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Last-modified: 2008-01-16 (水) 20:41:29

新年早々追撃発動

エリンシア「……」
ミカヤ  「げ、元気出してエリンシア……気にすることないわよ」
エリンシア「いいえ……ああ、他の人からもそう見られていただなんて……! 私はもう立ち直れませんわ……」
リーフ  「……どうしたの、二人とも?」
ミカヤ  「あ、リーフ……実は今日、ミレトスデパートの初バーゲンに出かけたんだけど……」
リーフ  「主婦だねえ……」

エリンシア「全員分の下着と靴下を……!」
ミカヤ  「見てエリンシア、あっちで冬物全品八割引!」
エリンシア「うひょーっ! これは行かなきゃ損ですわ! ほらおどきよお前達!」
おばさん1「ぐはっ」
おばさん2「ぐえぇっ! ちょ、ちょっと、なにすんのあーた!?」
エリンシア「お黙り! HPは1残っているから傷害罪にはなりません!」
おばさん1「そんな無茶な!」
ミカヤ  「さすがエリンシア……スキル『慈悲』の威力は伊達じゃないわね……!」

リーフ  「……いつも思ってるんだけど、あれは『慈悲』って言わないよね……」
ミカヤ  「まあ、そんな感じで最初こそ順調だったんだけどね……バーゲンから外れてブティックに寄ったときに」

ミカヤ  「ねえエリンシア、この服どう?」
エリンシア「まあお姉さま、とてもよくお似合いですわ。天使のような愛らしさです」
ミカヤ  「あははは……妹にそう言われるのは、なんとなく複雑な気分だわ……」
エリンシア「あら、でも私はそういう服は着れませんもの……」
ミカヤ  「まあ確かに似合わないかもしれないけど」
店員   「いらっしゃいませ」
エリンシア「あらこんにちは、でもお気遣いいただかなくてもよろしくてよ」
店員   「そのようで……よくお似合いですよ。私ごときが口を挟むまでもない、大変素晴らしいセンスをお持ちです」
エリンシア「まあ、ありがとうございます。お世辞でもそう言っていただけると嬉しいですわ」
店員   「いえいえ、お世辞などでは……そちらのお洋服、娘さんに大変よくお似合いですよ、奥様」
エリンシア「……おく、さま……?」
ミカヤ  (ゲッ)
店員   「はい。いやあ、今まで見たこともないぐらい、お美しい親子でいらっしゃる。
      特に奥様は大変お若く……こんなに可憐な娘さんがいらっしゃるお年にはとても見えませんよ!」
エリンシア「ま、まあ……そ、そうですか……!」
ミカヤ  「ああああ、あは、あはははは! ちょ、ちょっと急用を思い出しましたのでこれで失礼!」
店員   「お、お客様! ……チッ、冷やかしかよ。シケたババアだな」

ミカヤ  「……で、最後の店員の呟きまでバッチリ聞こえてたわけで」
リーフ  「接客態度悪いなあ……」
ミカヤ  「まあね……でもそれはともかくとしても、エリンシアがわたしのお母さんだと思われちゃったのは事実なわけで……」
エリンシア「……ババア、ババア、わたしはババア……おほほほ、兄弟家のオバンシアとは私のことですわー……」
リーフ  「壊れてる……」
ミカヤ  「どうしたらいいのかしら……レストでも元に戻らないし……」

アイク  「ただいま」
ミカヤ  「ああ、お帰りアイク。ねえアイク、あなたもエリンシアを励ましてくれないかしら?」
アイク  「……? よく分からんが、落ち込んでいるのならちょうど良かった。エリンシア」
エリンシア「はい……?」
アイク  「これ、受け取ってくれ」

 と、アイクが何かの包みを手渡す。

アイク  「日頃世話になっているお礼だ。まあ、お年玉だとでも思ってくれ」
ミカヤ  「へえ……よかったわね、エリンシア!」
エリンシア「あ、ありがとうございます……いやだわ、なんだか涙が……」
アイク  「……そんなに喜ぶことか?」
リーフ  「……まあ、アイク兄さんが、ってのはちょっと珍しいからね……」
エリンシア「これ、開けてみてもよろしいかしら?」
アイク  「もちろんだ。知り合いからアドバイスをもらったからな。中身も期待してくれ」
エリンシア「まあ、何が入ってるのかしら」

 と、期待しながら包みを開けるエリンシアの横で、リーフは少し不安になって訊ねた。

リーフ  「ねえ兄さん。あの中身って、なんなの?」
アイク  「ん……? 化粧品だぞ」
リーフ  「……化粧品?」
アイク  「うむ。ティアマトやララベルからアドバイスをもらって」
リーフ  「だ、ダメだエリンシア姉さん! それを開けちゃーっ!」

 しかし、リーフが止めるよりも早く、そこには包みの中身を潰さんばかりに握り締めて震えるエリンシアの姿が!

エリンシア「……アイク……これはどういうおつもりなのかしら……?」

 ちなみにその手に握られているものは、
 最新式皺伸ばしセット
 最新式染み取りセット
 最新式白髪染めセット
 などなど。
 エリンシアの怒りの余波で歪む大気の中、アイクはきょとんとした顔で首を傾げる。

アイク  「ん? だから、エリンシアのためのプレゼントだが」
エリンシア「……わたしの、ための……ふーん、そうなんですかー……!」
アイク  「ああ。女は小皺を気にするものだと聞いたんでな。存分に使ってくれ」
エリンシア(ぶちぃっ!)
リーフ  「に、逃げて、兄さん逃げてーっ!」
エリンシア「ウガァァァァァァァァァァッ!」
ミカヤ  「ああ、エリンシアがキレたーっ!」
リーフ  「だ、ダメだ姉さん、家の中でアミーテ叫喚四連発は……ウギャー、HPが1残るせいで無限に続く拷問がーっ!」
エリンシア「ぶっ飛ばして差し上げますわぁぁぁぁぁぁぁっ!」
アイク  「む……! 手合わせか! いいだろう、たまには違う奴とやるのも悪くはない! 来い、エリンシア!」
ミカヤ  「新年早々KY過ぎよアイクゥゥゥゥゥッ!」
リーフ  「この人でなしーっ!」