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Last-modified: 2012-09-07 (金) 19:59:36

478 :幼女の旗の下に:2010/09/18(土) 16:46:28 ID:Ddo2KZVE

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7 本当にトイレに行く    先にトイレを済ませておくか

エフラム 「なんか本当にトイレにいきたくなってきた…先に済ませるか」
右手の通路奥にはプレートにトイレと書かれたドアがある。
歩み寄ってドアノブを捻り…空かない…鍵が掛かっている。

ダミアン 「待ちたまえ。私がトイレを済ませるまでの時を」
エフラム 「入っていたのか…すまん」
ドア越しに独特の倒置法が聞こえてくる。
ダミアン 「聞かぬ声だな。名乗りたまえ。君の名を」
エフラム 「エフラム。ロイドたちの盟友だ」
ダミアン 「ほう君がな。教えたまえ。周囲に人がいるかどうかを」
エフラム 「誰もいないが…一体どうした?」
ダミアン 「ソーニャ派に聞かれるのは具合が悪いのでね。私も彼らに牙をかき回されるのを快くは思わないのだよ。
      聞きたまえ。私の話を」
声を低める…
扉ごしに聞こえてくる言葉を一言も聞き漏らすまいとエフラムは耳を寄せた。
ダミアン 「四牙の3人が憂慮しているのはソーニャの一件だ。彼らがトラキアで抗争を起こして多くの犠牲を出している。
      とある貴族議員とも繋がっていると聞いた。私が知るのはこれだけだ。本来牙はカタギには手を出さないのだが。
      嘆きたまえ。牙の堕落を」
エフラム 「いや…そこまでわかれば充分だ…済まなかったな…だが何故俺にそれを話す?」
ダミアン 「私もまた古き牙を懐かしむ者なのだよ。ゆえにソーニャの専横を憎むのだ。
      理解したまえ。私の望みを」
エフラム 「そいつらの振る舞いを抑えるのに力を貸せということだな」

それにしても…何故にロイド達はそれを俺達に相談しないのか…と一瞬腹立たしくもなったが、そこで思いを馳せる。
エフラム 「ヤクザだから…か…くだらん遠慮をする…」
政党にヤクザ者の抗争が絡めばどこでスキャンダルになるかわからない。それを憂慮した結果だろう。
その時扉が開いた。

