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Last-modified: 2013-11-07 (木) 00:43:03

259 :路地裏の通り魔 後編1 1/5:2010/12/17(金) 00:00:56 ID:aVaGPCAm

「…奴はどうだ?」

「…はい。部下が少しずつ体力を削っていますのでそろそろかと」
「…ふむ。まあ小僧さえ殺せれば構わぬ」
「…はい」

「ハァ…ハァ…くっ!!」
容赦なく振り下ろされる斧を剣で受け流しながら左へといなす。
続いて背後から横に薙ぎ払われた斧をしゃがんでやり過ごす。
その隙を逃さないローローは足元へ斧の柄でマルスを力ずくで吹き飛ばした。
「ぐっ…うぐっ…」
腹部を殴られたために苦痛の声が漏れる。それでも止まることは許されない。
(止まったら…やられる…)
既に視界は歪み始め、まっすぐ歩くことすら厳しい。それでも前へと突き進む。
進行を妨げるローローをファルシオンで斬り捨てて目的地へと走る。
「…頼む…そこを…どいてくれ…」
「…ウキキ…エレミヤ様の為にも無理だ」
(何が彼女をそうさせたのか。あの実は優しい彼女が…
けど今はただ前へと進んでリン姉さんやクリスを助けるのみだ)
「そこを…どいてくれぇぇ!!」

「…なかなかやるわね。でもそろそろ狙い目かしら…」
マルスとローローの乱戦から少し離れた地点にクライネが弓を構えていた。
もちろん目標はボロボロになりながらもローローを薙ぎ倒して進むマルスである。
「…本当はこんなことをしたくないけど…エレミヤ様を救うために…」
ローロー達がマルスを取り囲んだ。その隙を狙い…マルスへと矢を放った。

「ウキ…これ以上は通さない」
「どけぇぇ!!」
再び囲まれたマルスは目の前のローローを倒して進もうとした。
「…ッ!!しまった!!」
ローローの囲いから抜け出した瞬間自分を狙って矢が飛んできたことに気づく。
(回避…ダメだ、間に合わない!!)

クライネの放った矢はマルス目掛けて真っ直ぐ飛んでくる。

「…ふっ…ようやく憎いあの小僧を倒せたか」
「…はい…ガーネフ様」
「…どれ、あの小僧の亡きがらでも見るとしよう」
「…はい」
屋敷の一室でエレミヤとガーネフはマルスの死を見届けようと窓を覗き込む。
窓からは大量のローローに混ざり、矢が刺さり倒れている青年の姿が…なかった。
代わりに見えるのは矢に刺さりながら喜んでいる茶髪の青年。
そして入口から現れたマルスの兄弟達が武器を持ってローロー達を吹き飛ばす姿だった。

260 :路地裏の通り魔 後編1 2/5:2010/12/17(金) 00:02:11 ID:2e4jDl0G

「そんな…リーフ!?」

死を確信し、目をつぶったマルスはいつまで経っても矢が来ないので目を開いた。
そこで目に入ったのは矢を受けて喜んでいる弟の姿だった。
「うっひょー!!クライネさんの矢だ!!もっと!もっとちょうだい!!ハァハァ」
そう叫ぶとリーフは矢が飛んできた方向目掛けて全力で駆け出して行った。
途中、何発か矢が飛んでいた気がしたが全部身体で受け止めている…
そんなリーフを見て呆れていると身体の痛みが薄れていくのを感じる。
振り返るとリブローの杖を持ったミカヤ姉さんがこっちを見て心配そうな顔を見せていた。
「間に合ってよかった。マルスちゃん大丈夫?」
問い掛けに手で答え、更に辺りを見渡してみる。
「キャー!KINNNIKU祭よ!!KINNNIKU!K・I・N・N・N・I・K・U!」
ローローに囲まれて歓喜の声をあげながらアミーテを振り回すエリンシア姉さん。
「どうして俺の前に立った?」
一度に数人をラグネルの天空で吹き飛ばすアイク兄さん。
「ふん、槍が斧に劣ると誰が決めたんだ?少なくともピザよりは強いぞ」
ジークムントでローローを倒していくエフラム兄さんと、
「だぁぁ!!俺はピザじゃねええ!!」
アルマーズを片手にローローの攻撃を受け止め、反撃で仕留めるヘクトル兄さん。
「僕がセリカを守るからセリカは後ろから支援を頼む」
「わかったわアルム。もし怪我をしたらすぐに言ってね」
いつも通りいちゃつきながら必殺でローローを倒していくセリカとアルム。
「お兄ちゃんはKINSHINを許しませんよ!!」
血涙を流しながらティルフィングでアルムとセリカに迫るシグルド兄さん。
「マルス様!!ご無事ですか!!」
メリクルやグラディウス、オートクレールを振り回すクリスがローロー軍団を殲滅していた。
「みんな…どうして…?」
「みんなマルスの様子が変だからって気になって追い掛けたのさ」
いつのまにか背後にいたエリウッド兄さんが爽やかな笑顔で答える。
「…ところでエイリーク姉さんやセリス、ロイは?」
「セリスとロイは熟睡中。エイリーク姉さんはエフラム兄さんが無理矢理留守番役を…」
「…うん、何となくわかったよ。ありがとう」
「それよりもここにリンやクリスがいるのかい?」
「うん、絶対にいる。エリウッド兄さん、行こう!」
「ああ!」
ローロー軍団を兄弟達に任せ、屋敷へと乗り込むマルスとエリウッド。
それを確認したガーネフはエレミヤを連れ、マルスを倒すためにエントランスへ向かっていた。

