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Last-modified: 2012-08-31 (金) 00:30:47

530 :幼女の旗の下に:2010/07/19(月) 10:43:46 ID:zdjsd5Qw

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3 シャナンが戦う ラグズの猛者といえど聖武具と流星剣なら勝算はある!

シャナン 「エフラム…ここは何も言わず…私に任せてくれ」
エフラム 「シャナン…」

神剣を手に立つ男の瞳からは強い光が感じられる。
研ぎ澄まされた剣の様なたたずまいは達人の力と決意を示していた。
これ以上異を唱えてはならない…心のどこかでエフラムは悟った。

エフラム 「…わかった…頼む…」
剣征の名を継ぐ男はふっと微笑むと一歩進み出る。
ティバーン「おう、俺の相手はお前か」
轟然と胸を張る鷹の豪傑の表情からは自身が満ち溢れている。
一騎討ちの作法に乗っ取り、シャナンはバルムンクを高々と掲げて名乗りを上げた。

シャナン 「我は剣征オードの末裔にしてイザーク流が師範シャナン!
      鷹の豪傑! 一手勝負を所望する!」
ティバーン「よかろう! 俺は鷹の一族の長ティバーン!
      相手にとって不足無しだ!」
シャナン 「決闘の定法に則り、ここで死しても遺恨なし! いざ勝負!」
ティバーン「委細承知だ。万一俺がくたばったら一族の者が替わって約束を果たす。勝負だ!」

その言葉を合図にティバーンは高らかと空に舞い上がった。
眩い光の中から巨大な鷹が姿を現す。
空を支配する強大な猛禽は雄叫びを上げて舞い降りてくる。
シャナン (私の見立ては間違っていなかった…この速度では全員で戦えば打たれ弱い者を到底守りきれぬ)
この時シャナンの脳裏には幼女の事は無かった。
ただ剣士としての全神経が空の猛者へと向けられていた。

531 :幼女の旗の下に:2010/07/19(月) 10:44:52 ID:zdjsd5Qw

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弾丸のような速度で突っ込んでくるティバーンの巨大な嘴はジェネラルの鎧すらひしゃげた鉄屑に変えてしまう。
生身の人間がまともにくらえば後に残るのは肉塊のみ。
だが……ベオクの動体視力を遥かに超越するティバーンの視界から、
シャナンの姿はまるで柳の葉のように揺らめき…消えた。
ティバーン「ほう…さすがだな」
鷹の急降下からの一撃は空振りに終わる。
相手に反撃の隙を与えぬために急上昇すると改めて眼下を見下ろした。
油断無く神剣を構えた剣士の姿がある。
達人の域に達した足捌きと神剣の加護を受けたその素早さは影を捉えることすら容易ではない。
ティバーン「長引かせるつもりか…だが俺にその手は通じんぞ」
シャナン 「ラグズの族長ほどになれば、どれほど戦っても化身は解けんだろうな。
      だがそんなケチな真似はせぬ。さあかかってこい!」
ティバーン「言われるまでもねぇ!」
再び野生の猛禽が舞い降りる。
今度は鋭い鍵爪で掴み掛かる。どれほど素早かろうと捕らえればただのベオク。
簡単にひねり潰せるだろう。
シャナン 「冗談ではない!」
迫る鍵爪をギリギリの所で避ける。
前髪が数本宙を舞った。
一見窮地の様だが死中に活あり。
なにしろ地上付近まで降りてきてもらわないとこちらの剣も届かないのだ。
すでにティバーンはシャナンの間合いにある。
シャナン 「受けてみよ! イザーク流奥義流星剣!」
神速の剣が空気を切り裂き、周囲に緑色の光を放つ。

エフラム 「シャナン!」
ロイド  「あいつ…強かったんだな…」
カナス  「このところ抜けた姿ばかり見せてましたからねぇ」

532 :幼女の旗の下に:2010/07/19(月) 10:45:34 ID:zdjsd5Qw

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ティバーン「ぬ…うっ」
一の太刀…寸でのところで身をよじって避けた…だが間髪いれずに次の太刀が迫る…
二の太刀…腹を掠める…皮一枚で済んだが反応が一瞬遅れればそれではすまなかった。
三の太刀は避けきれなくなって翼で弾いた。他の鷹には真似できないいわゆる『翼の守護』という技だ。
これだけしのげば相手も体勢を崩すだろう…攻撃の後に好機は来るもの…だが…
ティバーン「なに!?」
さらに四の太刀、五の太刀が飛んでくる。
とても防ぎきれたものではなかった。
ティバーン「ぐっ…がっ!!!」
神剣の切れ味は強烈だった…大きな傷を負ってしまったがまだ戦う力はある。
再び翼をはためかせて上空に陣取った。
シャナン 「無理をするな。降参しろ。並みの者なら3回は三途の川を渡っている傷だ」
ティバーン「見くびるんじゃねぇ。傷を負ったラグズの怖さを教えてやるよ」

