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Last-modified: 2013-11-06 (水) 20:31:53

661 :幼女の旗の下に:2010/10/23(土) 16:15:47 ID:Jp8SfeyP

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3 噂の火消しをする     ミカヤ姉さんの耳に入ったらあまりにも気の毒だ…

リーフ  「姉さんに嫌われでもしたら悲惨すぎる…噂をかき消そうか」
サラ   「どうやって?」
軽く考え込む…その結果浮かんだ方法は一つだった。
リーフ  「サザさんの露出行為が目立たなくなるほど大きな事件を起こすのさ。そのために一つ頼みがあるんだけど…」

通路を抜けて地上に出る。
ギースとヴァイダ、それにヒースをベルン署に引き渡して地上に戻ったエフラム達が見た物は異常極まりない光景だった…
「「「「「「YATTA!」」」」」」
葉っぱ一枚を身にまとって踊り狂う人々…あらゆる人々が踊り狂い街はまるでお祭り騒ぎだ…そう…これはまるで…

エフラム 「ば…馬鹿な…葉っぱの日はまだ先だというのに…」
ロイド  「な、何が起こってやがる!?」
同志たちも動揺を隠せない。当然だろう。
葉っぱの日は年に一度だというのに。
リーフ  「YATTA!YATTA!」
エフラム 「リ…リーフ!? これは何事だ!!!」
リーフ  「YATTA!YATTA!」
ライナス 「…なんか目が虚ろだぜ…」
エフラム 「返事をしろ!何がどうなって…」
リーフ  「YATTA!YATTA!」
エフラム 「駄目だ…話にならん…」
サラ   「あら兄様。そっちは終わったみたいね?」
エフラム 「ああ…それよりこんな光景を見てはいかん。子供が見るもんじゃない」

教育上よくないと判断したエフラムはサラの前に立って視界を遮る。
露出狂集団など子供に見せたくはない。
ロイド  「一体何が起きてるんだ?集団ヒステリーか?」
サラ   「さぁ? よくわからないわ」

サラはとぼけてみせたが事件の顛末はこうである…
サザの事件の影を薄くするためにリーフはより大きな事件でカモフラージュを図った。
一人の露出狂事件より数千人の乱痴気騒ぎの方がはるかに人々の注目を引く。
しかしながら今日は8月8日ではない。ではどうするのか…
少し時を遡ってサラとリーフの打ち合わせを見てみよう。

リーフ  「葉っぱの日のように皆が裸で踊ればサザさん一人の事件なんて注目されなくなると思うんだ」
サラ   「そうね。でも今日は葉っぱの日ではないわ」
リーフ  「そこでサラの出番だよ。何かあるでしょ?」
サラ   「なくはないけど…ふふ…高いよ?」
リーフ  「オーライオーライ慣れたものさ。そんじゃ一日ボクを拷問でもお仕置きでも好きにしていいよ」
サラ   「別にリーフの許可が無くてもやるけどね…ま、それでいいわ。聖水ある?
      さすがに葉っぱの日並みの人数に術をかけるのは素の魔力じゃ難しいわ」
リーフ  「はい、コレ使ってね」
サラ   「それじゃ始めるよ…バーサクバーサク………」

錯乱を司る杖を手にすると暗黒魔道の術式を展開していく。
ヘルやヨツムンガンドに見られるような闇の眷属がサラに力を貸しその呪力を強めていった。

662 :幼女の旗の下に:2010/10/23(土) 16:16:29 ID:Jp8SfeyP

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サラ   (…というわけで半径数キロ圏内の人間は今日一日ひたすら葉っぱ一枚で踊り続けるのよね)
当然サラの真横にいたリーフは真っ先に術にかかった。
丸一日誰の呼びかけにも応じず踊り続けるだろう。
ただ虚ろな瞳をしつつも口元に笑みを浮かべているのはどこか幸せなのかも知れない。
葉っぱの日はリーフにとって最大の喜びだから…例え仮初めの物でもそれを再現できるのが嬉しいのだろうか。

