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Last-modified: 2011-06-07 (火) 20:34:15

248 名前: 幼女の旗の下に [sage] 投稿日: 2011/01/30(日) 16:09:08 ID:/l440LIx
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1 開き直る   もーいーよっ!私サラに魅了されてるもん!文句ある!?

ターナ  「かまわんわ!こーなったらやるよ私は!選挙受かるよ!そしてサラを抱っこするんだ……」
エフラム 「うむっその意気だ!」

思いっきり言い切るとなんだか何も怖くない気がしてきた。
この機会になんでも言ってしまおう。
ターナ  「それとエフラム!」
エフラム 「うむなんだ?」
ターナ  「ずるい!」
エフラム 「な…なにがだ?」
ターナ  「エフラムばっかサラを抱っこしてずるい!サラばっかエフラムに抱っこされてずるい!」
エフラム 「…何言ってるんだお前?」
いつもなら幼女以外にはフラグブレイカーのエフラムである。
だが開き直った相手は強い。
ターナ  「ちょっとコッチ来る!」
エフラム 「あ…ああ…」
常にはないようなターナの強引さに戸惑いつつもその後を追う。
会計を済ませて店を出るとターナはエフラムを伴って帰り道の公園に来た。
すでに日は暮れて人気も無い。
ターナ  「…ここならいいかな…さ、抱っこ」
エフラム 「あのな…お前は抱っこをせびるような年じゃないだろう」
ターナ  「幼女と妹はよくて私はダメだっていうの!?」
エフラム 「い…いやそうではないがな…」
ターナ  「じゃあ何も言わずにさっさとするっ!!!」
エフラム 「……人に見られて子供扱いされても知らんぞ…」
小さく溜息をつくとエフラムはターナを抱え挙げた。
所謂お姫様抱っこだ。
エフラムの胸にしがみ付いているとポワポワした気持ちになる。
ターナ  「ねーしばらくこうしていてくれる?」
エフラム 「かまわんが…しかし急にまたどうしたんだ…?
      童心に返って子供の頃のような甘え方をしたくなったのか?
      …その場合対象はヘイデン殿かヒーニアスだと思うのだが」
ターナ  「ばかっ!鈍感!それにお兄様相手とかありえないし!」
思いっきり耳を引っ張ってやる。お仕置きだ。
何故お仕置きされたのかわからず憮然とするエフラムの胸にこの時ばかりはターナも甘えた。
たまにはこんな日があってもいいだろう……

翌日……
鉄血幼女守護同盟事務所ではひたすらサラを抱きしめて撫でくり回すターナの姿があった…
本人曰く「昨日はエフラムに抱っこしてもらったから今日はサラを抱っこするのっ♪」とのことである。
いつもならターナを誘惑して弄ぶサラもその勢いに呑まれて撫でられまくって髪をクシャクシャにしていた。
サラ   「姉さま…暑苦しい…」
どこか憮然として呟くセリフもターナには聞こえてない。
ターナ  「細かい事はいいじゃないっ!…嗚呼…姉さま…なんて心地よい響き…」
その鼻からは鼻血が零れ落ちる……もはや周囲の目を憚らないその姿をシャナンは生暖かい目で見ていた。

シャナン 「うむ…人間正直が一番だっ」

開き直った人間は強くて厄介だった。
249 名前: 幼女の旗の下に [sage] 投稿日: 2011/01/30(日) 16:09:55 ID:/l440LIx
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ジャファル「…………」

黒い牙の裏庭。ゴミ捨て場に寄り添うように置かれたダンボールの中でジャファルは事の顛末を見ていた。
ウルスラ…ジュルメ…ケネス…
ソーニャ派と目される幹部が黒服達を連れて出て行く……
彼はすぐにその場を離れると同志に連絡を取る。

ジャファル「動いた…ソーニャ派の主力が出ている」
ロイド  『おし、この機に叩き潰すぞ!俺は動ける仲間を呼び集める。お前は引き続きヤツらを追跡して情報収集してくれ』
ジャファル「わかった…」

こうして黒い牙ソーニャ一派と鉄血幼女守護同盟は戦闘体制を整える。
幾人もの権力者達の思惑がこの状況を作り出していた。

元老党の本部でルカンはワイン片手にソーニャの勝報を待っている。
傍らにはヘッツェルの姿もあった。
ルカン  「ヤツめは最後の癌細胞よ。これを除けば…」
ヘッツェル「左様ですな…ルカン殿」
ルカン  「大統領選にワシが出馬する日も近い。議会と元首を完全掌握したら次は法改正ですな。
      今のように複数政党が乱立するのは政治の意思統一のためには望ましくない…」
ヘッツェル「法案はすでに作成にかかっています。国家治安に反する政党の非合法化を柱に法律の専門家達に議論をさせております」
ルカン  「ふふ…わしらは紋章町の平和に責任を負っておりますからなぁ…怪しげな団体を承認するわけにはいかぬ」

