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Last-modified: 2012-08-29 (水) 20:54:25

212 :幼女の旗の下に:2010/06/27(日) 23:37:06 ID:rdXLjABX

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2 着地して確かめてみる Nanikasira? tyottokininaru……

リアーネ 「Dare…?」

興味を覚えたリアーネは声のする方向へ降りていった。
そこには3人のベオクの少女がこちらへ向かった声をあげていた。
ラケシス 「やった! やっと気づいてくれたわ!」
プリシラ 「こっち! こっちですリアーネさん!」
クラリーネ「はぁ…ようやく…」
リアーネ 「あ…の…何か…御用…?」
ラケシス 「単刀直入に聞くわ。貴女、お兄様はお好き?」
リアーネ 「うん…好き…だけど?」

いったいなんの話だろう。
彼女たちからは兄に対する狂おしいまでの愛情を感じる。

ラケシス 「やはりそうよね! うんうんよかったよかった…わかってくれてるわね…」
プリシラ 「ささささ、それじゃあこの書類に名前を書いてくださいね!
      これで貴女もAKJの会員です!」
リアーネ 「えーけーじぇー?」
クラリーネ「兄を愛する淑女たちの団体ですわ。貴女と同じく兄を愛する仲間たちがたくさんいます!」
ラケシス 「それでね。AKJの仲間たちは次の選挙に代表を出すの。
      貴女も家族や友達に声をかけて票を入れてほしいのよ」

畳み掛けられてリアーネはオロオロするばかりだ。
早口だと現代語は聞き取りにくい。

リアーネがAKJに捉まっているころ……シャナンは地べたに寝転がってリアーネを待っていた。
待てども待てどもこない…

シャナン 「ううむ…焦らされるほど楽しみだ…早く帰ってこないかな…」
鼻の下の伸びきった姿はラクチェたちには見せられない。
その時、茂みから馬に乗った騎兵が飛び出してきた!
シャナン 「ぬぉっ!? ぶぎゅえ!!!!」

普段ならなんなくかわせたのだろうが…寝転がっている上油断しきっていたのでモロに踏まれた。
ソシアルナイトA「んぁ!? なんだ半獣?」
ソシアルナイトB「馬鹿! ベオクだベオク!」
幾人かの兵士が慌しく馬を下りる。
ソシアルナイトC「申し訳ない! 怪我はありませんか!?」
シャナン 「馬に引かれて平気なわけあるか!?」
教官A  「大馬鹿者ども! 半獣ならともかく民間人に怪我させるとは何事だ!
      今すぐ傷薬を用意せい!」

兵士達は慌しくシャナンを手当てすると、幾度も頭を下げながら去っていった。

シャナン 「なんだったんだまったく…あれがカナスの言ってた演習場の兵隊とやらか?
      …うーむ。白鷺少女が戻ってくる前でよかったな。
      いいところを邪魔されていたら流星剣でたたっ斬るところだ」

213 :幼女の旗の下に:2010/06/27(日) 23:37:54 ID:rdXLjABX

159

演習場に帰還した訓練部隊は事故報告をジョフレに上げた。
本心を言えばもみ消したかったのかもしれないが、支給品の傷薬を使った以上使用意図はチェックされる。
ジョフレは頭痛のする頭を抱えながらも、大事無かったという教官の言葉にほっと胸を撫で下ろす。

ジョフレ 「全員グラウンド15周、それと腕立て200回を申し付ける…」
罰則を言い渡すと執務室を出る。
副官のケビンに用があった。

ジョフレ 「ジョフレだ。入るぞ」
ケビン  「はっどうぞ将軍!」

ケビンの私室は暑苦しい。
自主トレで腹筋の真っ最中だった。
上半身裸の男が汗を流している姿は暑苦しいとしか言いようがない。
ケビン  「何か御用でありますか!?」
勢いよく立ち上がって敬礼する副官を手で制する。
堅苦しいのはこの男の欠点だ。
ジョフレ 「ああ、工事の進捗状況についてだが…」
そこまでいいかけてケビンの机の上が目に入った。
なにやら手紙が広げられている。
ジョフレ 「ご家族からか?」
聞いてみたのはなんとなくだ。深い意味はなかった。
ケビン  「これは空軍の知り合いのマーシャ中尉からの私信であります。
      時折近況を連絡しあっております!」
ジョフレ 「……な…んだと……」
     (こ…こんな暑苦しい男にすら彼女がいたのか!?
      私がここに赴任してからエリンシア様からは音沙汰一つないというのに…)
部下は知り合いと答えたのだが…もはや記憶にない。
どうもストレスで神経が磨り減っているようだ。
ケビン  「将軍?」
ジョフレ 「あ…ああいや…なんでもない…」

