33-59

Last-modified: 2011-06-06 (月) 21:42:05

59 名前: 腐リージ帝国の野望 [sage] 投稿日: 2011/01/06(木) 22:00:02 ID:q7Df1NQT

今回の冬コミの売り上げもまずまずだねぇ。そろそろ壁際サークルも近いんじゃないかな?
収支計算表を眺めながら俺は満足に浸ってた。
俺はアーサー。
同人一族フリージの一人さ。ティニーのアシスタント担当ね。
アーサー「発行部数も伸びてるしなー。そろそろヲトメ系の同人ショップに卸す事考えてもいいかもな」
最近はヒルダ伯母さんもティニーを褒める事が増えた気がする。
あの人は伝説の貴腐人だ。
一日の売り上げ数千万を達した事もある腐女子の鏡らしい。
…おっと…冬コミ終了に安心しちゃいられない。
ショップに電話してみるかな。
俺としちゃあそういう事でティニーの手を煩わせたくないんだよね。
アイツには自分の創作に専念して欲しいじゃん?
だからさ、周りの事は俺がやってやんの。
俺兄貴だからさ。

んなわけで携帯に手を伸ばしたらいきなり鳴り出した。
ちょっと驚いたぞー。誰かな?
そーいやセティから借りたゲームがそのままだった気がする。催促かな?
…あ、これフィーからだ。
アーサー「やっほ~~なんか用~?俺の声が聞きたくなったとかだと嬉しいんだけど~」
フィー 「あんたね…/////
どうしてそう恥ずかしげもなくそゆ事言えるのよ…」
アーサー「だって俺ら付き合ってるわけだし?」
フィー 「そ…そりゃそーだけど…////
     で・も・残念!違います!」
アーサー「そりゃマジ残念。そんじゃなにかな?」
フィー 「アーサー、今からアシ入れる?」
アーサー「へ?別にいいけど何?冬コミ終わったばっかじゃん?」
フィー 「んーとね。友達のサークルがさ合同誌をショップに卸すことになってねー。
     んで7ページ頼まれてさ。書きあげなきゃなんないの」
アーサー「ありゃ。フィーもショップデビューか。うちもそろそろかなって思ってたとこなんだ」
フィー 「残念ながらあくまでも便乗の形だけどねー。あーあティニーが羨ましいわ。
     一族みんなでサポートしてくれるんだもの。うちのお兄ちゃんなんて同人に理解無いしー」
アーサー「はっはっは~妹の趣味を助けるのも兄貴の役目」
フィー 「…ま…まぁ…とはいえアンタんちも特殊だけどね…」

そ、フィーは親や家族には秘密で同人活動してる隠れ腐女子だったりする。
早くカミングアウトすればいいのになー。俺なら妹の事は全力で応援しちゃうよ?
セティの奴もう少し妹に気をくばればいいのに。
ま、フィーには俺がいるからいいんだけどね。
アーサー「お~け~そんじゃこれから行くよ」
フィー 「うん、待ってる」

…てなわけで俺はシレジア家に向かった。
60 名前: 腐リージ帝国の野望 [sage] 投稿日: 2011/01/06(木) 22:00:59 ID:q7Df1NQT

アーサー「こーんばーんわー」
フィー 「はいはーい今開けるねー」

パタパタと駆けてきて戸を開けてくれたフィーは手にインクが付いていた。
執筆真っ最中なんだろーね。
どーだい皆、俺の彼女可愛いっしょ?
ぶっちゃけ俺シスコンの気あるからさ。彼女作るとかないかなーなんて思ってたけどとんだ勘違いだったね。
妹は妹、彼女は彼女だよ。どっちも等しく可愛い大切な人さ。

アーサー「そんじゃお邪魔しまーす」
何度か来た事あるしー、勝手知ったるなんとやら。
俺はフィーの部屋へと向かった。
セティ 「…なんだアーサーか…」
アーサー「よ、セティ」
廊下の向こうから歩いてきたコイツはフィーの兄貴で俺の友達。
この若さでシレジアの副社長…実質的社長やってる凄い奴さ。
だけどまー溜息が多い奴でねー。一体何それほど悩みがあんだろ?
フィー 「アーサー!時間ないんだから早く早く!あ、お兄ちゃん!今からしばらく私の部屋入っちゃ駄目だよ!
     絶対だからね!」
セティ 「あ…ああ…」
急かされて俺はフィーの部屋に入った。
フィー 「ふ~~……」
アーサー「なーフィーってば、セティ可哀想じゃね?」
あのキッツイ台詞にゃ同じ兄貴として同情を禁じえない。
フィー 「何言ってるの!今、お兄ちゃんが来たら私の趣味バレちゃうでしょ!」
アーサー「ばれたっていいじゃん」
フィー 「よくないっ!絶対無理!ヤダヤダヤダ!」
アーサー「んーセティは気にしないと思うけどなー。前だってティニーの同人誌のモデルになってくれたんだしBLに抵抗ないんじゃね?」
フィー 「……それは別の理由だよアーサー……本当はすっごく抵抗あったと思うよ…」
アーサー「そか?」

