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Last-modified: 2012-08-29 (水) 20:23:37

41 :幼女の旗の下に:2010/06/15(火) 14:35:16 ID:QURBIOk0

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1 エフラムが戦う 鍛えぬいた槍術とジークムントの力、見せてくれよう!

エフラム 「やはり俺が戦う。将たるもの常に先陣をきって戦わねばならん」
シャナン 「待て! 考え直せ! 我々は万一命を落とすような事があってもバルキリー等を使ってもらえばいいが、
      お前は主人公なんだぞ! やられたらゲームオーバーなんだぞ!
      軽率に戦うのは控えるべきではないか!」
エフラム 「俺の身を案じてくれるのは嬉しいが心配するな。
      幼女の未来のため俺は死なん。まだ何も成し遂げていないのだからな」
シャナン 「いや…だからな。今からでも遅くないから私に任せて…」
オグマ  「よせシャナン。俺たちが選んだ党首が決断したことだ。これ以上口を挟むな!」
シャナン 「……がっくり」
カナス  (なんでシャナンさんはあんなにがっかりしてるんでしょう?)
ロイド  「エフラム、次は俺たちにも働き所をくれよ」
エフラム 「ああ、わかった……待たせたな!」

右手にジークムントを握り締めて庭の中央に歩みだす。
傲然と胸を逸らしたスクリミルはエフラムを一目見るとアイクに声をかけた。
スクリミル「…アイク! お前の弟とて俺は手加減せんぞ。俺の牙が奴の首を噛み千切っても文句を言うなよ!」

その苛烈な宣言にアイクはいつもどおりの落ち着いた姿を崩さずに返答する。
アイク  「ああ構わん。男の勝負に手加減は無用だ。俺の弟だから…などと思わず徹底的にやってくれ。
      それで死ぬとしたら所詮そこまでの男だったということだ」
まるで突き放したような言葉だがエフラムは胸が熱くなった。
尊敬する兄に一人前の男として武人として認められている。
弟だから…などと甘やかしたりはせず、信念をかけた決闘の場へと送り出してくれる。
エフラム 「兄上…感謝する!」
槍を握る手にも力が入る。

スクリミル「グオオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!」
獅子の咆哮が轟き、巨漢が巨大な獅子に姿を変える。
真っ赤な毛並みはまるで血の色を思わせる。
      
ライ   「スクリミルの奴容赦ないからなぁ…穏便にすみゃいいけど」
レテ   「無理だな。一度始めたら相手の首を噛み切るまで容易に納まりはせんよ。
      決闘とはそういうものだろう?」
ライ   「違いないけどな。あいつめ、寸止めも覚えりゃいいのに。相手に参ったって言わせりゃいいんだから」

42 :幼女の旗の下に:2010/06/15(火) 14:36:41 ID:QURBIOk0

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スクリミル「グルルルル………」
巨大な獅子が低く構えている。獲物に飛び掛る構えで隙を伺っている。
その強靭な四肢が生み出す瞬発力はベオクの動体視力で対応する事は困難だ。
あの屈強な前足で組み伏せられ、口から覗く鋭い牙を突き立てられたら瞬く間に血まみれの肉塊に変えられてしまうだろう。
想像力の無い人間にも容易にそれを思わせる…
目の前にあるものは巨大な恐怖そのものだった。

エフラム 「………っ」
手が微かに震える。背筋を汗が伝う。
だがそれは冷たい汗ではない。熱い汗だ。
この場において自身が猛っているのが感じ取れる。
武者震いするほどの敵手に会えたのはいつ以来だろうか。
並みの者なら死を恐れて逃げ出したであろうプレッシャーの中で、
槍を構えて立っていられたのはまさしく日頃の精神修行の結果だ。
もののふとして常に死を身近に感じ取り、いつそうなっても恥じることの無いよう心を研ぎ澄ませてきた…
携えた槍の矛先が日の光を受けて煌いた。

オグマ  「……」
     (そうだ、それでいい。まともに突っ込めばたちまち噛み裂かれる。
      有利な位置を占めるまでここは待ちだ)
カナス  「相手の奥義は咆哮…実に3倍もの力を発揮します。万一発動すればとても堪え切れるものではありません…」

