、そしてターナの方に目をやると、
自分と同じように何かに気付いたのか、視線をこちらに向けている。

127 :兄が信用できなくて困る:2010/05/11(火) 04:14:55 ID:F43C9+bd

「………」
「………」
二人は無言で片手を上げると、申し合わせたかのようなタイミングで振り下ろす。リンの手は何かに待ったをかけるかの様に
大きく開かれている。もう一方のターナの手は硬く握りしめられている。
二人は互いの手を確認すると、リンは手を天に突き出して大きくガッツポーズを取り、ターナはがっくりとうなだれる。
「…じゃあ、私が先ということで」
「くうっ…何でこんな時に…!」
(…何なんだ?)
「…兄さん」
「な、何だ?」
「兄さんは普段からあの子と…あんなことをしようって狙われてたりするのよね?だからロリコンが治らなかったのね…」
「だから俺は…」
「あそこまで進んでるなあら、歳の近い娘としないとロリコンは治らないと思うの…だから…」
リンがエフラムにゆっくりと近づく。頬は上気し、目も充血している。口調は静かだか、酷く興奮しているようだ。
「お、おい…だからって兄妹でだな…ターナからも言ってやってくれ」
「ごめんなさいエフラム…私も多少の荒療治は必要だと思うの…そ、それに…次は私と…」
(こ、これは駄目だ…)
気がつくとターナに片腕を完全に押さえられている。逃がすつもりは無いらしい。
「兄さん、いい加減諦めて…わ、私だってべつにしたいわけじゃ無いんだからね!」
「リン、お、落ち着け…ほら、誰か気付くかもしれないだろ?」
「大丈夫、今日はみんな出かけてるから、叫んだって誰も来ないわ…」
「女が言う台詞じゃないだろ!?落ち着け!」
「兄さん…」
「……っ!?リン!」
「…きゃ!?」
「…!?に、兄さん…!?」
突然エフラムが弾かれたかのように動いた。腕を捕らえていたターナを突き飛ばし、リンを押し倒して床に組み敷く。
「に、兄さん…いきなり…その…心の準備が…」
「何言ってる…あれを見ろ」
「え…これは…!?」
周りを見てみると、天井から頭の高さまでの壁が消えてしまっていた。そしてエフラムが示した方向を見ると、
巨大な竜がこちらを見据えていた。
「あれ…ミルラじゃない?」
「ああ…おーいミルラ!駄目だろ、いきなりブレスを撃ったりするな!危ないだろ!」
(危ないで済む話じゃないと思うんだけど…)
「だ、だって…エフラムが…その…三人で…してるって聞いて…私…」
「…誰が何だって?」
「サラ…あの子…」
誰がミルラに吹き込んだかなど考えるまでもない。奴は小悪魔なんて可愛らしいものではない、
正真正銘の悪魔だ!とリンは改めて認識した。
「と、とにかく落ち着いて…私たちは別に…ねえエフラム?」
「そ、そうだ、俺たちは別に…」
「でもさっき…その人と…」
「あ、あれはね…何と言うか…」
「ダメなんです…エフラムが…私くらいの子を好きでなくなっちゃうなんて…」
「待て!ミルラ!落ち着け!」
「ダメなんですうぅっっっ!!!」

128 :兄が信用できなくて困る:2010/05/11(火) 04:18:35 ID:F43C9+bd

「本当に申し訳ありません…妹がご迷惑を…」
「いや、気にしないでくれ」
「家が倒壊するのなんて慣れっこだしね」
(私は慣れてないんだけど…)
眠っているミルラを背負ったユリアが頭を下げる。あれから暫くして、化身して家を飛び出して行った妹を追ってユリアが現れた。
そして、泣きながら大暴れするミルラが疲れて動きを止めた瞬間、ユリアがミルラにスリープをかけたことで騒動は治まった。
事態が沈静化したとはいえ、兄弟家の家屋は既に瓦礫の山になってしまっていたが。
「本当に…なんでこの子はこんなことを…」
「…さ、さあ?このくらいの歳の子には色々あるんじゃない?」
「…?はあ…」
何か腑に落ちないといった様子のユリアだったが、考えても仕方ないと思い、申し訳なさそうに何度も頭を下げると、
静かに去って行った。
「…じゃあ私も帰るね…」
「あ、ああ…何か知らんが悪かったな…」
「ごめんなさい、ターナさん。…次は上手くやりましょう」
「え?まだやるの…?」
ターナはもううんざりとでも言いたげなふらつく足取りで帰って行った。
後には何やら微妙な雰囲気の二人が残る。
「…なあリン、何で…」
「兄さん」
「ん?」
「やっぱりあのくらいの歳の子がいいの?私……みたいな歳だともう興味無い?」
「だからな…」
「ロリコンじゃないなら、証明して」
「証明って…どうすればいい?」
「その…私に…」
「お前にって…俺たちは…」
「幼女とは出来て…わ、私とは駄目なの!?やっぱりもう更生出来ないくらいのロリコンなんだ…」
「い、いや、それは違うぞ」
「じゃあ…証明して」
「むう…」
エフラムは悩んだ。日頃から自分が受けている誤解、そして先程のサラとの行為を見れば、確かに行動で示さなければ
誤解は晴れないだろう。だが、相手は妹なのだ。そう簡単に同じことをしてやる訳にはいかない。しかし、
ここで適当にはぐらかすとリンを酷く傷つけてしまうような気がした。
「仕方ない…リン、来い」
「…ん」
リンが近づいてくると、エフラムはリンの肩に手を置いて引き寄せる。
(兄さん…)
リンは、エフラムの顔が近づいてくるのを見ると、静かに目を閉じた。
「………」
「……っ?」
「…ほら、これでいいだろ?」
「…おでこ…?」
「…兄妹だからな」
「…何か誤魔化された気がするんだけど」
「充分証明になっただろ?」
「まあいいわ…今日は」
「今日はってなあ…もういいだろ?」
「駄目、私が納得するまで証明してもらうから…覚悟しててね、兄さん」

終わり