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Last-modified: 2011-05-30 (月) 21:41:27

183 名前: 狼と銀の乙女 4 [sage] 投稿日: 2011/05/17(火) 15:56:57.88 ID:UGE5JqZ8
「それで二ケさん。いじめられてたミカヤ姉さんと喧嘩してから、お前やるな的な不良のノリで仲良くなって、サプライズ誕生日パーティーを開かれてどうなったのさ?」
「……えらく具体的な言い方だな」
「いや、間が空いたからあらすじをと思ってさ」
「マルス、メタは自重して」
「なんだかよく分からんがまあいいか。それからだな………」

ミカヤが開いたサプライズパーティーは、内容はありきたりだった。バイキングで様々な料理が並び、全部終わるとケーキが出てくる。そんな感じのやつだ。だが、
「でねでね、リアーネちゃんがね」
「YAMETE、HAZUKASIIDESU」
「おいミカヤ、リアーネが嫌がってんだ。そこら辺にしとけ」
「ネサラ君、リアーネさんのは振りだけで実際はそんなに嫌がってないよ。あ、後コーラ取ってきて」
「んだとぉ!」
「乙女心が分かってないわねぇ。あ、私はメロンソーダ」
「てめこらぁ!……取りあえずジュース取ってきます」
………主役のハズの私が蚊帳の外なのは、どういう事なんだろう。
別にミカヤの好意を疑うわけではない。だが、皆あまりに他の事に気が向きすぎというか……自分達のトークで盛り上がり過ぎというか……私があまり話し上手じゃないのもあるだろうが。
「なあ、ミカヤ」
「ん?どうしたのニケ?」
「今日は私の誕生日パーティーなんだよな?」
「うん、そうだ……え、もしかしてつまらなかった?」
「……もしかしなくてもつまらない」
「「「え?」」」
私が不満を口にすると、ジュースを取って帰ってきたネサラも含めた一同が一斉に驚いた表情になった。なんだそりゃ。
「……その反応はどういう意味だ。私が楽しそうに見えたのか」
「「「うん」」」
全員目が腐っている。死ね。
「ち、違うわよニケ。目が腐っているわけじゃないわよ」
「ミカヤ、私は知っているからいいが、心の声を読んで会話を繋げるな。後、ネサラは私の分のジンジャーエールも持ってこい」
行けばいいんだろ……と、うなだれながらネサラは席を離れた。
「ご、ごめん。でもニケは楽しそうだったよ?」
「なんでだ」
「だって、あんなに笑顔だったじゃない」
………エガオ?
「そんなキョトンとした顔しないでよ。ニケ、私達の談笑を見て笑ってたじゃない」
私が?この私が笑ってた?怒りの笑顔じゃないのか?
184 名前: 狼と銀の乙女 4 [sage] 投稿日: 2011/05/17(火) 15:58:07.01 ID:UGE5JqZ8
「TIGAIMASU」
「リアーネ?」
「ANATANOKOKOROHATOTEMOATATAKADESITA」
鷺のラグズは人の心を読む力がある。それで見たのか。だが、暖かかっただと?
「HAI」
「……………」
わけがわからない。前までの私なら間違いなくキレていただろう。だが、キレなかった。それは、きっと、
「変わったんだよ」
「ミカヤ………」
「私だけじゃない、ニケも変わった。優しくなった。他人が見えるようになった。人の思いが分かるようになった。それはきっと……」
ミカヤはそこで言葉をきると、私に向かってニッコリ微笑んだ。
「成長したってことだよ」
「………フン」
全く、大した奴だ。私を味方につけるための努力といい、イジメを解決するために私に目をつけた事といい、こいつは人を見る目を持っている。
「ミカヤ」
「何?」
私が変われたのは、自分でも思ってもいなかった一面を引き出せてもらったのは、ミカヤの力だ。こいつに見つけてもらえた私は、幸運な奴だったんだ。だから、私はミカヤに伝えなきゃいけない。
「お前は私の一番の親友だ」
「え、エエッ!?」
ミカヤの頭をワシワシと撫でながらそう言うと、目茶苦茶驚かれた。なんでだ。
「私なんかが親友だなんて……そんな………」
「ミカヤ、そこはお前のダメな点だ」
そう言うと私はミカヤにデコピンをした。小柄なミカヤはそれだけで目を回してしまった。
「お、おい。大丈夫か?」
「だ、大丈夫だよ。パシ……ネサラ君」
ジュースを取って戻ってきたばかりのネサラにはぴったりだ。
「今パシリって言いかけただろ」
「ソンナコトナイヨ」
「目が泳いでるぞ」
「うるさい、パシリ」
「今、認めたよな?」
「そんな事より!」
ミカヤは机を叩きながらパシリの言葉を遮り、立ち上がった。
「ニケ、私が親友って?」
「同じ事を二度言わせるな。言葉通りの意味だ」
「……………」
ミカヤの顔が、一瞬で赤くなり、茹蛸のようになる。恥ずかしがり過ぎだ。
「あ……ありが……とう」
「フン」
185 名前: 狼と銀の乙女 4 [sage] 投稿日: 2011/05/17(火) 15:59:20.16 ID:UGE5JqZ8
ミカヤは両手を胸の前辺りでモジモジとさせながら、ボソボソと呟いた。可愛いな、この生き物。
「そ、そうだ!そろそろケーキだよ!」
私がニヤニヤしながら可愛い生き物を眺めていると、ミカヤはそれを振り払うかのように、わざとらしく声を上げた。
「SOUDESUNE」
「僕はチョコケーキがいいですね」
「俺はモンブ………」
「あ、パシリ、もっかいジュース」
「………ショボーン」
やっぱり私を無視して全員好き勝手に注目し始めた。だが、まあ、
「これはこれで楽しいな」
明日からの学校が、楽しみだ。

「……と、まあ、これが私とミカヤの馴れ初めだ」
「この後はよくこの5人で遊んだわよねー」
「ミカヤが家の都合で高校に進学しなかったのは残念だったがな」
「そっかー……最初はミカヤ姉さん辛かったのかと思ったけどね」
「姉貴は姉貴って事だな」
「イイハナシダナー」

「……オチは?」
「ロイ、この空気でそれを求めちゃダメだ」

終わり