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Last-modified: 2012-09-01 (土) 13:43:41

328 :幼女の旗の下に:2010/08/11(水) 14:49:52 ID:RmxMZNHn

212

2 リーフに知らせる      トラキアだし…リーフ何かしでかしたのかな? 
                   しばらくぶりにいぢめてあげたいし、そのついでに知らせてあげようか?

サラ   「兄様…ちょっと行ってくるわ。先に事務所に行ってて」
エフラム 「ん? 子供の一人歩きは危険だ。俺も…」
サラ   「大丈夫。すぐ戻るから」
言うが早いかサラはリワープで姿を消した。
エフラム 「…それならそれで行き先くらい言ってほしいものだ…」
空を仰いでエフラムは憮然として溜息を漏らした…

トラキア…紋章町最貧困区域に指定されるこの地区はいくつもの問題を抱えている。
元は鉱山労働者の町であったこの地域はトラキア家の没落とそれに乗じた北部資本の搾取によって
貧困と急速なスラム化が進行。
それにともなって治安が悪化し今では紋章町中の盗賊…山賊…海賊その他悪党や犯罪者が集まる背徳の都と化していた。
ベルン署の目も届かない闇の中で多くの盗品や不正な資金が行き来している。
皮肉にも貧者だらけのこの地で悪事に手を染めて財を成した者も多い。
そんな退廃的な空気の漂う歓楽街を一人の少年が歩いていた。
どうみても薄汚れたストリートチルドレンにしか見えないその少年に視線を向ける者はいない。
リーフ  「……」
少年は注意深く周囲に視線を送る。この地区に出入りする時はいつもそうだ。
リーフはトラキアの歩き方をよく心得ている。
他の地区の人間なんてここではカモがネギしょって来た様なもの。
狙われないためには浮浪児になりすますに限る。
仕草からも誰もリーフが他地区の人間だとは気付かないだろう。
トラキアの人間は溜息をついて下を向いてる奴か、ギラついた視線で他人の懐を狙ってる奴か…
その二通りばかり。
リーフはその演技を完璧にモノにしていた。

329 :幼女の旗の下に:2010/08/11(水) 14:50:36 ID:RmxMZNHn

213

やがて裏通りに入るとうらぶれた一軒の酒場の扉をくぐる。
カウンターで新聞を読んでいた男が顔を上げた。
リフィス 「おう」
リーフ  「やあ、儲かってるかい?」
リフィス 「さっぱりだな…ここんとこはサムシアンとこのクラブに客を取られちまってる」
リーフ  「その前は紫竜会って言ってなかったっけ? ここが儲かってたためしなんて無かった気がするなあ」
カウンターに腰を下ろすと軽く店内を見渡した。
見事に閑古鳥が鳴いている。
リフィス 「ところが…だ。紫竜会さんとこのクラブは今日限りで商売敵じゃ無くなった」
リーフ  「へぇ…なんで? あの店は結構なシノギを出してかなりの上納金を組に収めてたはずだけど?」
サラ   「店そのものが無くなったからよ…マスター、バーボン」
リフィス 「ミルクで我慢しとけ」
サラ   「ほんのジョークじゃない」
リーフ  「サラ…いつの間に…ってそれはいつもの事だけどさ」
隣の席で脚をパタつかせていたサラはクスクス笑いながらリーフの方を向き直った。
サラ   「監視、即応、24時間体制…寝る時忙しい時はおじいさまにお任せ」
リーフ  「ちょっと!? いつもいつもどこから見てるのさ!?
      安心してエロ本も買えないじゃないか!?」
サラ   「ひ…み…つ♪
      それとこないだ買ったエロ本はナンナ達に晒しておいたからお仕置きを楽しみにしてね」
リーフ  「僕にプライバシーはないのか……」
リフィス (いろいろ死にたくなりそうな事態だな…)
リーフ  「ところでさっき店が無くなったって?」
サラ   「ここに来る途中で見てきたんだけどね。見事に木っ端微塵。
      ベルン署の警官が大勢集まってたわ」
リーフ  「また抗争かな? このところ落ち着いてたんだけどねぇ…
      紫竜会とオーガヒルファミリーの手打ちは済んだんじゃなかったっけ?」
リフィス 「エレブから牙がシマを取りに来たって話さ。
      牙の兵隊どもスラムでさんざんトラブル起こしたらしいぜ。
      …となりゃあシマを荒らした連中をトラキアのヤクザ者やマフィアがほっとくはずもねぇ。
      そんでこの事態ってわけさ。牙の連中クレイジーもいいとこだ。エレブのシマだけじゃ満足できねぇのかねぇ?」
サラ   「なかなかエキサイティングな事態になってるのね。
      それでリーフはどうするの?」
リーフ  「まずは探りを入れてみようか…連絡会とトラバントの対応をチェック…
      と言ってもまず戦争だよね。トラバントの政党は治安の悪化をネタに現政権を批判…こんなとこかな?」

