・ボランティア編
「困りましたね……どうしたらいいのでしょうか」
「あら、どうかしたの?」
「あ、姉上。実は……」
「……つまり、エイリークの通っている女子高の演劇部の仕事を代わりに引き受けたいと」
「はい。孤児院の子供達への人形劇なのですが、もう三日前なのに食中毒で部員全員が倒れてしまって……」
「そ、それはまた何と言うか……ご愁傷様だね」
「事情は分かったけどよ、それと俺たちが何の関係があるんだ?」
「察しが悪いぞピザ。俺たちがその代わりをするに決まっているだろう」
「あ、成程……ってなんでそうなるんだよ!と言うかどさくさに紛れてピザ言うなコラ」
「やはり、駄目ですよね……」シュン
「ヘクトォ~ル?お姉ちゃんはそんな薄情者を弟に持った記憶はありませんっ!」
「前々からろくでなしだと思ってたけど……」
「最低だな」
「ぐ……でも、姉貴達はともかく俺やアイク兄貴なんかはこういうの向いてねぇし……」
「む、まぁ確かにな。
しかし、苦手な事に挑戦するのも自己研鑽の一つだ。それに、家族の為なら協力は惜しまん」
「流石アイク兄さん。それに比べてこっちの兄と来たら……」
「前々から女泣かせだとは思ってたけど……」
「最悪だな」
「だーーっ!分かったよやってやるよコンチキショーー!」
439 :助けて!名無しさん!:2011/07/23(土) 23:12:00.21 ID:fQnlWu6J
ー当日ー
「お兄ちゃん、きんにくもりもりー!」
「ふっきんすげー!」
「日頃から鍛えているからな。お前たちも鍛えればいずれこうなるさ」
「あはは、お腹ぽにょぽにょー」
「ぽにょー」
「やめろ、そこは触るなって!
こらリン、お前笑ってないで助けろって……アッー!」
「やはり子供達の笑顔は何よりの宝だな」
「そうですね……」
「聞けばこの催しは演劇部が自発的に始めたとか。
お前の友人だけあって素晴らしい人達だな」
「はい、皆とても親切でいい人達ですよ。
……兄上達みたいに。」
「姉さん、そろそろ劇の準備をしないと」
「あ、もうこんな時間……了解です」
「ヒャッハー!舞台設計は僕に任せろー!(バリバリ」
「うむ、いい腕だ。うちの工務店の連中とも遜色ない」
「たまにバイトで手伝ったりしてるし、学芸会の時も似たような事してるしね。
こんな仕事なら、いくらでも手伝うよ」
「良く言った。追加でこことここも頼む」
「ヒーハーー!ここで逃げ出すのは単なる中途半端だ!逃げないのはよく訓練された器用貧乏だ!」
「劇開始までには余裕で間に合いそうだな」
440 :助けて!名無しさん!:2011/07/23(土) 23:15:35.41 ID:fQnlWu6J
「やった!ついに ねんがんの ひかりのけん を てにいれたぞ!」
「ころしてでも うばいとる」
「な、なにをするー!」
※以下()内の会話は舞台裏で小声で話しています
(劇は今の所順調ね)
(肝心の内容が物凄く心配だけどね……)
(大変!アイク兄さんたちが急な仕事で手伝えなくなっちゃったって……)
(ど、どうしよう。次のシーンの人数が足りない!)
(こうなったら……)
「はあああああああ!?俺一人で二人分の動きをするだと!?」
(すみません、アイク兄上達が来れなくなってしまったもので……)
(声は俺たちがやるから、動きだけでいい!とにかくやれ!)
「ちょっと待て!俺自分の役以外の動きなんて分かんn」
(それくらいアドリブでなんとかしろ、というかさっきから声がでかい!
幸い見ているのは年端もいかない子供たちだ。動き回ってるだけでもそれらしく見えるだろう)
(ちっ……分かったよ。もうこうなったら破れかぶれだ!)
441 :助けて!名無しさん!:2011/07/23(土) 23:17:37.38 ID:fQnlWu6J
「うほっ、いいおとこ。や ら な い か」
「それじゃ……攻撃します」
「ああ……次は俺の反撃だ……」
(ぬおおおおおおお!
っていうかどんなシーンだよこれ!?)
「助けてくれてありがとう!よろしければ、私と一緒に……」
「申し訳ありませんが、僕は旅を続けなければいけないのです」
「そんな、ひどい……」
「すみません……」
「そんな、ひどい……」
(があああああああ!!
アドリブきかせてんじゃねええええ!!!嫌がらせかあの野郎!!)
「子供達の笑顔の裏で、ヘクトル兄さんが凄い形相で人形動かしてるね」
「両手両足フルに使って一人四役こなしてるからね、そりゃあ必死にもなるよ。
というかロイ、君があっちを手伝っても良かったんじゃない?
スポットライトと効果音なんて僕一人でもこなせるし」
「兄さんならきっと大丈夫だと思ったから任せてきたんだ(棒」
「まぁからかうのも程々にしておいてあげなよ。我が家だと僕とエリウッド兄さんの次位に苦労してるかもしれないんだから」
「……考えとく」