要は各政党の罪状を黒い牙を使ってでっちあげ、元老党のみを唯一の合法政党とする目論見である。
それが完成した時…ルカンは大統領の座を占め、彼が出す法案は無条件で議会の承認を得る。
大統領の任期を終身制とし…首相には意のままの者を置き…紋章町はルカンの物となる。
これをはばもうとする者は全て消えてもらうまでだ…前党首も…うとましい社長も……老いぼれの現大統領も…

その日のベグニオン本社はどこか空虚な気配を漂わせていた。
常になら社内を固める聖天馬騎士団の姿が見当たらない。
大半の一般社員たちはそれを訝しがりながらも日常の業務に励んでいた。

既に紋章町郊外を飛行中のシグルーンは部下達に前進を命じる。
刑務所まであと一時間だ。

3年間世話になった部屋の荷物を片付けながらセフェランは一人ごちた。
セフェラン「さて…最後になりましたが…ルカン殿には一つだけ感謝したい。
      実によい機会を与えてくださいましたよ…」

幾人もの思惑が交錯し紋章町の政局を斑模様に染め上げていた。
250 名前: 幼女の旗の下に [sage] 投稿日: 2011/01/30(日) 16:11:49 ID:/l440LIx
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その一部がベルン署にも見られる。
拘禁されていたヴァイダが取り調べに応じたのだ。
それはゼフィール直々の事情聴取によるものだった。
開口一番ゼフィールは言ったものだ。
ゼフィール「…ワシの父上が迷惑をかけたな…すまなかった」
ヴァイダ 「そうかい…」
頑なだったヴァイダも次第に重い口を開いた。
ヴァイダ 「……アタシが知ってる事は多くはないよ。トラキアの事件で指揮をとるよう命じたのはソーニャ。
      ……そのバックには裏は無いが…元老党がいる」
ゼフィール「そうか…わかった」
ヴァイダ 「三年前の事件は知ってるだろう?
      元老党内部のゴタゴタで拘禁された前党首が釈放されるって言うじゃないか」
ゼフィール「うむ、拘留期限は切れたからな。今日を持って釈放する。そろそろ身柄がベグニオン側に引き渡されておるはずだ」
ヴァイダ 「気をつけといた方がいいよ。それだけじゃ済まない。今の牙はベルンの丸暴と折り合ってた頃の牙じゃないんだ。元老党のためになんでもするだろうよ」
ゼフィール「………むぅ………」

この直後…ベルン署より警官隊が市内各所に配置され治安活動を開始する。
その主力はテリウス地区に配置された。

…紋章町の諸勢力が動き出す中…
もう一つの思惑が首をもたげて時局を飲み込もうと図っていた。
AKJ本部の一室ではプリシラが部下達と連絡を取り合っている。
会長は次回選挙での大幅躍進を図っていたがプリシラはすでにその計画に見切りを付けていた。
プリシラ 「……セリノスを支持層に取りこむこともできず…非兄妹愛の妹を愛に目覚めさせる事もできず…
      もはや会長の指導力には期待できません……」
レイヴァン「やめろ…思い直せ!」
傍らには鎖と手錠で拘束されたレイヴァンの姿がある。
彼はプリシラの振る舞いを実力を持って止めようとしたのだが……
プリシラ 「不便をかけてごめんなさい兄様。でもこれは私達のためなんです。それをわかってくれるまで…大人しくしていてくださいね?」
レイヴァン「馬鹿な…お前……」
プリシラ 「大丈夫…妹も兄も愛し合い結ばれる世の中のためには…もうこれしかないんです。
      悠長に選挙で政権を取るなんて言っていたら…何年かかるか知れたものではないんです……ふふ」
机の上には紋章町官公町エリアの地図が置かれていた…
大統領府、首相官邸、議会議事堂、最高裁判所、内務省や国防省、文部省等の主要政庁関連の建物、ベルン本署、国防軍総司令部……
地図に描き出されたそれらはすでに自分の手の内にあるように感じられる。
かつてのテロ事件で国外に脱出させた部下達を密入国させて各地に潜伏させている……
計画は会長にもクラリーネやティニーにも内密で推し進めた。
プリシラ 「私達は重要施設を占拠、要人の身柄を拘束しFETV放送局を制圧して全土に放送を流します…
      紋章町の歴史に偉大な一ページが刻まれた事を………兄と妹が愛し合える理想郷がこの地上にもたらされたことを…」

紋章町のもっとも長い一日が始まる……

彼の手には二つの案件があった……
一つは同志ロイドからの連絡。
黒い牙が動き出した…ソーニャ派を破るため手を貸してほしいと。
もう一つはもう一人の同志ダーレンよりの連絡。
…かねてより調査していたプリシラに不穏の動きあり。
クーデターによって政権を奪取しようと目論んでいると……
なれない携帯を操作しながら彼らの連絡を受けたエフラムには重い決断が圧し掛かる。
どちらを取るか…自分はどう動くべきか……

続く