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Last-modified: 2012-08-21 (火) 19:54:42

307 :兄弟家SRPG15:2011/07/19(火) 19:47:43.07 ID:oUcnIHpb

竜王家の(一応)家長、地竜メディウス。
通常武器の竜特効を全て無効化するその能力は老いてなお顕在だ。普段はボケ老人さながらの扱いをされているが、だからといってメディウスの威光が霞むのかと言うと……とんでもない。
危険人物が跋扈する紋章町において竜王家が最強の一角と謳われるのには、個々人のポテンシャルの高さもそうなのだがメディウスの強大さも一つの要因として確実に存在するのだ。
だからこそ――ここはマルスが打って出るのである。

マルス「メディウス爺さんに本気で立ち向かうのは随分久し振りかな……」

最近はチキとかと暗黒竜退治ごっこをする時ぐらいしか相対していなかったからね、だなどとうそぶき、腰から一振りの剣を抜くと構える。
神剣ファルシオン。
地竜メディウスに特効を持つ唯一の剣にしてマルスの神器。

マルス「リーフ。サポートは出来るね?」
リーフ「そういうこったろうとは思ったさ……うん、当然。回復から囮役までなんでもこなせるこの僕を甘く見てもらっちゃ困るね」
マルス「そうこなくっちゃ頼りがいがない」

背中合わせに武器を構えると、二人はメディウスとの戦闘に突入した。

308 :兄弟家SRPG16:2011/07/19(火) 19:50:44.81 ID:oUcnIHpb

マルスが竜王家を攻略する上で採った戦略はこうだ。
まず、敵の数を出来るだけ減らす。特に脅威なのは攻撃力半減の特殊能力を持つロプトウスの使い手ユリウス、そして最強の神器ナーガを持つその妹ユリア。
戦闘竜を任意で生み出せるイドゥン。
黒竜王デギンハンザー。
そして最強の地竜メディウスだ。
このうち、説得が効きそうなユリウスユリアはセリスを向かわせ、厄介な再行動能力を持つニニアンはエリウッドで引き抜いた。
エフラムに牙を向けることを躊躇っていたミルラはそのエフラム本人で説得し、戦闘の意味がよくわかっていないチキとファも首尾よくこちらへ引きずり込む。

この段階で残った脅威級の敵はイドゥン、デギンハンザー、メディウスとなる。彼等に相対する味方には回復ユニットを付けないと厳しい。よって采配は順にロイシグルドエリンシア、アイクミカヤ、マルスリーフとした。
その上で残った兄弟に先ほど説得した面々でナギやヤァンなどを足止めしてもらい、イドゥンデギンメディウスとの戦闘に茶々を入れられるのを防ぎ出来うる限り理想的な状況を作り出した。

一分の隙もなく、手抜かりのない戦局を描き出す。それが兄弟家随一の頭脳派マルスの手腕だった。

309 :兄弟家SRPG17:2011/07/19(火) 19:54:23.00 ID:oUcnIHpb

ルーテ「これは……なかなかに、見事な……何はともあれ良いデータが採れました。""これで次作のリアリティが格段に増しそうです"」

意味ありげな台詞を呟き、ルーテは視線を奥へ送る。まさか彼女はデータ採取の為だけにこの大掛かりな空間を作り出したというのだろうか。
なんというかプログラムのアスレイ涙目な話だ。

マルス「ふむ。竜王家、粗片陥落……かな?」

メディウスをファルシオンで灰燼に帰すとマルスは戦場を見渡して戦況を確かめた。

地竜メディウス、マルス、リーフによって撃破。
黒竜王デギンハンザー、アイク、ミカヤによって撃破。
魔竜イドゥン、ロイ、エリンシア、シグルドにより撃破。
ラジャイオン&イナ、セリス、ユリウス、ユリアにより撃破。
ナギ、ヘクトル、リンにより撃破。
ヤァン、蝶!サイコーッと暴走したエリウッドにより瞬殺。
クルトナーガ、エフラム、チキ、ファ、ミルラにより撃破。
ニルス、エイリークのコンプレックスを誤って刺激してしまい自滅。

