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Last-modified: 2011-06-06 (月) 21:51:23

171 名前: 幼女の旗の下に [sage] 投稿日: 2011/01/23(日) 00:46:08 ID:A/+TLEmJ
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1 ターナに頼む  ターナは今時の女学生だからな。詳しいに違いない。

善は急げである。エフラムは早速手帳を取り出すと電話番号の欄をチェックした。
携帯を持ってないエフラムは滅多に電話などしない男であったが、
外に居る時でどうしても連絡が必要な場合は公衆電話を使う事がある。
そのため幼女家族友人知人の電話番号は手帳に控えてあった。
エフラム 「○×△-○○×-△△×○…と」
掛け間違いのないよう一番一番確かめながら休憩室の電話を外線に繋いだ。

その時ターナは鉄血幼女守護同盟の事務所でポスター作りに勤しんでいた。
卒業式の後には選挙が控えているのだ。準備しなければならない。
エフラムは研修、黒い牙組みはソーニャ派への対策、カナスは大学の新入生受け入れの準備、
その他社会人の党員たちもそれぞれの仕事があり、党の仕事に割ける時間は限られる。
それに対してターナはすでに大学も決まり、高校も全課程を修了して卒業を待つのみ。
早い話がヒマなのであり党の事務やら雑務を一手に引き受けるハメになっていた。

ターナ  「はー……一人で事務所で仕事してると…休日出勤してるOLみたい…」
つい愚痴が出てしまう。誰も聞く者もいないが…
PCの中に取り込んだスーツ姿のエフラムの写真を見ているとまた溜息が出た。
とても凛々しく引き締まったよい顔をしている。
これなら浮動票のうち、若い女性や有閑主婦票が期待できる…かと思いきや選挙ポスターなので名前と党名を入れないといけないのだ。
ターナ  「今更だけど党名に幼女って入ってるのってどうなのかしらね…本当に今更だけど」
それにしても…PCの中のエフラムは本当によい顔をしている。
瞳には誰よりも強い信念が宿り幼女を守りぬくため国政に打って出るという強い決心が伺えた。
ターナ  「……ま…何かに一所懸命で…目標を持ってる男の人は格好いいっていうけど…」
本当に格好いい。見てると胸が高鳴る。
そして…以前ならそのエフラムの信念が幼女のためという事に突っ込みを入れずにいられなかったろうが、
最近エフラムの言う事に共感してしまう事が増えてしまった。それがますますターナを悩ませ、頭の中をグチャグチャにさせるのだ。
ターナ  「はぁ…もう…エフラムはどこまで私を悩ませるの…エフラムのせいなんだからね。
      私をこんな事に巻き込んで…気がついたら政党にいて…逮捕とかされて…いつの間にかサラと一緒に私を感化して…そして…」
…言葉を続けようとした瞬間…携帯が鳴り響いた。
ターナ  「…あれ…知らない番号だ。誰だろ?」
訝しがりながらもボタンを押す。
ターナ  「はい、もしもし?」
エフラム 『ターナか? エフラムだ』
ターナ  「はい? え、え、えええええぇぇぇぇぇ!?」
エフラム 『どうした? なんでそんなに驚く?』
ターナ  「いや…だってほら!エフラムに携帯の電話番号教えてから一度もかけてきた事なかったじゃない!?」
エフラム 『…俺は大事な話は直接目を見て話すからな。大事じゃない話ならわざわざ電話で話すほどのことでもない。
      急な用でやむをえん時でもなければ電話など使わん』
ターナ  「いやほら…その…ちょっと声を聞きたいなーとか…おしゃべりしたいなーとか…」
エフラム 『何を言ってるんだお前は?』
ターナ  「…いや…うん…エフラムはそーよね…それで何かあったの?」
ちょっとだけしょんぼりする。
この男はどこか古風で物堅いのだ。
エフラム 『頼みたい事があってな。俺が仕事終わってから時間取れるか?』
ターナ  「大丈夫だけど…何?」
エフラム 『今度携帯を買おうと思ってな。だが俺にはそういうものはよくわからんのだ。すまんが買い物に付き合ってくれ』
ターナ  「マジ…? 私があれだけ携帯勧めても必要無いの一点張りだったじゃない。どういう心境の変化?
その……誰かとメールしてみたくなったとか…」
エフラム 『仕事上持った方がいいと思ったのだ』
ターナ  「あ…なるほど…うん、そういう事ね…はぁ…」
エフラム 『どうかしたのか?』
ターナ  「別にっ!なんでもないわっ!べーっだ!」
エフラム 『…? まあいい。それで付き合ってもらってかまわんか?』
ターナ  「えーいーわよっ!どーせ彼氏もいないヒマな女子高生ですからっ!」
エフラム 『なんだ彼氏がほしいのか?俺の同級生から誰か紹介するか?』
ターナ  「……も…いい…はぁ……それじゃエフラムの仕事が終わったら駅で落ち合いましょ…」
172 名前: 幼女の旗の下に [sage] 投稿日: 2011/01/23(日) 00:46:51 ID:A/+TLEmJ
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こうして二人は駅で落ち合った。
なんのかんの言ってもこうして二人で出歩くのは数年ぶりである。
ターナは電話の後、かっ飛んで家に帰ると気合を入れておめかしした。
結果は一言も無かったが…まぁ予想の範囲内なのがまた溜息を誘う。
エフラムはと言うと仕事帰りのまままっすぐ来たのだろう。
スーツ姿のままだ。
ターナ  「ふわー……改めてみると本当に社会人って感じよね」
エフラム 「そうか? まだ着慣れないんだがな…まあいい。携帯はどこで売ってるんだ?」
ターナ  「うん、ここからすぐだから」
二人は連れ立って歩いていく。
腕など組んでみようかなー…などとさり気に手を伸ばしてみるが…
エフラム 「どうかしたか?」
ターナ  「べっ別に!」
…まぁこんな感じである。

