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Last-modified: 2012-08-29 (水) 20:32:47

101 :幼女の旗の下に:2010/06/20(日) 13:21:12 ID:PnGKjSPs

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3 ロイド案を採用する  市街地へ帰るか…消極策だが手堅いかも知れんな

エフラム (スクリミルは半端じゃない強さだった……
      どうにか引き分けに持ち込んだが手を読まれた今ではもう一度やったら負けるだろう…
      それすらしのぐ相手と戦うよりもロイドの言葉は合理的やもしれん…だがそれでよいのか?)
オグマ  「エフラム…どうする?」
エフラム 「うむ…いささか消極策ではあるが…ロイドの提案を取る。明日になったら市街地へ引き上げよう」
シャナン 「なにい!? 馬鹿な!!! 考え直せエフラム!
      白鷺や鷹の幼女も守らねばならぬではないか!!!!!」
ロイド  「そのための政権掌握のため、ここで市街地へ引き返すのがよい…というわけだ。
      今回は俺の考えが正しいと思うぜ。シャナンの情熱も理解できるけどよ。
      白鷺や鷹の説得は難しいだろう」
シャナン 「そんなことはない! 幼女への愛はあらゆる種族が持っているはずだ!
      エフラム、再考を求める!」
カナス  「シャナンさん…」
オグマ  「党首が決めたことだ。気持ちはわかるがこれ以上言うな。
      それでは今夜はこのまま一泊して明日の朝に市街地へ発とう」

食事を終え、軽く酒を飲んだ面々(エフラム以外、お酒は20歳になってから!)は旅の疲れを癒すべく
借りた部屋へと移った。
6人では少々狭かったが毛布やマントに包まって思い思いの場所ですぐに眠りにつく。
寝息やらいびきが響く中、一つの人影が起き上がった。
人影は周囲を伺うと足音を殺して部屋を出て行った……

102 :幼女の旗の下に:2010/06/20(日) 13:21:56 ID:PnGKjSPs

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グランベル社の社長室ではクルト社長が憔悴しきった顔で仕事に当たっていた。
顔色が悪く頬もこけている。このところあまり眠れていないのだ。
ここしばらくの一連の事件でバーハラ党が大きく衰退した事は大きな重圧となってクルトの精神を蝕んでいた。
リング  「社長…少し休まれてはいかがですか?」
クルト  「いや…そうもいくまい…早く仕事を終わらせて選挙活動に当たらねば…
      このままでは次の選挙では第2党の座からも落ちかねない…」
リング  「ですが…このままではお体に触ります。レプトール専務の職務まで代行されているのですから…
      せめて会社の業務だけでも他の者にお任せされたほうが…」
責任感の強いクルトは人に物事を任せるのが苦手であったが…リングの言葉は最もだ。

クルト  「そうだな…では誰かに私の仕事を補佐させよう。だれかよい人材はいるか?」
リング  「それでしたらアルヴィスがよろしいでしょう。若手の中では一番の出世頭ですしかなりの業績をあげております。
      まだ若年ではありますがヴェルトマー公爵家の家督を継いでおり、
      古きよき紋章町貴族の伝統をよく理解しておりますし、よく社長を補佐できるでしょう」
クルト  「ああ…そうだな。あの者ならよく働いてくれるだろう」

目を通していた書類をデスクに置くとクルトは顔を上げた。
このところ張り詰めていた顔がほころんでいる。
クルト  「知っているかなリング? あの者は社交界の令嬢たちから我が社の女子社員までかなり人気があるようだ」
リング  「それはそうでしょう。名門の党首にして社内でも将来は経営陣に加わること請け合いの才気の持ち主ですし…
      あのとおりの美男ですしな」
クルト  「うむ、娘の婿に相応しい」
リング  「ほぅ初耳ですな。ディアドラ様とそういったお話が?」
クルト  「ああ、娘も憎からず思っているようで時折娘からアルヴィスの話を聞く…
      この際だ。レプトールがいつまでわが社に留まるかわからぬし後の者を考えねばならん。
      才能も実績も充分とはいえ若すぎるという非難もあろう。
      しかし…私の娘婿ということであればみなも納得するだろう」

貴族というものは血統や婚姻によるコミュニティを重んじる。
クルトがアルヴィスを自分の手元に置くにあたり、それを考えたのは自然なことであった。
それにディアドラとの仲もよいようであるし…ちなみにクルトはアルヴィスが振られたことを知らない。
その話になると必然シグルドの話をしなければならないため伏せているのだ。
自分の一存でシグルドと結婚の約束をしたディアドラではあるが当面家族には秘密にするつもりであった。
平民出身の上、社内でも成果をあげられず左遷された男とあっては猛烈に反対されるのは目に見えている。
そのためシグルドが周囲も一目置くほどの成果をあげて本社に戻るまでこの事は伏せているのだ。
シグルドもディアドラの家族の反対を押し切って結婚しようとは考えていない。
それはディアドラの人生を引っくり返すようなものであり、それよりもきちんと周囲に祝福される形での結婚を望んでいるのだ。
だから今は左遷先で頑張ることにしている。
だがいずれにしてもクルトがディアドラの交際関係を知らないのは事実であり、
実際彼はシグルドの顔も名前も知らなかった。
クルトはいまだディアドラがアルヴィスと付き合っているものと思っていたのである。