スクリミル(かかってこんな…ベオクめ…芸の無い…俺の化身が解けるまで時間を稼ごうというつもりか)
前足がにじり寄る…
エフラム (奴め…焦れてきてるな…そうだ…もっと来い…)
油断なく槍を構えながらすり足で左へ…左へとサークリングする…

エフラム (ここだっ!!!)
足を踏みしめる。
エフラム 「うぉああああああああっ!!!!!!」
裂帛の気合を込めて雄たけびをあげた。
それに反応するかのごとくスクリミルが飛び掛る!
スクリミル「グルァアアアアアアア!!!!!!」

血飛沫が宙を舞った。

43 :幼女の旗の下に:2010/06/15(火) 14:37:22 ID:QURBIOk0

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それは一瞬の出来事だった。両者が交錯し駆け抜ける。
エフラムは肩口から血を流し崩れかかる膝を、槍で地を突いて支えた。
スクリミルは後ろ左足があらぬ方向に折れ曲がって用をなさなくなっている。

スクリミル「ぬぅ……」
交錯の瞬間…確かに自分の牙は相手の首を捕らえるはずだったが…エフラムが背にした太陽に一瞬目がくらんだ。
かすかに狙いはそれ、相手の左肩を噛み裂くに留まったのだ。
奴はそのまま突き出した槍を自分の足に突き刺し、捻りを加えて骨をへし折った。

エフラム 「ぐぅぅ……」
かろうじて上手くいったというべきか…肉を切らせて骨を絶つ。
あの足では相手は満足に動けないだろうが…自分も出血量が多く意識がクラクラする。
槍を支えに立っているのがやっとだ。
だが…まだ勝負はついていない。フラつく足に活をいれて、槍先を構えなおす。
エフラム 「次はこちらからいくぞ!」
スクリミル「来いやぁあああっ!!!」
渾身の気合を込めて駆け出すと、全体重を乗せた槍を突き出す。
だが手負いの獣はなによりも恐ろしいもの。
ベオクを遥かに凌駕する動体視力でそれを見切ると、後ろ足が利かずとも屈強な前足で槍先を払いのけた。
スクリミル「グオオッ!!!」
エフラム 「ぬう!」
迫る牙をバックステップして避ける。
追い討ちはこない…追うことができない。

ロイド  「むぅ…もう長くは続かんな。エフラムが出血で動けなくなるのが先か。
      奴の化身が解けるのが先か…」
オグマ  「元々力の差があったものを互角にまで持ち込んだのだ。あとは両者の気力次第だ」

ギャラリーもこの戦いに興奮を隠せない。
気弱なベオクなら両者の出血に卒倒しそうだが…誰も動じないのは獲物を狩って生きている獣牙の民ゆえか。
シャナン 「まずい!?」
カナス  「なにがでしょうか?」
シャナン 「こ…ここはアウェイだってことだ…」
カナス  「?」
つい怪訝な顔をしてしまうが…
その時カナスはその意味を理解した。
ぬこ幼女 「いけーーーー頑張れスクリミルーーーーーーーっ!!!」
とら幼女 「噛みつけーーーーーーっがおーーーーーーーっ!!!!!」
しし幼女 「ニンゲンなんてやっつけろーーーーーーーっ!!!!」

エフラム 「!!!!!!!!!!!!!」
その声援は…エフラムの耳に入った。

44 :幼女の旗の下に:2010/06/15(火) 14:38:36 ID:QURBIOk0

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エフラム (よ…幼女がヤツの応援を…これは奴が正義で…すなわち俺が悪ということか?
      俺は間違っているのか?)
巨大なスクリミルの殺気にも動じなかったエフラムの精神は激しい衝撃を受けて動じた。
一瞬の自失…だがそれはスクリミルに貴重な機会を与えた。
オグマ  「エフラーーーーーム!!!!
      目の前の敵を見ろ!!!!!」
エフラム 「はっ!?」
折れた足を引きずりながらもエフラムの前に歩み寄った獅子はその巨大な口を開き、
今まさに噛み裂かんとしている。
エフラム 「ぬぅ!?」
咄嗟にジークムントの柄を両手で掲げてその牙を避ける。
スクリミルの牙は槍の柄に遮られたが…そのまま柄に噛み付くとエフラムに体重をかけていく…
エフラム 「ぐっ…ぬっ…」
体重差は200キロを超える…たちまち圧し掛かられて地に組み伏せられる。
スクリミル「グアフッガフッ」
牙が槍の柄と擦れ合って金属音を立てている。
目の前に迫るそれは一撃で人間を絶命させるに足りる。
両腕をもって槍を支えて防いでいるが…肩の傷から血とともに力も抜けていくようだ…

