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Last-modified: 2013-11-07 (木) 00:45:10

272 :路地裏の通り魔 後編2 1/4:2010/12/18(土) 11:05:19 ID:7j5DmcIC

「く…みなが必死に戦っているのに何もできんとは…」

目の前で繰り広げられる壮絶な魔術戦に参加できない悔しさに歯ぎしりをするアイク。
地下室ではガーネフを囲うようにミカヤ、エリンシア、セリカ、ラーチェル、シリウスが戦っていた。
魔防の低い野郎共やエイリークは後方で邪魔にならないように見守るしかできないのだ。
比較的タフなシリウスやエリンシアがマフーを受け、3人が回復を行う。
しかし絶対にこちらの攻撃が通じないガーネフ相手に勝ち目はない。
それでも兄弟達が逃げないのはガーネフをここで足止めするためである。
今ここでガーネフを逃がせば操られているエレミヤの命はない。
それがカタリナ、クライネ、ローローがマルスを襲った理由なのだ。
「…ッ!?」
エリンシアが狙われたミカヤを庇い、吹き飛ばされ、思わず苦悶の息が漏れた。
「く…マルスはまだか!?」
苦しそうに起き上がるエリンシアを見て、握りしめた拳から血を流すヘクトルが叫ぶ。
地下室にマルスはいない。それはシリウスに言われてガトーの元へ走っているからだ。
スターライトエクスプロージョン…マフーを打ち破る唯一の方法。
それを持つ竜王家のガトーの元へマルスは全速力で走る。
兄弟達はマルスが来ることを信じてガーネフを逃がさないように足止めをする。
それがこの事件を解決する唯一の方法であるから。

その頃、兄弟達とは別行動を取っている者が2組いた。
その1組であるリーフと四人娘、クライネは兄弟達とは別の隠し通路を走っていた。
「この先に姉さん達がいる祭壇があるのか…」
「今ならリーフの兄さん達がガーネフを足止めしているからしいらチャンスね」
祭壇のある部屋の扉の前で6人は作戦会議を始める。
「けどエレミヤ様を助けるには…」
「リーフ様、ガーネフの洗脳を解けるのですか?」
「うん、それが問題なんだよね…サラ、ロプトの秘術でどうにかならない?」
この場で1番そういう魔術に詳しそうなサラにリーフは尋ねる。
「…やろうと思えばできなくもないけど…後遺症が残るわよ?」
「後遺症?」
「良くて記憶障害かしら。悪ければ一生意識を失ったままかも」
「…却下よ。それじゃあ意味ないわ」
クライネが呆れながら提案を却下し、再び一同は悩む。
「…あれ?何か通路から聞こえませんか?」
悩んでいるとティニーが何かに気づいて一同に言う。
「何かって…いや、これは…地響き?」
リーフが音の正体に気づいた瞬間、一同の背後から巨大な竜が現れる。
「…ちょ…よりによって地竜とか…」
地竜。一見するとモグラのように見える竜だが強さはトップクラスの竜である。
「と、とりあえず逃げよう!!」
退路が断たれたリーフ達は策もないまま祭壇へと飛び込んで行った。

273 :路地裏の通り魔 後編2 2/4:2010/12/18(土) 11:06:14 ID:7j5DmcIC

リーフ達が祭壇に突入した頃、マルスは竜王家にいるガトーをたたき起こしていた。

「ガトー様!!起きてください!!スターライトください!!」
「う…うむ…今渡すからその手を離してくれ……く、苦しい…」
マルスは慌てて手を離し、眠そうなガトーからスターライトを貰う。
「しかし…またガーネフの奴が何かしたのか?」
「ええ、今まさに姉さん達がガーネフと戦っています。ですから急がないと」
「ふむ…ならワープで送ってやろう。行き先はどこだ?」
「ありがとうございます。場所はアリティアの近くの孤児院です」
「うむ…念のため後でわしも向かおう。では頼むぞ」
スターライトを手にしたマルスをガトーは指定された場所へ送る。
次にマルスが目にした光景は倒れている仮面の騎士の姿であった。

