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Last-modified: 2011-06-06 (月) 21:33:32

26 名前: 幼女の旗の下に [sage] 投稿日: 2011/01/04(火) 19:47:30 ID:vfXTfXTM
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1 ジョフレの愛を受け入れる  …そこまで熱烈に想ってくださるなんて…わたくし、心を動かされました…

エリンシア「…………」

あまりに直球のジョフレの言葉にしばしエリンシアは口を閉ざした。
咄嗟には反応できない…が…まっすぐにこちらを見据えているジョフレの瞳の強さは今まで知っていた彼のイメージを覆すものだった。
なんか頼りない人…今まではそのくらいの印象しか持ってなかったのだが…
エリンシア(こんな顔も出来るんですね…)

付き合ってもいいかなという思いが胸にこみ上げてくる。
思えばそんな気持ちになるのは学生時代以来だ。
ここ数年はそういう気持ちから遠ざかっていた。

エリンシア「わかりましたジョフレ。わたくしでよろしければ…」
ジョフレ 「貴女だからいいんですっ!いやったぁあああああ!!!!」
グッと拳を握ってガッツポーズを取る。歓喜が胸に込み上げる。
胃の痛みも苦悩もこの瞬間ジョフレは全てを忘れてまるで少年のように喜びを露にした。

その翌日、テリウス地区に向かう列車の中でジョフレは手紙を書いている。
エリンシアとは任地から文通をすることにしたのだ。
メールやケイタイが気楽に使える時代ではあるが…自分の手で…ペンで言葉を綴りたかった。
『親愛なるエリンシア様、お元気ですか。私は変わらず軍務に追われる日々を…』
ジョフレ 「ああ…いや…もう少し気の利いた事が書けないものかなぁ……」
などと頭を捻って文章を搾り出す彼は…この瞬間間違いなく幸福だった。
もはや音沙汰無いなどと嘆いてこちらから督促するような便りを出す必要も無い。

こうして彼らは静かに…ゆっくりと愛情を育んでいく。

エレブグランドホテル…ラウス家が経営するこのホテルでエフラムはベルボーイとして研修に励んでいた。
脳筋ではあるが決して馬鹿ではない彼の事。ある程度要領よく研修をこなしていたのだが…最大の難問に突き当たっていた。
とにかくエフラムは愛想が無いのである。
接客業は笑顔が基本…なのだがエフラムはその点が大の苦手だった…
エフラム 「う……ううむ…こうか?」
鏡を前に笑顔を作ってみるのだが…どうにもぎこちなく引きつった顔になってしまう。
エリック 「……5点」
エフラム 「うぐ……」
オーナーであるダーレンの息子エリックが容赦ないダメ出しをする。
エリック 「はぁ……もう少しなんとかならないのか?
      それじゃお客様の前には出せないぞ…」
エフラム 「も…申し訳ありません…」
キツイ言い回しに腹も立つが男は忍耐と自らに言い聞かせた。
エフラム (…これはなかなか精神的にもクるな…シグルド兄上はこんな労苦を背負って俺たちを養ってたんだな…)

改めて尊敬の念が胸をよぎる。
シグルドもサラリーマン。人と人との付き合い…取引先との付き合いで必死に笑顔を振りまくような事もあっただろう。
エフラムなどスマイル0円などというCMを見て面白くもない事でなんで笑えるのか…と思う事もあったがこれも一つの戦いなのだ。
27 名前: 幼女の旗の下に [sage] 投稿日: 2011/01/04(火) 19:48:17 ID:vfXTfXTM
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ロイド  「牙が…動くぞ」

トラキア地区のうらぶれた酒場…緑葉のアジト。
そのカウンター席でウイスキーをあおっていたロイドが口を開く。
リーフ  「ふぅん…元老党前党首の件かな?」
ライナス 「話が早くて助かるぜ」
リーフ  「僕たちも色々やってるのさ。ルカンの差し金と見て間違いはないね」
ロイド  「ジャファルが調査を続けてる。見な。当時の新聞だ」