誰もが息をひそめて二人の戦いに見入っている。
フェニキスの大地は今、この二人の豪傑のためだけに存在しているかのようだった。

任侠集団…黒い牙のアジト。
昔ながらの仁義を重んじるこの組織であるが、ソーニャが実権を握って以来、その内実は変容している。
四牙の一人たるジャファルは密かにソーニャ派の動きを探っていた。
北トラキアの議員、レイドリックと接触があるとなると今後の政局に影響してくる可能性もあるのだ。
情報を掴んでおかねばならない。
彼はダンボール箱に潜んで息を殺している。
四牙とはいえ、非ソーニャ派である自分は警戒されるだろう。ばれないように調査せねばならない。
ジャファルのそばを下っ端ヤクザが通りかかる。
ヤクザA 「ん? ……気のせいか」

気配を殺したジャファルをそう簡単に見つけられるものではない。

533 :幼女の旗の下に:2010/07/19(月) 10:46:23 ID:zdjsd5Qw

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ジャファル(この部屋で…ソーニャ派の会議が行われる…)
とある一室でダンボールは身を潜めた。
部屋の片隅でじっと息を殺す。

やがて室内には数人の男女が入ってきた。
一人はソーニャ。実質的な牙の支配者だ。傍らにいるのはウルスラ。四牙唯一のソーニャ派である。
他に数人の幹部…ジュルメやケネスなどといった連中の姿もある。
ジャファル(…ん? 知らんやつがいる…)
見覚えの無い顔が一人いる。
顔に傷のある女だ。
どこか刺々しい雰囲気を放っている。

ソーニャ 「話は一つよ…レイドリックが協力を求めてきたわ。
      石頭の青二才が喚くもんだから、別の手段を取りたいってことらしいわ」
ウルスラ 「要するに…奴らが首切りしたい労働者ども…そいつらが自分から鉱山をやめるようにしむけるってワケですね。
      ソーニャさま。そうすれば結局はレイドリックの案をキュアンも受け入れざるを得なくなる。
      人がいなければ機械に頼るしかないんですもの」
ジュルメ 「へへ……悪くねぇな…」
ケネス  「ですが見返りはなんになりますかな?」
ソーニャ 「牙が南トラキアにシマを広げるのを支援するってことよ」
ケネス  「なるほど…南トラキアは貧民街であると同時に紋章町の犯罪のメッカ。
      ここを抑えれば…裏ルートの流通や盗品市の経営権…」
ウルスラ 「そういう事ね…それでは誰を派遣なさいますかソーニャ様?」
ソーニャ 「ポリ崩れ。貴女の初仕事よ。派手に貧民どもを震え上がらせてやりなさい」
ヴァイダ 「ケッ…貧民イビりなんざケチな仕事じゃないか。それによシマの外の仕事なんだろ?
      トラキアっつったら山賊、盗賊、マフィア…そんな連中の掃き溜めだ。
      邪魔が入ったら…あたしの裁量でやらせてもらっていいんだね?」
ソーニャ 「方法は問わないわ。どの道この一件が片付いたら北トラキア貴族の支援を受けて南のシマを締めるんだから…
      この機会に逆らう連中は叩き潰してやんなさいな」
ヴァイダ 「久々の鉄火場だ。派手にやってやろうじゃないか。レイドリックの助けなんざなくても
      アタシの手下だけで南をシメてきてやるよ」
ウルスラ 「…同時に北とのパイプを作るって事でもあるのよ。依頼の方もしっかりこなしてもらいたいもんね」
ヴァイダ 「ちっ…わかってるよ。やりゃいいんだろやりゃ」

ジャファル(…随分キナ臭い話だな…トラキア…この一件が票田にどう影響するか…北と南の両党の票田を取り込むきっかけにできないか…
      なんにせよエフラム達もそろそろテリウスから戻るだろうし、判断材料は多いほうがいい)

534 :幼女の旗の下に:2010/07/19(月) 10:47:02 ID:zdjsd5Qw

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セリノスの陸軍演習場の自室ではジョフレ将軍が喜びの声を上げていた。
その瞳には涙すら滲んでいる。
ジョフレ 「エリンシア様から手紙がキタ━━━━━━(゚∀゚)━━━━━━!!
      正直私のことなんぞ忘れてて返事などこないと思ってたのに…よかった…生きててよかった…」
その内容は単なる近況報告だが、それでも嬉しい。
今までの不幸が全て報われた気がする。
はしゃぎながら手紙をめくっていく。

ジョフレ 「エリンシア様…まだ私を覚えていてくださったんですね…まだ…フラグは折れてないんですね…
      人類には希望があるんですね…」
歓喜の声をあげながら手紙に目を通していくと、ある一文が気にかかった。
ジョフレ 「なになに? …長男のシグルドさんが帰ってくる…そろそろディアドラさんとの結婚話も…
      なるほど…うーん…私は直接は関わり無い人だが…将来の義兄ってことで式に呼んでもらえないかな…
      そうすれば休暇をとって帰れるし、エリンシア様とも会える。
      正直こんなとこもういたくないし」
ケビン  「将軍、なんのお話ですか?」
ジョフレ 「うわっ入室するならノックせんか!」
ケビン  「はっ…失礼しました! ですがノックしてもお返事が無かったものですから…
      拡張工事の現場にてまた抗議活動が…」
ジョフレ 「ああ…わかったわかった今行く。代表とは私が話をつけるから兵士たちをよく宥めろ。
      トラブルを起こさせてはならんぞ」
ケビン  「はっ了解しました!」