「…ほう…なかなかしぶといな…」
ミカヤとセリカの回復用の杖が折れた一瞬の隙をガーネフは見逃さなかった。
その隙をついて後方にいた男達に接近し、マフーを撃ち込む。
「いかん!?逃げろ!!」
咄嗟に1番早く反応したアイクが叫び、兄弟達は左右に飛ぶ。
初弾を回避されたガーネフは1番近くにいたエフラムに狙いを定め、追い掛ける。
「…まずは貴様からだ…」
「ッ!?しまった…」
「あn…エフラム殿、危ない!!」
エフラムに向かって放たれたマフーをエフラムの代わりに仮面の騎士が受ける。
「エイr…リゲル!?大丈夫か?」
慌ててラーチェルが倒れた仮面の騎士に駆け寄りリカバーをかける。
「…な…どうして俺を庇った…!?」
「…誰かを助けるのに…理由は必要かな…?」
それは大事な兄上だからです…とは言えないエイリークは以前どこかで聞いた台詞を言う。
「くっ……すまない、助かった」
以前あったエイリークとの恋愛騒動以来、仮面の騎士に対して抱いていた感情。
その嫉妬が自分はなんと小さい器量なのだとエフラムは恥じる。
そしてそのもやもやとした感情を打ち破り、感謝の声が自然とエフラムの口から飛び出していた。
「い、いや…君が無事ならそれでいい」
仮面の奥で真っ赤な顔をしながらエイリークは冷静に言う。
その時、部屋の真ん中に一陣の光が射した。その光の中心に現れたのはマルスである。
「みんな…遅くなってごめん」
マルスが兄弟達に謝罪をし、ガーネフにスターライトを向ける。
「ガーネフ!お前の野望もここまでだ!!」
「…く…スターライトとは抜かったわ…だが貴様にそれを扱えるかな?」
「その心配はありません!!」
地下室に別行動を取っていたもう1組の男の声が響き渡った。

274 :路地裏の通り魔 後編2 3/4:2010/12/18(土) 11:07:26 ID:7j5DmcIC

「クリス…とマリク?」

「マルス様、スターライトの心配はいりません。マリク殿をお連れしました」
「遅くなって申し訳ありませんマルス様」
「ぬう…しまった…」
スターライトを扱える者が現れて初めて動揺を見せるガーネフ。
「…というか私だって光魔法使えると思うんだけど」
「そこは…作品が違うから不可能だと考えてもらいたい」
自分の存在を無視されて何となく悔しくてぼやくミカヤを宥めるシリウス。
「…とにかくマリク頼む」
「お任せください!」
マリクはマルスからスターライトを受け取り、ガーネフへとスターライトを唱えようとする。
そこへ…再びワープの光が射し、マリクの背後から新たに女性が現れた。
「……え、シスターレナ!?」
予想外の来訪者に驚くマリク。レナは驚くマリクからスターライトを奪い…
「ジュリアンを返してください!!スターライトエクスプロージョン!!」
容赦なくガーネフへ怒り必殺スターライトを叩き込んだのであった…
「…というか紋章に怒り…スキル自体存在しないんじゃないかしら?」
「そこは…きっと怒りの書を読んだのだろう…たぶん」
呆れたミカヤの呟きに律儀にツッコミを入れるシリウス。
スターライトに倒れたガーネフはマルスに最後の力で告げる。
「…もう遅い…貴様の姉達はわしの計画に…」
「計画!?何を考えているガーネフ!?」
「……さらばだマルス。この手で貴様を殺せなかったのは無念だがな」
ガーネフはそう言い残し力尽きるのだった。
「マルス様…行きましょう。この先にクリスやリン殿の気配があります」
クリスが倒れたガーネフの奥にある扉を開こうとする。
マルスや兄弟、シリウス達はクリスの後ろに立ち扉の奥へと突入していく。
そしてマルス達が見たのはナンナ達を庇いながら戦うリーフであった…

