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Last-modified: 2012-09-03 (月) 19:24:47

196 :紋章町危険処理班24時!!!:2010/08/29(日) 22:33:13 ID:nK6zPxPe

日々様々な争いが起こっては消えるを繰り返す眠らない町、紋章町・・・・・・
そんなこの町で、秘密裏に町の平和を守っている陰の集団がいた
いつしか彼らはこう呼ばれるようになっていた
"紋章町危険処理班"と・・・・・!!

―――紋章町危険処理班24時!!!―――

薄暗い部屋のなかで、数人の男達がたむろしている
部屋の外は静かで、カードを切る音と男達の囁き声だけがこの場を支配していた

「・・・・・・ショーダウン」
「・・・・・・ブタだ」
「・・・・・・フラッシュ」
「フッ、悪いな・・・・・・俺の勝ちだ」
「チッ、フルハウスかよ・・・・・・」

粗末なテーブルの上に広げられた5枚のトランプと、その周辺に散らばるコイン
先ほどの会話の内容から察するに、どうやら彼らは賭けポーカーをしていたようだ
男達は口調こそ軽いが隙がなく、周囲を絶えず警戒していることがわかる者にはすぐわかっただろう

「今日はジュリアンの一人勝ちか」
「まぁたまにはな・・・・・・。というか、あんたも元金からは浮いてるだろうに」
「お前さんの弟分のおかげでな」
「くっそー、ジャファルの奴がさっさとこないからこんなことに・・・・・・」
そう、青髪の男がぼやく
男達はどうやら、連れの到着を待つ間にポーカーで暇を潰していたようだ

197 :紋章町危険処理班24時!!!2:2010/08/29(日) 22:34:30 ID:nK6zPxPe

先ほどポーカーで大敗したと思われる男が、いらいらと部屋の中を歩き回る
それでも訓練された身のこなしのおかげか、足音は殆どない
男は歩き続けながら、二人に向けて確認をとる
「クライアントが指定した時間が十時・・・・・・
 そしてジャファルがこっちに戻ってくる予定が十一時・・・・・・だよな兄貴?」
兄貴と呼ばれた赤髪の男が無言で頷いて肯定すると、そのまま青髪の男は話しを続けた
「そして今の時刻は十二時・・・・・。
 こりゃ何かあったんじゃないのか?」

「いや、何かあったと決まったわけじゃない。
 ジャファルは手練れだ・・・・・・ヘマを踏んだりはしないさ」
「ああ、そいつは同じ牙の俺が断言するぜ。特に隠密、暗殺にかけて奴より上に出るやつはそうはいねえ。
 おおかた、依頼料か何かで交渉が長引いてるんだろうさ」

紫髪の切れ目の男は、まるで自分に言い聞かせているかのように言った
声にこそ出さないが、皆ここに居ない仲間の安否を気遣っているのは明白だ
自分達の敵の多さは、いやと言うほど痛感しているのだから

「えー!?こんなに安い料金でやってるってのにか!?」
「貴族サマは下々の者には容赦ないからねぇ・・・・・・」
「ラガルト、あんたの組の事情は分かるが、仮にも依頼人だ。
 内心どう思おうとかまわんが、態度にでないようにしてくれよ」
と、赤髪の男は仲間の軽口をたしなめるが、
男自身、貴族のことをよく思っていないことは男の口調から明白であった

「へいへい、わぁーってますっての・・・・・・・・・・!」
そこでふと、何かに気がついたかのように紫髪の男・・・ラガルトは体の動きをピタッと止める

198 :紋章町危険処理班24時!!!3:2010/08/29(日) 22:36:21 ID:nK6zPxPe

ギシ・・・ギシ・・・ギシ・・・ギシ・・・

後の二人もほぼ同時にそれに気付き、警戒するような視線をある箇所へと向ける
それはかすかに木が軋むような音が聞こえてきた、部屋の入り口の扉であった

ギシ・・・ギシ・・・ギシギシ・・・アンアン・・・ギシ・・・

どうやら何者かが部屋に向かってきているようだ
来たのは待ち人か、それとも・・・・・・

ギシ・・・ギシ・・・・・・・・・・・・

足音は、部屋の前で止まった
赤髪の男・・・ジュリアンが扉の向こうへ声を掛ける
「・・・・・・・お前は?」
「・・・・・・死神」
男の短い問に対し、少しの沈黙の後奇妙な答えが返ってくる
しかしどうやらその答えでよかったらしく、ほっとした様子で三人は来訪者を迎え入れる
入って来たのは、黒いフードを被ったこれまた只者ではなさそうな男だった

