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Last-modified: 2007-11-10 (土) 23:09:49

アイクと食欲魔人

 

ロイ  「アイク兄さんってイレースさんと昔から知り合いだったの?」
マルス 「でも家に遊びに来てたりした記憶はないけど?」
アイク 「約束を取り付けたりはしないが、外では結構会ってたぞ」
ロイ  「そうなの?」
アイク 「ああ、学校の帰り道にある惣菜屋で姿を見ない日は無かったし、美味いと評判の店に行くと必ず先に席についていたな
食べ放題の店の入店を断られるようになってからは、面の割れていない店の情報交換もしたな」
ロイ  (……やっぱり食べ物絡みなんだ…)
マルス (…相変わらず分かりやすい人達だな…)

 

ロイ  「そういえばイレースさん、今はアイク兄さんの勤め先の工務店で働いてるんだよね?」
アイク 「そうだが、それがどうかしたのか?」
ロイ  「いや、意外だなあと思って」
マルス 「そうだね、あの人食欲はともかく、魔道はかなりのものだし。もっと色々選択肢があったと思うけど…」
アイク 「…それには少し事情があってな」

 
 

数年前 アイクが工務店に入って少し経った頃

 

ある日、小雨が降りしきる中でアイクは家路を急いでいた。

 

アイク「帰るまでには止むと思ったが…姉さんの言う通り傘を持つべきだったか
    まあこの程度ならコートがあれば十分だろう…む?」

 

ふと前に目をやると、傘も差さずに雨の中を歩く人影が目に入った

 

イレース「……寒い…………お腹空いたな………………」
アイク 「どうかしたのか?」
イレース「…あ…アイクさん……」
アイク 「…顔色が悪いぞ、どこか悪いのか?何にせよ体を冷やすのは良くない、これを着ていろ」

 

そう言いつつ、アイクは羽織っていたコートをイレースの肩に掛けてやる

 

イレース「……やさしいんですね…ありがとうございます…」
アイク 「あまり有難がるものでもないぞ、裾とかボロボロだしな」
イレース「あ…でも……アイクさんは…」
アイク 「俺なら大丈夫だ、鍛えてるからな。それよりどうした?何かあったのか?」
イレース「……お腹が……空いて………」
アイク 「…まあそんなところだろうとは思ったがな、しかし傘はどうした?今日は昼から雨だったろう」
イレース「…無いんです…お金無くて……」
アイク 「…以前から収入が全て食費になると言っていたが、まさか傘を買う金すら無いとはな
     だったら今日は家にいたほうが良かったんじゃないか?」
イレース「……家賃払えなくて…それでさっきアパートを追い出されちゃって………」
アイク 「何!?…じゃあこれからどうするんだ?」
イレース「…それで…どうしようかなって……当ても…仕事もないし…………」

アイク (想像を絶する貧しさだな…まさか俺の家よりも生活に困っている人間を目の当たりにするとはな
     とにかくこのまま見過ごすわけには……よし)

 

イレースの困窮ぶりに同情しつつ、彼女の力になれることはないかと思案するアイク
そして、何か妙案が浮かんだらしく、小さな笑みを浮かべて口を開く

 

アイク 「イレース、もし良ければなんだが」
イレース「…?……はい」
アイク 「俺の勤め先の工務店に来ないか?」
イレース「………え……?」
アイク 「グレイル工務店には魔道の使い手が少なくてな、以前から魔道の心得がある人間を探していたんだ
     俺が言うのも何だがあんたの魔道はかなりのものだ、その力を俺の所で役立ててみないか」
イレース「…あ……え………?」
アイク 「それにグレイル工務店は住み込みで働ける、家賃の心配もしなくて済むぞ。食事も保障できる
     オスカーの料理は絶品だ。…ミストの当番の時は覚悟がいるがな」
イレース「………あ…………」
アイク 「みんな気のいい連中だからすぐに慣れる、シノンあたりが新参者には厳しいかもしれんが
     基本的には面倒見がいい奴だから、安心していい。それに…」
イレース「…あの!」
アイク 「どうした?気に入らないか?」
イレース「…あ…いえ…やります…やらせて下さい!」
アイク 「そうか、良かった。じゃあ工務店に行くか、親父に話を通さないとな」