310 :兄弟家SRPG18:2011/07/19(火) 19:57:10.18 ID:oUcnIHpb

マルス「ん?ほぼ全員撃破済みじゃないか。あと誰が残ってるんだろう……というかアルムとセリカはどこだ」
リーフ「マルス兄さんあっちのあれじゃない?なんか親しげに話し込んでるけど」

リーフが指差した先で、アルムが何者かと談笑していた。セリカはその隣で杖を構えて立っている。

アルム「いやー僕に気付いてくれるなんて……ちょっと嬉しくて嬉しくて」
セリカ「アルム……彼が気付いたのは単なる敵将補正だと思うんだけど……それに私はいつだってアルムのことを見ているわ」
アルム「もちろんセリカが僕を見てくれているのはよくわかってるよ。でもやっぱり、家族以外に気付いてもらえる嬉しさはまた別物でね」
アル「まー名前も似てるし、今回何故か空気のようにスルーされてるし、似た者同士仲良くしようぜ!」

マルス「あ、ああ……忘れてた!」

勢い良く手を叩き、マルスは内心舌打ちをした。完璧な攻略だと思っていたのだが、敵将の存在を失念しているようではまだまだだ。

ロイ「え、アルいたんだ?でもおかしいな……確かに名前は似てるけどアルはアルム兄さんと違ってそこそこ目立つ方だと思うんだけど……」
リーフ「竜石使うとイケメン化するし、大乱闘の時示されたように戦闘力だって竜王家内でもそれなりのものだしね。何で忘れてたんだろう」

311 :兄弟家SRPG19:2011/07/19(火) 20:00:36.72 ID:oUcnIHpb

ルーテ「それは敵将としての特殊条件を満たすためですね」
ロイ「うわ、ルーテさん。いたんだ」
ルーテ「優秀な私ですから、ゲームマスター権限で出入り自由です」
リーフ(それは優秀であることとは関係ないんじゃ……)
ルーテ「メディウスさんではなくアルさんに今回敵将の役を頼んだのは、彼の始祖竜としての戦闘力を買ったからです。ですが問題がありまして……」
マルス「ああ、つまり現実に忠実である故に絶望しないと竜化出来ないわけか」
ルーテ「その通りです。ですから特別に絶望メーターなるものを作り、強制的に彼を視認しにくい存在にして毎ターンポイントが貯まるようにしました。――間もなくマックスですかね」

さらりと告げられたルーテの台詞に呼応するかのように、突如としてアルの回りを不気味なオーラが覆った。アルムとセリカは慌てて飛びのき、距離を取る。

アル(始祖竜)「GYAOOOOO!!!!」
マルス「久しぶりに見るけど……ゲームの中とはいえやっぱり凄まじいオーラだな……」
リーフ「マルス兄さんはなんでそんなに冷静なのさ!ちょっとぐらい危機感持てよ!」
マルス「いや、司令塔である僕が動くまでもないし。皆のリアクションを見て今組み立てた作戦を使えばなんとかなると思う」
リーフ「へ?家族のみんなのリアクション?」

312 :兄弟家SRPG20:2011/07/19(火) 20:03:23.37 ID:oUcnIHpb

マルスの言葉に、リーフはぐるっとマップを見渡した。言われた通り、マップ上に散り散りになっていた自軍所属の面々が思い思いに動いている。
アルムとセリカはアルからの距離をさらに空けていた。恐らく対処法が思い付かなかったのだろう。
そんな中、真っ先にアルに向かって駆けて行ったのがロイだ。

リーフ「そう言えば大乱闘の決勝でアルを打ち破ったのはロイだったっけ……」
マルス「ある程度対応策の目処が立ったんだろうね。エリンシア姉さんとシグルド兄さんも向かってるけど、ぶっちゃけシグルド兄さんはあんまり要らないんじゃないかな……」
アイク「いや、そんなことはない。不必要な人間など存在せん」
マルス「うわ、アイク兄さんいたんですか」
ミカヤ「たった今ここまで辿り着いたのよ……はあ、お姉ちゃんちょっと疲れたわ」
マルス「まあミカヤ姉さんはここで休んでいてくれて大丈夫ですよ。それよりアイク兄さん、あの場におけるシグルド兄さんの存在意義ってなんなんです?」
アイク「む、マルスが気付いていないとは珍しいな。ステータスをちょっと出してみろ。それで――ここだ」

