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Last-modified: 2012-08-21 (火) 15:20:35

~兄弟家、エイリークの部屋~

エイリーク「……これで今日の復習は終わりね。あとは……」
サラ「……こんにちは」
エイリーク「あら、こんにちは。兄上でしたら……」
サラ「知ってる。修行で火竜の墓場に行ってるのよね」
エイリーク「ええ。……サラさんはついていかなかったんですね」
サラ「あんな熱いところ嫌だもの。……邪魔になるのも嫌だし」
エイリーク「……ふふ」
サラ「? なに?」
エイリーク「いえ、なんでも。せっかくいらっしゃったことですし、わたしとお茶でもいかがですか?」
サラ「いいわ」
エイリーク「そうですか。では少しお待ちを」

サラ「……おいしい」
エイリーク「ありがとうございます」
サラ「エイリーク姉様はこの家の人だとは思えないほどお上品よね」
エイリーク「え。いえ、我が家もそれほど下品では……」

「おおぉぉぉぉおい! 誰かああぁぁぁぁっ! 紙ーっ!」

エイリーク「……」
サラ「……庶民的で素晴らしいことね」
エイリーク「お恥ずかしい話です……」
サラ「別に貶しているわけじゃないけど」
エイリーク「そうですか」
サラ「ええ。わたし、そういうのとは無縁だったから。少し羨ましいかも」
エイリーク「羨ましい……ですか」
サラ「ええ。……ときどきね、わたしもこのお家に生まれたかったとか思う」
エイリーク「ふふ。そう言って頂けると嬉しいですね。でも」
サラ「でも?」
エイリーク「エフラム兄上は、もうサラさんのことを本物の妹と同じように考えていらっしゃると思いますよ」
サラ「……そうかしら」
エイリーク「そう思います」
サラ「……エイリーク姉様は、わたしのこと嫌わないのね」

678 :助けて!名無しさん!:2011/06/22(水) 02:44:29.59 ID:2gJoYYxH

エイリーク「嫌う? どうしてですか?」
サラ「わたし、兄様にいろいろちょっかいかけて困らせてるから。わたしが姉様だったら、疎ましく思っていたかも」
エイリーク「……そう仰るということは、不安なのですね。自分が嫌われていないか」
サラ「……最近、少しだけ。こういうこと言うと、この家の人たちは『そんなことないよ』って言ってくれるのも分かってる。
   我ながら卑怯っていうか、浅ましいと思うけど」
エイリーク「卑怯だなんて。少し甘えているだけじゃありませんか」
サラ「……甘える? これが?」
エイリーク「ええ。それにわたし、サラさんの気持ちも分かりますから」
サラ「え?」
エイリーク「……わたしも昔は、ちょっとした我がままを言ってエフラム兄上を困らせていたものです」
サラ「信じられないわ」
エイリーク「本当ですよ。わたし、兄上たちと違ってあまり外で遊ぶのが好きではありませんでしたから。
       エフラム兄上が、ヘクトル兄上やリンたちと一緒に外に駆け出していくのを見ながら、寂しくなったり嫉妬したりして。
       それで、わざと不機嫌に振る舞って兄上を困らせたりもしたものです」
サラ「……その気持ちは少し分かるかも」
エイリーク「そうでしょう? ですからわたしもサラさんの気持ち、少しは分かるつもりです。
       それに、エフラム兄上は優しいですから。もっと甘えても大丈夫だと思いますよ」
サラ「そう。じゃあそうするわ。兄様が過労死するぐらいに」
エイリーク「ああいえ、やっぱり少し控え目にした方が……」
サラ「冗談よ」
エイリーク「分かってました」
サラ「……やっぱり、少し似てるかも」
エイリーク「そうですねえ」

 2人は目を合わせて、小さく笑い合った。