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Last-modified: 2011-05-30 (月) 21:45:09

157 名前: 助けて!名無しさん! [sage] 投稿日: 2011/05/16(月) 22:34:14.20 ID:B2mtA+sO
~私が杖を使えないのは~
セリカ「リカバー!!」
癒しの光がアルムの身体を癒していく。
アルム「ありがとうセリカ。
最近畑を荒らす魔物が多いからさ、
ちょっと怪我が多くなっちゃうよ。
でも体調は大丈夫?セリカは魔法を使うと体力を消費するから……」
そういって心配そうにセリカの顔を見るアルム。
セリカ「大丈夫よアルム。
神学の授業で身体も精神力も鍛えられるからちょっとぐらい平気よ」
そういってはにかむセリカ。
アルムといるときのセリカは本当に楽しそうである。
もっとも、
あまり仲良くし過ぎると兄のシグルドが怒るので最近は少し控えめにしているのだが。
アルム「ところでセリカ。
前から思ってたんだけど杖を使ったら?そしたら身体にも負担がかからないし」
そういってアルムは何時か言おうと思ってた言葉を口にした。
それを聞いて、
ちょっと困ったセリカ。
セリカ「アルム…
ありがとう!!
でもね…私、杖をうまく使えないの。
自分でもよく分からないんだけど、
……でも大丈夫!!
ミラ様を信仰してるからかしら?
こうして呪文を唱えるだけで魔法が使えるもの!!
杖が無くてもアルムを治してあげられるから」
そう言って笑うセリカ。
158 名前: 助けて!名無しさん! [sage] 投稿日: 2011/05/16(月) 22:46:09.56 ID:B2mtA+sO
~私が杖を使えないのは~
しかしセリカも杖を使いたいと思ったこともあった。
いや、今でもある。
それは幼い頃。
遊び、ケンカ、修行。
傷ついた兄弟達を姉達は次々と呪文を唱え、杖を振る。
たちどころに消えてゆく傷達。
そんな力が欲しかった。
誰かを癒す力。
幼いセリカは姉達の見よう見まねでライブの杖を振り回し、
呪文を唱えた。
しかし杖は光らなかった。
何度も何度も試したけれど杖は光らない。
それが悔しくて長女のミカヤに泣きついたこともある。
セリカ「ミカヤお姉ちゃん。
何で私は杖が使えないの?
エリンシアお姉ちゃんだってリーフ兄ちゃんだって、
杖が使えるよ。
私、魔法の才能無いのかな。」
そう言って泣きじゃくり姉を困らせた。
でもその時のミカヤの手が暖かい癒しの光に包まれていて、
それで撫でられているうちに、
不思議と気が休まったのに気がついた。
ミカヤ「セリカ。
確かに魔法は得意不得意があるわ。
貴女が杖を使えないのも、
まだ力が足りないだけなのかもしれないわ」
159 名前: 助けて!名無しさん! [sage] 投稿日: 2011/05/16(月) 22:58:39.33 ID:B2mtA+sO
そう言えば、
ミカヤは杖を使わなくても傷を治す力があった。
幼いセリカはそれを使いたいと願った。
セリカ「ミカヤお姉ちゃんのその光の手は傷を癒すよね?
私もその力が欲しい!!」
そう言うとミカヤは少し困った顔をして、
セリカに説明をする。
ミカヤ「セリカ、
お姉ちゃんの手は少し特殊で簡単には使えないのよ」
それでも使いたいと迫るセリカに困りながら、
念話で女神であるユンヌにどうすればいいと問う。
ユンヌは言う、
知り合いの神、ミラに頼んでみると。
それを聞いてミカヤは言う。
ミカヤ「セリカはバレンシア地区の幼稚園に行ってるわね。
ミラという神様がお姉ちゃんと同じような力を持っているわ。
ミラ様にお願いをしたら、
セリカにもきっと使えるようになるわ」
セリカ「本当に!!
そうしたら私、毎日お願いする!!
