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Last-modified: 2012-08-30 (木) 23:58:30

293 :幼女の旗の下に:2010/07/05(月) 20:51:09 ID:3duDBEAq

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1 湖に行く         少し綺麗な景色でも見て気分を変えようか

シグルド 「焦ってもどうにもならん。少し気分転換するか」

ヴェルダンは美しい湖があり、観光名所になっていると聞く。
せっかくだから行ってみよう。

30分ほど歩んで森を出ると日の光を浴びた湖が輝いているのが視界に入った。
シグルド 「おお…これは…綺麗だな…さすが原作でディアドラの涙と言われただけのことはあるな」
湖のほとりに歩み寄り風光明媚なる光景に感嘆する。
このところ仕事で頭が一杯だったが、たまにはリラックスしないとアイディアも浮かばない。
シグルド 「なごむなぁ…時にはこういうのもいいものだ…綺麗だし一口飲んでみようか」
湖の水をすくってみようと屈んで手を伸ばした瞬間だった…
屈んだ拍子に腰に挿したティルフィングが鞘ごと抜け落ちてしまった!
留め金が緩んでいたようだ。

シグルド 「ぬおっ!?」
慌てて手を伸ばすが後の祭り。ティルフィングは水飛沫を上げて湖の底へ沈んでいった。
シグルド 「いっかーーーんっ!? えらいこっちゃ! えらいこっちゃ!」
上着を脱いで飛び込もうとすると…湖が光に包まれ、ラーナ様そっくりの女性が姿を表す。
湖の精霊 「貴方が落としたものはこの金のティルフィングですか?
      それとも銀のティルフィングですか?」
シグルド 「なんじゃそりゃあ!?」
湖の精霊 「どちらですか?」
シグルド 「あー…ただのティルフィングです…」
     (神器をただの物ってのもなんだが…リーフが聞いたらキレそうだ…)
湖の精霊 「貴方は正直な方ですね。ご褒美…と言いたいのですが、神器の上位互換品など一介の精霊の私には用意できません」
シグルド 「はぁ…それでは金と銀のティルフィングは一体…」
湖の精霊 「金メッキ張った壊れた剣です」
シグルド 「…とりあえず普通のティルフィングを返してもらえれば構いませんよ。
      拾ってくれてありがとう」
湖の精霊 「あ、ちょっと待って! ご褒美替わりにこれを差し上げます」
シグルド 「これは?」
湖の精霊 「シルバーカードというものです。今の貴方の助けになるでしょう」

その言葉と共に精霊は消えていく。シグルドの足元にはティルフィングと一枚のカードが残されていた。
世界に数枚しかないといわれる貴重なカードだ。

294 :幼女の旗の下に:2010/07/05(月) 20:51:52 ID:3duDBEAq

169

シグルド 「うーむ…そりゃ買い物が半額になるのはありがたいが…いやまて!?
      これだ!」
これこそまさに天の恵み、歓声を上げてシグルドは来た道を駆け戻った。

まさしく善は急げ、出張所に駆け戻ったシグルドはパソコンに飛びつくと資料を作り始める。
ゲラルド 「あんだぁ? なんかあったのか?」
シグルド 「あったんだよあったんだよ! いけるぞ、どえらい利益がたたき出せるぞ!
      まっててくれディアドラー! もうすぐ君を迎えにいけるぞ!」
ゲラルド 「えれぇテンションだなぁ…ディアドラ? げへへ…よだれが…とか言ったら殺されそうだぜ…」
シグルド 「はっはっは、今の私は機嫌がいい! だが自重したまえ!」
ゲラルド 「おお怖い怖い」

資料を印刷するとそれを鞄にしまって脇目も振らずに駆け出していく。

森の奥深くで斧を振るう蛮族風の男2人。
ヴェルダン3兄弟のガンドルフとキンボイスだ。
ガンドルフ「フンガーーッ!」
斧を振るって木を切り倒す。
一本60Gで出荷予定だ。
キンボイス「兄貴、一休みしようや」
ガンドルフ「おう」
男たちが腰を下ろすとサラリーマンが近づいてきた。
シグルド 「こんにちは、グランベル社のものです」
渾身の営業スマイルである。
ガンドルフ「あん、専属契約の話か? うちは今はよそと付き合ってんだ」
シグルド 「いえいえお話だけでも」
キンボイス「まぁ聞くだけならいいがよ」
シグルド 「ありがとうございます。それでは…当社では木材一本に付き580Gで買い取りたいと…」
ガンドルフ「話になんねーな。他当たれや」
キンボイス「今は一本600Gで出してるんだ。相場見てこいや」
シグルド 「いえいえ、最後まで聞いてください。その代わり…斧の修理時にシルバーカードを貸与いたします。
      これは加盟店で半額で取引できるというものです…つまり鉄の斧の修理代が一回20Gから10Gに…」
ガンドルフ「なにぃ!?」
キンボイス「つ…つまり…ひーふーみー…」
シグルド 「今まで一本の木材を生産するのに…3度斧を振るうとして60Gかかって600Gで売る…純益は540G。
      ですが当社と契約いただければ経費は30Gで済みます。売値こそ580Gですが純益は550G。
      他社の10G増しです。年間の利益にしますと……」
ガンドルフ「ほうほうなるほど…いい話じゃねーか」
キンボイス「気に入ったぜ。契約しようぜ兄貴」
ガンドルフ「おう、ここにサインでいいのか?」
シグルド 「ありがとうございます。今後ともごひいきに」

