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Last-modified: 2012-08-21 (火) 19:20:19

エリウッド「さて、何を食べようかな・・・」
ロイ「何かあったっけ?」
勉強の間の一休み
いつもなら、机の上に何かしらが用意されているが、今日は何も無い
チャイムが鳴った
ロイが出ると、背がすらりと高く、エメラルドグリーンの長い髪が印象的な女性が立っている、何故だろうか、懐かしい感じがした
ロイ「どちらさまですか?」
?「あ、エリウッド君の友達のフィオーラって言います、エリウッド君は今いる?」
ロイ「あ、はい、ちょっと待て下さいね、にいさーん、お客様だよ」
エリウッド「はいはい、あ!フィオーラさん、どうしたの?」
フィオーラ「こんにちは、あの、お邪魔していいかしら」
エリウッド「どうぞ、今日は僕とロイだけなんだけどね、ところで、その荷物は?」
フィオーラ「開けてのお楽しみ、って事でいいかしら?」
3人がイスに座った所で、フィオーラが箱を開けた
ロイ「あっ!」
エリウッド「へぇ~、綺麗だね」
中には、細かく割られた氷がぎっしり詰まっていた
部屋の明かりを反射して、キラキラ輝いている
フィオーラ「えっと、これで、かき氷でもどうかなって思って
イリアでは、氷を食べる習慣なんて無いから、私も食べてみたいし」
エリウッド「いいね、丁度一休みしようと思っていた所だったんだ」
フィオーラ「そう、なら良かったわ、準備するから、ロイ君、手伝ってくれる?」
ロイ「はい!」

190 :助けて!名無しさん!:2011/07/14(木) 16:02:59.89 ID:MKBQv1Mk

そして箱から取り出したのは、今でもあるのかどうかわからない、ペンギン型のかき氷メーカー
それを見たエリウッドが、思わず笑った
エリウッド「うちにもあったよ、それ。なぁ、ロイ?」
そう声を掛けてみるが、ロイは既に、ペンギンの上にあるレバーを回すのに夢中だ
フィオーラ「手段が目的になっちゃってるね」
柔らかく微笑みながら、エリウッドに話しかける
エリウッド「そ、そうだね」
少しドキッとした
誤魔化す様に、慌てて言葉を続ける
エリウッド「あのさ、シロップはあるのかい?うちには無いから、持ってきてないなら
僕が買ってくるよ」
フィオーラ「あ、勿論、ちゃんと買ってきたわ、いちごとメロンと抹茶、それと練乳に
小豆もね」
エリウッド「食べる習慣が無い割に、詳しいね」
フィオーラ「え?そうかしら、一応調べてきたし、それと私特製のシロップもあるわ」
エリウッド「へぇ~、どんなの?」
フィオーラ「秘密、で、いいかしら?」
エリウッド「わかった、お楽しみは後だね」

191 :助けて!名無しさん!:2011/07/14(木) 16:04:01.33 ID:MKBQv1Mk

ロイ「出来たよ!早く食べよう!」
言われて振り返ると、器山盛りになっている
苦笑しつつ、ロイに言う
エリウッド「おいおい、これじゃ、シロップが掛けられないぞ」
ロイ「あ、そうか・・・」
フィオーラ「大丈夫よ、ねぇ、エリウッド君もロイ君も、少しだけでいいから
そのまま、食べてみてくれない?」
2人とも、素直に食べてみる
エリウッド「あ、おいしい・・・」
ロイ「本当だ、ちょっとだけ甘くて・・・」
フィオーラ「そうでしょう?私も知らなかったのだけど、イリアは、夏限定で氷の輸出をしていてね、その理由が、凄く氷の質が良いのは勿論の事、溶けにくいのに細工しやすくて、ほのかな甘さがあってね、涼むにも氷細工にも料理にも応用がきくからなんだって」
ロイ「そうなんだ・・・」
フィオーラ「さ、器を頂戴、シロップをかけてあげるから」
ロイ「うん、僕は・・・」
フィオーラ「いちご練乳でしょ?わかっているわ」
ロイ「え!凄いね!」
フィオーラ「ふふ、お姉さんに任せなさい、エリウッド君は抹茶あずきよね?」
エリウッド「まいったな、お見通しか」
フィオーラ「そうそう、お見通しよ」
笑いながら、盛り付けていく。

