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Last-modified: 2008-01-16 (水) 20:32:24

世界名作劇場

むかしむかしある所に、おじいさんとおばあさんが暮らしていました。
おばあさんの名はミカy(ザー)

……おじいさんと、きれいなお姉さんが暮らしていました。
きれいなお姉さんの名はミカヤ。
「こんにちは!(笑顔)」
おじいさんの名はアイク。
「………どういう人選なんだ」
今日もおじいさんは裏山へ芝刈りに、きれいなお姉さんは川へ洗濯に出かけます。

アイク「それじゃ姉貴、行ってくる」
ミカヤ「はーい、木とか山とか色々刈るのもほどほどにね」

ウルヴァンかついでのっしのっしとおじいさんが出かけていったのはさて置き、
きれいなお姉さんは川原へやって来ました。何故か洗濯物は大量です。
さて、きれいなお姉さんが洗濯をしていると、何ということでしょう。
川上からどんぶらこっこどんぶらこっこと、大きな緑風が流れてきたのです。

きれいなお姉さんはスルーしました。

サザ「拾ってよ!!!! ミカヤ!!!!!」
ミカヤ「え? あら、ごめんなさいね。楽しそうに泳いでたから、
邪魔しちゃ悪いかしらと思って……」

全身ずぶぬれで涙目の緑風を拾ったきれいなお姉さんは、こんな素敵なものは
是非おじいさんにも見せてあげないとと思い、家に持ち帰ることにしました。
多分着替えさせるためですが、緑風はwktkしています。
何といっても、お題はももたろう。そうです、川上から流れてきた彼は、
主人公を約束されているのです。

サザ(長かった……パッケージにでかでかと載り、オープニングムービーで
敵をなぎ倒し、一章の間はミカヤハオレガマモル壁役として頼られ、
実はジェイガンポジションと分かった時のあの絶望。
しっこくのアプローチに怯え続けた日々も、専用クラスでさえない悲しみも、
面と向かって凡人扱いされた屈辱も、今日全て報われる。
俺は……俺は…… 主 人 公 だ ! !)
ミカヤ「ただいまー」

がらりと家の扉をあけると、ぐつぐつ煮立っている鍋の周りに主人公家兄弟全員います。

エリンシア「お帰りなさい、姉さま。もうお昼できてますよ」
ヘクトル「先に始めてるぜー」
サザ「……」
ミカヤ「いつもありがとうね、エリンシア。今日は何?」
アイク「熊」

熊汁をすすりながら言うアイク。土間の隅の暗がりにハンパない大きさの
熊の首が転がっているのを見て、サザはビビります。

サザ「……ミカヤ」
ミカヤ「なあに?」
サザ「何でこんなに大勢いるの? アイクおじいさんと二人暮しじゃ」
ミカヤ「私たちの他に誰も暮らしてないなんて一言も言ってないでしょ」
リン「はい姉さん、サザさんの分も」

とか何とか言ってる間に、普通にお昼に招待されてしまったようです。
続きのストーリーが始まる気配はまったくありません。サザはキョドっています。
サザ「だ、団長」
アイク「ん?」

あぐらかいてひょうたんからどぶろくをあおりながら振り向くアイク。
山賊です。ハマりすぎです。

サザ「あの、わ、私としてはですねその、鬼が島へ鬼退治とか
そういう案件につきまして、皆様のご意見をあのお時間をとらせて
申し訳ないんですがいや別にお時間がありましたらで」
アイク「鬼?」
ヘクトル「鬼い? まだいやがったか」

ぎろりと睨み返したヘクトル、舌打ちしながら傍らのアルマーズを
片手で担ぎ上げます。サザはとりあえず謝ります。

リン「サザさん、サザさん」
サザ「え?(涙目)」
リン「あなた、情報が古いわ」
サザ「え……」
エリンシア「鬼はこのあたりでおいたして、困っちゃってたのよね。
道に吸殻は落とすし、自転車は路駐するし」

頬に手を当ててちょっとため息をつくエリンシア。リンはサクサク食べています。

リン「それで、家の近所で悪さされるのは不愉快だからって、
アイク兄さんたちがチームを組んで」
サザ「退治しちゃったんですか!?」
ヘクトル「いや、先頭のアイク兄貴がラグネルかついで家の扉をあけた時点で、
泣いて謝った」
サザ「……」

サザの周りにだけ吹き荒れている冷たい風はさて置き、楽しいお昼時は過ぎていきます。

サザ「……ミカヤ」
ミカヤ「なに? サザ」
サザ「これのどこがももたろう……」
ミカヤ「いえ、本当はもっと原典に忠実なストーリーも考えていたんだけど、
それじゃあなたが辛そうだから」
サザ「何でだよ!(涙目) 十分辛いだろ!」
ミカヤ「ノイスとエディとレオナルドをおともにして、
鬼が島についたときにはアイクとヘクトルとエフラムにメンチ切られる
ことになってたんだけど、そっちの方がよかった?」
サザ「それ何て緑風終了のお知らせ?」

サザにおかわりをよそってあげながら、ミカヤはしかたなさそうに微笑みます。

ミカヤ「男の子だし、冒険に出たいのは当たり前ね。でも、私はサザやみんなが
宝物を探して遠くに行っちゃうより、ずっと一緒にいてくれる方がいいな」
サザ「ミカヤ……」

そっと様子を伺ってみると、皆聞いていないふりをしつつ、やたらお椀に顔を隠しています。
結局ももたろうのストーリーはすっかり頓挫し、サザはお昼をご馳走になって帰りました。
鬼にだって家族がいるかもしれないと思ったのです。

めでたしめでたし。