祭壇へと突入したリーフ達を待っていたのは様々な竜だった。
そこでリーフ達は急いで狭い場所に逃げ、囲まれないように戦い始めた。
火竜や氷竜は4人娘の魔法を、飛竜はクライネの弓で魔竜と地竜はリーフで食い止める。
少しずつ、少しずつ追い詰められていく6人。魔術書が破れ、杖が折れ、矢がなくなる。
何もできなくなる5人を庇うようにリーフは戦い続ける。
「リーフ様…私達は見捨てていいですから逃げてください!!」
目の前で竜のブレスでボロボロになっていくリーフを見てナンナが叫ぶ。
「このまま全滅するぐらいならリーフだけでも逃げt…」
「そんなことできるわけないだろ!!君達を見捨てて逃げるなんてできない!!」
「でも…このまま私達と一緒に死ぬよりは…」
「大丈夫…きっと兄さん達が助けてくれるさ…」
泣きそうなナンナを励まそうとリーフは強がりながら笑顔を見せる。
「リーフ様……危ない!!後ろ!!」
ティニーが叫び、慌てて振り返ると火竜がリーフに襲い掛かろうと構えていた。
「ぐっ…しまった…」

275 :路地裏の通り魔 後編2 4/4:2010/12/18(土) 11:08:09 ID:7j5DmcIC

リーフが慌てて構えようと瞬間、火竜がブレスを吐き出そうとした。

が、そのブレスを吐き出す前に火竜の首は胴体から切り離された。
「…遅いよ、アイク兄さん…」
火竜の後ろにはラグネルを持ったアイクがいたのだった。
間一髪で間に合った兄弟達は祭壇への階段に湧いている竜を殲滅していった。
そして、祭壇にたどり着いた兄弟達の目の前にはさらわれた4人とエレミヤ、カタリナがいた。
「…よかった…無事だった」
リンやクリスの無事な姿を見てホッとするマルス達。
「さあ帰りましょう姉さん…みんなが待ってます」
「よかったクリス…生きていたか」
「ジュリアン…帰りましょう」
「サザ…ここにいたのはともかく帰りましょう」
「エレミヤ様…アイネ姉さん…無事でよかった」
それぞれがさらわれた者達へ駆け寄り、帰ろうとした。
「……マルス!?今すぐリンから離れろ!!」
アイクが叫んだ瞬間、マルスは咄嗟に後ろへと跳んだ。
その直後、マルスのいた場所をマーニカティが通過していた。
「リン姉さん…?」
「………マルス…コロス」
無表情でマーニカティをマルスに向けて突き付けるリン。
その周りでもさらわれた5人は心配していた者達へ武器を構え襲おうとしていた。
「クリス…コロス」
「クリス…コロス」
「カタリナ、クリス、どうしたんだ!?目を覚ませ!!」
「レナサン…コロス」
「ジュリアン!!しっかりしてください!!」
「ワタシノコ…コロス…」
「エレミヤ様、しっかりしてください!!」
そしてミカヤにもサザは襲い掛かろう飛び込んで来ていた。
「…ミカヤハ…オレガコロス…」
サザの予想外の言葉にうろたえ、ミカヤの動きが一瞬遅れる。
その一瞬でミカヤに接近したサザはミカヤに迷わずナイフを投げた。
「乙女よ、危ない!!」
しかしサザのナイフがミカヤに刺さる寸前に、漆黒の騎士がサザのナイフを受け止めていた。
「…見損なったぞ緑風。乙女に手を出すとは許せぬ。身の程を弁えよ!!」
カウンターでいつものようにサザにエタルドで切り掛かる。
「…ミカヤハ…オレガコロス…」
「何!?」
しかしサザは何事もなかったかのように追撃を漆黒の騎士へと叩き込む。

その時マルスが豹変した6人の首に黒いオーブがあることに気がついた。
「…まさか…闇のオーブ!?」

続く