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Last-modified: 2008-05-22 (木) 21:48:48

591 名前: 助けて!名無しさん! [sage] 投稿日: 2008/04/01(火) 11:27:31 ID:1DyOGKyP

「アイク……」

レテは電柱の影からアイクを見つめていた。
そこにたまたま通りかかったのは、ライであった。

「おいおい……お前何ストーカーまがいのことしてるんだよ……」
「なっ、違う!……えっと、これを……」

そういってレテが見せたのは、映画のチケット。
どうやらアイクを誘うつもりらしい。

「……なるほどな。どうせ、『余ったから』って言って誘うんだろ?」
「な、なぜそこまで……」
「面白いぐらいにお約束的なツンデレだからなお前は。でもそんなんじゃ駄目だろ」
「う……うるさい!」
「アイクには嫁候補がたくさんいるんだからな。ほら、そこにも」

ライが指差した先には、グレイル工務店に勤め、アイクとも親しい剣士、ワユの姿が。
彼女はライが言うようにアイクの嫁候補の一人であるが、
彼女は確かにアイクに対して友人以上の感情は持っているものの、それが恋愛感情と呼べるかは甚だ疑問である。
アイク同様に、彼女もフラグクラッシャーの素質があるようなのだ。
しかしそれ故にアイクのフラグクラッシュの被害を受けることもなく、
アイクの嫁の最有力候補の一人とする説も浮上している。
まあ、『嫁』までに至るには彼女のフラクラ能力が仇となるのだが。

「くっ……あいつか、あいつは闘いにおいても恋においても強力なライバルだ……」
「ああ、お前がこのままだと危ういと思うぞ」

と、そんな話をしていると、

「ねえねえ、ジャスミン。すごく僕好みのお姉ちゃんがいるよ」
「そうだねポール、僕もこういうお姉ちゃんは大好きだよ」
「え、ちょ、なに!?」

ごろつきのポールとジャスミンが、ワユに絡みだした。

「彼氏もいないみたいだし、ちょっと付き合ってもらおうよ、ジャスミン」
「それは名案だねポール。ちょっとお姉さん、僕たちと一緒に行こうよ」
「な、何なのよいったい!?」

明確に断ることをしなかったため、強引にワユを連れて行こうとする二人。

「うわ、大変だ……二重の意味で」
「わ、私はどうすれば……?」

うろたえるライとレテをよそに、ワユの元へかけていく人影が。

「おい」
「……ねえジャスミン。なんだか知らない男の人が声をかけてきたよ」
「そうだねポール。なんだかすごく嫌な予感がするよ」

いつものペースを乱さないまま、しかし冷や汗を大量に滲ませる二人。
アイクは押し黙って、二人を睨みつけていた。

と、次の瞬間。
592 名前: 助けて!名無しさん! [sage] 投稿日: 2008/04/01(火) 11:28:13 ID:1DyOGKyP
「俺 の 女 に 手 を 出 す な !」

「……うわああぁぁあん!」
「ま、待つんだ、レテ!落ち着けって……ああ、行っちまった……」

レテは目の前の現実から逃げてしまった。猫のラグズなのに脱兎とはこれいかに、とライは割とどうでもいい事を考えていた。
ライは走り去っていくレテの背中を見送っていたが、すぐにアイクのほうに視線を戻し、事を見守ることにした。

「……彼氏、いたね、ジャスミン」
「……そうだね、ポール。こんな強そうな男の人が相手じゃ、僕たちじゃ勝てないよ」
「おとなしく退散しようか、ジャスミン」
「そうしようか、ポール」

その言葉どおり、二人は去っていった。

「ありがとう、大将。助かったよ……あいつら強引だし、しつこそうだし……」
「ああ、大丈夫だったか?」
「うん、大丈夫。それにしても、よくとっさにあんなこと考え付いたね?」
「女性が悪い男に絡まれていたら、ああ言って追い払え、とマルスに教わってな」
「なるほどね~。でも、大将ならあんな奴ら軽く捻りつぶせたんじゃない?」
「ああ、ごろつき程度に遅れをとるつもりは勿論ない。が、人助けにしてもできるだけ事は穏便に運べとよく姉上に言われているからな」
「まあ、確かにね~」

仲良く話しながら歩いていく二人。傍から見れば、恋人といっても誰もが信じるだろう。
しかし二人はフラクラ同士である。

「……ま、こんなことだろうと思ったよ……」

すべてはライの予想通りであった。
というか、普段のアイクを知っていれば、これぐらいは容易に想像がつく。
それほどアイクのフラクラ性質は強いのだ。
しかしまあ、レテにはショックがでかすぎたらしいのだが。

「しかし、ああやって見ると最有力恋人候補って説も分かるような気もするし、
 やっぱ駄目そうな気もするな……難しいもんだな、恋ってのは」

ああやって仲よさそうな男女を見ると、他人の心配より先に自分の心配をしたほうがいいんじゃないかと思うが、
それでもやはり獣牙の兄弟としてレテが心配になるライであった。