330 :幼女の旗の下に:2010/08/11(水) 14:51:17 ID:RmxMZNHn

214

コノートのレイドリック男爵は私邸にて電話連絡を受けていた。
ソーニャ 『うちの兵隊の脅しは有効にいっていますわ。
      これで多くの貧民が鉱山を離れるでしょう』
レイドリック「らしいな。現地の担当からも退職者が出始まってると連絡を受けておる。
       連中の多くは歓楽街に流入してヤクザの下っ端か盗賊にでもなるだろうて。
       キチンと受け皿があるのだからキュアンの若造のような心配はいらんのだ。わっはっは!」
ソーニャ 『結構。クズにはクズなりの生き様がありますものね。
      これで貴方方はドズル…しいては元老党とのコネクションを作れますし…』
レイドリック「そちらがトラキアの闇社会を支配する件についてはしかと援助するぞ。
       もちつもたれつ…助け合いの精神だ」

黒衣の男爵は電話を終えると口元を歪めた。
あの若造を追い落として血盟党を実質的な元老院トラキア支部に変えればどれほどの富と権力を得られるだろうか…

トラキア地区のとある地下室では各組織の親分達が顔を並べていた。
日頃何かといがみ合っていても外部から侵略を受けたとなれば話は別だ。
進出してきた牙をどう対応すべきか…これからその話し合いがもたれるのだ。
サムシアンやガルダ海賊、ギース組、紫竜会、オーガヒルファミリー、ダンディライオン、
バーサーカーブラザーズ、その他小さな組や組織の顔役も含めるとかなりの人数になる。
その中に何気にリフィスとリーフの姿もあった。
リフィスは小なりといえども盗賊団の首領であり、リーフはその友人である。
興味を持ったリーフは無理を言ってリフィスについてきたのだ。
…ちなみに店に残ったサラは何かしらの手段でリーフを監視している。
リーフ  「まさに悪党の見本市だね。ゼフィール署長が見たらたちまち竜巻がおこるなこれは」
リフィス 「トラキアだしなぁ…俺の団が天使に見えてくるね」
居並ぶ連中の中に顔見知りを見つけたリーフは声をかけてみた。
リーフ  「やあ、今回は大変な目にあったようだね」
タニア  「ああ…ちっくしょう牙の野郎どもふざけやがって…ぜってぇ落とし前つけさせてやる!」
リーフ  「…被害は?」
タニア  「組の若い者が大勢病院送りさ。店を任されてたゴメスもだ。親父も子分どもに戦争の準備をさせてる。
      リフィスんとこは?」
リフィス 「うちはそちらさんほど大きくないからな。会合の決定が戦争なら従うけどよ…」

