78 名前: シレジア王国の絶望 [sage] 投稿日: 2011/01/08(土) 17:17:10 ID:VOwiBb3M
1
アーサー『やっほ~~なんか用~?俺の声が聞きたくなったとかだと嬉しいんだけど~』
…第一声がそれかいっ!?
私は思わず心の中で突っ込みを入れてしまった。
フィー 「あんたね…/////
どうしてそう恥ずかしげもなくそゆ事言えるのよ…」
アーサー『だって俺ら付き合ってるわけだし?』
そうなんだけど…そうなんだけどさっ!
あんまりあっさり当然の事のよーに言われるとさっ!
いっつも照れたり慌てたりするのは私の方、アイツは飄々として自然体で…なんかくやしいなぁ…
私は用件をすませると携帯での通話を終える。
私の目の前には机に広げられた同人誌の原稿。
これを明日までに完成させて同人仲間のトコに届けなきゃならないのよね。
ちょっと独りじゃ無理っぽいからアーサーにアシ頼んだってワケ。
さ、続きを描かなきゃ。
フィー 「…ん~~ここはこう…あっいい感じいい感じ♪
ヤバ…ツボに入った…はぁぁん…うはぁ♪」
ど…同人誌って結局は自分の好きな妄想を形にするものだものね…
紙上に躍る私好みのおじ様方の絡みを見て…鼻血が出そうになった私は首の裏をトントン叩く。
…このネタを見てる男性の読者の方…「何この腐女子キモい。次はフェミナ出そう」とか思わないでっ!?
夢を壊すようで申し訳ないけど女の子も人間なのっ!
人に見せられない趣味の一つや二つ持ってたりもするわけで…
貴方方のベッドの下が決して家族や彼女に見せられないのと一緒なのっお互い様お互い様。
…まぁ…ティニーみたいにまったく隠さず堂々としてる娘もいるけど…
嗚呼…あの強靭さが羨ましい…orz
79 名前: シレジア王国の絶望 [sage] 投稿日: 2011/01/08(土) 17:17:55 ID:VOwiBb3M
2
しばらくしてアーサーが来てくれた。
ど…どうみんな?
け…けっこーイケメンだと思わない////
呑気でいーかげんな奴だけどこーみえていいところもいっぱいあるんだよ。
うん、これでどうにか朝までには原稿出来そうだね。
アーサーを出迎えた私は彼を伴って自室へ向かう。
わ、この彼って単語照れるなぁ…////
すると…私の部屋の側でお兄ちゃんと行き会った。
お兄ちゃんとアーサーは友達だったりする。
…が、二人が挨拶をする間もあればこそ…
フィー 「アーサー!時間ないんだから早く早く!あ、お兄ちゃん!今からしばらく私の部屋入っちゃ駄目だよ!
絶対だからね!」
セティ 「あ…ああ…」
…なんて感じでお兄ちゃんを追っ払ってしまった。
ちょ…ちょっと悪いかなとは思うけど…だってだってお兄ちゃんに私の趣味知られたくないよう!
家族にだって知られたくない事ってあるよねっ!?
アーサー「なーフィーってば、セティ可哀想じゃね?」
……う…私だってちょっとキツかったかなとは思うけどさ……
フィー 「何言ってるの!今、お兄ちゃんが来たら私の趣味バレちゃうでしょ!」
アーサー「ばれたっていいじゃん」
フィー 「よくないっ!絶対無理!ヤダヤダヤダ!」
なんちゅーこと言うのよっ!?
そんなことしたらお兄ちゃんもレヴィンお兄ちゃんも母さんも私にドン引きするに決まってるよっ!!!
そしたら恥ずかしくてもーこの家で暮らせないよっ!!!
アーサー「んーセティは気にしないと思うけどなー。前だってティニーの同人誌のモデルになってくれたんだしBLに抵抗ないんじゃね?」
フィー 「……それは別の理由だよアーサー……本当はすっごく抵抗あったと思うよ…」
アーサー「そか?」
いや…それは…違うよアーサー…
お兄ちゃんはティニーの頼みだから渋々引き受けたんだよ…
でも私の口からアーサーにそれを言うわけにはいかないかな…
我が彼氏ながらアーサーすっごいシスコンだもん。
ショック受けるかもしんないしシスコン魂とお兄ちゃんへの友情で悩むのが目に見えてるよ。
それにお兄ちゃんとティニーが上手くいくとも限らないうちからそゆこと広めるものじゃないしね。
今のトコ敗色濃厚っぽいけど…はぁ。
そんなこんなで私たちは原稿製作にとりかかったワケ。
時折アーサーが茶化すような事を言ってきて…
それに私が真っ赤になって怒鳴り返す。
でもさ…本気で怒ってるわけじゃないんだよ?
