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Last-modified: 2012-09-03 (月) 19:00:43

69 :よろしく:2010/08/21(土) 23:13:14 ID:ErZ+8sK2

よろしく(1)

マルス 「いやぁ、今日もいい天気だね」
ロイ  「その割には、暑さに文句を言いたそうな笑顔だね。マルス兄さん」
リーフ 「これだけ暑いと、薄着のお姉さんに出会えるかも・・・!」
 いつものように(?)町内を散歩しているマルス、リーフ、ロイの三人。
すると、道の向こうから見慣れた人影が。
マルス 「おや、あれは?」
リーフ 「クリスさん兄妹だね。でも、なんか様子がおかしいというか、挙動不審というか?」
ロイ  「あ、こっちに気づいたみたいだよ」
 三人の元に駆け寄ってくるクリス(♂♀)。その顔には、どこかほっとしたような雰囲気が浮かんでいる。
クリス♂「マルス様!おはようございます。それに、リーフにロイも」
クリス♀「おはようございます」
マルス 「おはよう、二人とも。今日も暑いね」
リーフ 「おはよう、クリスさん」
 笑顔で挨拶を返すマルスとリーフ。しかし、一人、マルスの背に隠れるようにして一歩下がった者がいた。
マルス 「? どうしたんだい、ロイ。クリス達に挨拶ぐらいしなさい」
ロイ  「う、うん・・・。おはようございます、クリスさん」
クリス♂「あぁ、おはよう。ロイ」
クリス♀「おはよう、今日もいい天気ね」
ロイ  「そ、そうですね」
マルス 「ロイ? なんかいつもと様子が違うじゃないか。ホントにどうかしたかい?」
ロイ  「いや、べつに何でもないんだけど・・・」
 なかなか自分の背中から出てこないロイに、マルスが不審げな声を出すも、ロイはどうもはっきりしない態度だ。
 マルスの背より出した顔から、ちらちらと従兄弟達に視線をやっている。
リーフ 「ははぁ、なるほどね」
 その視線から、リーフは弟の様子を察したようだ。
リーフ 「ロイ、君は恥ずかしがっているんだろう?」
ロイ  「!」
クリス♂「恥ずかしがるって・・・誰に?」
 クリスが、当然とも言える疑問を呈すると、すぐにリーフがそれに答える。
リーフ 「そりゃ、もちろんクリスさん達にさ」
クリス♀「私達に?」
マルス 「そうなの? ロイ」
ロイ  「う、うん・・・。恥ずかしいっていうかなんていうか。ごめんなさい」
 ロイが、申し訳なさそうな顔を作って二人に謝るが、それでもなかなか前には出てこない。
マルス 「恥ずかしがるって・・・。別に人見知りってわけじゃないし、ましてや、クリス達は従兄弟だよ?」
 自分の背中の方に顔を向けながら弟を見やるマルス。その疑問に答えるのはまたもやリーフだった。
リーフ 「従兄弟だからこそ、さ。僕や兄さん達は昔の記憶があるからいいけど、小さかったロイにとっては
     クリスさん達は殆ど初対面だし、従兄弟同士の接し方なんて分からないんだよ。ね?」
ロイ  「・・・ごめんなさい」
 リーフの言葉に、再び謝罪を口にするロイ。マルスは「仕方がないなぁ」といった顔を作るが、
ロイの気持ちも分からないでもないのか、背中から追い出そうとはしない。
クリス♂「いや、謝る必要はないんだ。確かに、俺達の方はロイのことを知っているけど、
     ロイは俺達のことを覚えているって方が無理あるんだ。急に従兄弟と言われても、困るだろう?」
ロイ  「・・・・・・」
クリス♂「だけど、離れていた時間があるにせよ、俺達は血のつながった従兄弟だ。
     これからはずっとこの町で一緒にいるんだから、徐々に慣れていけばいい」
 そう言いながら、クリスが自分よりやや背の低いロイに合わせて、身をかがめながら笑顔を向ける。
 それにつられてか、ロイもぎこちないながらも笑顔を返す。

70 :よろしく:2010/08/21(土) 23:13:58 ID:ErZ+8sK2

(2)