だがこれからの事を思うと内心溜息がでる。
なんとか穏便に…というのが気の小さなリフィスの本音だった。

331 :幼女の旗の下に:2010/08/11(水) 14:52:01 ID:RmxMZNHn

215

キュアン 『トラバント…トラバント! 一体トラキアで何が起こってる!?』
トラバント「なんじゃい。とっくの昔にクビにしたワシに今更何の用じゃ」

キュアンから急な電話が自宅にかかってきたのは午後の事である。

キュアン 『鉱山の労働者が次々と辞めてるそうじゃないか!
      担当に問い合わせても明確な理由が返ってこないんだよ!』
トラバント「ふん、雇用主様が気にかけて下さるとはありがたくて涙が出るわ」
キュアン 『皮肉を言ってる場合か!』
トラバント「ヤクザ者の嫌がらせが原因じゃ。大方ストライキに参加した労働者を辞めさせようというお前等の差し金じゃろうが!」
キュアン 『バカを言うな!俺だって北トラキア貴族の端くれだ。ノブリスオブレージュの精神は忘れちゃいない』
トラバント「やかましいわ!ワシにも覚悟がある…これ以上ワシらを痛めつけるならグングニルを取ってワシは戦うぞ!」
キュアン 『もう少し話を聞けこのバカ!どうしてそう短気なんだ!』
トラバント「バカとはなんじゃこのバカ!」
キュアン 『短気を起こす前にベルン署に相談しろ!』
トラバント「トラキア駐在の警官なぞあてにならんわ!
      犯罪者から賄賂を貰っておるような連中じゃぞ!」
キュアン 『それをなんとかするのが政治家の役目だろうが!槍を振るう前にやることあるだろ!』
トラバント「フン!恵まれた北の連中にワシらの事情が分かってたまるかブルジョワめ!」
キュアン 『なんだとこのハイエナ野郎!』
トラバント「ああだこうだ言う前に南に来てみたらどうだ!」
キュアン 『おう行ってやる!お前とは一度きっちり話をつけなきゃと思ってたところだ!』

最後はほとんど罵りあいとなっていた…

332 :幼女の旗の下に:2010/08/11(水) 14:52:56 ID:RmxMZNHn

216

エレブ地区のとある一角では縁日が開かれていた。
その中にはロイドとライナスの姿もある。
2人はのんびりタコ焼きを焼いていた。
通行人A 「一人前ね」
ロイド  「へい毎度!」
お代を受け取ると客にタコ焼きを渡す。
ライナス 「ひいふう…今日のシノギはこんなとこかね…なぁ兄貴」
ロイド  「あん?」
ライナス 「俺ら…これでいいのか?
      四牙のシノギがこれっぱかしでよ…祭りの仕切りやケチな興行じゃ幾らにもなりゃしねぇよ。
      だからソーニャやウルスラに水をあけられるんじゃねぇか?」
ロイド  「…俺ら牙は仁義を守り任侠を尊ぶ一家だぜ…奴らみてえに薄汚ねぇ真似に手を染めてみろ…
      その影でどれだけの幼女が泣く羽目になると思うんだ」
ライナス 「悪い…そうだったな…」
穏やかな視線を祭りの場に向ける。
幼女が魔女っ娘ミカりんのパチ物お面をつけてはしゃいでいる。
ライナスはこの光景が好きだった。
シノギは少なくとも暖かい物が胸を満たしてくれる。
幼女A  「おじちゃん!たこやきちょーだいね!」
ライナス 「おう!300Gだ。一個サービスしてやるぜ」
幼女A  「ありがとうおじちゃん!」
ライナス 「いいってことよ!それと俺はまだお兄ちゃんだ!」
ロイド  「ぷっくっく…」
ライナス 「笑うこたねえだろ!?」
ロイド  「わりいわりい…締めまで店番は俺がしとく。党の事務所に行ってきな。
      今日は顔出せねえって伝えといてくれや」
ライナス 「わーったよ。1パック持ってくぞ。家に回ってニノに土産をやらねえとな」

ビニール袋にタコ焼きを入れるとライナスは一旦帰宅した。
可愛い妹の事を思うと目じりが下がる。
黒い牙の館では子分たちが慌しく動き回っていた。
ライナス 「あん? どうした?」
子分A  「兄貴!?いや、なんでもないっす…」
…こいつはソーニャ派だった…多分口を割らないだろう。
ライナス 「ケッ…」
忌々しく吐き捨てるとライナスはニノの部屋へと向かっていった。
ライナス 「うおーいニノー!土産持ってきたぞー!」
返事が無い。
ライナス 「ん? 出かけてるのか?」
部屋の戸を開けてみるがニノの姿は無かった。
ライナス 「しゃーねーな…タコ焼き冷めちまう…どうすっかな?」

続く

1 ニノを探す            屋敷のどっかにはいんだろ。探してみっか
2 部屋で待つ            どっこらしょっと。座って待ってるか。
3 党の事務所に行く        先に事務所の仕事を済ましとくか。帰る頃には戻ってるだろ
4 ジャファルの携帯に電話する あいつならニノの居場所をつかんでるんじゃねえかな?