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Last-modified: 2008-02-27 (水) 19:47:33

418 名前: イドゥンさんとリン姉さんと野生分 [sage] 投稿日: 2008/02/23(土) 18:30:45 ID:Pyeo3ogx
 ~兄弟家付近の路上~

リン   「うぅぅぅ……」
フロリーナ「だ、大丈夫、リン? 顔が真っ青よ」
リン   「さ、最近、試験勉強で草原に行ってないから、野生分が不足してるのよ……」
フロリーナ「や、野生分……?」
リン   「ああ、恋しい! 草原の風! 草の香り! 馬の嘶き! 馬蹄と馬頭琴の二重奏!
      今、わたしの体には、荒ぶる野生の気が圧倒的に不足しているのよ!」
フロリーナ「お、落ち着いて、リン……!」
リィレ  「ふーんふーんふーん♪ ……っと、やばっ、この辺ってあの家の近くじゃん……!
      ま、まあ、あの変な女に会わなきゃ何の問題も」
リン   「あ」
リィレ  「あ」
フロリーナ「え?」
リン   「うふ、うふふふふふ……」
リィレ  「ちょ、ちょっと、やめて、手をわきわきさせながら近づかないで!」
リン   「もふもふの毛皮、ぷにぷにの肉球……!」
リィレ  「ひぃーっ! 相変わらず目がヤバイーッ!」
リン   「にゃんこぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
リィレ  「フギャーッ! 誰か助けてーっ!」

 一瞬で化身したリィレが、民家の屋根に飛び移って逃げようとする。
 爛々と目を光らせたリンが、ラグズもかくやという跳躍でそれを追跡した。
 残されたフロリーナは、ただただ間抜けにポカンと口を開けるばかり。

フロリーナ「……お家に連絡しておいた方がいいのかな……?」

リィレ  「クッ……ふ、ふふふ、一瞬ビビッたけど、よく考えてみたらこっちはラグズ!
      その中でも随一の俊足を誇る猫の一族! 軟弱なベオクなんかに追いつけるわけが」
リン   「にゃんこぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉっ!」
リィレ  「普通についてきてるーっ!?(ガビーン!)」
リン   「ハァハァ、この香り、しなやかな脚の筋肉……! うへへへたまんねぇわホント」
リィレ  「イヤーッ、変態、変態ーっ! 誰かーっ、ここに変態がいまーすっ!」
リン   「待ってーっ、わたしの野生分ーっ!」
リィレ  「いやぁーっ……っとぉ!?」

 屋根の上なのに前を見て走っていなかったせいで、リィレは空中に身を躍らせてしまう。
 そして落っこちた大きな庭にいたのは、

ユリウス 「ぶげぇ!?」
アハト  「ああ、空から落っこちてきた巨大な猫がユリウス様を押し潰したーっ!?」
フィーア 「相変わらず不幸ッスねユリウス様」
ユリウス 「く、くそっ、家にいるから安心してたのに……! っつーか助けろよお前ら!」
アハト  「いやいや、あっしら非力な魔道系ッスから、こんな大きな猫を持ち上げるなんてとてもとても」
フィーア 「アインスとかドライが来るまで待っててくださいよ」
ユリウス 「ちくしょーっ!」
リィレ  「うう……いたたた……」
リン   「うふふ……かわいいかわいいにゃんこちゃーん」
リィレ  「ひぃぃぃぃぃっ!」
リン   「ダイビンザキャーッツ!」

 狂ったテンションで叫びつつ、リンがリィレの体にダイブを決める。
419 名前: イドゥンさんとリン姉さんと野生分 [sage] 投稿日: 2008/02/23(土) 18:32:47 ID:Pyeo3ogx
リン   「うへへへ憧れの猫枕ぁ……ああ、この毛皮お日さまの香りがするぅ……肉球ぷにぷにでもうたまんないわぁ……」
リィレ  「いやーっ、誰か助けてーっ!」
ユリウス 「その前に僕の上からどかんかお前らーっ!」
イドゥン 「……騒がしい……どうしたの……?」
ユリウス 「ああ、いいところに来た! 助けて!」
イドゥン (……ユリウスの上に大きな猫……隣にいるリンさんが気持ち良さそう……ふかふか、ぽかぽか……)
ユリウス 「……イドゥン姉さん?」
イドゥン 「……お邪魔します」
リィレ  「えぇーっ!?」
イドゥン 「……これが噂のぬこまくら……柔らかくて心地いい……」
リン   「ああ、イドゥンさん……最高ですよねこれ……」
イドゥン 「ええ……リンさん、とってもいいご趣味をお持ちだわ……」
リン   「もう……この温もりと柔らかさ……どんどん眠たく……Zzzzzz……」
イドゥン 「Zzzzzz……」
ユリウス 「寝るなこの天然ーっ!」
チキ   「あーっ、イドゥンお姉ちゃまが猫枕してるーっ!」
ファ   「ずるーいっ!」
ミルラ  「……この状況、猫枕免許皆伝のエイミさんはどう思われますか……?」
エイミ  「とーぜん、突撃しかないでしょーっ!」
リィレ  「ちょ、やめ……! お、重いってばーっ!」
チキ   「ふかふかーっ!」
ファ   「もふもふーっ!」
ミルラ  「……眠たいです……」
エイミ  「Zzzzzzz……」
リィレ  「うえーん、誰か助けてーっ!」
ユリウス 「……もうどうでもいいや……パトラッシュ、僕もう疲れたよ……」
リィレ  「あたしはパトラッシュじゃなーいっ!」

 結局、リィレが解放されたのは二時間後であった。
 迷惑をかけたおわびとして、リィレには竜王家から猫缶1年分が進呈されたが、
 たとえ何をもらおうと、深い心の傷は癒されない。

リィレ  「うう……酷い目にあった……」
レテ   「……リィレ」
リィレ  「ああレテ、かわいそうなわたしを慰めてーっ!」
レテ   「……将を射んとすれば何とやら、と言うが……」
リィレ  「へ?」
レテ   「……リンと近づきになっているのは、よもやアイクを狙ってのことじゃないだろうな……?」
リィレ  「え、ええと、話がよく……」
レテ   「お前もわたしの邪魔をするかーっ!」
リィレ  「ひぃぃぃぃっ! な、なんなの一体ーっ! もういやぁぁぁっ!」

リン   「あー、やっぱり野生分が満タンだと調子が出るわ! 見てよフロリーナ、この肌のツヤ!」
フロリーナ(……付き合い方考えた方がいいのかな……)