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Last-modified: 2013-11-07 (木) 00:13:50

101 :世界おねいさん短編集その肆 TWINS:2010/12/03(金) 02:49:52 ID:YyNxCYT4

いつもの事だけどスカートは落ち着かないなあ…

何回やってもこの瞬間だけは慣れないよ。
今の僕はユベロだからそれが当たり前なんだけど。
ユミナ 「なによユベロ。妙な顔して」
ユベロ 「ううん、なんでもないよユミナ」
目の前では双子のユミナが僕の服を着込んでる。
あとはお互いに髪型を弄れば完成。
ウィッグ使った時は失敗したんで僕もほんのちょっとだけ髪を伸ばしてみたんだ。
僕達がこの遊びを始めたのは今よりももっともっと小さい頃。
僕達双子は二人で一人、一人で二人…だからそれはとっても自然な事だったと思うよ。
大人達も入れ替わった僕らに誰も気付かなかったしね。
ユミナ 「さぁて今日は何をしようかしら?」
ユベロ 「僕…ユベロの予定はウェンデル先生のところで魔法の勉強になってるね」
ユミナ 「ちぇっ……つまんない時間帯に当たったものね~杖の方が興味あるのに」
そんな事を言ってムクれているユミナもユベロになれば大丈夫。
ユベロは穏やかで真面目な子だから。とっても勉強熱心だから。
それはユミナもなんだけどね。ユミナはちょっと一言多いところがあるから。
ユベロ 「ユミナは何か予定入ってる? 特に無いなら杖の練習でもしてるけど」
ユミナ 「ちょっと待ってね…あ、オグマとデート。それじゃ一緒に楽しもうね」
ユベロ 「うんわかったよ」
僕達は双子。だからなんでも共有してる。ユミナが楽しければ僕も楽しい。
僕が楽しいならユミナも楽しい。離れてても心の中でわかるんだ。
あ、今ユミナが機嫌いい。何か楽しい事あったのかなってね。
今もすごく喜んでるのがわかるよ。ユミナはオグマにキツい事言うけどあれで大好きだから。
ユミナ 「それじゃやろうか」
ユベロ 「うん」
お互いに向き合うと互いの髪型を整える。
これで僕はユミナに、ユミナは僕に。
僕の中のユミナが起きるのを感じるよ。それじゃあ元に戻るまで少し…眠るね…
ユミナ → ユベロ 「それじゃ先生のところに行ってくるよ」
ユベロ → ユミナ 「うん、しっかりね。いーい?グルニアの跡取りとしてしっかり勉強するのよ?」
ユベロ 「うん、頑張るよユミナ」
いつもながらいい返事ね。ちょっと弱気なユベロだけど勉強好きなのはいい傾向だわ。
これでもうちょっと気を強く持ってくれればいいんだけど。
ユベロを送り出すと私は鏡の前に立っておかしなところがないかチェックする。
まだ子供とはいえグルニアの淑女として恥ずかしくないようにしないとね。
べ、別にオグマのためじゃないんだからねっ!!///////
…なんてやってたら時間が迫ってきてるわね。そろそろ出かけないと。
約束に遅れるのは淑女としてマナー違反。でもお相手より先については殿方に恥をかかせるもの。
紳士がレディを待たせるなんてあってはいけないものね。
時計を再確認、うん。きっちり3分前。これくらいならオグマも来てて当然。遅れてたらとっちめてあげるわ。
私はリワープの杖で呪文を唱える。
魔法の光が私を包み、たちまち駅前へと運んでくれる。

噴水の所で佇むオグマを見ると私は駆け寄りたい衝動をぐっと抑える…レディはむやみに走り回ったりしないのよ。
今ユベロになってるユミナも同じ事をするわ。私にはわかるもの。同じ気持ち同じ感覚。
産まれる前から同じ物を共有してきた私達だから。
あ、こちらに気付いて振り返った。
どこか照れくさいような笑顔の彼に品よく歩み寄って私は言うの。

ユミナ 「さ、今日はどこへエスコートしてくれるのかしらナイト様?」

102 :世界おねいさん短編集その伍 前途遼遠:2010/12/03(金) 02:51:44 ID:YyNxCYT4

ヒーニアス「わはははははははは!!!渾身だ…渾身の出来だ!!!

