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Last-modified: 2009-05-07 (木) 21:19:34

双聖器の仮面

 

エリンシア「…っと、はい、できあがりよ。
      どうかしら、エイリークちゃん?」
エイリーク「…うん、問題ない、と思います。
      すみません、エリンシア姉上。唐突に変なお願いをして」
エリンシア「あら、いいのよ。私、人の髪をいじるのが大好きだし。
      しかし…また男役なのね、エイリークちゃん。
      まあ、女子高では仕方がないのかしら?」
エイリーク「ええ…身長や雰囲気から私が適任であると、最近では専ら男役ですね。
      たまには別の役柄にもチャレンジしたいのですが、
      役がもらえるだけでもありがたいことですし」
エリンシア「そうね、去年やったエイリークちゃんのお姫様、とてもかわいかったのに。
      …んー、だけどかつらで短髪風にしたエイリークちゃんて…」
???「あの…ごめんください」
エイリーク「あ、お客様ですね。私が出ましょう」
エリンシア「え、ちょっとエイリークちゃん。その格好のままでは…
      …あららら、行っちゃった」

 

(がらららら)
エイリーク「はい…あ、ミルラ。いらっしゃい。ええと、エフラム兄上は今…」
ミルラ「あ、こんにちわ。(ぺこり)
    あのあの…昨日した約束、覚えていますか?」
エイリーク「…はい?」
ミルラ「え…あ、あの…さかあがりの練習をみてくれるっていう約束…
    覚えていないのですか?昨日、さかあがりできなくて泣いてる私をなぐさめてくれて…それで…」
エイリーク「いや、その…どう…」
ミルラ「いえ、確かに今日早速みてくれるっていう約束はしなかったですけど、
   …あの、まさかそのこと自体忘れてしまって…ますか?」
エイリーク「ええと…」
ミルラ「そう…ですか…なんだか私がエフラムのこと困らせてるようです。
    エフラムにも予定がありますよ、ね。いきなり来てしまってごめんなさ…」(ぐすっ)
エイリーク「エ、エフラム兄上!?」
エリンシア「はーい、はいはい、ストップ、ストップ!
      ミルラちゃん、落ち着いてね。コレはエイリークちゃんだから。
      ほら、ほら、ね?」
エイリーク「あ、姉上!無造作にかつらをとらないでください。せっかくのセットが…」
ミルラ「!!!…エ、エイリー、ク?」
エリンシア「ほんと、びっくりするわよね。
      小さい時は確かに見分けがつかないくらいそっくりだったけれど、
      エイリークちゃんたらこうやって短髪風にするとまだまだエフラムちゃんに似てるんだもの。
      さすが双子ね。うふふふふ」
ミルラ「わー…」
エイリーク「エリンシア姉上…ミルラ…
      そ、そんなに私は今でもエフラム兄上にそっくりなのですか?」
ミルラ「は、はい…なんだか“優しいエフラム”という感じがします。
    あ、いえ、エフラムはいつも優しいですけど。あの…なんというか見た目が…」
エリンシア「そうねぇ、2人が並ぶと多分違いがはっきりわかっちゃうのでしょうけれど。
      ぱっと見だとほとんどの人が間違えると思うわ」
エイリーク「そう…ですか。髪型だけで、首から下はまだなにも手をつけていないのに、
      それでも双子とはいえ男性と見分けがつきませんでしたか…そうですか…orz」
ミルラ「あ、あの…エイリーク…私は何か失礼なこと言いましたか?(おろおろおろ)」
エイリーク「いいえ…久しぶりに自分の体型のコンプレックスを思い出しただけです…ふ」
エリンシア「(ふう、とりあえずご町内の安全は守られたわね)
      だけど…」
エイリーク「え?」
エリンシア「ああ、もう我慢できないわ!
      お願い、エイリークちゃん。ちょっとだけつきあってちょうだい!
      姉さん、こういう倒錯的なの、たまらなく大好きなの!
      エフラムちゃんの服はさすがに丈があわないだろうけれど、他の子のなら…」
エイリーク「えええ?ちょっ、姉上…あの…!
      ミ、ミルラ、そんなわけでエフラム兄上は留守なので…あああああ」
ミルラ「…えと、強引にエイリークが連れられていってしまいました。
    …んと…お、おじゃましました」(ぺこり)

 