そうしてやってきたのは…
漆黒の騎士「このカタログを見られよ」
エフラム 「…本当になんでもやってるんだな…」
漆黒印の携帯ショップであった…
二人は肩を並べてカタログを眺める。
ターナ  「店主はこんなだけど料金は安いしアフターサービスもいいのよ」
エフラム 「…いろいろ種類があるようだが…どれがいいのかよくわからん」
ターナ  「ベグニオンの新タイプなんてどう?TVも見られるし液晶も大きいし」
エフラム 「TVは家で見る。電話が出来ればそれでいい」
ターナ  「そ…それじゃバーハラがいいかしら。ほら、ボタンも大きいから慣れない人でもメール打ちやすいよ」
エフラム 「メールなどせん。む? いらん機能を取っ払った方が料金が安くなるそうじゃないか?
      よくわからんITだのそんな機能はいらん。どうせ使わん」
ターナ  「で…でもでもっ時間ある時とか私とメールとかできるしさっ!」
エフラム 「だから用があるなら電話で充分だろう」
漆黒の騎士「お客人、機能にこだわらずに安い物がお望みなら中古も扱っている。
      数年前のモデルになるが格安でお売りしよう」
エフラム 「よし、それにしてくれ。電話だけできればかまわん」
ターナ  「…………」

こうしてエフラムは携帯を購入した。
数年前の旧式モデル、電話だけで構わんという高齢者の方が使っていそうなタイプである。
ターナ  「…時々思うんだけど…エフラムって本当に現代の若者?」
エフラム 「まだ10代である以上若者だと思うが?」
ターナ  「はぁ……もういい…でっでもさ!ほら!」
エフラム 「む?」
ターナ  「きょ…今日さ、時間割いて付き合ったんだから…その…お茶くらい奢ってほしいなー…なんて」
エフラム 「そうだな、よし。茶と言わず晩飯を奢ってやろう」

喜んではしゃぐターナの傍らでエフラムは家に電話をかける。
エリンシアに夕食は外で済ますと伝えねばならない。
だが慣れない携帯弄りに悪戦苦闘するはめになり、結局ターナに操作してもらう羽目になった。
その際何気にエフラムの携帯に自分の番号を登録した辺りはターナもしたたかなトコがあるのかもしれない。
相手はそれ以上の強敵だったが……
173 名前: 幼女の旗の下に [sage] 投稿日: 2011/01/23(日) 00:47:32 ID:A/+TLEmJ
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そうしてやってきた店は…
漆黒の騎士「禁煙席か喫煙席か選ばれよ」
エフラム 「禁煙席を頼む」
ターナ  (さっき携帯ショップにいたのにどうしてここにいるのかしら…漆黒さん…)

