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Last-modified: 2012-08-28 (火) 19:53:22

154 :幼女の旗の下に:2010/05/15(土) 23:13:53 ID:wvMfxNT7

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2 ラーメン屋へ行く 流星軒のラーメンが食いたくなったな

シグルド 「流星軒がいいかな。ラーメンとギョーザを食いながらビール…っと仕事中だった。
      いけないいけない」
脳裏をよぎるアルコールの誘惑を振り切ると、本社ビルを出て商店街に向かう。
少し足を伸ばすことになるが、たまにはいいだろう。

しばらく歩いて商店街にさしかかる。
夕食の時間真っ只中だ。込んでる時間帯だし少し待つかもしれない。
…と、思いきや流星軒は静寂に支配されていた。

シグルド 「…おや? なんだか静かだが…」
電気はついてるから営業はしてるようだが……
のれんを潜って引き戸を開ける。威勢のよい声がシグルドを出迎えた。

ラクチェ 「へい、らっしゃい!」
シグルド 「……………」
無言で引き戸を閉めると踵を返す。
シグルド 「この近くにコンビニはあったかな……」
ラクチェ 「ちょっとまったァーーーーーーッ!?
      人の顔見て帰るなんてひどいんじゃない!?」
全速力で店からラクチェが飛び出してきた。
どうも逃げそびれたようだ。
シグルド 「いや、すまない…だがまだ仕事があるんだ。食中毒になるわけにはいかなくて…」
ラクチェ 「ひどっ!? 私だってあれから腕を上げたのに!?」
シグルド 「ええと…アイラやスカサハはどうしたのかな?
      できればその2人に作ってもらったほうが…」
ラクチェ 「二人ともインフルエンザで寝込んでるのよ!さっいーから食べてって!
      一名さまごあんな~い!」
半ば強引に引きずり込まれ、カウンター席につかされる。
こうなったら覚悟を決めるしかないか…

155 :幼女の旗の下に:2010/05/15(土) 23:14:38 ID:wvMfxNT7

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ラクチェは自信を持っていた…未だにアイラはアイク以外の客にラクチェがラーメンを作ることを許さないが、
アイクがうまいうまい言って食うもんだから、
「私も普通のお客さん相手にラーメン作れるんじゃね?」とか思うのも無理はない…かもしれない…
…それでアイラの臨時休業の指示に背いてこっそり無断で店を開けた結果が…閑古鳥である…
こうなったら意地でも一人くらい美味いと言わせてやらんと立つ瀬がない。

ラクチェ 「さっご注文をどーぞ!!!」
お冷の出し方ががちゃりと音を立てて実に荒っぽい。
カウンターに置く時に微妙に毀れたし親指が入っていた。
ヨハヨハなら「ラクチェ汁」とか言って喜んだかもしれないが……
シグルド 「ああうんそうだね……それじゃあ…」

お品書きを覗く…麺類以外のメニューはマジックで乱暴に塗りつぶされていた…
ギョーザだの中華丼だの野菜炒めだのは作れないらしい……

シグルド 「それじゃあ…塩ラーメンがいいかな…」
ラクチェ 「塩ラーメン一丁!うりゃあああああ流星剣!!!」

一瞬、緑色の光が輝くと凄まじい剣戟が厨房を駆け巡る!
以前よりほんのわずかに料理の腕を上げたラクチェなのだが…
つい気合が入りすぎて力んでしまい、再び鍋やまな板がバラバラになっていく……

ラクチェ 「塩ラーメンお待ち!」
シグルド 「……………」
気合の入れすぎは返って失敗を生むというか…ラーメンからは鍋の取っ手が覗いている…
しかもスープが異様に濁っている…のだが、「どうだ!」とばかりに胸を張って瞳を輝かせているラクチェに、
「こんなもん食えるか!」と言うにはシグルドは人が好すぎた…
シグルド 「そ…それじゃあ食べてみようかな……うぐぇぇぇぇ……」
ラクチェ 「ええええええぇぇぇぇぇっ!?なんでよーーーーーーーっ!?」