マルス「なに?エフラム兄さんが変?」
リーフ「(こくこくこく)」
マルス「そんなことわかってるよ。いつものことじゃないか」
リーフ「違っ!そういう変じゃなくて…なんというかこう…優しいっていうか」
セリス「エフラム兄さんは優しいじゃない。どうしてそれが変なの?」
リーフ「……セリスとのその認識の違いはあとで埋めるとして。
    それはともかく。さっき居間でエフラム兄さんがくつろいでるところに
    すれ違いざまおやつを一つくすねようとしたんだよ」
アルム「…リーフって時々命知らずだよな」
リーフ「まあね。通らないと思ってたところがすんなり通ったりするときがたまらなくうれしい
    …って、そんなことはどうでもいいんだよ。
    で、それからつかまらないようにダッシュしようとしたら、なんとも落ち着いた声でさ
    『リーフ、お腹がすいているのですか。それはいいけれど、座って食べなさい。
    行儀が悪いですよ』ときたもんだ」
アルム「げーーー!なんだそれ。エフラム兄さん、なんか悪いものでも食ったのか?」
リーフ「さぁね。でもこれだけでもエフラム兄さんが変だってわかっただろ」
アルム「確かに…」
セリス「いつも食べ物の分量にうるさい兄さんにしては、おかしいね」
リーフ「その上、なんていうの?こう…花しょってるっていうかさ。
    全体的に雰囲気が貴族的っていうかさ」
アルム「花!?槍じゃなくて?」
セリス「えー、槍はしょうんじゃなくて、かつぐんじゃないの?」
リーフ「そんなのはどうでもいいんだyo!人の話をまともに聞け!」
マルス「ふーん…」

 

エフラム?「…ふぅ」
マルス「エイリーク姉さん?」
エフラム?「!?マ、マルス…」
マルス「あ、やっぱりそうなんだ。話を聞いて変だと思った」
エイリーク「こ、これはその…」
マルス「あらかたエリンシア姉さんあたりに男装させられたんだろ。
    セリスといい、エリンシア姉さんも懲りないなあ。これだからヅカ好きは」
エイリーク「でも…マルスにはわかるのですね。リーフにも勘違いされたようで、
      そろそろ女性として何かが折れてしまいそうなところでした…」
マルス「まぁ、僕は先に話を聞いてから見たからね。
    …って、姉さんそれで安心していいの?」
エイリーク「え、どういうことですか、マルス?」
マルス「仮にも姉さんは演劇部員で、他人になりすまさなきゃいけないはずだろ?
    なのに、僕にこんなに簡単に見破られるなんて、
    心までエフラム兄さんに…男になりきっていない証拠じゃないか」
エイリーク「た、確かにそうですが…別に今度の役はエフラム兄上というわけでh…」
マルス「言い訳無用!恥を捨て、どんな役にもなりきり、観客の誰もがその役として
    自分の存在を違和感なく受け入れてくれてこそ役者ってもんじゃないだろうか!?
    今の姉さんにはそれが足りないと思う!」
エイリーク「…くっ、言われてみれば…なんとなく正論な気が…」
マルス「でしょう?だからここで誰もがどう見ても『エフラム兄さんだ』という演技ができれば
    完璧だと思うんだ。どうかな、姉さん。これから外へ出て、
    姉さんの演技力をためすというのは?」
エイリーク「え、えぇ!?いくらなんでも、この格好で外へは…」
マルス「エイリーク姉さんの演技にかける情熱は、そんなものだったの!?
    紅天女の役がほしくないの!?姫川あ○みもがっかりだよ!?
    月影先生も浮かばれないって!」
エイリーク「う…わ、わかりました。これも演技力の修行です。エフラム兄上の仮面をかぶり、
      演技コンクールを1人で演じきった北島○ヤの如く演じきってみせましょう!」
マルス「エイリーク姉さんならわかってくれると思ったよ。僕はずっと姉さんのファンだよ!」
エイリーク「ありがとう、マルス…。でもこれは玄関にかざってあった薔薇の造花。
      戻していらっしゃい」

 
 

マルス「…案外エイリーク姉さんも、思い込みが激しいなぁ。
     おかげでおもしろくなりそうだけれどwww
     というか、しとやかなエフラム兄さんって…
     なんともそら恐ろしい感じだったな(鳥肌)」