      エイリーク&ヒーニアスのラブラブブロンズ像…題して愛し合う二人星に願いを!
      これを送ればエイリークのハートも私の者だな、ふふふふふふ」
…うちの若様がまたなんかバカな事してるわね…いつもいつもまぁよく飽きない事…
ヒーニアス様がエイリークをお姫様だっこしてる等身大のブロンズなんてどこに置けばいいのよこっぱずかしい。
頬を引きつらせてドン引きするエイリークが目に浮かぶわ…はぁ…
ルネスの後輩であるエイリーク。私達生徒会長の後を継ぐ彼女をあまり困らせるのも忍びないから何度もヒーニアス様を諌めてるんだけど…
この人、思い込みが強くて人の話を聞かないのよねぇ…はぁ…
そしてもう一人…柱の影からヒーニアス様を見守っている人影が一つ。
ヴァネッサ「…ヒーニアス様…ステキです…はぅ…///////」
シレーネ 「………はぁ………」
まったくうちの妹ときたら…ヒーニアス様のどこがいいのよ…わからない趣味だわ…
このままじゃ妹の将来が心配すぎるわね…どうにかしないと…
もうちょっとまともな人と付き合ってほしいってのが姉としての偽らざる本音。
なんとかヒーニアス様を諦めて普通の人とお付き合いしてくれないかしらね…
そう思い立った私はヴァネッサを部屋に誘って話をしてみる事にした。
シレーネ 「ねぇ…ヴァネッサ…」
ヴァネッサ「急にどうしたの姉さん?」
シレーネ 「その…ね…人の趣味はそれぞれだと思うけど…やっぱりあんまり逸脱するのもどうかと思うのよ」
ヴァネッサ「なんの話?」
シレーネ 「単刀直入に言うわ。ヒーニアス様は諦めなさい」
ヴァネッサ「ええっ!?どうして!?」
私は頭を抱えた…
シレーネ 「どうしてもこうしても…言っては悪いけどあの方は変態よ?
      姉としては妹があまり変な人に思いを寄せていると心配にもなるわ」
ヴァネッサ「酷いわ姉さん!ヒーニアス様くらいステキな方はいないのにっ!」
シレーネ 「どこが?」
ヴァネッサ「え?」
シレーネ 「いったいどういう辺りが貴女の気にいったの?姉さんにも教えて。
      納得できたら反対なんかしないから」
ヴァネッサ「それは…」
やっぱり口ごもった…人に説明できるような魅力なんてあの方には無いんだから。
こうして改めて考えればあなたの目も覚めるでしょう。
だけど…妹の言葉は私の想像を超えていたわ。
ヴァネッサ「ダメなところよ!」
シレーネ 「はい?」
ヴァネッサ「ダメで情けなくて自信過剰で思い上がっててタスケテエイリークなところよ!」
シレーネ 「それは…欠点じゃないの?」
ヴァネッサ「…そうっあの方には私がいないとダメなのよ!ついててあげなきゃいつかきっとバカな事を仕出かして身を滅ぼすわ!
      どうせエイリークさんにも振られるに決まってるんだから…私だけでも傍についててあげないと…」
シレーネ 「そんなのほっとけばいいのに」
ヴァネッサ「姉さんはヒーニアス様がどうでもいいというの!?」
シレーネ 「うん、それより貴女の方が心配よ。ダメ人間にひっかかって身を滅ぼす事になるわよ」
ヴァネッサ「そうならないように頑張るもの!ダメなヒーニアス様を私が支えてあげたいの!」
シレーネ 「……支えても無駄だと思うわ。悪い事は言わないからよく考えて…」
ヴァネッサ「もういいわ!姉さんのバカ!」
……妹は踵を返すと私の部屋を飛び出して行ったわ……
…困ったものね…恋は盲目と言うけれど…いえ、むしろあの娘はダメ男じゃないとダメなタイプみたいね。
昔から立派な男やしっかりした人には興味を示さなかったもの…ダメな人に「この人には私がいないと」って…
でもね。あなたがヒーニアス様を心配するように、私はあなたが心配なのよ。
なぜかって?
たった一人の妹だもの。
強敵だけど気を長く持って説得していくしかないようね。

私は決意を新たにすると拳を握って自分自身を奮い立たせた。

今回でルキノ編とミカヤ編投下のつもりだったけどもうちょっと掛かりそう
なので2編を投下