ダミアン 「待たせて済まなかったな。使いたまえ。牙のトイレを」
トイレに来た本来の目的を思い出したエフラムは慌てて駆け込むのだった。

479 :幼女の旗の下に:2010/09/18(土) 16:47:13 ID:Ddo2KZVE

241

北トラキア党の一翼を担うコノート家の居館…今はレイドリックが治めるその屋敷は重要な客人を迎えていた。
レイドリック「これはこれは…ようこそおいでくださいました」
ヌミダ   「丁寧な出迎え、いたみいりますぞ」
ランゴバルト「……」
3人は応接室に席を移す。
元老党の幹部2名を出迎えたレイドリックは得意満面で笑みを浮かべる。
レイドリック「ささ…まずは一献…ベグニオン物には及びませぬが良いコニャックが手に入りましてな」
ヌミダ   「ほう…これは良い色合いですな…」
ランゴバルト「酒もよいが…まずは仕事の話を済ませてしまいませぬか?」
ヌミダ   「ランゴバルト殿もせっかちですなぁ…ゆるりと楽しめばよいではありませぬか」
レイドリック「いやいや…それが今回の会談の目的ですからな。それではこちらの資料をご覧いただきたい。
       我々北トラキア貴族が南部で共同保有する鉱山の機械化についてです」
ランゴバルト「事前に連絡を頂いております。その機材を我がドズル重工に発注したいと…」
レイドリック「左様…これをきっかけに親しくお付き合いくだされば幸いです」
ランゴバルト「機材については承知しました。近く現地に担当を派遣しましょう。
       その上で見積もりを出させていただきます」
ヌミダ   「それはよいが…この件について貴方方の党首はいかがお考えですかな?
       以前より貴方のやり方に反対していたと伺っておりますが?」
レイドリック「くく…党首は南に赴いた折に行方不明になりました…あのような治安の悪い土地に護衛も伴わずに赴いたばかりに…
       おそらくギャングにでも襲われたのでしょうな。まったく痛ましい事ですな」
ヌミダ   「ほう?」
ランゴバルト「穏やかではありませんな」
レイドリック「ええ…心配でこのレイドリック。胸が痛みます」
ランゴバルト(十二聖戦士に連なる者がギャングごときに遅れをとるものか…なにか仕掛けおったな…)
ヌミダ   「ふむ…となると…当然次の党首はレイドリック殿となりますかな?」
レイドリック「党の信任を得られれば…の話ですがな。私は全党首とは違った考えを持っております。
       紋章町の第一党たる元老党と親しくお付き合いしてこそトラキアの発展があると考えております」
ヌミダ   「それはよいお心がけですな」
ランゴバルト「…仕事のお話はこれで…党の話ならヌミダ殿にお任せ申す。ワシはこれで失礼を…次の予定がありますでな」
ヌミダ   「ランゴバルト殿もせっかちですなぁ。せっかくの酒を楽しんでいかれればよいものを」
レイドリック「残念ですがご予定がおありならお引止めもできますまい」

コノートの館を辞したランゴバルトは一人呟いた。
ランゴバルト「……これも我が社員の暮らしを守るためだ…ワシは間違ってはおらん…」

480 :幼女の旗の下に:2010/09/18(土) 16:48:23 ID:Ddo2KZVE

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ヌミダ   「ランゴバルト殿も頭が固い…いやはや…まだバーハラにおられた頃のクセがぬけておりませぬな」
レイドリック「まぁよいではありませぬか。ヌミダ殿なら突っ込んだお話もできますでな」
ヌミダ   「ほう?」
レイドリック「党首…あの青二才は失業者を出さぬため機械化には反対するなどと抜かしておりましてな…
       その石頭にはワシ等も辟易しておりました」
酒が入ったためだろうか…レイドリックは饒舌だった。
ヌミダ   「それで…手を打たれたと?」
レイドリック「さすが理解が早くていらっしゃいますな。ええ、牙に命じて騒乱を起こさせその機に乗じましたわい。
       幸いワシの手元に腕利きがおりましてな」
ヌミダ   「始末はついたということですかな。であれば我らと貴方方の付き合いにいささかの支障もありませぬな」
レイドリック「命を取ってもバルキリー等で生き返ってこられては意味をなしませぬ。
       ゆえにこの屋敷の地下に幽閉しております。二度と日の光を見ることはかないませぬ。くっくくく…」
ヌミダ   「レイドリック殿もお人が悪い…ですがこれで邪魔者は消え去りましたな。
       これからは共に繁栄の楽しみを味わいたいものですな」

その話を部屋の片隅で一つのダンボールが聞いていた…
ジャファル (ソーニャの件を追い続けて…ここに行き着いたか。ロイド達に伝えなければ)

その頃…エッダの教会ではクロード神父が神に祈りを捧げていた。
久々のお客さんとあって神父も大張り切りである。
聖杖にひびが入り…砕け折れると同時に…盗賊の少年が息を吹きかえす。
クロード  「これでお二人分ですね。料金…もといお布施は修理代込みで10万Gになります。ローンでも結構ですよ?」
リーフ   「利息が付くからやだよ。現金一括で」
クロード  「チッ…」
意識を取り戻したチャドとキャスは怪訝そうに周囲をうかがった。
次第に意識が鮮明になる。

