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Last-modified: 2012-09-07 (金) 20:07:53

48 :家族の情景1:2010/09/20(月) 15:46:42 ID:GtMyR0Ns

空気を読まず、KINSHIN投下。いや、>>29を見て、男とデート?するリンを
書いたら、結果KINSHIN以外の何物でもなかったという。
 ちなみに、リンとエリウッドなんで、苦手な方はスルーお願いします。

家族の情景

 風が、草原を渡る。夏の暑さも和らぎ、穏やかな日差しがまだ青々とした草達に
降り注ぎ、静かにきらめく。

「気持ちいいわね」

 草原と同じ色をした髪の少女が、風にその髪を躍らせながら呟く。
 まるで独り言のようにそっと口から出た言葉だが、それでも彼女の隣に立つ男
は律儀に相槌を打つ。

「あぁ、本当に。こんなふうに、ゆっくりとここで過ごすのは初めてだ」

 彼女の隣に立つのは、赤い、燃えるような髪を持つ青年だ。年の頃は少女よりも
一つか二つ上に見える彼は、彼女の兄である。
 髪の色や瞳の色、顔のつくりや全体的な雰囲気など、およそ兄妹らしからぬ特徴を
もつ二人であったが、その目から感じられる意志の強さは、なによりも彼らが家族で
あることを物語っている。

「家の中にいると、いつも気苦労が絶えないからね。こうして、のんびりと休日を
過ごすのも良い。誘ってくれてありがとう、リンディス」

「ふふ、どういたしまして。エリウッドも、たまには羽を伸ばさないとね」

 青年―エリウッド―の安らいだ表情と言葉に、少女―リン―が満足げな顔をする。

「でも、どうして突然誘ってくれたんだい?いつもは一人で来るか、フロリーナと
二人でサカに来ているのに。僕達がいたんじゃ、サカの友人のところにも行きにくいだろう」

「別に、そんなこと気にする必要ないわ。今日でなくとも、母なる大地にも、そこに
住む友たちにも、いつでも会えるのだから。それよりも、今日はあなた達と来たかったのよ」

 エリウッドの気遣わしげな問いかけに、リンは笑顔で答える。

49 :家族の情景2:2010/09/20(月) 15:49:47 ID:GtMyR0Ns

「それに、今回エリウッドを誘ったのはマークのすすめがあったからよ」

「マークの?」

 二人の共通の友人の名に、エリウッドが反応する。

「えぇ。最近のあなたは特に疲れているって。気分転換に連れて行ったらどうかって、ね」

「そうだったのか。まったく、相変わらずマークにはお見通しというわけか」

「ふふふ」

 まるで全てを見透かしているような友人の顔を思い浮かべて、エリウッドが苦笑する。
 それでも、エリウッドのことだから内心では感謝の言葉を紡いでいるのだろうが。

「でも、マークのことがなくてもエリウッド達には一度ゆっくり草原に来てほしかった。
私の大好きな場所を、私の大好きな家族のみんなにも、好きになって欲しかったから」

「リンディス・・・」

 リンらしいまっすぐな言葉の中に、彼女の兄弟達への想いを感じ取り、エリウッドの
胸が熱くなる。隣に立つ妹に顔を向けると、自分のセリフに気恥ずかしさを感じたのか、
ふいと前の方を向いてしまう。その耳は赤くなっているように見える。

「そ、それにね・・・」

「それに?」

 続くリンディスの言葉が紡がれることはなかった。なぜならば、

「エリウッド兄さーん!リン姉さーん!」

 二人よりやや離れた距離から、もう一人の兄弟が手を振りながら走ってきたからだ。

「元気だね、ロイ」

「あまり、むやみに走ってはだめよ!慣れないと、草に足を取られて転んじゃうわよ!!」

 末の弟の姿を見やり、エリウッドは微笑ましげに、リンはやや心配げに声をかける。
 しかし、リンの警告はどうやら意味をなさなかったようだ。

「え?なぁに、姉さん・・・て、うわぁ!?」

 ポサ、と。草がクッションになったのか軽めの音を立てながら、ロイの姿が高草
の向こうに消える。

「ははは」

「はぁ・・・」

 予想通りというか、期待通りというか。弟の素直すぎるアクシデントに苦笑しながら
顔を見合わせる兄と姉。

「行こうか、リンディス」

「えぇ」

50 :家族の情景3:2010/09/20(月) 15:51:46 ID:GtMyR0Ns

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

「えい!やぁ!」

「まだだ。踏み込みが甘いぞ、ロイ!」

 赤毛の二人が、木剣を撃ち合う。ロイの果敢な攻めをエリウッドは流れるように
捌き、的確に、そして適度にロイの防御が間に合うように反撃を加えていく。
 それを、やや離れた場所に座ってリンが眺めている。