朦朧としてくる意識…だがその中に浮かぶものは…
悪さをするサラであり…膝に乗せたミルラの笑顔…
槍の練習をするアメリア…追いかけっこをするチキやファ…
そうだ、弱気になることはない。自分の後ろには守るべき幼女たちがいる!
エフラム (そうだ…俺は…俺は! 幼女のために勝つ!)
意識に活を入れなおすと、渾身の力を込めて右足を振り上げた。
つま先が折れた足を直撃する。
スクリミル「ギャンッ!?」
思わぬ痛みに怯んだ獅子の下からかろうじて抜け出した。
エフラム 「うりゃああっ!」
そのまま畳み掛ける。密着しているので刺すことはできないが、槍の使い方は刺すだけではない。
槍の柄を振り回して顔面を強かに打ち据える。
スクリミル「グッ!?」
強靭な肉体の前に打撃は効果が薄いが…反射的に眼を庇って前足を上げた。

エフラム 「もらったっ!!!!」
前足を上げて上体を逸らしたスクリミル…その心臓目掛けて槍を突き出す…
鋭い槍先は…皮を裂き…筋肉に突き刺さり…だが心臓を貫くには至らなかった…
肩から流れる血がそれを許さず、それ以上突き貫く力は残っていなかった。

スクリミル「ぐ…うぅ…ぉ…」
化身ゲージを消耗したスクリミルの姿が人型に戻る…胸に突き刺さった槍…流れる血。
心臓に達さなかったとはいえ相当の深手である。
もはや両者に戦う力の無い事は明白であった。

カイネギス「それまで!」
族長の宣言が響き渡る。もはや体を支えきれなくなった2人は同時に膝をつくのだった。

45 :幼女の旗の下に:2010/06/15(火) 14:39:38 ID:QURBIOk0

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ジフカ  「ライ、リフ…もとい傷薬だ。手当てをしてやれ」
ライ   「はい!……まったく2人とも無茶をやるもんだ」
オグマ  「引き分けか…まったくよくあそこまで戦ったもんだ」
カナス  「奥義が発動していたら…冷や汗をかきましたよ」

手当てを受けながらもエフラムの表情は暗い。
エフラム 「勝てなかったか…無念だ…」
スクリミル「なにが無念なものか。この俺とここまでやりあったのだ。胸を張れい!」
エフラム 「…勝負に関しては誇りとするが…約束は俺が勝ったら支持してくれるというものだ…」
スクリミル「……ってもいい…」
エフラム 「む?」
スクリミル「貴様の頼みなら投票してやってもいい。みなも同じ考えだろう…」

獣牙族猫A「俺たちのスクリミルとあそこまでやるたぁ…ニンゲン…いや、ベオクにしてはやるもんだな」
獣牙族虎B「すごい戦いを見せてもらったわね! 体を動かさないと血が滾りそうだわ!」
ぬこ幼女 「ふ…フン! ちょっとだけ認めてあげてもいいにゃん!ちょびっとだけかっこよかったなんて思ってないにゃ!」
シャナン 「いいなぁ…」

カイネギス「みなが納得し認めたのだ…ワシが命じずともお前の願いなら票を入れに行くだろうよ。
      いや…ワシ自身もここまで戦えるとは思わなんだ。よい気迫を見せてもらった。
      お前を支持しよう」

その言葉に…張り詰めていたものが途切れるかのようにエフラムは意識を失っていった。

46 :幼女の旗の下に:2010/06/15(火) 14:40:21 ID:QURBIOk0

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カイネギス邸の一室でエフラムは眠っている。
傷薬で傷は癒えたが極度の疲労と緊張感に満たされた身には休息が必要だった。
オグマ  「本当によくやったな…」
ロイド  「ああ…剣士として漲ってくる戦いぶりだったな」
シャナン 「ねこ幼女…」
カナス  「何か言いましたか?」
シャナン 「なんでもない…orz」