まさに踊りだしたい気分だ。これだけスムーズに話がいくとは思わなかった。

295 :幼女の旗の下に:2010/07/05(月) 20:52:34 ID:3duDBEAq

170

それから数日、シグルドは熱心にヴェルダン中の木こりを尋ねて契約を取ってまわった。
平均600Gで取引される物を580Gでの買い付けに成功…差額の20G分は会社の利益にするもよし、
あるいは木材製品を値下げして買い手を呼び込むもよしである。

シグルド 「仮に…そっくりそのまま利益にしたと仮定して…
      昨年度の取引総量が約20万本…平均単価600G…
      今年も同数程度を取引したとして…580Gだから…400万Gの純益アップだ!
      しかも契約は拡大してるから…さらに増収が見込めるぞ!」
まさか地方に飛ばされてこれだけ大きな仕事が出来るとは思わなかった。
湖の精霊に会えたのは運みたいなもんだが、運もステータスには違いない。実力のうちである。
さっそく見込み収益の資料を作って上にあげよう。
素晴らしい実績だと評価されるに違いない。

シグルド 「係長になって幾星霜…ずっと鳴かず飛ばずでいたが…いよいよ昇進が見えてきたな!
      本社に帰ったら…課長補佐くらいにはなれるかも…いや、うまくすればどこかの部署の課長なんて…
      そうして頭角を現せればきっとディアドラのご両親も私を認めてくれるに違いない!
      ヒャッハーーーーーッ私の時代がキターーーーーーー!!」

その頃のバーハラ本社ではアルヴィスがクルト社長に呼ばれていた。
クルト  「レプトールが我が社を離れた今、私の補佐をしてくれる役員が必要なのだ。
      俊英とはいえまだ部長や支社長経験の無い君ではあるが…充分に勤まるものと思う」
アルヴィス「ありがたいお話ですが…役員方の納得が無くては難しいのではないでしょうか」
クルト  「…そこでだ…私は…君を娘の婿へと考えた。そうすれば誰も反対すまい。
      それにバーハラ家も跡取りが必要だ。父上もご高齢だし、私ももう若いとはいえない。先の事を考えねばならない。
      ヴェルトマーの家督はアゼル君に任せればよいことだしな」
アルヴィス「……」
クルト  「そのため…ディアドラに話をしてみたのだが…娘はそのつもりがないようだ…
      だれかほかに想う者でもいるのかとも思ったが…頑として口を開かなかった」
アルヴィス(……シグルド……)
クルト  「私はてっきり君と娘が付き合ってるものと思っていたんだが…君自身の意思はどうなのだ?
      …君にそのつもりがあるなら私は娘を説得するつもりだが…」
アルヴィス「…しばらく…しばらく考えさせてください…」

社長室を辞したアルヴィスは無言でエレベーターに乗り込んだ。
相乗りの者がいないのを見ると、一人呟く。
アルヴィス「今更…未練がましい真似はすまいと…思っていたのに…シグルド…早く帰って来い。
      いつまでディアドラを待たせるのだ…」

296 :幼女の旗の下に:2010/07/05(月) 20:53:17 ID:3duDBEAq

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不良A  「ちくしょー覚えてやがれーーーーっ!」
ヘクトル 「雑魚のテンプレ台詞乙。またいつでもきやがれ!」
逃げ散っていく不良たちの背中が見えなくなると、ヘクトルは河原で寝転んだ。
アイクもエフラムも出かけており手合わせの相手に不足したヘクトルは、
最近以前にもまして喧嘩する割合が増えていた。

ヘクトル 「…ったく…いつまでぶらついてやがんだ…」
石を拾って川に投げ込む。
なんだかむしゃくしゃする。
ヘクトル 「つまんねぇ……シグルド兄貴もいつ帰れるかわかんねぇし…」
ふと思いを致す…上の兄弟たち…いやエフラムまで…
ヘクトル (みんな自分のやりてえことをバリバリやってんだよな…
      シグルド兄貴は高嶺の花のディアドラさんと結婚するため気張ってる。
      アイク兄貴は最強目指してガンガン修行してるし…
      ロリラムすら首相って無茶苦茶な目標に向かって走ってやがる…
      俺は……このまま半端な不良やってていいのか?)