エフラム 「まったく何という光景だ…う…」
ロイド  「どうしたエフラム…お…俺もなんだか…」
ライナス 「ああ…脱ぎたくなってきた…」
ジャファル「……」
ダミアン 「探したまえ…どこかに葉っぱがないか…あった…」
エフラム 「だ…駄目だ!サラの前でそんな姿を晒すわけにはいかん!」
サラ   「私は気にしないよ?」
エフラム 「俺が気にするのだ!…ぬぐぅ…あぁ…や…や…やた…やった…やたたた……YATTA!」
今だ周辺にはサラの魔力が立ち込めている。
その範囲内に入ってしまったエフラムたちはしばらく耐えていたが…
その絶大な支配の力に打ち勝つ事はできなかった…彼らは魔法は専門外なのだ…

「「「「YATTA!」」」」

サラ   「あーあはじまっちゃった…ま、これでリーフの頼みは果たしたわ。
      今日はもう出来る事もないしのんびり高みの見物を決め込みましょ」

こうしてサザが釈放された時には彼の事件を覚えているものは誰もいなくなっていた…

サザ   「なんか知らんけど…ミカヤに知られなくてよかったんよ…」

663 :幼女の旗の下に:2010/10/23(土) 16:17:11 ID:Jp8SfeyP

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ベルン署内においてはこれで一連の事件は一応の決着を見た…との判断がなされた。
次の捜査目標となったのは牙である。
実行部隊の首魁となったヴァイダはベルン本署に移送され連日の取調べを受けていた。

ゲイル  「今回の件をお前に命令したのはブレンダンか?それともソーニャか?」
ヴァイダ 「何度も言ってるだろうが! あたしが勝手にやった事さ!」
ゲイル  「強情もいいかげんにしとけ。これ以上奴らを庇ってなんになる…
      シマ取りに失敗した以上出所しても牙に居場所はないんだ。
      それよりも捜査に協力すれば司法取引で減刑もあるかも知れんぞ」
ヴァイダ 「そりゃありがたい申し出だがね。受けてもいない命令を受けたってなぁいいようがないねぇ」
ゲイル  「…チッ…」

軽く舌打ちを鳴らすとゲイルは取り調べ室を出た。
これは手を焼きそうだ…

      
その夜…ほろ酔い加減で帰宅したシグルドはエリンシアの介抱を受けていた。
シグルド 「いやぁ~~ははははっ!ひっく…うおっぷ…」
エリンシア「お兄様…少しお酒が過ぎましたわよ?」
シグルド 「すまないすまない…きょ~は私のしょーしん祝いでね~ついつい…わっははははははは!!!」

そう…シグルドは引継ぎを済ませ正式に課長に任じられた。
この日はアレク達が祝いの席を設けてくれたのだ。
ついつい飲みすぎるのも無理もない。

シグルド 「そふぉれ…わらひからじゅーらい発表がありまーすぅ…みんなしゅーごー」
エリンシア「もう夜中の2時ですわ…みんな寝てますわよ」
シグルド 「ひひたい?ひひたい? ひゃあおひえてあげよ~~♪」

聞いちゃいない。酔っ払いなんてそんなもんだ。
エリンシアしか聞いていないがシグルドは気にするでもなく重大発表とやらを敢行した。
シグルド 「あひたディアドラのごりょーしんに結婚の許可をもらひにいきまーふ!」
エリンシア「まぁ♪」
これは喜ばしい。もちろんお許しが出ればの話だが。
マルス  「ようやくですか。ヴェルダンの飛ばされてからこっち慌しかったですからねぇ」
エリンシア「マルスちゃん眠ってたんではありませんの?」
マルス  「シグルド兄さんの声が煩くて起きちゃったんですよ」
シグルド 「おお弟よ!おまへもうれひーかはははははははは!!!」
マルス  「まったく浮かれちゃって…ぬか喜びにならないよう気をつけてくださいよ。
      駄目出しされたらお終いなんですから」
シグルド 「らいひょーふあひがあれはらいひょーふ!…ふ…ふ…Zzzzzzzzzzz」
マルス  「寝ちゃいましたね」
エリンシア「毛布を持ってきてあげましょう」
マルス  「結婚かぁ…おめでとう兄さん」

ディアドラが一人娘である以上恐らくシグルドは婿入りを求められるだろう。
寂しくはなるが…だがシグルドがどんな選択をしようともマルスはそれを祝福せずにはいられなかった。

