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Last-modified: 2012-08-22 (水) 20:26:12

699 :闇魔法と光の皇子 1章1/3:2011/08/09(火) 01:19:54.39 ID:17K+L8kv

葉っぱの日も終わったか…いろいろ楽しそうなネタも来ていいね。
夏休み入ったから活気づくのを期待しつつ続き投下

「まったく、こんなところに閉じ込められてはたまったもんじゃないよ」
隣の部屋からお婆さんの声が聞こえてくる。ニイメというお婆さんだろう。
「ああ…部屋に置きっぱなしのアレは大丈夫だろうか…」
「リオン様、きっと誰かが安置しておいてくださるはずです」
反対からは様々な研究をすることで有名?なリオンが頭を抱えている。
さらに後ろからは誰か女の名前を言いながら頭を抱えるワカメヘアー。
とにかく僕が言いたいことは一つ…闇魔道士って暗すぎね?
「はは…まあみんな多かれ少なかれ負の力を操るから仕方ないさ。かくいう僕の…」
隣にいたカナスとかいう奴はさっきも聞いた自分の兄弟の話を始めてくる。
うう…もうこんなところに居たくない。早く帰ってユリアとイシュタルに会いたい…
ネガティブになりかかっていると不意に天井にあるスピーカーが誰かの声を流しはじめた。
「…くく…諸君らのおかげで我等の研究は成就する。お礼を授けよう」
お礼とやらがろくでもないことなのは想像に難くない。
部屋にリワープで現れた黒衣を纏った司祭に眠らされながら僕は祈る。
この野望を…セリスや兄弟が打ち破ることを。

「マルス兄さん、その後ユリウス達の行方はどう?」
「今ジュリアンに頼んでいろいろ探ってもらってるんだけどダメだね…」
マルス兄さんはお手上げのポーズをしながら首を横に振る。
我が家で1番情報通なマルス兄さんにわからないのなら本当にわからないのだろう。
「リーフ、兄様…あなた達はどこにも行かないわよね…?」
居間では見るからに元気のないサラちゃんがリーフとエフラム兄さんに甘えていた。
少し前にマンフロイさんを含むロプト教団全員が行方不明になったのが原因だろう。
「わかってるよ…わかってるからそのリザイアを閉まってくれ」
「安心しろ、マンフロイ氏はきっとお前を置いたままずっと消えたりしないさ」
「…うん、ありがとう」
…普段からああいう風にしおらしいとリーフも優しくしてくれそうなんだけどね。
「サザも頑張って調べてくれてるんだけどやっぱりダメね」
「ジュリアンとサザさんなら共同で調べてると思うからわかったら同時だけどね」
とにかく自分の周りから誰かがいなくなっただけで兄弟やその友人達も元気がなくなるのだ。
「何か情報がわかればなぁ…」
ソフィーヤさんとレイ君が同時に消えてしまい、元気のないロイが呟いた…
「…ロ…イ…様…」
我が家の庭から謎のかすれた声が聞こえてきたのだった。

700 :闇魔法と光の皇子 1章2/3:2011/08/09(火) 01:20:35.33 ID:17K+L8kv

「ここか…」
郊外にある廃墟の入口に僕達は集合していた。もちろん手には武器を持って。
「で、作戦はどうするんですか?」
マルス兄さんが今にも突入しそうなアイク兄さんを止めながら尋ねる。
「めんどくさい、俺が突入するからついて来てくれ」
「相手はスリープ持ちの可能性が高いですよアイク兄さん」
「よし、まずは作戦会議だな」
やっぱりスリープは苦手なんだなと、うろたえたアイク兄さんを見ては思いながら皆で円陣を組む。

「ふむ…どうやら例の兄弟が来たようだな。どうかね、彼等の顔が絶望に歪むのを待つ気持ちは?」
廃墟の奥深く、真っ暗な部屋で奴が問い掛ける。だが答えることはできない。
「まあ、貴様らは生きながら動けない生きる屍同然、聞くだけ無駄だったな」
悪趣味な奴め…だが何もできない自分がもどかしい。
「しかしまさかネルガルのしもべが情報を漏らすとは誤算だったわい」
数刻前、兄弟家に血まみれで現れたリムステラによって今回の事件の情報が漏れたのだ。
事情を知った兄弟達は各々最強といえる武器を持ってここまで来たのである。
そして入口で作戦会議をし、作戦は決まったのか、一斉に突入していた。
「ほう…動き出したようだな。ならもてなさねばいかん」
脳裏に無理矢理流される兄弟達の姿に僕は祈る。逃げろ!今すぐ逃げろ!と。