ん~よくわかんねーや。
ま、フィーが嫌なら無理にカミングアウトしろとは言わないよ。
ぶっちゃけ俺もうちの環境が特殊って自覚はあるしね。
叔父さん伯母さん爺様両親従兄弟たちまでティニーをサポートしてるうちは他所よりちょっとだけ変わってるんだろ。

フィー 「じゃさっそくだけど背景の処理とトーンお願い」
アーサー「お~け~っフィーへのポイント稼いじゃうよ」
フィー 「だからそういう軽口やめてよねっ//////」
アーサー「あはは~」

俺は口動かしてた方が調子出るんだよねー
あ、でもさ。冗談口叩いてるように聞こえるかもだけどケッコー本気だよ?
なーんて感じで口と手を同時に動かしてく。
お~フィーの原稿は相変わらずねっとりしてて濃いねー。
ダンディでマッチョな髭親父同士が…まー具体的には言わないよ。
え、俺は男の癖にBLに抵抗ないのかって?
あははー同人一族舐めちゃいけません。ガキの頃からヲトメグッズが周囲に溢れ、絵本の変わりに同人誌見せられてきたんだよ?
さっぱり気にならないなー。あ、誤解の無いように言っておくけど俺ノンケだからそこはヨロシク。

なーんて感じで夜は更けていったのさ。
えー男女が一晩一緒で同人描いてるだけって色気もへったくれもないとか思っちゃう?
そこはそれなのさ、こーやって軽口叩いてフィーがちょっとカリカリしちゃってさ。
んなことやりながらも楽しく同人誌を書くのが俺らのデートってわけ。
楽しいよ?
今度恋人と試してみるといいよ。愛情が深まる事間違いなしだね。
61 名前: 腐リージ帝国の野望 [sage] 投稿日: 2011/01/06(木) 22:02:59 ID:q7Df1NQT

そんで翌朝…
フィー 「できたーっ♪」
アーサー「ふぁあ~~悪いねフィー、ちょっとベッド貸して~」
フィー 「いいよー、じゃあ私はちょっと原稿を友達のとこに届けてくるから」
アーサー「行ってらっしゃ~い、あ、このポテチ貰うね。朝飯朝飯」
フィー 「…なんかお土産買ってくるよ。アシ代替わりね」
アーサー「わ~いっ」

…ってな感じでフィーが部屋の扉を開けると表をセティがうろついてた。
フィー 「……お兄ちゃん…なにやってんの…」
セティ 「あ…いや、私はたまたま通りかかって…」
フィー 「もうっ!私の部屋の側うろつかないでって言ったでしょっ!」
お~いフィーさ~ん。
入らないでとしか言ってませんぜ?
セティ 「な…なあフィー…か…彼氏を呼ぶのはいいけどな…まだ学生なのに泊まるってのは…」
フィー 「お…お兄ちゃんには関係ないでしょっ!そんな変な事してないもん!妙な邪推しないでよエッチ!」

ん~……俺がアシ入るといつもこーなるんだよね…
清い交際ですって言ってあるしそこはセティも俺を信用してくれてると思うけどさ…それでも兄貴としちゃー心配だよね。
だから何度もカミングアウトしちゃえって言ってるんだけどなー
締め切り追われて同人誌描いてるってなら泊りがけも当たり前だし。

結局フィーは諌めようとするセティに機関銃みたいに文句言って走っていっちまった。
アーサー「なーセティ」
セティ 「…なんだい」
憮然とするセティにはかける言葉もないけどさー
俺ってどーも無口じゃいれないんだよね。
アーサー「フィーの事信じてやって」
セティ 「言われるまでもない、とはいっても心配なんだよ」
アーサー「わかるわかる兄貴だもんなー」
セティ 「心配の原因が君にあることもわかってほしいけどな…」
アーサー「ダイジョブ、徹夜でゲーム大会してただけだから」
セティ 「その言葉信じるぞ。過ちがあったらフォルセティの刑ね」
アーサー「りょうかーい。肝に銘じておくよ」

んーやっぱ同じ兄貴としては心苦しいなあ…一緒に同人誌書いてただけって言えればどれだけ気楽か…
だけどさ…俺はおしゃべりな方だけど人の秘密を軽々しくはしゃべらない事にしてんだ。

そんなこんなでしばらくしたらフィーが帰ってきた。
フィー 「ただいまー。マッケよってお土産買ってきたよー」
アーサー「わーパチパチパチ!」
フィー 「…ん…お兄ちゃんの分…」
ずいっとセティにハンバーガーを差し出す。
セティ 「あ…ああ」
アーサー「お~なっかなっおりっなっかなっおりっ♪」
フィー 「うるさーいバカっ////」

なーんて茶化しちゃうね。
でもさ、こーやって俺に怒鳴るとフィーは後は大体落ち着くんだよねー
そんで俺が帰った後あたりにセティに「言い過ぎた…ごめん」とかやってたりする。
前に忘れ物取りに戻った時、出くわしたことあるし。
うん、やっぱ兄妹は仲がいいのが一番だね。 
だけどさ、早くセティにも本当の事教えてやろうよ。

フィーがセティと仲良く同人誌を読んだり書いたりするようになるといいなー
なんて事を考えながら俺はハンバーガーに齧りついたのでした。まる。

終わり