「ロイ、足もとに気をつけなきゃダメよ!」

「わ、分かってるよ!」

 先ほど見事に転んだ件を言われ、ロイが非難がましくリンに声をかけると・・・

「隙ありだね」

「・・・あ」

 剣の切っ先が、ロイの喉元で止まっていた。

「ダメじゃないか、ロイ。周りの声を聞くことも大切だけど、だからと言って、
目の前の相手からは意識を外してはいけないよ」

「でも、今のはリン姉さんが・・・」

「あら、私のせいにするの?」

 ロイが面白くなさそうに文句を言うと、その姿を見てリンがからかうように微笑む。

「だって・・・もう!それじゃあ次は、リン姉さんが相手をしてよ!」

「えぇ、いいわよ。・・・でも、その前にお昼ご飯にしましょうか。
二人とも、運動してお腹が空いてるでしょ?」

「あれ?もうそんな時間かい?気付かなかったな」

「でも、言われてみれば確かにお腹が空いたな」

 時間を気にせず、ゆっくりと過ごしていたからだろうか。時計の無い草原では
正確な時間を知るすべはなかったが、日の高さと、言われて気づいた空腹具合が、
今がもう正午前後であることを教えてくれる。

「草原ではそれでいいのよ、ロイ。父なる天の動きと、自らの中で時を刻む。
だから、草原の空気はこんなにも緩やかなの」

「う~ん?分かるような、分からないような」

 リンは時々、不思議な言い回しをすることがある。感覚的には分かるような、
それでも理解できないような。そんな、独特な感性で紡がれる言葉回しを。
 ロイの隣では、エリウッドも汗を拭きながら、同じような顔をしていた。
 その二人の顔は本当に瓜二つで、それを傍から見るリンはついつい笑ってしまう。

51 :家族の情景4:2010/09/20(月) 15:52:44 ID:GtMyR0Ns

「くす。別に、分かる必要はないのよ。さぁ、二人ともこっちへ来て。食べましょう」  

 リンが、広げたレジャーシートの上にランチボックスを並べて二人を手招きする。
 
「今日のお弁当は、リン姉さんが作ったんだよね?」

 シートの上に座りながら、ロイが問いかける。エリウッドも、食器を手渡してくれた
リンに礼を言いながらロイの向かい側に座った。

「そうよ。エリンシア姉さん達にも手伝ってもらったけど・・・腕によりをかけたんだから!」

 自信満々にランチボックスの蓋を開けるリン。その中には、たくさんのサンドウィッチや
から揚げ、ポテトサラダなどのおかずが入っていた。

「うわぁ、すごいや」

「おいしそうだね。でも、こんなに用意するのは大変だったんじゃないか?
家を出たのだってかなり早い時間だったと思うけど」

 一体、何時に起きて用意してくれたのだろうかと、気になったエリウッドが尋ねると、

「たまには、私だって女の子らしいことをしてみたいじゃない。気にしないでいいのよ」

 と、流されてしまう。あまり気を使われたくなかったのだろう。

「それよりも、たくさん作ってきたから、いっぱい食べてよね!」

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

「・・・ん」

「目が覚めた?エリウッド」

 やわらかな風に頬をなでられて、エリウッドの意識が覚醒する。
 昼食を食べて談笑してるうちに、睡魔に襲われてしまったらしい。

「・・・そうか、つい、うたた寝してしまったみたいだね。すまない」

「別に、謝ることじゃないでしょう?」

 いつも、たとえ朝でも身支度を整えて居間に姿を現すエリウッドの寝ぼけた姿を見て、
リンが笑顔を浮かべる。

「しかし、せっかく三人で遊びに来たのに寝てしまうなんて・・・」

「もう!さっきも言ったけど、今日は、疲れているエリウッドに息抜きしてもらう為に
来てるんだから、私達に気を使う必要なんてないのよ?」

「そ、そうか。ありがとう」

 なおも申し訳なさそうに言うエリウッドに、これは少し強く言わなくては引き下がら
ないと察したリンが、やや強気な口調で言う。
 エリウッドはエリウッドで、強情な妹のことだから、ここで引き下がらないと終わりが
ないと察し、素直に礼を言う。
 このあたりは、さすが兄弟といったところか。

52 :家族の情景5:2010/09/20(月) 15:53:55 ID:GtMyR0Ns

「・・・ところで、ロイはどこに行ってるんだい?」

 エリウッドが身を起こしながら、姿の見えない弟について尋ねる。

「あなたが寝て、すぐに遊びに行ったわ。私達の近所も、家がたくさん建ってあまり広い
場所がなくなってきたから、自由に駆け回れるのが嬉しいみたいね」

「そうか。やっぱり、ロイも連れて来て良かったね。あの子も、普段は周りに気を
使ってばかりだけど、本当はまだ父さんや母さんに甘えたい年だ。
こうやって、たまにはどこかへ連れ出してあげないと、きっと僕達に見えないところで
疲れてしまうだろう」