「すまない。依頼人の屋敷を出た辺りから少々尾行されていてな・・・・・
 撒くのに多少手間取った」
「まぁ、お前が無事ならそれでいいさ」
「ジャファルが撒くのを手間取るとは・・・・・そろそろここもやばいって事かもな」

「んで、肝心の依頼内容は?」
青髪の男・・・リカードはただ一人能天気な声でそう言った

199 :紋章町危険処理班24時!!!4:2010/08/29(日) 22:39:40 ID:nK6zPxPe

「ああ・・・・・・ある伯爵夫妻からだ。
 娘がAKJに入りたいという内容の手紙を出したので途中で握りつぶして欲しいそうだ。
 それも、AKJの連中の耳に絶対に入らないようにな。
 報酬はとりあえずBランクにしておいた」
このランクというのは仕事の難度と報酬の高さを表す
最低はEランク(楽勝。サザ一人でもできます)で、最高はSランク(フォルカが五人いてもキツイ)である
ちなみに、Sランクの仕事は今まで現れていない

「敵はAKJか・・・手ごわいな」
「こないだも大型の勧誘の邪魔したからなぁ。
 やっこさん、最近金欠なのか貴族ばっかり勧誘してやがる」
「あいつらには相当目の仇にされてるだろうに、報酬は青の宝玉五個ぽっちか・・・・・・
 Aランクにしてもよかったんじゃねえの?」
「Aランクまではいかないだろう。
 この間の兄弟家嫁候補全面戦争の十倍は安全な仕事だ」
「ああ、カタリナとかクリスの嫁候補も加わったからな・・・・。
 正直、あれはSランクでよかったんじゃないか?
 リーフ以外全員出動だったし・・・・・」

―――ここで兄弟家嫁候補全面戦争について説明しておこう
事の発端は最近平和で客の少なさに困ったクロード神父が思いついた企画であった
「夏のヤンデレ祭!生き返らせる際に、自分を殺した人を好きになるようにします!
 優秀さんと混沌女神という心強いバックアップもあり、今なら復活料金30%オフ!
 さあ、この機会にあなたもぜひヤンデレの仲間入r(ry」

・・・・・結局紋章町全域に争いは広まり、特に嫁候補の多い兄弟家では神話に残るような全面戦争が発生したのだった
最終的に彼らがクロード神父を暗殺し、その間にオームの杖を盗みまくったおかげでなんとか争いは終結したのだが・・・・・
その後の復興活動に実に1ヶ月かかったというのだから驚きである
この戦争を終結させたのは表向きはベルン署となっているが、その実彼らの非公式な働きも多分に含まれていた―――

200 :紋章町危険処理班24時!!!5:2010/08/29(日) 22:40:49 ID:nK6zPxPe

「ぼやいててもしかたがあるまい。
 さあ、とにかく仕事を始めるぞ」
「まぁ、こっちの方が日陰者の俺らにゃ合ってるってことよ」
「やれやれ・・・・・割りに合わないバイトだなぁ」
「・・・・・・戦争で最前線で戦う男達に支払われる対価はたいてい割に合っていない。
 いつ死ぬかも分からぬのに安い給金、そして報われぬ名声・・・・・
 しかし、男達は戦うことをやめはしない。
 誰かがやらねばならないことだと知っているからだ。
 そして自分が守りたいものを脅かす脅威を、直接なくしたいからだ」
「お前にとっての守りたい存在・・・・・やっぱりあの娘か」
「そうだな。俺も、もしかしたらその為に戦っているのかもしれない。
 ・・・・・レナ・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・あー、もう分かったよ!
 こうなりゃ働きまくってポーカーですった分位余裕で稼ぎ直してやるっての!!」

形勢不利とみたか、リカードはそう言いながらさっさと扉から出て行ってしまった
「・・・・・ポーカー?」
「ああ、お前が遅かったから、ちょっとな・・・・・」
そんな内容の会話をしつつ、彼らもリカードに続いて闇へと溶け込んでいく

紋章町危険処理班
彼らの存在と働きを知る者は少ない
しかし、彼らはそんなことは気にも留めない
自分達が知られていない事こそが、平和の証であることを知っているからだ
そして彼らは、今日も星空の下で戦っている
この町を脅かす"危険"を処理するために・・・・・・