皆を治せる力が身に付くなら頑張る!!」
そう言って、
セリカは明るい笑みで姉に笑いかけた。
その夜は嬉しくて、
夜も眠れなかった。
160 名前: 助けて!名無しさん! [sage] 投稿日: 2011/05/16(月) 23:09:47.03 ID:B2mtA+sO
セリカはその日から、
ミラ神にまつわる絵本などを幼稚園で見るようになり、
ミラの聖像にもお祈りを欠かすことなく行った。
そのおかげで半年後にはバレンシア地区では回復魔法の初歩であるリカバーを身につけた。
その時の嬉しさは本当に言葉では言い表せないほどだった。
これで、
皆を治せる。
セリカはそれだけで心がいっぱいだった。
しかし、
魔法は無限ではない。
セリカは兄弟の治療のしすぎで、
高熱に倒れ、
苦しんだこともあった。
その時はあまり泣かないアルムが姉達にセリカを助けてと泣きわめいたほどだった。
ミカヤとエリンシア、シグルドが交代で看病をしてるときもアルムはそばを離れなかった。
今思えばこの頃からアルムとは深いつながりを感じるようになったんだと思う。
なかなか治らないセリカもアルム達始めとする献身な看護と、とある指輪によって熱も収まり、無事に完治した。
それ以来セリカは無茶をしない程度に癒しの魔法を使い続けた。
無茶をするとアルムが怒るからだ。
161 名前: 助けて!名無しさん! [sage] 投稿日: 2011/05/16(月) 23:21:08.71 ID:B2mtA+sO
話は今のアルムとセリカに戻る。
セリカ「そう言えば、初めて魔法が使えたときはすごく嬉しかった。
何よりも大好きな皆を癒す力が手に入って、
これで皆を治せる。
それが、私の魔法の第一歩なんだなぁ」
アルム「でも、倒れるほどに使って……
あの時は本当に死んじゃうかと思ったよ。
もうあんな無茶はしないでくれよ」
セリカ「わかってる。
ありがとう、アルム」
アルム「そう言えばセリカ、
あのときの指輪、まだつけてる?」
セリカ「えぇ、
ミカヤ姉さんから肌身離さずつけときなさいって言われてるから」
アルム「その指輪、なんていう名前か知ってる?」
そういってアルムはセリカの手に填めた指輪を指す。
セリカ「いいえ、
ミカヤ姉さんからはお守り代わりとしか聞いてないわ」
アルムは言おうか言わないか迷ったが、言うことにした。
アルム「それはね、聖なる指輪って言うんだよ。
とある神様達の癒しの祈りを込めた指輪なんだ。
ミカヤ姉さんが頼んで貰った特別な品なんだよ」
162 名前: 助けて!名無しさん! [sage] 投稿日: 2011/05/16(月) 23:32:34.40 ID:B2mtA+sO
セリカ「そうだったの…
って、この指輪。
そんなに神聖なものだったなんて。
でも神様‘達’っていったい?」
セリカは思っていることを口にした。
アルム「今から言うけど、聞いたからって指輪捨てたりしたらだめだからね!!」
そうアルムは釘を指す。
セリカ「わかったわ、どの神様なの?」
アルム「一人はミラ神。もう一人はドーマ神。
そして最後にユンヌさん」
アルムはすごいよねと良いながら指輪を見た。
セリカもビックリしている。
自分が身につけている指輪にはバレンシアの神々の祈りだけではなく、
日頃、自分が蔑ろにしているあのちょっと憎たらしい小鳥の神様の祈りが入っているなんて。
でも、
不思議と嫌悪感はなかった。
セリカ「そうなんだ、
ミラ様の他にドーマ神やユンヌの祈りもこもっているのね」
セリカはそう言って指輪をそっと手で包み込んだ。
ミラ神には勿論、
普段祈りを捧げないドーマ神やユンヌにも、
感謝の気持ちを込めて。
163 名前: 助けて!名無しさん! [sage] 投稿日: 2011/05/16(月) 23:43:09.56 ID:B2mtA+sO
セリカは身近な神様にお返しをしたくなった。
セリカ「アルム、
帰りにミラ様の像とドーマ神の像に寄りましょう。
感謝の祈りを行わないとね」
そう言って、アルムに背を向き背筋を伸ばす。
アルム「おいおい、
肝心な我が家の神様にはどうするのさ」
アルムは思わず聞いてみた。
帰ってきたのは意外な答え。
セリカ「そうね、
ケーキでも作ってあげようかしら。
ありがとうの気持ちを込めてね。
それと、少しだけ他の宗教の知識も身につけようかしら」
そう言って照れくさそうに前を歩いていくセリカにアルムは思わず笑ってしまった。
杖は使いたいけど、
私にはこの力と神様からの暖かな指輪がある。
そう思うと、
何だか心が温かくなった。
普段とはちょっとだけ違う感謝のお祈りをセリカは天に向けて祈った。