青い顔をしてシグルドはうずくまる……
なんだか腹が変な音を立てている……

156 :幼女の旗の下に:2010/05/15(土) 23:15:21 ID:wvMfxNT7

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シャナン 「うむ、今日も少女たちのため武術に励んだぞっと……」
童女…もとい道場の仕事を終えたシャナンは鼻歌など歌いながら帰宅してきて…流星軒が騒がしいことに気付いた。
シャナン 「ん? 今日は臨時休業にしたんじゃなかったか?」
アイラ達は自宅部分で寝てて、ホリンの看病を受けてるはずだが……
気になって店を覗いてみると、頭にたんこぶをつくったラクチェが倒れていた…
その傍らでマスクを付けたアイラがフラつきながらも怒鳴っている。
付き添っているホリンのうろたえっぷりが哀れだ。
アイラ  「ゴホゲホゲホッ!…このバカ娘!また私の言い付けを破って…ごーほごほごほごほっ!?」
ホリン  「アイラ、無理をするな体にさわる…ラクチェだって反省しているさ」
アイラ  「うるさい、そうやって貴様が甘やかすから……ゲホガホゴホッ!!!!!」
とりあえずなんかあったらしい。
はっきり言うがラクチェはトラブルメーカーであり、こうしてアイラに叱られるのはいつものことだ。
まぁそんなやんちゃなところがシャナンにとっては可愛いのだが…
よく見ると兄弟家のシグルドも青い顔をして座敷に寝ている。
本当になにがあったのか…だが、口を挟むとアイラの怒りが怖い。
アイラのしつけの厳しさは骨身にしみている。
…そのわりになぜかシャナンはロリ…もとい少女を守る者となったが…

アイラ  「シグルド殿、まことに申し訳ない…ラクチェには私からよく言ってきかすから…
      げ~ほげほげほっ!?」
シグルド 「あ…ああ…いや、いいんだ…」
アイラ  「シャナン…シグルド殿を送ってくれ…」
シャナン 「う、うむ…わかった」

肩を貸すとシグルドを店から連れ出した。
ラクチェが気になるが…仕方ない。
シャナン 「家まででいいか?」
シグルド 「ああ、世話になるよ……」

こうしてシグルドは残業が出来ず、その日の仕事を翌日に持ち越す羽目になった……

157 :幼女の旗の下に:2010/05/15(土) 23:16:11 ID:wvMfxNT7

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翌日…グランベル社でシグルドは仕事の山に埋もれる事態となっていた。
やばいレベルだ。
アレク達に手伝ってもらってもおっつかない。
いつもなら受付のそばの自販機で休憩してる時間帯なのだがその余裕はなかった。

そんなシグルドの事情とは関わりなく、ラケシスはエフラム、トラバントと共にグランベル本社ビルの受付を訪ねていた。
ラケシスの召集で不信任案に合意している党首たちを伴って、再びクルト社長を説得に来たのである。
ラケシスはあまりの返答の遅さに業を煮やしていたのだ。

トラバント「…立派な本社ビルではないか…フン、ブルジョワどもめが…
      ワシら労働者を低賃金でこき使ってこんなものを建てる金を溜め込みおってからに」
ラケシス 「貴方の考えはそれでいいけど、クルト様の前では態度に出さないでほしいわね」
トラバント「わかっとる」
エフラム 「兄上の職場に来るのは初めてだな…」
ヴァハ  「どうぞ、社長室階へのエレベーターはあちらになります」
ラケシス 「ええ、ありがとう」

3人はクルトの社長室を訪れる。
そこにはちょうどレプトール専務の姿もあった。
レプトールはフリージ系企業の会長であると同時にグランベル社の常任役員としても名を連ねる財界の大物であり、
バーハラ保守党の大幹部である。

クルト  「少々立て込んでおりましてね、不信任案のことはお返事が遅くなって申し訳ない…今しばらく待ってはいただけませんか?」
ラケシス 「ええ、それはよろしいのですが…本日はトラバント様、エフラム様両党首も交えまして改めてお話をしたいと思いまして」
トラバント「左様、元老党は貧者を虐げて贅の限りをつくしております。
      かのような政権に紋章町の未来をたくすことはできませんぞ」
クルト  「ああいや…貴方たちのいうこともよくわかる。我が党としてもその辺りはよく理解しております」
エフラム 「ならば共に立ってはいただけませぬか?」
レプトール「……貴方方はそう言われるが…我が党からも政府に閣僚は出しておりましてな。
      首相職が元老党とはいえ、倒閣にはデメリットがある…その辺りをご理解いただきたい」
ラケシス 「貴方がたにとっても倒閣は次の政権を取るチャンスじゃありませんか?
      自ら信じる政治信条のため、元老党と妥協すべきではないと思いますが」
エフラム 「その通りです。バーハラ保守党はグランベル、フリージ等を支持基盤としていると聞き及びます。
      俺…私も兄がグランベルの社員です。グランベル社の社風は正義と信念を重んずるものと信じています」
レプトール「……ふむ…兄上がな……」
     (クルト様に余計な事をほざきおってこの青二才…どうしてくれるか)
クルト  「あなた方のお考えはよくわかりました…ですが私の一存で党の方針を決めるわけにはいかないのです。
      近日中に改めてお返事しますので…」