 エリウッドが、どこか遠くを見つめるように言うと、リンはそれに静かにうなずく。

「えぇ。・・・まったく、誰に似たのかしらね?」

 そして、エリウッドの方に意地悪な視線を向けてやると、案の定、兄はやや狼狽し、

「えぇ!?僕のせいかい?それを言うなら、シグルド兄さんだって同罪だろう」

「くすくす。冗談よ、冗談。どっちかというと、弟にまで心配かける、ヘクトル達のせいよ」

 口元に手を当てて笑う妹の姿に、自分がからかわれていると悟ったエリウッドだったが、
それで怒るような性格でもないので、やれやれと肩をすくめて終わらせる。

「そうだ、リンディス」

 やや経ってから、エリウッドが思い出したように口を開く。

「んー?」

 ロイが先ほど走って行った方を見つめていたリンが、エリウッドの呼びかけに声を返す。
 エリウッドは、服の内側に手をやり、そこから布でくるまれた薄いカードのような
ものを取り出した。

「これを、君にと思っていたんだ」

「え?」

 その言葉に、リンが今度は顔もエリウッドの方に向けて短く声をだす。その視線は、
エリウッドが手に持っているもの注がれている。リンにとっては予想外の展開だ。
 エリウッドが、それをつつんでいた布を剥がし、その中にあった厚紙―おそらく、
いちばん内側にあるものが折れないようにだろう―を外すと、そこには・・・

「押し花の、しおり?それに、この花は・・・」

「君が好きな花だろう?」

 出てきたのは、押し花のついた、小さな栞。押し花にされているのは、イリア地方に
のみ咲くと言われる、小さな白い花―リンの一番好きな花だった。

「これ、フロリーナと昔よく摘みにいった・・・これを、私にくれるの?」

「僕よりも、君に似合うだろう。迷惑でなければ、受け取って欲しい」

「うれしい・・・!ありがとう、エリウッド!!」

 リンの顔に、ぱっと笑顔が広がる。花をもらえたこともそうだが、エリウッドが自分の
好きな花を覚えていてくれたことが嬉しいのだ。

53 :家族の情景6:2010/09/20(月) 15:55:15 ID:GtMyR0Ns

「でもこの花、イリアにしか咲いていないはずなのに・・・一体どうやって?」

 エリウッドの手から栞を受け取り、大事そうに胸の前に抱えながら、リンが何気なく
尋ねる。
 ・・・が、結論から言ってしまえば、この質問はしない方が、兄妹双方の為になったであろう。

「あぁ。ついこの間、フィオーラが摘んできたというのを、分けてくれてね。
ただ枯らしてしまうの勿体無いと思って、押し花にしたんだ。
それで、リンディスがこの花を好きだったのを覚えていたから、喜んでくれるだろうと、
渡す機会を探していたんだ」

 ―ピシ。

 それは、何が凍りついた音か。リンの表情か、その場の空気か―?

「―?リンディス?なにか、気にいらなかったのかい?」

 エリウッドも、明らかに表情の固まったリンの様子に何かまずいことでもしてしまった
のかと声をかけるが、その原因にまでは思い至らない。
 何も分かっていない兄の表情と、先ほどの言葉の中に―無自覚ながら―最低限の
フォローが入っていたことも含めて、リンは諦めたように溜息をつき、

「・・・まぁ、いいわ。とにかく、ありがとう、エリウッド。これ、大事にするね」

 せっかくの好意なのだから、素直に受け取ることにした。元の花の入手経路がどうあれ、
兄が自分のために用意してくれたものなのだ。嬉しい気持ちも、多少しぼんでしまったが
なくなってしまったわけではない。

(そもそも、別にエリウッドとはただの兄妹なんだから、そんなことまで気にするのは
おかしいものね)