261 :路地裏の通り魔 後編1 3/5:2010/12/17(金) 00:02:54 ID:aVaGPCAm

マルスとエリウッドが屋敷に突入する数分前。

クライネはリーフに追い掛けられ、屋敷の庭を駆けていた。
クライネは逃げながら銀の弓でリーフを撃つが命中しても気にせずにリーフは追い掛けてくる。
「もっと!もっとちょうだい!!ハァハァ」
…リーフはか矢を受けることを要求し、興奮している。
「く…邪魔よ葉っぱ!!」
「もっと…もっと罵ってください!ハァハァ!!」

これ以上は矢の無駄と判断したクライネは全力でリーフから逃げようとするのだが…
「く…あんたを相手にする暇はない…の!?」
 壁
壁ク壁
 リ
「コーナーに追い詰めたよ…さあお姉さんをお持ち帰りだ!!」
哀れ、リーフを気にしすぎたために見事に逃げ場を失うクライネ。
リーフは手を怪しげに動かしながらクライネを捕らえようと…
「…リーフ様。お仕置きは何がいいですか?」
「そうね…リーフなら魔法で拷問が1番かしら?」
「…とりあえずリザイアで吸い取らない?」
「あ、そのあとにローローさんとも絡んでくださると嬉しいです」
 壁
壁ナ壁
ミリサ
 テク
いつのまにかクライネはレスキューされ、リーフ目の前にはナンナがいた。
慌てて周囲を見渡すといつものようにリーフ包囲網が形成され…
「こ、このひとでなしぃぃぃ!!!」
リーフの悲鳴が真夜中の庭に響き渡るのだった…

一方、リーフが悲鳴をあげた時には庭での乱戦は決着がついていた。
「さて…どうしてこんなことをしたのか教えてもらおうか?」
ラグネルをローローの喉元に突き詰めて問い詰めるアイク。
辺りには動けなくなったローローが山のように折り重なっていた。
そのローローマウンテンを見て「キャー!!KINNNIKUの山よ!!KINNNIKU!!」と叫ぶエリンシアや、
「どうだ。槍の方が斧より倒せただろう?」
「はっ、俺の方が一撃で仕留めてるじゃねえか!!」
と、槍と斧のどちらが強いかを言い争うエフラムとヘクトル。
「ごめんね、アルム。私を庇ったせいで…」
「いいんだ。好きな人を守るのが男の役目なんだから…」
「…どうせ私は守れなかったんだよー!!うわぁぁーん!!」
アルムに密着し、傷を癒しているセリカ…を見て泣きながらティルフィングを振り回すシグルド。
「ごめんなさい、大丈夫ですか?」
と、謝りながらローローの傷を治して回るミカヤ。
「貴様ら、どうしてマルス様を襲ったんだ?」
そして、アイクと共にローローにマルスを襲った理由を尋ねるクリス。
「ウキ…お前達ならエレミヤ様を救えるかもしれないな…わかった。教えるよ」
終始何も語らなかったローローが騒動の顛末を説明し始める。
そして話が終わった時、兄弟達は全員屋敷へと走り出していた…

262 :路地裏の通り魔 後編1 4/5:2010/12/17(金) 00:03:41 ID:aVaGPCAm

「マルス、そっちはどう?」

「いや、いない…」
屋敷ではマルスとエリウッドがさらわれた人達を捜索していた。
「これだけ探してもいないってことはどこかに隠し部屋があるのかな?」
エリウッドがそう呟いた直後、マルスとエリウッドの背後からその問いに答える声が聞こえた。
「…その通り。この屋敷には秘密の地下道がある」
「なっ!?誰だ!?」
「その声は…ガーネフ!?」
慌てて武器を構え、振り返る2人。ガーネフは笑いながら話し始める。
「…ふん、よもや貴様の兄弟に邪魔されるとはな…まあいい」
「リン姉さんやクリスを返せ!!」
「…返してほしければわしを倒すのだな。隠し部屋で待つ」
そう言ってワープでその場を去るガーネフ。
「…マルス…行こう」
「…うん」
マルスとエリウッドは隠し部屋を探すために走り出した。

