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Last-modified: 2007-09-16 (日) 20:53:32

フルメタル・エフラム

レナック 「……あ、来た! 来ましたよラーチェル様!」
ドズラ  「ガハハ、エフラム殿に間違いありませんな!」
ラーチェル「周囲に幼女の影は?」
レナック 「……見当たりませんね。間違いなく一人です」
ラーチェル「よっし、これで前準備はOK……! 後はさり気なく……」
レナック 「気をつけてくださいよ。ラーチェル様はその『さり気なく』ってのが一番苦手なんですからね」
ラーチェル「ま、失礼ですわねレナック! この私にかかれば、『偶然エフラムと出会った』演技ぐらい、お茶の子さいさいの朝飯前ですわ」
レナック 「スゲー不安なんスけど……まあいいや、それじゃ頑張ってください」
ドズラ  「ガハハ、当たって砕けろですぞラーチェル様!」
レナック 「いや、それ使いどころ間違ってますけど」
ラーチェル「そうですわね、砕けるほどの勢いで行ってきますわ!」
レナック 「それでも強引に流すところがこの人のこの人たる所以だよな……」

 で、タイミングを見計らって通りの角から飛び出したラーチェル、道路の真ん中に仁王立ちして、

ラーチェル「奇遇ですわね、エフラム!」

ドズラ  「ガハハ、さすがラーチェル様、どこから見ても偶然通りすがったようにしか見えませんわい!」
レナック 「いや不自然極まりないですって……これだからなあ……」

エフラム 「ん。ラーチェルか。こんなところで会うとは、確かに奇遇だな」

レナック 「こっちもこっちで簡単に流してるし」
ドズラ  「ガハハ、こうなればこっちのもんですぞ、ラーチェル様!」

ラーチェル「お、おほん……折角会ったことですし、二人でどこかへお出かけいたしませんこと?」
エフラム 「なに? だが、もう時間も遅いし、家では夕飯が……」
ラーチェル「連絡はいれておきますわ。食事に関しては、誘ったわたしが高級レストランで全額負担」
エフラム 「乗った」

レナック 「早っ! さすが、貧乏育ちは違うねえ」

ラーチェル「そ、そうですか。では、どこに行きましょうか」
エフラム 「そっちで決めてくれ。俺はどこでもいいぞ」

レナック 「さて、ここからが問題だな」
ドズラ  「ガハハ、心配するでないわレナック、既にロマンチックな気分に浸れるスポットは徹底的に調べつくしてあるのだからして」

ラーチェル「で、では、夜景が綺麗なマレハウト山岳……」
エフラム 「あそこか。いいところだな」
ラーチェル「ほ、本当ですの!?」
エフラム 「ああ。何故だか知らんが、頻繁に落石があってな。回避力を鍛えるにはいい修行スポットだ」
ラーチェル「……やっぱり止めにしましょう」
エフラム 「そうか」
ラーチェル「で、では、アカネイア神話を刻んだ壁画が美しいラーマン神殿……」
エフラム 「あそこか。いいところだな」
ラーチェル「ほ、本当ですの!?」
エフラム 「ああ。よく盗賊団が出没するからな。奴らはすばしっこいから、命中力を鍛えるにはいい修行スポットだ」
ラーチェル「……やっぱり止めにしましょう」
エフラム 「そうか」
ラーチェル「えーと、そ、それでは、ミレトス市街の美術館で優雅に絵の鑑賞でも」
エフラム 「あそこか。いいところだな」
ラーチェル「ほ、本当ですの!?」
エフラム 「ああ。ミレトス市街は夜中は暴力団と暴走族の溜まり場だ。
      歩いているだけで喧嘩を吹っかけられるから、あちらに手を出させれば、
      正当防衛と称して合法的に一対多数の実践的な修行が」
ラーチェル「……やっぱり止めにしましょう」
エフラム 「そうか」

 ~で、ラーチェルが候補を挙げること数十分ほど後~

ラーチェル「……ぜぇ、ぜぇ……!」
エフラム 「大丈夫か、ずいぶん疲れているようだが」
ラーチェル「……エフラム……一つ、聞いてもよろしいかしら?」
エフラム 「何だ」
ラーチェル「……あなた、何故どんな場所でも勝手に修行スポットにしてしまいますの?」
エフラム 「愚問だな。俺は槍の使い手としてこの世界に名を轟かせることを目標にしている。
      そのためには、いかなるときも気を抜く訳にはいかない。
      どの場所がどのような鍛錬に利用できるか、常に考えるのは当然のことだ」
ラーチェル「……」
エフラム 「安心してくれ。俺は戦闘のプロだ。どんな修行スポットでも、君を危険な目に遭わせはしな」

 スパーン!(ラーチェルがハリセンでエフラムの頭を叩いた音)

エフラム 「……痛いじゃないか」
ラーチェル「お黙りなさい、この修行ボケ男! せっかく、せっかくこの私が……!」
エフラム 「どうした、何をそんなに怒っているんだ」
ラーチェル「知りません! もう一人で勝手にどこにでも行って、永遠に修行に明け暮れるがいいですわ!」
エフラム 「分かった、そうしよう」
ラーチェル「ウガーッ!」

レナック 「……」
ドズラ  「ガハ……ハ……ハ……」
レナック 「……何ていったらいいのかねえ、こういう状況。そうだな、さしずめ……」
セネリオ 「ひどい有様です」
レナック 「……あんた誰」