664 :幼女の旗の下に:2010/10/23(土) 16:17:55 ID:Jp8SfeyP

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翌朝…トラキアから戻ったエフラムとリーフはシグルドの話を聞いた。
エフラム 「そうか…いよいよか……おめでとうございます兄上」
シグルド 「いや…おめでとうは結婚までとっといてくれ。まだお許しを貰ったわけじゃないからな」
昨夜は酒に酔って浮かれてしまったが、一晩明けてみると緊張してきた。
少し胃が痛むほどだ。
キュアンもエルトシャンも相手の両親に許しを得る時はこんな気持ちだったのだろうか。
リーフ  「義姉さんかぁ…たまらな…ちょ…今のは無し…ティルフィングはやめて!アッー!コノヒトデナシー!」
いつもいらない事を言って酷い目に会うのがリーフである。
だがこれも彼なりの祝福なのだろう。

シグルド 「そ…そろそろ支度するふぁ…」
ヘクトル 「お…落ち着け兄貴!舌噛んでるぞ!」
シグルド 「いやいやいけないなはははははは!」
ミカヤ  「はいスーツ!ちゃっちゃと着込んだら髪を解かすのよ。歯磨きはちゃんとした?」
シグルド 「もちろんだとも姉さん…というか子ども扱いはよしてくれ。私もいい歳なんだから」
ミカヤ  「もー何言ってるの!お姉ちゃんが支度しなきゃ普段着で出かけるトコだったでしょ!」
シグルド 「う…いや…スーツを支度しててくれたことはありがとう…いけないな私は抜けてて」
セリス  「じゃあボクが髪をとかしてあげるね。身だしなみは大事だもんね!」
エリンシア「セリスちゃんは上手だからそれがいいですわね」
ミカヤ  「それと顔を洗って髭も忘れずにちゃんと剃るのよ。ハンカチちり紙も持って」
リン   「なんだか小学生の子供を遠足に送り出すお母さんみたい」
アイク  「時間は大丈夫か?急ぐなら俺のブラザーアーチで…」
マルス  「却下」
アイク  「そうか…」
エリウッド「ああ…めでたいなぁ…こ…こういう時こそポジティブに考えるんだ…なにも起きない起きない」
エフラム 「エリウッドはなにか心配ごとでもあるのか?」
ロイ   「そっとしておいてあげて。物事が万事スムーズに進む事は無いってのが兄さんの考え方だから」
リーフ  「式の余興にボクが葉っぱ踊りを…ああ…ディアドラさんに見てほしい」
マルス  「却下…つかもう式の話かい」
エイリーク「ネクタイはこれですね。私に締めさせてください」
シグルド 「おいおいネクタイくらい自分で…」
エイリーク「いいえ、やらせてくださいね。みんな兄上に何かして差し上げたいんですよ」

今日は朝からシグルドを囲んでえらい騒ぎになっている。
だがそれは暖かい空気を伴っていた。
それを少し離れて複雑な表情で見つめる者がいた。
セリカ  「……」
アルム  「セリカ…どうしたの?」
セリカ  「ううん…なんでもないわ」
アルム  「?」

気にはなったがアルムはそれ以上追求はしなかった。
慌しくてそれどころではなくなったのだ…

ミカヤ  「ねえ本当に一人で行ける?お姉ちゃんついていこうか?」
シグルド 「頼むからそれはやめてくれ…」
マルス  「いつもは弟妹を信頼してる姉さんだけど…」
リーフ  「今回はまぁ…すっかり心配性の母だね…」

家族の見送りを背にシグルドは出かけて行った。

665 :幼女の旗の下に:2010/10/23(土) 16:19:08 ID:Jp8SfeyP

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先日シグルドが課長となった折にディアドラはシグルドから「君の父上にご挨拶がしたい」との言葉を受けた。
父クルトにこの事を告げるのは勇気がいったが…まずは会ってほしいと強く頼み込んで承知してもらった。
クルトは頑迷な人間ではなかったがやはりシグルドが平民と聞くとあまりよい顔をしなかったのだ。
ディアドラ「シグルド様…」
今日が約束の日である。
あと一時間もしたらシグルドが屋敷の門を潜るだろう。
懐中時計に視線を向けるのは何度目だろうか…
すでに支度は済ませてしまったし…

正直落ち着かない…なにかして気分を紛らわせようか…

続く

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