 などと、心の中でなにやら言い訳がましいことを呟きながら、リンはもう一度口を開く。

「でも、エリウッド。そんなことじゃ、あなたの尊敬するシグルド兄さんにはまだまだ
届かないわよ!いい?そもそも女の子って言うのはね・・・」

「リ、リンディス・・・」

 やはり、まだ釈然としないものが残っていたのか、エリウッドはこの後しばらく
リンの愚痴を聞かされることになるのであった・・・。

54 :家族の情景7:2010/09/20(月) 15:56:34 ID:GtMyR0Ns

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

 それからしばらくして、ロイが二人の元にやってくる。その手には、なにやら持っているようだ。

「はい、リン姉さん。これ、あげるね!」

 そうして差し出したのは、白い花冠。

「さっき、あっちの方でいっぱい咲いてるところを見つけたんだ。姉さんの好きな花と、
少し似ているでしょう?」

「まぁ、ロイ。これ、あなたが作ってくれたの?」

 白い小さな花を集めて作られたそれを見て、リンがロイに微笑みながら尋ねる。

「うん。エイリーク姉さんが、前に作り方を教えてくれたんだ」

 なるほど、あの姉ならばこういったことも得意そうだと、リンは妙に納得する。

「よくできているじゃないか。さぁロイ。リンディスにかぶせてあげるといい」

「お願いできるかしら?ロイ」

「うん!」

 リンが頭をロイの方に傾けると、ロイは自らが作ったそれを、そっと載せる。

「よく似合っているよ、リンディス」

「ふふ。なんだかくすぐったいわ。ありがとう、ロイ」

「僕も、姉さんが喜んでくれてうれしいよ」

 三人が三人とも、穏やかで、嬉しそうな顔で過ごす、麗らかな草原での午後。
 三人の周りで風が抜け、草花が躍っていた。そんな、幸せの形がそこにあった。

※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※

「すぅ、すぅ・・・」

「よっぽど疲れたのかしらね」

 エリウッドの背中で寝息を立てるロイを見ながら、リンが言う。

「あれだけ遊んだんだ。無理はないだろう。でも、これは心地のいい疲れだよ」

「ふふ。ロイ、大分はしゃいでいたものね。エリウッドと出かけるのが、よほど
嬉しかったんじゃないかしら?」

「僕だから、という訳ではないさ。ロイにとっては、兄弟の誰かと遊んでもらえるのが、
嬉しいんだろう」

「まだまだ、甘えん坊ね」

55 :家族の情景8:2010/09/20(月) 15:57:29 ID:GtMyR0Ns

「しかたないさ。往々にして、末っ子というのはそういうものだよ」

「そんなものかしらね」

 寝ているのをいいことに、好き勝手に言われるロイだが、彼らの言葉の中には、弟への
愛情が溢れていた。

「それに、リンディスだってマルス達が生まれる前は似たようなものだった」

「そんなの、覚えてないわよ」

「まぁ、そうだろうね。実は、僕もあまり覚えていない」

「なによ、それ」

「ははは」

 そうした、何気ない会話が続けながら、家への道を歩く。
 時折、会話が途切れるかと思えば、またどちらともなく、話を始める。
 兄弟だからこその、ゆったりとした、安心できる会話のリズムだ。

「随分、気に入ったようだね?」

「え?――えぇ」

 最初、エリウッドが何について言っているのか分からなかったリンだが、自分の指が、
無意識のうちに頭の花冠を撫でていることに気づく。

「くす。あなたより、ロイの方が女心を分かっているんじゃないの?」

「―もう勘弁してくれ。今度は、ちゃんと自分で積んできた花を贈るよ」

 これがヘクトルならば、『お前相手に女心もなにもねぇだろ!?』などと言って
口喧嘩―もっとも、実は楽しんでそうに見えるので本当に喧嘩と言えるものなのか
どうかは分からないが―になりそうなところであるが、エリウッドは素直に折れる。

「あら、催促しているみたいで悪いわね。―なんて、冗談よ。あなたがくれた栞も、
本当に大事にするから」

 エリウッドの反応に満足したのか、リンは意地悪を言うのをやめて、しっかりと、
本音に当たる部分をさらしておく。

56 :家族の情景9:2010/09/20(月) 15:58:19 ID:GtMyR0Ns

「ねぇ、エリウッド?」

「なんだい?リンディス」

 今は、少女の髪の色をした草原を抜け、青年の髪の色をした夕焼け空のもと、家路を辿る。

「今度は、みんなで来ようね?」

「そうだね。三人だけでもこれだけ楽しかったんだ。
兄弟みんなで来たら、きっと、もっと楽しいだろう」

 実際そんなことになれば、草原が焼け野原に変わる可能性も高いが、今はそんなことは
考えないことにする。

「ねぇ、エリウッド?」

「なんだい?リンディス」

 同じ言葉で切り出す妹に、同じ言葉で返す兄。

「私、いま幸せよ」

「僕もだよ、リンディス。君がいて、ロイがいて、兄さん達がいる。騒ぎが絶えないけど、
だからこそ、毎日を実感できている」

 妹の言葉に、同感するエリウッド。毎日が良いことばかりではない。だけれども、
今、こうして幸せを感じるのならば、今のこの瞬間を支えてきた日々もまた、幸せなのだろう。

 隣を歩くリンの姿を見て、背なかで眠るロイの体温を感じて、そんなことを考えるエリウッド。

 ―これは、いつか、別の世界でありえたかもしれな光景。

 ―それは、今、この世界だからこそ実現しえた情景。

 風が渡り、夕日が三人を温かく包み込んでいた。

おわり

「「ただいまー」」

「とりあえず、そこに正座しなさい。今宵のティルフィングは血に飢えておるぞ」