結局この日は協力の約束を取り付けることはできず、
3名はしぶしぶと帰ることとなる……

それから数日…事態は別の方向に向かいつつあった。
それは巨大な落雷となってシグルドの身に降りかかるのである……

158 :幼女の旗の下に:2010/05/15(土) 23:17:54 ID:wvMfxNT7

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今日はなんだかアルヴィス課長の様子がおかしかった。
なにやらシグルドの様子を見てはうろうろしている。
シグルド 「?」
妙ではあるが溜まった仕事が片付いていない。
それらに手をつけようとすると…アルヴィスは意を決したようにシグルドに声をかけてきた。
アルヴィス 「少し…いいかね?」
シグルド  「…? ええ」
本当は余裕はないが、上司相手にはそう言いにくい。
アルヴィスに伴われて小会議室に来た。今の時間は誰もいない。
なにか込み入った話でもあるのだろうか…
アルヴィス 「シグルド…お前なにかしたのか?」
シグルド  「は? 何の話だ?」

2人きりの時は学生時代のようにタメ口に戻る2人である。
アルヴィス 「お前の…転属が人事で検討されてるらしいじゃないか…しかも専務直々の指示でだ!」
シグルド  「へ? え、え、ええええええっ!? ちょ…ちょっとまってくれ!
       なんのことだかさっぱりわからん! 大体レプトール専務みたいな大物が、私ごとき末端の係長のことなんか知ってるはずないだろ!」
アルヴィス 「そ…そうか…だが人事部から聞いた話だ、間違いはない…お前専務の怒りを買うような事したんじゃないのか?」
シグルド  「いや…ほんとに心当たりないってば!? そもそも転属先はどこなのさ!?
       そ…そんな怒りを買った人間が行かされるようなところなのか!?」
アルヴィス 「あー…うむ…まだ検討中らしいんだが…第一候補は………
       ヴェルダン支店マーファ出張所……らしい」

アルヴィスの口から漏れた支社名は……辺境中の辺境だ……
格付け、重要度の低さから支社を名乗ることすら許されず、業務上は支社ポジションでありながら支店待遇となっている…
しかもその枝葉とも言うべき出張所…いったいどんな山奥なのか…
ヴェルダン支店は仕事で重大なミスを犯したものや、無能の烙印を押されたものの左遷先の代名詞ともなっている場所である。
ここに飛ばされて本社に返り咲いた者はおらず、サラリーマン生活に絶望して退職する者も多い…
当然昇進とも無縁となる。ヴェルダン所属の50過ぎの者が本社の二十代後半くらいの者より下なんてことはザラらしい。
一生飼い殺しでうだつのあがらない人生を定年まで送る羽目になるのだ……

シグルド 「あばばばばばばば…私のサラリーマン人生オワタ」
アルヴィス「ま…まぁまだ本決まりではないというが…その…なんだ…ディアドラは私が幸せにするから、
      空気の美味しい田舎で体を休めてくれ…綺麗な湖もあるというし、そんな生活もいいじゃないか」
シグルド 「いやじゃああああああああディアドラと離れるのいやじゃああああああああ!?」

159 :幼女の旗の下に:2010/05/15(土) 23:20:21 ID:wvMfxNT7

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一人のサラリーマンの人生が危機に晒されている頃…
その原因の一端を担ったエフラムは…まったくそんな事態が起きているとは知らなかった。
この時期のエフラムは、地道に各地を回って演説会を開いたり、
自らの考えを世に広げるための執筆活動にいそしんでいた。
幸いサラが多額の資金を集めてくれたため、活動資金は潤沢にあった。
党員も40名まで増えていた。もっとも他の巨大政党とは比べるべくもないが。
エフラム 「それはいいが…お前がいつの間に正式の党員となっているんだ…」
サラ   「クスクス…いいじゃない。それとも幼女は入党できないの?」
エフラム 「まぁ…いいがな…」
サラ   「ね、私の言ったとおりだったでしょ?」
エフラム 「ああ、セフェラン殿と会えたことは俺の思想にとって大きな前進だ。
      幼女主義社会の実現には幼女思想を発展させねばならん」
サラ   「その意気その意気」
マンフロイ「……」
エフラム 「そしていつの間に党員になってるんだ…ロプトの連中が…」
サラ   「役に立つわよ?」
エフラム 「まぁ…俺も留守にしてた間のことだし、他の仲間たちが受け入れてたんならいいが…」

自らの不在時に党も幾分か変わっていた。
解散させられたマンフロイの党の党員たちは、鉄血幼女守護同盟と合流したのである。

サラ   「これだけ活躍したのだから…ご褒美…いいよね?」
エフラム 「ああ、そうだな……それでは…」

続く

1 よし公園で砂遊びしよう    うむうむ、幼女らしい健康な遊びだな
2 なにかおやつでもあげるか   チョコレートか飴玉か…それともビスケットがいいかな
3 たまにはキスでもしてやるか  いつもねだってくるしな…俺はロリコンではないが、キスは挨拶という文化もあると聞く
4 幼女のコーナーに出してやろう 機関紙でサラの特集を組んであげよう、きっとターナも張り切るぞ
5 高い高いしてあげよう     よくチキやファにもしてやってるしな、きっとはしゃぐに違いない
6 マンフロイの肩叩きをしよう  サラに替わっておじいちゃん孝行しよう