指示通りに右手を振り、出現したステータスウィンドウをスクロールしてロイの項目を出す。更に横にスライドスクロールして支援関係のステータスを表示すると、そこにはこんな文字が書いてあった。

313 :兄弟家SRPG21:2011/07/19(火) 20:06:45.37 ID:oUcnIHpb

絆支援 :全家族対象
現在発動:エリンシアA
     シグルドB

マルス「あーなるほど、絆支援か。アカネイアじゃマスクデータ扱いなもんだから思い付かなかったよ」
リーフ「てか、何で絆支援なのにレベルが」
ルーテ「(アスレイとノールの)徹夜続きのノリとテンションと勢いです」
マルス(酷い……)
ミカヤ「あら、エリウッドがヘクトルを担いでロイの方へ向かってるわよ。あっちでも絆支援に気付いたのかしら」
リーフ「『かつぐ』コマンドがトラナナ式だったら確実に移動が半分になってるよね、コレ」

駆け付けたエリウッド&ヘクトルからAランクの絆支援を貰い、エリンシアやミカヤからリブローのバフを受けつつロイは封印の剣でもってアル(始祖竜バージョン)と接戦を繰り広げた。
大会での経験を活かし、上手い攻防を見せている。

アイク「なかなかのもんだな。やはり今度手合わせを……」
ミカヤ「ロイが嫌がってるんだからやめときなさい」
アイク「そうか……(しょぼん)」

314 :兄弟家SRPG22:2011/07/19(火) 20:10:43.25 ID:oUcnIHpb

ロイ「はあっ、はあっ、はあっ……やっぱり強いな……アルは……」
アル(通常化身)「ロイこそ……っ!!もう俺始祖竜の姿維持出来ねーもん。まあ元々あの姿はあんまし好きじゃねえけど」
ロイ「悪いけど、今度も僕が勝たせてもらうよ」
アル「おー、言うなこいつ。残念だけど今度こそ俺が勝つぜ!!」

なんだか知らないが戦闘中の二人が盛り上がりに盛り上がり、もう間もなく勝負が決するかと思われた、その時――!!

ロイ・アル「「うおおおおお!!」」
ユリウス「えーっと、ロプトウス」

……真剣勝負は、第三者によって幕を閉じた。

アル「うわあああああああ?!」
ロイ「何ソレぇぇぇぇぇぇぇぇ?!」

普段ユリアにナーガで滅殺されているため見る影もないことが殆どだが、ユリウスのロプトウスは実は紋章町でも屈指の厨性能武器の一つである。
それを、戦闘しっぱなしでHPがレッドゾーンに割り込んでいるアルに向けて放ったらどうなるか。
……まあ当然、KOされるだろう。

リーフ「ちょwwユリウスマジKYww」
エリウッド「折角のロイの見せ場だったのにww蝶・サイコーッ!!」
ヘクトル「エリウッドおおおおおお!!今暴走スキルを発動させても受け止める奴はいないから落ち着けええええ!!」
リン「くっ……なんて力なの……!!私だけでなくヘクトルもいるのに押さえきれない……!!」

315 :兄弟家SRPG23:2011/07/19(火) 20:14:47.55 ID:oUcnIHpb

ユリウス「え?!ってアル?!YABEEEEEEEやっちまったァァァァ!!」

ユリア「ユリウスお兄様……おいたにはお仕置きが必要ですね……(セリス様の見せ場が……!!)」つナーガ
セリス「うわあユリウス?!」

喧騒を遠目に眺め、マルスは大仰に溜め息をついた。拍子抜けというかなんというか。若干、脱力気味である。

マルス「なんだか腑に落ちないなあ……」
ルーテ「ですが竜王家マップはこれで終了なんですよね」
マルス「はあ……何て言うか、」
セネリオ「酷い有様でしたね」
マルス「うわ、なんでセネリオさんがいるんですか」
ルーテ「優秀な魔導師は総じて神出鬼没なのです」
セネリオ「まあ、次のマップをやればわかりますよ」

ユリア「ナーガッ!!!!」
ユリウス「アッータスケテセリス!!」
リーフ「流れ弾アッー!コノヒトデナシー!!」

エクストラマップ2へ続く