…そこに背後から草を踏む音が聞こえてきた。
エリウッド「…ヘクトル? こんなところで何してるんだい?」
ヘクトル 「昼寝だよ。大したこっちゃねえ」
エリウッド「そうかな…君は何か悩み事があるとここによく来るようだからね。
      …喧嘩もほどほどにしなよ?」
ヘクトル 「大きなお世話だっつーの」
エリウッド「…僕の胃の事も考えてくれ…」
ヘクトル 「あ…わりぃ…ちゃんと手加減したからよ。大した怪我はしてねぇって」
エリウッド「そういう問題でもないんだけど……何に苛立ってるんだい?」
ヘクトル 「苛立ってねえっつの……なぁエリウッド…お前はなんかやりたいことってあるか?」
エリウッド「……僕? そうだねぇ…やっぱり…この体を直して皆のために働きたいと思うね。
      そのためにも今は勉強あるのみだね」
ヘクトル 「…そっか…なぁ男ならなんかデカい事やってみるべきだと思うか?」
エリウッド「僕には…あまり考えられないけど…ささやかでも家族と幸せに生きていければいいと思うからね。
      でも君は昔からリーダーシップを取る人間だった。不良の兄貴分っていうのかな。
      ちょっと斜めに構えたとこはあるけど…人の集まってくる人間だよ。それは確かだ」
ヘクトル 「ちょっと愚痴っぽくてわりいな。俺も色々考えちまうこともあんだわ。
      聞いてくれてあんがとよ」

勢いよく起き上がるとヘクトルはエリウッドの肩を叩いた。
ヘクトル 「流星軒よってこうぜ。腹減っちまった」

297 :幼女の旗の下に:2010/07/05(月) 20:54:03 ID:3duDBEAq

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セリノスを離れたエフラム達はテリウスを南下し南海岸の港へとたどり着いた。
次の目的地はフェニキスだ。
カナス  「そこで聞いてきたんですが…やはりフェニキス行きの船はありませんでした…」
オグマ  「…ラグズしか住んでない島だからな」

紋章町は領海内にいくつかの有人島がある。タリス、ペラティ、西方3島などには定期船が出ているのだが、
ラグズしか住まないフェニキスとキルヴァスには船は出ていない。
わざわざ尋ねていく物好きなベオクなどそうはいないし、鳥翼族はもともと船を必要としないからだ。

シャナン 「参ったな…ターナかサラがいればよかったんだが…今更言っても仕方ない」
オグマ  「おいシャナン…気になってたんだが…その胸に挿してる羽はなんだ?」
シャナン 「リアーネの…ああいやなんでもない。セリノスで拾ったんだ」
     (…聞けば…あの時リュシオンは皆の心を覗いたらしいな。
      ひょっとして私が居間に居合わせたらロリ萌えを見抜かれたのだろうか…そしたら支持もおじゃんに…
      ああいや! 私はロリコンではないってば!)
エフラム 「兄上、兄上はフェニキスに行ったことがあるのでしょう?
      どのようにして尋ねているのですか?」
アイク  「泳いだ」
ロイド  「気のせいかな…今、泳いだと聞こえたんだが…」
アイク  「泳いだ」
カナス  「ふぇ…フェニキスまで500kmはあるんですよ…?」
アイク  「うむ、そうだが?」
ロイド  「……アイクさんよ…すまんが…俺たちは超人じゃないんだ…」
アイク  「そうか? 誰だって最初からできるものではないぞ。俺だって慣れないうちは遭難したものだ。
      何回もやって出来るようになるんだ」
カナス  「私など死んでしまいそうです…なんとか船を出してくれる方を探してみませんか?」
エフラム 「ふむ……兄上のブラザーアーチという手もある。リーフが耐えられるなら俺たちだってやってやれんことはないはずだ」
シャナン 「あれと一緒にせんでくれ!」
カナス  「正直…私死んじゃうと思いますが…」

エフラム (うむ…どうやって海を渡ったものか…)

続く

1 アイク案を採用する 海はどこまでもつながってる。泳げば必ずたどりつく!
2 カナス案を採用する まぁこれが一番現実的か。船を出してくれる者を探そう
3 自分の案を採用する ブラザーアーチで飛んで行くぞ! 兄上、俺たちをブン投げてくれ!