漆黒経営「漆黒中華4000年」という店である。
二人は差し向かいで八宝菜や焼き餃子を楽しんだ。
夕食の席の話題は様々である。
まもなく学校を卒業する事、エフラムの仕事の話、党と選挙の話、ヒーニアスの話はターナが強引に終わらせた。
…そして…ターナは胸のうちにたゆたっていた物を静かに切り出した。
いい機会だとも思った。

ターナ  「ね…エフラムは将来をどう考えているの?」
エフラム 「前も言ったが議員になる。いずれは首相になって幼女を守る」
ターナ  「うん…それはわかってるわ。でも議員だって本職は持ってるわけで…このままホテルマンになるの?」
エフラム 「食っていかねばならんからな。稼ぎは必要だ」
ターナ  「ずっと?」
エフラム 「む?」
意味が掴みかねたエフラムはターナを見つめ返した。

ターナ  「私ね…大学で保育士の資格を取ろうかなって思ってるの」
エフラム 「おお、さすがは俺の同志だ!」
素直にエフラムは感嘆した。
幼女を守る職業をターナが志した事が嬉しいし尊敬もできると思う。
ターナ  「エフラムは…考えてみたことない?」
エフラム 「………」

いつか見た夢…随分以前の記憶だが仲間と保育園を建てた夢を見た事があった気がする。
自分の将来を漠然と考えていた時期にも幾度か考えた。
政界に入って以来、なりふり構わずに走ってきたが……
174 名前: 幼女の旗の下に [sage] 投稿日: 2011/01/23(日) 00:49:07 ID:A/+TLEmJ
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ターナ  「私も色々考えたよ。今だから言っちゃうけど私エフラムの事、本気でロリコンなんじゃないかって思ったこともある」
エフラム 「俺はロリコンでは…」
ターナ  「うんわかってる…愛しくて大事なんだよね。私も…ちょっとわかっちゃったから…」
エフラム 「ターナ…」
ターナ  「だからね…子供達の事、守ってあげられる仕事にって…ね」
     (鼻血噴く自分が信用できない気もするけど…サラ以外にはなんともないからだいじょーぶよね…うん)
エフラム 「そうか…」
ターナ  「政界から引けってわけじゃないわ。なんだかんだ言っても支持してくれる人たちもいるもんね。
      それにカナスさんも言ってたけど皆、本職を持ちながらやってるって言うし。
      でも考えておいて。私はエフラムと一緒に保育園をやりたいって思う」
エフラム 「…そうか…わかった。考えてみよう」
ターナ  「うん…ありがと」
しばらく二人の間に沈黙が流れる。
本心を言えばそれ以上の想う所を切り出したかったのかも知れないが…
今のエフラムは選挙や人生の岐路、あらゆる重荷を負っている状態といってもいい。
これ以上悩ませたくはなかった。
幾分か硬くなった空気を緩めようとターナが口を開きかけた瞬間…先にエフラムが口を開いた。
エフラム 「話は変わるが、選挙の準備は進んでるか? お前ばかりに負担をかけてすまないな」
ターナ  「もーいーわよ今更。ポスターとか運動員の手配はすすめてるわ」
エフラム 「そうか。前回の選挙は逮捕されてしまって出られなかったからな。今度は二人とも当選しような!」
ターナ  「…………」
額に汗が流れる。そうだ。よく考えたら選挙に出るのはエフラムだけではないんだ。
オグマ、シャナン、ロイド、ライナス、ジャファル、カナス、ディーク、ダーレン……そういった濃い連中のポスターが並ぶ中に、
うら若い乙女であるターナのポスターも貼られるのだ…
しかも幼女の名を冠する政党の名前入りで……

これをルネスの同級生や下級生が見たらどう思うだろう…

ターナ  「あ……あの……エフラム? やっぱ…私も…選挙…出るの?」
エフラム 「もちろんだ。議員と学業と二足の草鞋は大変だが、俺たちもやる事だ。
      一緒にがんばろうな!」
ターナ  「あ…あははは…そう…よね…そうだよね…私…もう開き直った方がいいのかな…」

店内にターナの乾いた笑みが響いた……

続く