クリス♀「でも、やっぱり少しさみしいかな。
     私たちが引っ越す前は、ロイも私達のことクリスお姉ちゃん、お兄ちゃんって呼んでくれてたのよ?」
ロイ  「そ、そうなの?」
マルス 「あ~、そういえばそうだったかもね。その頃はロイもしゃべり始めたばっかでね。
     下手すりゃアルムよりも先に、クリス達の名前を呼んだんじゃないかな?」
リーフ 「僕もそんなはっきり覚えてないけど、昔はほんとに兄弟みたいに仲が良かったんだよね?」
クリス♂「あぁ。俺達も、シグルド兄さんや、アイク兄さんって呼んで、可愛がってもらった」
 そんな思い出話をしていると、クリス♀が何か思いついたのか、両手を胸の前で合わせる。
クリス♀「そうだ!ロイ、今から私達のこと、昔みたいに呼んでいいのよ?」
ロイ  「えぇ!?」
 突然の提案に、ロイが素っ頓狂な声を上げる。
クリス♀「だって、昔みたいに呼んでくれれば、またすぐに仲良くなれる気がするでしょう?」
ロイ  「で、でも・・・」
 クリス♀は自分のアイデアにひどく満足が行ったのか、自信満々の顔でロイに語りかける。
その隣では、クリス♂も賛成らしく柔らかく微笑んでいる。
マルス 「いいじゃないか、ロイ。ロイだって、二人と仲良くなりたいんだろう?」
ロイ  「うん。それはそうだけど・・・」
リーフ 「それじゃあ、僕がお先に!クリス姉さん!!クリス姉さーーーん!!」
 そこに、ここぞとばかりにリーフが飛び出て、クリス♀の手を握りぶんぶんと振り回す。
クリス♀「あ、あはは。リーフは相変わらずみたいね」
クリス♂「安心するというか、むしろ心配というか・・・」
マルス 「自重して弟よ」
 マルスがそれにツッコミを入れると、リーフは「ごめんごめん」と言いながら、
クリス達の間に入ってマルスとロイの方に振り向く。
 クリス達はリーフの行動に困ったような、それでいて嬉しそうな笑顔を浮かべている。
その姿は、なるほど、確かに仲の良い兄弟のようにも見えるだろう。
リーフ 「さぁ、ロイもこっちに来なよ」
 『こっちに来なよ』とは、場所的な意味ではない。
クリス達と、ロイの間は精々1メートルか2メートルの距離だ。
リーフ 「怖がることないよ。僕とロイが兄弟であるように、僕とクリス兄さん達は従兄弟で、
     君とクリス兄さん達も、やっぱり従兄弟なんだ」
 リーフが、弟を安心させるように、ここにロイの居場所があるのだと知らせるように、言葉を紡ぐ。
クリス♀「ロイ」
 クリスが、右手をロイの方に差し出す。その手を見てから、ロイはマルスの顔を窺うようにして見る。
 マルスは(この兄にしては珍しいくらいに裏表のない)笑顔を浮かべると、体をスッと半歩どける。そして、
マルス 「さぁ、君のしたいようにしていいんだ」
 そう言って、弟の背をそっと押してやった。
ロイ  「・・・」
 ロイは、まだ恥ずかしそうに下を向いたまま、それでも二、三歩前に進み・・・。
ロイ  「ロイです・・・よろしくお願いします。クリス、姉さん。クリス、兄さん」
 そういって、差し出せれた従姉弟の手を握り返した。
マルス  「あ~あ。それじゃあ、自己紹介じゃないか、ロイ」
 マルスが苦笑しながら前に出て、ロイの肩に手を載せる。
クリス♀「ふふ。よろしくね、ロイ」
リーフ 「あ、ロイ。顔が赤いよ?・・・さては、君もついにお姉さんの魅力に気づいたか?」
クリス♂「あらためてよろしく、ロイ。これからは、一緒に訓練をしたり、訓練したりしよう!
     もちろん、リーフも一緒にな」
リーフ 「えぇ!?クリス兄さん達の訓練になんか、ついて行きたくないよ!!」
ロイ  「ははは」
 一度崖を飛びこれれば、その崖が思っていた程広くはなく、崖を飛び越えた先はとても居心地の良い
場所だったというのもよくある話。
 笑い合う、自分の親友とも言える立場にある従兄弟二人と、弟二人。
 それを見て、マルスもまた安心したような、嬉しいような(おそらくどちらも正解であろう)笑顔を浮かべるのであった。
マルス 「いやぁ、今日もいい天気だね」

71 :よろしく:2010/08/21(土) 23:14:42 ID:ErZ+8sK2

おまけ

マルス 「そういえば、さっきキョロキョロしてたみたいだけど、どうしたの?」
クリス♂「あぁ、そうでした!実は、散歩していたら道に迷ってしまって」
クリス♀「マルス様たちにお会いできてよかった。これで、家に帰れます」
ロイ  「迷うって・・・ここ、近所だよね?」
クリス♀「私達も、兄さんも方向音痴で・・・」
ロイ  「兄さんって、クリス兄さんのこと?あれ?でも今『私達』っていってたよね・・・」
クリス♂「あぁ、マーク姉さんのことさ」
ロイ  「・・・もう一回言ってくれる?」
クリス♂「マーク姉さん」
クリス♀「マーク兄さん」
ロイ  「( ゚д゚)・・・
     ( ゚д゚ )」
クリスW「「こっちみないで」」
ロイ  「ちょ、なに言ってんの!?マークって、あのマークさん!?」
クリス♀「私の知ってるマークはマーク兄さんしかいないわね」
クリス♂「あぁ、マーク姉さんだけだな」
ロイ  「せめて性別統一して」
リーフ 「どうしたんだい、ロイ?」
ロイ  「だって、マークさんがクリス兄さん達の兄姉ってことは、僕達と従兄弟ってことでしょ!?」
マルス 「そうだよ。今更なに言ってるんだい、ロイ」
ロイ  「初耳だよ!二人とも知ってたの!?」
リーフ 「もちろんだよ。ねぇ、兄さん?hahaha・・・」
マルス 「あたりまえじゃないか。ねぇ、リーフ?ハハハ・・・」
ロイ  「声が乾いてる!目が泳いでる!ちょっと、こっちみて答えてよッ!!」

クリス♂「あぁ、そういえば昔からこんな感じだったな。」
クリス♀「うん。ちっちゃい頃から、皆のツッコミはロイの担当だったわね」
クリス♂「そのせいでついつい、からかい過ぎてしまうんだよな」
クリス♀「あはは。確か、最初にしゃべった言葉は『マルスお兄ちゃん、自重して』だったわね・・・」

ロイ  「そこ、関係ないふりしないでよ!」

クリス♂「あぁ、すまない」
クリス♂(でも・・・)
クリス♀(うん。案外、昔みたいに打ち解けられるのも早そうね?)

おわり