屋敷のエントランスでは兄弟達がマルス達を追い掛けて来ていた。
「さてと…お互いに手分けしてマルスとエリウッドを探そう」
長兄のシグルドがそう提案し、すぐさま兄弟達はチームを組む。
シグルドとエリンシア、アイクとミカヤ、エフラムとヘクトル、アルムとセリカである。
「では発見したら再びここに集まろう」
そう言って兄弟達は互いにばらばらに屋敷の奥へと駆け出していった。

「さて、どうするアイク?」
あてもなく探し回るミカヤは前を進むアイクへどうするかを尋ねる。
「とりあえず片っ端から部屋を探そう…む、これは?」
適当に入った部屋に不自然に埃が積もっている床を見つけ、アイクは調べはじめる。
程なくそれが地下への階段の入口であると気づき、アイクはミカヤに言う。
「…ふむ、この先が怪しそうだ。ミカヤ姉さん、すまないが皆に伝えてきてくれ」
「いいけど…アイクはどうするの?」
「もちろん先に行って調べてくる。何、ラグネルがあれば心配ない」
「…わかったわ。けど無理はしないでね」
アイクの強さなら心配いらない。そう考えたミカヤはエントランスへと走り出した。
そしてアイクはラグネルを構え、慎重に地下へと降りて行った。

エントランスにはマルスとエリウッドを見つけたシグルド達が先に待っていた。
「ミカヤ姉さん…あれ?アイク兄さんは?」
「マルスちゃん!?アイクならマルスちゃんを探しに地下に行ったわよ…」
「…地下?そんなものはこの屋敷にはなか…ってまさか!?」
「やばい、急ごうエリウッド兄さん!」
ミカヤの地下という発言を聞き、慌てて飛び出すマルスとエリウッド。
置いていかれた兄弟達は慌ててマルス達を追い掛ける。

263 :路地裏の通り魔 後編1 5/5:2010/12/17(金) 00:04:33 ID:aVaGPCAm

「…む…ここは…?」

階段を下りると目の前には牢屋が広がっていた。
よく見るとつい先程まで誰かを捕らえていたのだろうか。食事の容器が置かれている。
慎重に牢屋へ近づいて行くとその奥に何者かの気配を感じる。
アイクはラグネルをにぎりしめ、より慎重に牢屋の奥にある部屋へと向かう。
ゆっくりと部屋のドアへと近づき…ドアを開く。
「…ほう…てっきりマルスかと思えば…マルスの兄か」
「何者だ?」
「…わしの名はガーネフ。偉大なる大司祭よ」
「そうか。ところでリンやクリスをさらったのはあんたか?」
「…そうだと言ったら?」
「あんたを倒して助けるだけだ…行くぞ!」
ラグネルを構え、ガーネフに向かって一気に間合いを詰める。
ガーネフは構えもせずにただ不気味に笑っている。もらった!!
「喰らえ!天く……何!?」
ガーネフを斬ろうとし…必殺の天空を繰り出そうとした。
しかしガーネフに刃は届かず、剣はガーネフの手前で停止していた。
「…このわしを倒そうとは愚かな奴じゃ。封印されし黒魔術マフーの恐ろしさを見せてくれよう」
ガーネフは目の前で動けずにいるアイクに向かって手を向けた。
(くっ…このままでは…まずい!)
必死にガーネフから離れようとするアイク。しかし身体が言うことを聞かない。
「…さらばだ。死ね」
ガーネフから放たれた魔術がアイクを包み、黒い閃光が走った。
しかし、閃光が消えた時、そこにアイクの姿はなかった。
「ふむ…何者だ?」
ガーネフはすぐに何者かがレスキューでアイクをマフーから守ったのだと気づき、真横を見る。
横には仮面を着けた怪しい3人組と救出されたアイクが構えていた。
「…アイク殿。ガーネフに普通の攻撃は通用しない」
「世界とはまだまだ広いな。俺の攻撃が効かない相手がここにもいたのか」
嬉しそうに言うアイクを見て、仮面の2人が後ろでひそひそと話す。
(…相変わらずあなたのお兄様は豪快なお方ですわね)
(…まあアイク兄上はそういう方ですから)
(それよりどうして私まで仮面の騎士に変装しなければいけないのです?)
そう。ここに新たに現れた仮面の騎士の正体はラーチェルである。
エイリークが兄弟にばれないように屋敷へと侵入するためにサポート役をしたのだが…
(まあたまにはラーチェルも私と戦って欲しくて…ふふ)
魔法は門外漢なエイリークの代わりに戦うためについて来たのだ。
ちなみにその際にグラディウスを探す仮面の騎士も合流していた。
そこでガーネフのマフーを知り、兄弟の危機を救うために乗り込んできたのである。
「無駄だ…貴様らにわしは倒せぬよ」
ガーネフが武器を構える4人に言い放ち、再びマフーを唱えはじめた。
そこへ階段を駆け降りてきたマルス達が駆け付けたのだった…

続く