103 :幼女の旗の下に:2010/06/20(日) 13:22:38 ID:PnGKjSPs

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リング  「ふむ…なら善は急げということで早めに婚礼を進められてはいかがですか?」
クルト  「そうだな…このところあまり家に帰れていないし…少し娘と話をする機会を作るべきかもしれないな」
その時デスクの上の電話が鳴った。受付からの回線だ。
クルト  「なにか?」
ヴァハ  『ただいま受け付けの方にバイロン様の使いの方が参りました。
      社長への面会を求めておられます』
クルト  「…ああ…わかった。通してくれ」
ヴァハ  『はっ』

ややあって…社長室の扉を潜ったのはオイフェであった。
クルト  「君か…なにかバイロンの用を伝えにきたのだろう?」
オイフェ 「は…お館さまは今回の事態を深く憂慮されております」
クルト  「…無理もない…こたび我が党が大きく割れてしまったのは私の力不足ゆえだ…」
オイフェ 「…元来主家筋に当たるバーハラ家にシアルフィとしては厳しいことは申し上げたくありませんが…
      大統領としてはこれ以上、元老党が台頭することは望ましくありません」
クルト  「……返す言葉もない……党勢の回復には時間がかかる……現在は他の保守系政党との連立を図っている…
      大統領の助力を願いたい…とバイロンには伝えてくれ」
オイフェ 「心得ました」

クルトは深くため息をついた。
彼を憂慮させる原因は容易に取り除けそうもない…

104 :幼女の旗の下に:2010/06/20(日) 13:23:22 ID:PnGKjSPs

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朝の日の光が降り注ぐ女神に祝福されたセリノスの森の中。
木をあまり切らずに済むよう配慮された小さな家が木に寄り添うように何件も立ち並んでいる。
広大なセリノスの森にはこういった集落が何箇所かに存在するが、ここはロライゼ族長が住む中心的な集落であった。

他の家とそう大きさも変わらない質素だが清潔感のある家が族長の家である。
ロライゼは健康を崩してもう5年にもなる。
父の枕元に寄り添うのは息子のリュシオンだ。
リュシオン「父上…お加減はいかがですか?」

※注 マルス「白鷺同士の会話では古代語が用いられてますが、
       ここでは現代語に翻訳しています」

ロライゼ 「……あー…む……悪くは…ない…」
リュシオン「……朝食です。ゆっくりと召し上がってください」
木製のスプーンを父の口元へと運んでいく。
父は満足に体を起こすことも適わない。
ロライゼ 「………まだ…退かぬか……」
リュシオン「幾度も要求しておりますが…ニンゲンどもめ、聞く耳持ちません。
      父上…幾度も申し上げておりますが禁断の呪歌をもって…」
ロライゼ 「いや…それはならん……ニンゲンが報復してきたら一族が滅びてしまう…
      ゴホッ…ゲホゲホッ!!!!」
リュシオン「父上!?」
ロライゼ 「だ…大事ない……よいか…短気をおこしてはならんぞ…」
リュシオン「父上がそう言われるなら…」

鳥翼族白鷺A「リュシオン様! ニンゲンです! ニンゲンが入ってきました!」
慌ただしく白鷺の男が駆け込んでくる。
リュシオン 「静かにしろ! 父上のお体に触る!」
そういうリュシオンの声が一番大きい。
鳥翼族白鷺A「す…すみません…」
リュシオン 「それで何者だ?」
鳥翼族白鷺A「若い娘が3人…リュシオン様に面会を求めております。
       なんでも政党の幹部とか…」
リュシオン 「会わん! 追い返せ!」
鳥翼族白鷺A「よろしいので?」
リュシオン 「連中の使いでもないようだ…ならば、それ以外のニンゲンに会う理由がどこにある?」

苦々しく吐き捨てて、リュシオンは忌まわしそうに口元を歪めた。

105 :幼女の旗の下に:2010/06/20(日) 13:24:14 ID:PnGKjSPs

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朝、宿の一室で目覚めたエフラム達は騒然としていた。
シャナンがいないのだ。枕元には手紙が残されていた。
それを手に取ったカナスが読み上げる。

カナス  「私一人でも白鷺を説得してみせる!……どうやら昨夜のうちに一人で出たようですね…」
エフラム 「むぅ…シャナンのやつ…」
ロイド  「大した自信だが……勝手なことを…」
オグマ  「まったく…こんなことをしては示しがつくまいが…それがわからん年でもないだろうに…」
ロイド  「時間は有限だ。エフラム達は決めたとおり市街地へ戻ってくれ。
      俺はシャナンの後を追って連れ戻す。アイク、森の案内を頼めるか?」
アイク  「ああ構わん」
カナス  「シャナンさんが説得に自信があるなら任せてみるのも方法ではないでしょうか?
      あえて連れ戻すこともないでしょうし、失敗してもデメリットがあるとも思えません。
      …それにいい大人なのですから自分で帰ってくるでしょうし、我々はこのまま帰途についてもよいのでは?」
エフラム (シャナンの奴…そこまで幼女愛を広げることに情熱を燃やしていたとは…
      今からでも全員をもってシャナンの後を追い、白鷺の説得に当たるべきではないか?)

…シャナンの本心は白鷺の幼女の写真を撮りたい…その一点なのだが…

続く

1 ロイド案を採用する ロイドにシャナンを連れ戻してもらおう。俺たちは市街地へ帰る。
2 カナス案を採用する シャナンに任せてみるか…俺たちは市街地へ帰ろう。
3 自分の案を採用する やはり全員でセリノスに赴き、リュシオンに支持を訴えよう!