これが私たちの自然体っていうか…心地いいんだよね。こーしてるの///
同人誌描きながらじゃれあうなんてよその恋人じゃやらないだろうけどさ。
うん…ま…人それぞれってゆーか…こんなのもいいんじゃないかな?
80 名前: シレジア王国の絶望 [sage] 投稿日: 2011/01/08(土) 17:19:11 ID:VOwiBb3M
3
そして翌朝…
友達のトコに原稿を届けようと部屋を出た私が見たものは…なにやら不安げな顔をしたお兄ちゃんだった。
フィー 「……お兄ちゃん…なにやってんの…」
セティ 「あ…いや、私はたまたま通りかかって…」
フィー 「もうっ!私の部屋の側うろつかないでって言ったでしょっ!」
セティ 「な…なあフィー…か…彼氏を呼ぶのはいいけどな…まだ学生なのに泊まるってのは…」
フィー 「お…お兄ちゃんには関係ないでしょっ!そんな変な事してないもん!妙な邪推しないでよエッチ!」
わかってる…お兄ちゃんが私の事を心配してるのはわかってるけどさ…
アーサーと過ごした時間を…なんだか厭らしい感覚で汚されたようで私は我慢ができなかった。
お兄ちゃんにそんなつもりがないのはわかりきってることなのにさ…
それからはもう駄目。罵詈雑言が口をついて出るわ出るわ。
自分でも驚くくらいだったよ…
フィー 「お兄ちゃんのバカっ!涙目グリーン!私たちは清い交際だって言ってるでしょっ!!!」
セティ 「い…いや…それはわかってる…わかってるけどな。もう少し謹んでだな」
フィー 「はぁ!?何を慎めってゆーのよ!別に何も悪い事してないもん!!!」
嗚呼…同人誌描いてましたって言い切れちゃえば楽なのかな…
カミングアウトできない自分の臆病が嫌になるよ…orz
だからそれを覆い隠すためにも怒って見せるしかなくなっちゃうわけで…
フィー 「大体なに朝っぱらから妹の部屋の周り嗅ぎ回ってるんだよこのシスコン兄貴!超キモいんですけどっ!!!」
言っちゃった…言っちゃったよ…
憮然とするお兄ちゃんを振り切って私は駆け出していった。
それから私は原稿を友達に届けて…マッケに寄って朝ごはんを買ってきた。
お兄ちゃんの分もね。
あ~う~……胸の中がモヤモヤする…自己嫌悪でいっぱいだよ…
あんな事言うつもりじゃなかったのにさ…
お兄ちゃんは私の事心配してるだけで…兄妹としての距離は人並み、シスコンの気はもってないしキモくもないよ。
私、あんな事言っちゃったけどさ…みんなお兄ちゃんをどうか誤解しないで…
頭をくしゃくしゃとかきむしると私は一気に家の戸を開いた。
いつまでもウダウダしてらんないしっ!
だけどさ…だけど…ごめんの一言が言えなくて…
フィー 「…ん…お兄ちゃんの分…」
セティ 「あ…ああ」
押し付けるようにハンバーガーを渡しただけで…
アーサー「お~なっかなっおりっなっかなっおりっ♪」
フィー 「うるさーいバカっ////」
ちょっとぉ!?
人が悩んでる時にどうしてこのバカはこうなのよっ!!!
私はガーッとアーサーを怒鳴りつける。
けど…こうしてると…胸のつかえが取れて自然に振舞えるようになってくんだよね…
ありがとアーサー…少ししたらお兄ちゃんに素直に謝れそう…
いつか…もう少し勇気がでたらお兄ちゃんにも同人誌の事カミングアウトできるかな。
この趣味をわかってほしいとまでは言わないけど…これも私の大切な一面だから。
それに…もしかしたらさ。お兄ちゃんがこの趣味のよさをわかってくれて…
アーサーとティニーみたいに仲良く二人で同人誌を読んだり書いたりする日がこないかなー
くるといいな…そんな事を考えながら私はハンバーガーに齧りついたわけよ。おしまいっと。
終わり