 
 

イレース「…あの…ありがとうございます」
アイク 「いや、礼を言うのはこっちの方だ。工務店は人手不足でな、魔道に関しては特にだ」
イレース「…でも…ありがとうございます…」
アイク 「だから礼はいいと…」
イレース「…給料が出たら私が何か奢ります」
アイク 「…あんたがか?これは明日は雨でなくて岩でも降りそうだな」
イレース「…ふふ……」

 

アイク 「…というようなことがあってだな」
ロイ  「へえ…いい思い付きだったね」
マルス (というかモロにフラグ立てじゃないか…まさか…いや…しかし…)
ヘクトル「兄貴!客だぜー!」
アイク 「そうか、すぐに行く」

 

イレース「…アイクさん」
アイク 「あんたか、家に来るなんて珍しいな。何か用か?」
イレース「…商店街の近くの新しい焼肉屋、今日オープンだから…給料出たばかりですし
     …一緒に行きませんか?」
アイク 「そうか今日だったか、うっかりしていたな。よし行こう、お前達も来るか?」
マルス 「…いや僕たちは遠慮しますよ」
ヘクトル「そうだぜ兄貴、俺たちは空気読んで引っ込むからよ」
ロイ  「姉さん達には僕から言っておくから、楽しんできてね」
アイク 「…?そうか、じゃあ行ってくるぞ。急ぐぞイレース、もたもたしていると
     いい肉が全部喰われてしまうからな」

 

もはやアイクの頭は肉一色の様で、兄弟の不自然にニヤついた様子を不審に思うことも無く
財布を引っ掴むと足早に出て行った

 

ヘクトル「しかし、二人で出かける先が焼肉屋ってのはなあ?」
ロイ  「まあ、あの二人らしいけどね」
ヘクトル「しかし兄貴も相変わらずだな。女が名指しで尋ねてきたってのに頭の中は食い物のことだけか」
ロイ  「肉が絡むとアイク兄さんは他のことが目に入らなくから…」
ヘクトル「なんにせよ、兄貴の嫁候補がまた一人増えちまったかもな。本人が自覚無しで増やしてる
     のはアレだけどよ…ってどうしたマルス」
マルス 「いえ…(こんな話をしているとそろそろあの人が…)」

 

ミカヤ?「あの二人、結構仲がよかったのね」
ヘクトル「ああ、意外だよな。あの二人が…って…」

 

そこに現れたのはミカヤではなく、蒼炎を纏い、般若の如き形相を浮かべたユンヌだった

 

ユンヌ 「あの女…食欲しかない奴だと思ってたから油断してたわ…」
マルス 「(やっぱり…)まあ焼肉食べにいっただけですし、気にしなくても」
ユンヌ 「違うわ!あの食欲魔人、焼肉を物理的に食べた後はアイクを性的に食べるつもりなのよ!」

 

そう言い放ち、レクスオーラを取り出して飛び出そうとするユンヌだったが
それを慣れた様子でマルスが押さえつける

 

マルス 「そういう発想をするあなたがおかしいんですよ!この色欲魔神が!」
ユンヌ 「離して!アイクが喰われる前に私があの食欲魔人を料理してやるわ!」
マルス 「不穏当な発言は自重して下さい!兄さん戸棚からメダリオン持ってきて!
     ロイはチェーンソーの用意を!」

 

アイク 「なんだか家の方が騒がしいようだが…」
イレース「…急がないとお肉無くなっちゃいますよ…」
アイク 「そうだな、急ごう」
イレース「……はい」