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Last-modified: 2013-11-06 (水) 20:47:38

14 :助けて!名無しさん!:2010/10/27(水) 20:39:15 ID:S0UFdk3p

ごめん、なんかこの流れぶった切るけどエリウッドとロイの話投下するわ

「ハァハァ…も、もう一回お願い!!」
「…わかった、けど無理はしないようにね」
ある晴れた日の午後、兄弟家の庭ではロイとエリウッドが互いに剣を交えていた。
ロイの剣劇を華麗に受け流しながらエリウッドは無駄のない動作でロイの体勢を崩す。
大振りを誘う隙に釣られ、剣を大きく振ったロイは難無くエリウッドに回避される。
そしてその誘導された隙を逃さずエリウッドはロイの持っていた剣を下から跳ね上げた。

普段こそ病弱でデブ剣(笑)や器用貧乏と馬鹿にされがちなエリウッドではあるが、
そこは人生経験の差でカバーしており、ロイにはまだ超えられない壁である。

何度目だろうか、ロイの持つ訓練用の剣が宙を舞った時、リンが二人にお茶を持ってきた。
「はぁ…やっぱりまだまだ兄さんには勝てないなあ…」
お茶をすすりながらロイがぽつりと呟く。それを聞いたリンが苦笑しながら諭すようにロイに語りかける。
「そりゃあ私やエリウッドの方が長く生きてるからね、それだけ差も出るわよ」
「それに、僕の方が手足が長いし、身長もある分リーチにも差が出るしね」
エリウッドも優しくリンの言葉のあとにロイに言う。
ロイは納得しながらお茶を一気に飲み干し、再びを剣を持って素振りを始める。
そんなロイを仲良く見守っていると廊下からヘクトルが出てきた。
「お、頑張ってるな」
「別にヘクトル兄さんには関係ないでしょ」
少々、リリーナの件もあってかロイはヘクトルに冷たい。
ヘクトルはそんなことを気にせずに豪快に笑いながら訓練用の斧を取り出した。
「よし、俺とやろうぜ」
「…わかったよ」
ロイは少し考え、ヘクトルの提案に承諾し、剣を構えるのだった。

「まだまだ甘いな」
「ハァ…ハァ…ま、負けたよ…」
庭では笑いながらヘクトルが寝転んでいるロイを見下ろしていた。
「ま、どんなに動きがよくてもダメージが少なければ怖くないわな」
ロイは当初こそヘクトルの攻撃を避けながら自分の剣を当てていた。
しかし少しずつ疲労が溜まり、動きが鈍ったところをヘクトルの斧が捉えていた。
「あんたね…もうちょっと加減してあげなさいよ」
結構容赦のない一撃だったらしく、リンがヘクトルに呆れながら叱り付ける。
「へっ、男ってのはこれぐらいやらねえとな。なあエリウッド」
「えっ…いや、まあほどほどにね。薬代も安くないんだから」
「心配するところが違うよ…」
エリウッドのさりげない一言に傷つくロイであった…

15 :助けて!名無しさん!:2010/10/27(水) 20:40:57 ID:S0UFdk3p

ロイが再び素振りを頑張っていると今度はミカヤがアルバムを持って現れた。

「ふふ、ああしていると昔のエリウッドちゃんみたいよね」
「……ミカヤ姉さん、その話はあんまりしないで欲しいかな」
額に手をあてながらエリウッドが恥ずかしそうに懇願する。
しかしヘクトルとリンがニヤニヤしながらミカヤの持ってきたアルバムをめくりだす。
「あった、このころだな」
「思い出すわね。僕もヘクトルに負けない!だったかしら?」
「それで返り討ちにあって泣きながらエリンシアちゃんのところに行ったわね」
「……勘弁してください」
悲痛な面持ちでニヤニヤしている三人に話をやめるようにお願いするエリウッド。
しかし、そんなお願いなど気にせずに三人は思い出話を続けるのだった…

まだ、エリウッドやヘクトルが中学生だった頃、二人はよく互いに手合わせしていた。
とはいえ昔から体格がよかったヘクトルにエリウッドは敵わず、毎回敗北していた。
敗北してボロボロなエリウッドをリンが看病し、エリウッドが特訓をするのが日常だった。
ある日、リンが必死に特訓するエリウッドにとあることを尋ねたことがあった。
「ねえエリウッド、どうしてそんなにヘクトルに勝とうと必死になるの?」
エリウッドはその問い掛けを聞き、少し首を傾げてから答えた。
「うーん、ヘクトルと互角に戦えるようになれば楽しいからかな」
「楽しい…?」
「うん、今はまだヘクトルに敵わないけどね。戦えるようになれば楽しいと思うんだ」
「うーん、わかるようなわからないような…」
「まあそのうちリンにもわかるんじゃないかな。さて、素振り、素振り」
笑いながら素振りを再開するエリウッドと悩むリン。
その後、エリウッドがヘクトルに勝てたのはまた別の話である。

リンの思い出話が終わると四人はその時の話を始めた。
「なるほど、道理で日増しに剣筋が鋭くなるわけだぜ」
「まあ、今はあんまり体調良くないし家計も大変だから維持しかできてないけどね」
「でも、あの日のエリウッドはヘクトルを圧倒してたわよね」
「エリウッドちゃんがヘクトルちゃんの怪我を治すのを見て私はびっくりしたわね」
「まったくだぜ。あの日のエリウッドは容赦なく腹を殴りやがったからな」
「いや、それはたまたまヘクトルの腹が出ていたからだ」
エリウッドの一言に笑い出す一同、それに反応したのかロイが素振りをやめ、四人に駆け寄ってくる。
「ねえ、何の話をしてるの?」
「いや、ロイと僕は似てるって話だよ」
「なにそれ?」
「気にしない。さ、もう一回やろうか」
「うん!お願いします」
そして似たもの同士の二人は再び庭に構える。
その二人を縁側から三人が見守りながら別の思い出話を始めるのであった…
終わり