扉が開いてグレイルが顔を出す。
グレイル 「おう、集まってたかお前ら。次は予定じゃセリノスだったか?」
オグマ  「…セリノスに寄ったら南方に赴き渡海してフェニキスとキルヴァスを回る予定です」
グレイル 「そうか…そんじゃあこの先はアイクに任せるわ。鳥翼の方は俺よりアイクの方が顔が利くからな。
      悪いが一足先に俺は帰っているぜ」
オグマ  「あまり長く工務店をあけておれないでしょうし、無理もありません。
      ご案内ありがとうございました」
グレイル 「おう…アイク、店の方は有給にしとくからな。しっかり案内してやれ」
アイク  「了解だ」

こうして翌日には一行はガリアの密林を後にした。
次に目指すのはガリアの東方セリノスの森である。

47 :幼女の旗の下に:2010/06/15(火) 14:41:37 ID:QURBIOk0

138

エフラム一行がテリウスを回っている頃…
党の事務所ではそれなりに忙しい日々を過ごしていた。
ターナ  「収支がこれで……紙代値上がりしたんだっけ?」
サラ   「うん…パソコンの価格データに入れておいたわ」
ディーク 「ガリアから連絡だ。カイネギスが俺たちの支持に同意したらしいぜ!」
バヌトゥ 「おお…それはなにより」
ディーク 「それでよ。機関紙を集落で何部か取ってくれるってよ」
ターナ  「それはありがたいんだけど…あんな密林の奥にどうやって配達しろってのよ…
      バイト増やすほど余裕ないわよ」
サラ   「それなら大丈夫、新しいバイト雇っておいたから」
ターナ  「あの…だから余裕ないんだけど…」
だがサラはどこ吹く風だ。

サラ   「入ってきて」
ネサラ  「おー」
サラ   「あなたのお仕事はこの機関紙をガリアのカイネギスさん家に届けることよ。
      一回事にこのお金を50枚あげるわ」
ネサラ  「ヒャッホーーーー任せとけ! 金持ちだ大金だ!」

ちっとも大金ではない。1ゴールド硬貨ばかりだ。
新聞配達一回分でわずか50ゴールド…ちなみに他のバイトは一日あたり(早朝の3時間ほど)550ゴールド貰っている。
それを遠いガリアの奥地まで飛ばせてこの所業…

ターナ  「いいのかしら…労基法的に…」
サラ   「正社員ならともかくバイトについては規定無いもの。
      当人どうし納得の上での契約って事になってるから…
      こんな条件で働いてくれるなんてありがたいことじゃない」
ディーク 「傭兵契約もそうなんだよな。当事者同士の契約でなりたつから
      金額や労働条件は法の規制無いんだよな。
      …まぁ俺くらいになれば雇い主は好条件出しても欲しがるけどな」

サラ   「おじいさまおじいさま。後は校正だから脱字誤字のチェックよろしくね」
マンフロイ「うむ…わかった」

サラはカナスに代わってターナの仕事を手伝っている。
向こうではライナスがシャナンの代理で党費計算をしているが、慣れない仕事に頭を抱えている。
ライナス 「おーい、編集の方の経費増えてないか?」
ターナ  「紙代が値上がりしたのよ…価格を上げるのもちょっと…だし、純益少し下がるわよ」
ライナス 「そーか…まぁしゃーねーよな…人件費は…」
ターナ  「減らしたらバイトやめちゃうって…まぁ安く働いてくれる人が入ったから部数が増えても当分は大丈夫だけど」

サラ   「…明日の印刷分はこれでOKね…さ、そろそろお仕事はおしまい…
      兄様がいなくて退屈…代わりに誰で遊ぼ?」

続く

1 ターナで遊ぶ   姉様…私の魅力に堕ちてる…フフ…ダメ押しして弄ろうかな?
2 ディークで遊ぶ  ロリコンさん…またからかってあげようか?
3 マンフロイで遊ぶ たまにはおじいさまでもいぢめようかな…クスクス
4 ライナスで遊ぶ  このロリコンさんで遊んだことは無かったよね…どんな反応を返してくれるかしら?