エリンシアに手紙でも出してみようか…ジョフレはぶつぶつ言いながら部屋を出て行った。

ケビン  「……何の用事だったのだ?」

214 :幼女の旗の下に:2010/06/27(日) 23:39:05 ID:rdXLjABX

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森に夜が来る。
畳み掛けるようなAKJの説明を半分も理解できなかったリアーネ。
そんなやりとりをもどかしくもしているうちに日が暮れてしまった。
リアーネ 「Au…」

鳥目の彼女に夜間飛行は危険である。
やむをえず家に戻ることにした。シャナンは気の毒だがどうしようもない。
シャナンの居場所は日中でも1時間は飛ばねばならない場所なのだ。
リアーネ 「夜…おうち…かえ…る」
ラケシス 「まあ、それなら私たちもリュシオンさんに紹介して頂戴な」
プリシラ 「前はお会いできなかったものですから」
AKJの面々はリアーネに紹介してもらえばリュシオンに会えると考えた。
リアーネにしても気は進まないが…夜の森に置いていくのも気の毒だ。
やむをえず3人を集落に連れて行くことにした。

シャナン 「……へっくしょん!?…ま…まだか…これはもしや放置プレイ?
       私にMの気はないのだが…」

族長家の自室でリュシオンはランタンの明かりに照らされながら虚空を見つめていた。
ロライゼも呪歌には反対している…
しかし他に方法はないのではないか……
あの連中が嘘を言っていないとはいえ…どこまであてになるか…
どうしてもニンゲンには不信感が拭えない。
その時部屋の扉が開いた。
アイク  「おう」
リュシオン「…なんだ?」
アイク  「久々に酒でも…と思ってな。果実酒ならあんたも大丈夫だろう?」
リュシオン「座れ、つまみを出す」
ニンゲンでもこの男だけは別だ。
唯一心を許しているベオクと酒盛りも随分ぶりになる。

アイク  「そら」
リュシオン「…ん」
木のジョッキを酒が満たしていく。
甘い香りが心地よい。

お互いにジョッキを合わせると勢いよく傾ける。
アイク  「たまには悪くないなこの味も」
リュシオン「…そうだな…」

215 :幼女の旗の下に:2010/06/27(日) 23:39:51 ID:rdXLjABX

161

リュシオン「お前の弟…あれはまっすぐな男だな…
      自分の正義を信じて疑っていない」
アイク  「……そうか…お前はどうだ?」
リュシオン「…私にも私の正義がある……決断次第ではヤツのいった通り戦うこともあるかも知れん…」
アイク  「迷っているな…」
リュシオン「わかるか……無念だが手詰まりなのだ…いくら抗議してもベオクが聞き入れることなどないとわかっている。
      だからといって呪歌を使えば一族の破滅だ。私だって馬鹿じゃない。そのくらいはわかっている…
      だが…だが…森の悲鳴が聞こえてくるのだ…」
アイク  「……先ほども言ったが、俺はお前のためならいつでも手を貸す。
      道を誤るなら殴ってでも連れ戻す…それと…エフラムは約束は守る男だ。俺が保障する」
リュシオン「……」
アイク  「言いたかったのはそれだけだ。後は決めるのはお前だ」
リュシオン「……お前は不思議な男だ。ベオクだというのにラグズにも屈託がない」
アイク  「…性分だ」
リュシオン「そうだな…もう一杯やるか?」
アイク  「もらおう」

酒を酌み交わしながら男たちは思いを馳せる。
これから進むべき道に……

やむをえずAKJを集落まで伴ったリアーネ。
いつもなら騒ぎになりかねないが既に日は落ち、皆家に戻っている。
リアーネにしてもプリシラのランタンが無ければここまで戻ってこれなかったかもしれない。

家にはまだ明かりがついている。リュシオンの部屋だ。
ほとんどなし崩し的にAKJをリュシオンに会わせると約束させられてしまった…
が、すでに夜だし、どうもリュシオンは誰かに会ってるようだ。
やはり翌日のほうがよいだろう。
リアーネ 「Dosiyou……」
一晩どこかに泊まってもらうほかないだろうが…どこがいいだろうか…

続く

1 自室に連れて行く  Tyottosemaikedo…
2 倉庫に連れて行く  Gomenne? hitobangamansitene
3 とりあえず入会する Tetudukihakoredeiino?