「で、何で僕とサラにセリス兄さんが行動するのさ?」
廃墟に入り、部屋を順番に調べているとリーフがぼやいてきた。
作戦会議の結果、互いに相性や武器を考慮して組むとこれがベストとなったからだ。
「だってリーフは全ての武器を使えるし、僕は魔防も高い、サラちゃんが回復でベストでしょ?」
「そういうこと。それにいざとなればリーフは頼りになるしね」
「ああ、もうわかったよ…ん?」
こちらを振り返ったリーフが幽霊でも見たかのような表情で固まる。
「どうしたのリーフ?」
「い、今セリスの背後にな、何かいたような…」
「気のせいじゃないの……いや、何かいる!?」
殺気を感じて咄嗟に前に踏み出すとすぐ後ろを何かが通り過ぎた感触があった。
「…量産型リムステラ?」
「気をつけて、いつものような感じじゃないわ。操られてる感じよ」
ロイの前で見せるような表情ではなく、ただ目の前の敵を殺そうとする表情。
「…殺さずに、動きを封じたい。リーフ、サラちゃん手伝ってくれる?」
僕の頼みに即座に頷いてくれた二人を見て、僕らは部屋を駆け出すのだった。

701 :闇魔法と光の皇子 1章3/3:2011/08/09(火) 01:23:32.73 ID:17K+L8kv

セリス達がリムステラと戦っていたのと同時刻、他の兄弟達も突如出現した敵と交戦していた。

大広間と言える広さの部屋では、大量の魔物が1人の青い髪の青年を囲んでいた。
その中で空を飛べるガーゴイルが槍を構えて天井から急降下してくる。
「はっ!」
聖剣ティルフィングの一降りはガーゴイルは装備していた槍ごと真っ二つにする。
すかさず攻撃後の隙をついて背後から急接近したバールが鋭い爪を振り下ろす。
「あまいっ!」
振り返らずにバールの気配を察知したシグルドはそのまま後方に宙返りする。
シグルドの着地と同時にバールは頭部から血を噴き出しながら地に沈む。
他の魔物達もシグルドに襲い掛かるがシグルドに届く前に生命活動を停止されていた。
魔物の数が半分になったころ、単体では勝てないと理解したケルベロスが、
三体飛び出して同時にシグルドに飛び掛かろうとした。
「危ない!シグルド兄さん!セリカ!」
「わかってるわアルム!」
飛び掛かろうとしたケルベロスは1体は跳躍と同時にライナロックで燃やされた。
もう1体は最高点に達した瞬間に飛び上がったアルムのファルシオンで真っ二つになった。
そして唯一シグルドの元にに到達できたケルベロスもシグルドの横薙ぎで壁にたたき付けられ絶命していた。
「行こうセリカ!僕達もシグルド兄さんみたいに頑張らないと」
「ええ、アルム!でも無理はしないでね。あなたに何かあったら私…」
「セリカ…」
「アルム…」
「KINSHINは許さんぞー!ええい邪魔をするな魔物共!」
いちゃつきながらも必殺の一撃で魔物を薙ぎ倒すアルムとセリカ、
2人をティルフィングを振り回して魔物を蹴散らしながら追いかけるシグルド。
残された魔物達は逃げ惑いながら3人の手によって骸となっていくのだった。

「ほう…なかなかやるの。さすがは兄弟家と言ったところか」
僕の脳内では連携プレーで魔物やリムステラ達を打ち倒す兄弟家の姿が再生されていた。
ヘクトルが受け止め、リンが撹乱し、エリウッドがとどめをさす姿、
単体で敵を薙ぎ倒し、後ろをついていくだけのミカヤ、エリンシア。
息のあった連携プレーでリムステラ達を動けなくさせていくエフラム、エイリーク。
「む…?マルスの小僧だけ姿が見えぬ、あと緑風もか。まあよい、そろそろ戯れも終わりだ」
闇へと自身の精神が呑まれていくのを僕たちは抵抗できぬまま感じていく。
そして僕の中には無だけが残される……

続く