将軍は腰を上げると気の進まない仕事のために副官を引き連れて歩き出した。

そのシグルドは鼻歌など歌いながら荷造りをしている。
ヴェルダンの社宅を引き払う準備をしているのだ。
数ヶ月ぶりの家が恋しい。
シグルド 「ふっふ~みんなにお土産も持ってかなきゃな。それとディアドラと職場の連中と…」
元々大した荷物もない。準備はすぐにすんでしまった。
シグルド 「新部署はどこになるかなぁ…いや、その前に昇進したら幹部研修だな…勉強もしておかないと」
夢が広がっていく。
いや…夢というよりほぼ実現しつつある。
シグルド 「そしてディアドラと結婚して…20代のうちに課長くらいになる実績があればきっと社長もOK出してくれるだろうし…
      うん、幸せにしないとな…」
最後の悩みはおそらく入り婿を望まれるだろうことだが…これもよく家族同士で話し合えばいいと思う。
ディアドラの考えも聞かなくてはならないし、いざとなれば兄弟家にはアイクやミカヤがいる。
その意味では入り婿になるのもやぶさかではない。

シグルド 「どの形にしても…うん…これからだな」

人生が新たな段階に入ろうとしているのを感じたシグルドは、
愛する人を幸せに決意を固く持った。
それを思うとふとライバルの顔が脳裏をよぎる。

シグルド 「アルヴィス。お前のぶんまでディアドラを幸せにするからな」
プライドの高いあの男に直接言うつもりはない。
ただその言葉は胸に秘めて行動で示せばいい。

535 :幼女の旗の下に:2010/07/19(月) 10:48:37 ID:zdjsd5Qw

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シャナンとティバーンの激突は死闘の様相を示していた。
手負いの猛獣となって襲い掛かるティバーンの爪はバルムンクの神速を持ってしても完全には避けられない。
上腕に…肩に…頬に…擦り傷が増えていく。
シャナン 「っ…だが…少々掠り傷を増やしたとて勝てんぞ!」
ティバーン「そうでもねぇさ。そらっ!」
再び嘴が眼前を掠める。
鼻にひりついた痛みを感じるほどであった。反応が遅ければ首をもがれていたかも知れない。
シャナン (落ち着け…恐怖を感じ取る事だ。奴を恐れれば恐れるほど奴に対して俊敏に反応できる)
プレッシャーというものはある意味でその相手を感じ取っていることだ。
長年の修行の末に、敵に対する恐怖は捨て去るよりも心のうちで飼いならして敵を感じとる力の一つとしていた。
シャナンの高い回避能力のゆえんだ。
襲い来る猛攻を紙一重でしのいでいく。
息つく間もない攻撃に反撃の機会はなかなかこないが…必ず好機は来るはずだ。
ティバーン「まったく大した野郎だ。聖戦士ってのもあなどれねぇな…けどよ。これは道場の試合じゃねぇんだぜ?」
シャナン 「なに!?」

しまった…追い込まれていた…背後は切り立った崖。下は海とはいえ落ちたら命はあるまい…
その一瞬の動揺が焦りを呼びミスをもたらす。
ティバーン「ぬんっ!」
シャナン 「うごっ!?」
迫る鍵爪を反撃を狙って紙一重で避けようとし…避け損ねた。
直撃というほど深くはないが浅手とは言えない傷跡が腹から胸にかけて赤い筋を作る。
ティバーン「その身で次は無いぞ。これで決着をつけてやる!」
鷹の咆哮が轟く。
奥義を繰り出そうとしている…
くらったら命は無い。だが逃げ場も無い。
エフラム 「シャナン! もういい! 参ったと言え!」
カナス  「生きてあればこそ再起も出来ます!」

仲間たちの声が聞こえる。

シャナン (降参しろだと?…そこまで…敗色濃厚に見えるか…だが…
      イザーク剣士たるものそう簡単に諦めてはアイラにどやされるわ…
      何か勝つ糸口はあるはずだ…)

続く
                     
1 バルムンクを投げる    こうなれば意表を付くまでよ!くらえー!
2 流星剣を放つ        奥義VS奥義!純粋にどっちが強いか比べようではないか!
3 降参する           こ…ここは仲間の言葉に甘えよう…
4 崖から飛び降りる     進むも死引くも死ならまだしも望みのある方に賭けよう!
5 ラクチェやパティ達を想う 紋章町の少女&幼女たちよ…私に力をくれ!
6 アイテムを探す       落ち着け!ピンチの時こそ状況を再確認するのがFEだ!なんかアイテム持ってなかったっけ!?