チャド   「ボス…?」
そっと口を耳元に寄せて囁く。
リーフ   「リーフだよ。ここにはフィンも神父もいるからね」
チャド   「あ…ああそうだったな…」
キャス   「そっかぁ…やられちゃったんだ…アタシら」
リーフ   「生き返ってすぐですまないけど事情を話してくれるかい?」
フィン   「そう、キュアン様はいずこに!?」
キャス   「悪いんだけど…アタシらもあっというまにやられたからよくわからないのよ。
       気が付いたら…って感じでね」
チャド   「でっけぇ大男だったなぁ…わけわかんねぇうちに切り裂かれちまった…」
リーフ   「そっか…うんわかった。それじゃあトラキアに戻ろうか。今頃みんな戻ってきてるだろうからね」

481 :幼女の旗の下に:2010/09/18(土) 16:49:19 ID:Ddo2KZVE

243

牙の屋敷ではターナがロイド、ライナスから話を聞いていた。
…と言っても2人とも事情を話す気配も無い。
幾度かカマをかけてみたが引っかかってはくれなかった。
ターナ  (ううぅ…エフラム…まだ戻ってこないの?)
ライナス 「なんか心配かけちまったみてぇだが俺らの事なら大丈夫だぜ。ちょっと商売上のトラブルがあったってだけだからよ」
ロイド  「そういうこった。お前らは気にせず党の仕事をこなしてくれや」
その時である…勢いよく襖が開いた。
エフラム 「残念だがそうはいかん。事情はこの男から聞いた」
ロイド  「エフラム!?」
ダミアン 「許したまえ。彼に相談を持ちかけた私を」
ライナス 「ダミアンてめぇ!勝手な事しやがって!」
ダミアン 「ソーニャの力はほぼ牙を掌握している。私達だけではどうにもならんよ。
      考えたまえ。最善の方法を」
エフラム 「そういう事だ。同胞の悩みを放置してはおけん。それに一般住民にも被害が出ているとあっては政治家として放ってはおけん。
      さっそく解決に乗り出すぞ」
ターナ  「勢いよく言うけどね…一体どういう事情なの?
      誰か説明してくれると助かるんだけど…」

ダミアンはかいつまんで事情を説明する。
ソーニャとレイドリックの裏取引。それに基づくトラキアでの抗争。
牙の現状を…

ターナ  「なるほどね…」
ライナス 「…今更隠してもしゃあねぇけどよ…いいのか?
      政敵やらマスコミに掴まれたらスキャンダルのネタになりかねないぞ?」
エフラム 「本当に今更だな。お前らは党立ち上げ以来の同志だ。それに世間に恥じるような事は何一つしていない!」
ロイド  「俺達も解決のために動いてはみたんだが…親父はアテにならねぇ…一番の方法はソーニャを追放して牙の実権を掌握できりゃいいんだがな」
エフラム 「黒幕はレイドリックとやらなのだろう?ソイツを倒すというのはどうだ?」
ターナ  「なんの証拠も無いでしょうが…現役議員を襲撃した罪で逮捕されちゃうわよ…また刑務所はいやよ」
エフラム 「む…それもそうか…」
ダミアン 「内々に事を進めてもよい。我ら牙は元々暗殺組織。ソーニャを消せれば…」
ターナ  「だから犯罪方面は勘弁だってば…」
ライナス 「トラキアからの情報なんだがほぼ表向きの事件は鎮圧されたらしいぜ。
      それには…裏ルートの話だが…義賊集団とやらが関わってるらしい。ソイツらと組むってのはどうだ?」
エフラム 「なるほどな…裏社会の事は裏社会の味方を…ってわけか」
ロイド  「もう一つは…ベルン署に捜査協力って手もある…俺ら牙はもともとは任侠集団だ。
      ベルンとの関係は決して円満じゃねぇが…内部協力者って形を取ってソーニャをパクらせるって手もあるぜ」

エフラム (さて…牙の事件を治めるには…どうしたらよいかな)

続く

ライナス案を採用する 義賊集団とやらと組んでみるか。しかし何者だろうな?
ロイド案を採用する  ベルン署と組むか…人を冤罪で追い回すろくでもない連中だが背に腹は変えられん…