192 :助けて!名無しさん!:2011/07/14(木) 16:05:30.46 ID:MKBQv1Mk

フィオーラ「さ、終わったわ、みんなで頂きましょう」
ロイ「あれ?フィオーラさんは?」
フィオーラ「うーん、私は、もう少し後でいいわ」
エリウッド「いいのかい?」
フィオーラ「はい」
ロイ「それじゃあ、いただきまーす!」
エリウッド「頂きます」
フィオーラ「はい、召し上がれ」
スプーンで、一口ずつすくって食べていく
冷たさと甘さを伴って少しずつ溶けていくかき氷
無条件でおいしいと思える
フィオーラ「おいしいですか?」
ロイ「うん!おいしいよ!」
フィオーラ「そう、良かったわ、エリウッド君は?」
エリウッド「ああ、おいしいよ、たまにはこういうのもいいものだと思う」
フィオーラ「こういうのって?」

193 :助けて!名無しさん!:2011/07/14(木) 16:06:37.04 ID:MKBQv1Mk

フィオーラを見つめながら言う
エリウッド「こうやって、信頼できる人と過ごす時間が嬉しい、とそういう事さ」
フィオーラ「あ・・・」
微かに、フィオーラの頬が赤くなる
エリウッド「うん?何か変な事言ったかな?」
フィオーラ「い、いえ、全然、そんな事・・・」
エリウッド「・・・」
フィオーラ「・・・」
ロイ「・・・おかわりもらってもいい?」
フィオーラ「あ、はいはい、そうね、今度は何がいい?」
ロイ「う~ん、エリウッド兄さんと同じがいいな」
フィオーラ「わかったわ、ちょっと待ってね・・・はい、どうぞ」
ロイ「ありがとう」
フィオーラ「エリウッド君は?」
エリウッド「そうだな、君の秘密のシロップが食べてみたい」
フィオーラ「わかりました、じゃあ、私も貰いますね、2人が食べてるのみたら
私も食べたくなっちゃいました」

194 :助けて!名無しさん!:2011/07/14(木) 16:09:29.20 ID:MKBQv1Mk

やがて出て来たのは、白一色のかき氷
エリウッド「シロップは?掛かっているのかい?」
フィオーラ「これからです」
小さい瓶を取り出し、天辺から少しずつ、無色のシロップをかけていく
フィオーラ「さぁ、どうぞ」
かすかに甘い匂いがする、一口食べて、エリウッドは驚いた
エリウッド「おいしい!」
フィオーラ「ほ、本当ですか?良かった!」
エリウッド「これは一体何なのかな?」
フィオーラ「花の蜜なんです」
エリウッド「花の蜜?」
フィオーラ「はい、実は、私も花の名前まではわかりません
でも、イリアの高地、極寒とも言われてる所でしか咲かない白い花
その花の蜜を集めたシロップなんです」
エリウッド「じゃあ、貴重な物なんだね?」
フィオーラ「はい」
エリウッド「いいのかな?僕やロイがそんな大切な物を頂いてしまって・・・」
フィオーラ「・・・もったいぶって食べないより、おいしく食べた方が良いと思います」
エリウッド「そうか、そうだね」
何となく黙ってしまう2人
時折お互いを見ては、無言で恥ずかしそうに笑いあう

195 :助けて!名無しさん!:2011/07/14(木) 16:10:48.22 ID:MKBQv1Mk

ロイ(な、何この雰囲気!明らかに僕ここにいちゃいけないよね!?)
ロイ「えっと、エリウッド兄さん、僕、用事思い出したから出かけてくるね!」
言うが早いか、家の外へ飛び出していくロイ
エリウッド「あ、おい!」
フィオーラ「エリウッド君待って!」
無意識にエリウッドの手首を掴んでしまうフィオーラ
が、余りに力が強かったのか、単に止めるつもりが
逆に引き寄せてしまった、少し顔を近づけるだけで良い距離に・・・
エリウッド「フィオーラ」
フィオーラ「エリウッド君・・・」
ゆっくりと目を閉じるフィオーラ