ロイドがカウンターに広げた古新聞…そこには一面に太文字がおどっていた。
「元老党党首献金疑惑」「公職選挙法抵触か?」「ベルン署は身柄を拘束し……」

リーフ  「ふぅん…これで随分と引っ張ってきたものだね」
ロイド  「なんやかやと理由とつけてベルン署に圧力をかけてたんだろうよ。
      だがそれでも前党首の拘留期間はギリギリだ。元老党も一枚岩じゃねぇんだろうな」
ライナス 「ある筋から聞いた話だが元老党の一部が手を回して前党首はム所内でも手厚く保護されてたらしいぜ」
リーフ  「王様さながらの刑務所生活かぁ。僕ら庶民からは想像もつかないね」
ライナス 「まったくだ。それでよ。ソーニャ派が動きを活発化させてる。
      この件に対してルカンから何か命令が出たんだろうな」
リーフ  「暗殺?誘拐?」
ロイド  「さぁな…元老党の内ゲバなんて俺らにゃどうでもいいこった。だがよ。コイツはチャンスなんだ。
      トラキアの時はそこまで踏み込めなかったからな。
      今度こそソーニャ派をぶっ潰して牙を取り返す…」

四牙の白狼はこの場にいない女豹に対して殺気を込めて言い放った。 

リーフ  「そこで思ったんだけどさ。前党首派とは連絡は取れないの?
      連携すれば前議長を守りつつソーニャ派を引きずり出して一網打尽にできるんじゃないかな」
ライナス 「誰だかわからねえんだ。かなり厳重に情報漏洩を防いでてな…有力議員の誰かだろうかとは思うんだが…
     ヘッツェル、バルテロメ、オリヴァー、ヌミダ…」
リーフ  「うーん…じゃあそっちの繋ぎを取れないかはウチでやってみるよ。サザならテリウス系のことは詳しいだろうし」
ロイド  「ああ…頼むわ。俺らはソーニャ達の動きを追う。奴らが蠢いてたんじゃおちおち次の選挙もできねぇからな」

すでに彼らが各政党への妨害…内部情報の奪取…スキャンダルの捏造等を行っていることはロイドの耳にも入ってきていた。
小党ゆえ我が鉄血幼女守護同盟は後回しになっているようだがそれもいつになるか…
28 名前: 幼女の旗の下に [sage] 投稿日: 2011/01/04(火) 19:49:02 ID:vfXTfXTM
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アメリア 「ししょー…師匠?」
エフラム 「むっ!?」
アメリア 「あの…何かあったんですか?」
どうやら考え事をしていたらしい。
目の前で弟子が不思議そうな顔をしている。
ここは兄弟家の庭。弟子に槍の稽古をつけている最中だった。
アメリアが素振りをしている時につい考え込んでしまったのかも知れない。

エフラム 「ああ…すまんな。なんだ?」
アメリア 「いえ…なんだか…笑ってるみたいだから…」
エフラム 「…む…」
気が付いたら笑顔の練習をしていたようだ。
正直気恥ずかしいが……接客業の笑顔とは人に見せるものである。
いっそ感想を聞いてみよう。
エフラム 「この間言ったが、俺は今接客業に勤め始まっててな」
正確には卒業まではバイト扱いである。
アメリア 「おっきいホテルでしたよねっ」
エフラム 「うむ…それで客…お客様への笑顔の練習をしていたのだ…なぁアメリア。
      率直に言ってくれ。俺の笑顔はどうだった?」
アメリア 「あ…え…あ…んーと……」
……この口ごもりの時点で駄目出し確定である…
エフラム 「…正直に言ってくれてかまわん」
アメリア 「そ…それじゃ…あう…引きつってて…ちょっとキモかったです…」
エフラム 「そうか……」
アメリア 「で…でもでもっ!ししょーはこー槍をもってキリッと構えてる時はすごくいい顔してると思いますっ!」
エフラム 「む……だがその顔で接客はできんからな…」
アメリア 「うーん…それじゃあ…いい笑顔する人を参考にすればいいんじゃないかな…思いつきでごめんなさい」
エフラム 「いや、一理ある。お前の言う通りだ」

いい笑顔をする人か…誰がいいだろうか…

続く